「良し!」
「領域から脱出した! これはミゲルさんの圧倒的有利ですよね!」
観戦組はミゲルの領域脱出に沸いていた。
基本的に、対領域の戦法は3つ。
簡易領域、彌虚葛籠などの領域対策で領域を受け流す事。
自身も領域を展開し、押し合いに持ち込む事。
そして、領域から脱出する事。
その中でも領域からの脱出は、事実上領域の破壊を意味する。範囲内に誰もいない領域を維持するメリットなど、当然ながら皆無。
その後に呪力消費を嫌って領域を解除し、術式が焼き切れた相手を一方的に叩ける。
それも自分は領域を温存した上で、だ。
「ああ、このまま待ち、領域を解除した宿儺を……!?」
しかし、依然として伏魔御廚子は展開されている。
だがミゲルは、宿儺に向かって再度突撃を敢行していた。
「なんで!? 領域から脱出したら領域解除を待って、無防備な敵を叩くのがセオリーでしょう!?」
「こんなもの出さずとも、お前は戻ってくるだろうが……ま、念の為な」
宿儺の傍には、コガネが浮かんでいる。
「さて、もう一度行こうか」
「そうか、
日車は気付く。宿儺は死滅回遊
「でも、どっちにしろ宿儺はミゲルさんのタックルを止められない! このままヒットアンドアウェイで時間を稼げば!」
「いや、アレはミゲルを呼び戻す事に加えて、次にミゲルが領域から脱出した瞬間、
こうなると、ミゲルは領域を脱出できない……!」
そんな事などせずとも、宿儺を逃さないためミゲルは領域再突入をも厭わない。
「転移を脅しに使われると、五条くんとの合流も迂闊にはできないね。あの転移、見た目以上に厄介だ」
宿儺の勝利条件……それは五条、ミゲルを含めた高専勢力全員の撃破。
纏めて相手をするならば、そのような事は幾ら何でも不可能だ。しかし、それを為さねば命は無い。領域による殲滅も不可能。
しかし、それはミゲルと五条が揃っている場合に限っての事だ。
宿儺の望みはミゲルと五条を各個撃破する事。
その後に戦うであろう格下どもは一旦勘定から省き、同格2人を連戦にて撃破する事のみを考えている。
ならば、不用意に時間稼ぎなどすると逃げられる危険性がある。宿儺をこの場に留めるため、機嫌を伺いながら戦わなくてはならない。
「それなんですけど、そもそも何で
結局泳者じゃない人は出入り自由だったんだし、五条さんって複数人で瞬間移動できますよね? 冥冥さんのカラスで宿儺を見つけたら2人で飛ぶ、を繰り返せば負けないんじゃ……」
「そんな事をしたら最終的に俺たちが殺されるんだよ」
「え?」
「宿儺が転移→烏の殲滅→転移を繰り返したら先に烏が尽きるんだ。黒鳥躁術は契約数はほぼ無制限でノータイムノーリスクで契約可能とはいえ、契約そのものは必須だからね。
呪力を抑える事くらい宿儺なら朝飯前だろうし、五条くんが宿儺を見失うと、ヒットアンドアウェイのゲリラ戦を選択されたら終わりだ。こっちの
「しかもこの拠点目立つからねぇ……
宿儺を見失った場合は籠城戦術を決め込む羽目になる。年単位は覚悟しなきゃならないよ?」
「えぇ……嫌すぎる……」
流石に高専勢力が全員揃っている場合、宿儺は攻めてこないだろう。
その場合は冥冥が烏の補充→宿儺が烏の殲滅をする時くらいしか宿儺と接敵出来る機会は無くなり、宿儺を斃すという目的は非常に時間のかかる気の遠くなるような作業になる。
死滅回游が本当に永続する可能性が本格的に見えてくる最悪の展開。
「あの術式の宿儺相手に後ろの仲間守るなんて、五条でもない限りは不可能だ。
瞬間移動ができるのが五条だけって時点で、宿儺が逃げ出したらほぼ詰みなんだよ」
ちなみに、五条が宿儺に転移用の呪印を刻めばノータイムで宿儺のいる場所に転移できるようになるため、近接戦で呪印を刻む事も勝利条件の一つ。
呪印はそのうち剥がされるだろうが。
「ほへー」
「三輪アンタね……全部終わったら、京都校に日下部さん呼んで鍛え直してもらおうかしら」
「えっ」
「イイダロウ、何度デモヤッテヤルヨ」
ミゲルは再度、宿儺に向かって駆け出す。次からは領域を脱出しないままで何度でも殴り合いを敢行する心算。
一歩踏み出す毎に止めどない加速を繰り返す。ミゲルの圧倒的な脚力により、音の壁を越えるのに僅か7歩。
その際空気の壁は抵抗を試みるも、あっけなく蹴散らされ粉々に粉砕される。マッハを超えてなお加速は止まらない。
ミゲルが領域内へと突入。降り注ぐ御廚子は呪力放出により弾く。
加速を繰り返し、斬撃を弾きながら宿儺に狙いを定める。
宿儺に激突するまでの、最後の一歩。
ミゲルが地面を蹴る瞬間に、その足元が切り刻まれて塵と化した。
しかし……ミゲルは強く空気の面を踏み締めた。
空を蹴り、さらに加速し……
「!?」
宿儺はミゲルの足の裏ごとそこに存在する空気を切り刻み、真空を作り出す。抵抗のない真空は面として捉えることが出来ない。
空気の面を蹴ることができず、バランスを崩すミゲル。これでは進行方向を変えられず、宿儺に避けられてしまう。
「来い、異人よ」
しかし、宿儺はその場で構えを取る。
正面から迎え撃つことを選んだのだ。
(高速で動く物体は横からの力に弱い。まずは避け、横から殴るのがセオリーだろう。しかしそれだと動きを止めることはできず、結局距離を取られてしまう。追いかけるのも現実的ではない。
奴を止めるためには、結局は正面から迎え撃ち、この場に留めなければならない)
両手を前に出し、縦に並べるよう拳を握る。
中国拳法の打突、『崩拳』。
弓を射る形に捉えられる正拳突き———拳を縦に構える直突きである。
しかし、空手など通常の正拳突きに比べると実は威力は弱い。
通常の場合、正拳突きは拳を半回転させて回転のエネルギーを加える。この際正面方向への貫通力が増し、威力が増大する。
その上、腰、肩、肘……その全てを連動させ、体重をも乗せて放つ。
崩拳の場合は、弓を射る動作に例えられるように、基本の構えからほぼ直線上の動きで放つ。ボクシングのジャブと同様、動作のロスが少なく速さに優れる打突だ。しかし右ストレートほどの威力がない。
だが、モーションのシンプルさは、
崩拳を選んだのには、特に宿儺の意思は関係していない。ただの直感———否、宿儺の膨大な戦闘経験値が最も
体勢を崩したミゲルの突撃と、宿儺の拳が激突する。
瞬間、宿儺の拳に黒い雷が迸った。
「SHIIIIIT!!」
「……ハハッ、悪くない」
宿儺の黒閃。
史上最強の術師が覚醒する。
その上で、宿儺は
加減したことで、ミゲルの突撃と宿儺の拳がほぼ完全に相殺する。
ミゲルは吹き飛ばされることなく、その場に留まることになった。
瞬間、宿儺は領域範囲を縮め、捌の威力を倍増させた。
未だ嘗て誰も体験したことのない、黒閃を経た万全の宿儺による領域展開。
命を狩るに足る程の超斬撃がミゲルの全身に降り注ぐ。
「ヌ……グ……」
「今一度、語り合おうじゃないか」
正面からの殴り合い。
当然ながら通常であればミゲルの圧倒的有利。
しかし、領域によるバフとデバフ。
黒閃による覚醒。
「……!」
宿儺の拳が、再度黒く閃く。
一般的に、黒閃を狙って出せる術師は存在しない。
しかし真実は少し異なる。
渋谷事変の際、虎杖悠仁は明らかに狙って黒閃を繰り出していた。
テンションが上がり、打撃が黒閃となる直感で確信を持って放つのは珍しくないが、事前に「黒閃を出そう」と考えて、実際に黒閃を放つのは前代未聞の離れ業。
紛れもなく、虎杖悠仁は明確に意識した上で狙って黒閃を繰り出せる。
正確には、『黒閃を経て極限の集中状態にある虎杖悠仁』は、狙って黒閃を放つことができる。
卵が先か鶏が先か……虎杖悠仁ですら、黒閃を狙って出すには黒閃を先に決めなければならない。
その超絶技巧、黒い火花に愛された瞬間を
既に、1度目の黒閃は微笑んだ。
二度目以降を狙うことなど、宿儺にとってなんら難しい事ではなかった。
次は右フック。これも黒閃。
その後のボディ。これも黒閃。
しかし足を止めての打突、ミゲルの身体は砕けない。またミゲルも極限の集中の中でカウンターを合わせ……!
「何ダト……!」
その拳に、性格無比な御廚子による斬撃が浴びせられる。
宿儺にヒットした打撃に黒い火花は微笑まなかった。
「クク……させんよ。
お前に黒閃は決めさせない」
自らに打撃が触れるより先に、相手の拳に斬撃を放つ。黒閃により威力が上がった、領域内の斬撃だ。止めるまでとは行かずとも、
ただでさえ反転術式を使用しながらの殴り合いだ。意識を集中させる事そのものが至難。
黒閃の妨害を片手間で行いながら、宿儺は更に黒閃を重ねる。
何度も、何度も、何度も、何度も。
その度に御廚子の出力も上がり、拳の威力も上がる。
連続での黒閃、その数が二十を超えた頃———
「ほう、考えたな」
ミゲルは、呪力強化を解除した。
それにより、ただの縦突きでミゲルの体は後方に吹き飛ばされる。
ガードしていた両腕は完全に折れたが、その衝撃で領域内からの脱出に成功。
「ハァ……ハァ……」
(何ヲヤッテイル五条!!! 早ク来イ!!! 舐メテンノカ!!! 今何分経ッテル!!??)
身体中に深い斬撃、両腕はひしゃげて骨はバキバキに折られている。衝撃はガードを抜けて内臓まで響いており、ミゲルの肉体強度がなければ命にすら届いただろう。
ミゲルにとって幸か不幸か、無双の肉体は継戦能力を失ってはいなかった。
「さて……ならば次の手だ」
黒閃により、見えていた景色が一変した。
クリアになった視界と脳、出力の上がった術式と鋭さを増した呪力操作……しかし、
(俺は黒閃を決めた……しかし同時に底が透けてしまった。黒閃を食らっても問題は無い……たとえ直撃しようと継戦能力を失う事はないという確信を与えた訳だ)
反転術式により、斬撃による傷はすでに治癒している。ミゲルの技量を考えれば、両腕も数秒で治癒できるだろう。
史上最強の術師・両面宿儺の幾度となく重ねた黒閃を呪力強化外からぶつけたところで、ミゲルの命には届かない。
(俺自身も確信してしまったな。何度黒閃を叩き込んでも奴を殺す事は叶わないと。
認めるしかあるまいよ、俺は殴り合いではどれほど研ぎ澄まそうと奴には及ばない)
致命傷ならずとも大きなダメージを与えた。しかしミゲルは今までの被弾の少なさもあり、互いの呪力残量はこれで五分と言ったところ。
呪力出力では黒閃を重ねた宿儺が上回っているものの、持ち前のタフさも加味すると宿儺の奥の手を以てしてようやく継戦能力は6:4で宿儺と言ったところ。
五条悟を含めるならば甘く見て1:9。
このままダラダラと戦っていては万に一つの勝ち目も無い。
「ならば、どうする?」
無双の肉体により使う機会は限りなく少ないとは言え、ミゲルの反転術式が弱いわけが無い。
既に腕は治りかけている。
「時間がない。一撃で決めさせてもらう」
宿儺は閻魔天の掌印を結ぶ。
「龍鱗 反発 番いの流星」
それは、世界を断つ斬撃———
否。
「瞋恚」
「響鳴」
「東方の顎」
「獄吏の片割れ」
それは、
「【竈】」
『【開】』
史上最強の術師・両面宿儺の最終奥義。
領域にて粉塵と化したすべての物質に爆発製の呪力を付与し、発する炎にて極大の爆発を引き起こす天変地異級の一撃。
しかし、この技には無視できない弱点がある。
火種となる炎の速度が遅く、効果範囲もお粗末。超特級クラスをも焼き切る火力はあるのだが、そもそも当たらないのであれば意味がない。
【竈】を当てる難易度を考えれば、実体がなく斬撃の効果が無かったり炎が極端に苦手な相手を除き、接近して触れる必要のある捌と比べても竈を選択する必要性が無いのだ。
「!?」
「クク……熱が通り過ぎると味は損なうのだがな」
しかし、ここで黒閃を重ねた宿儺は伏魔御廚子の仕様を変更。
通常斬撃を与える解と捌、それを斬撃のダメージを0にする代わりにその分の呪力を相手に付与する縛りを追加した。
斬撃のダメージを無くすという相手に有利に働く縛り、その呪力付与効率は本来消費する呪力より遥かに多いものに変わる。
また、伏魔御廚子の効果範囲をミゲルの周囲と自分の周囲、およびそれを繋ぐ経路上のみに縮小。
効果範囲を絞る縛りにより、更に付与する呪力の量と密度を向上させる。
本来発生する広範囲の爆発による減圧と加圧の効果はミゲルに効果が薄いと判断。
それを犠牲にし、瞬間火力に特化した可燃性の呪力をミゲルの周囲10メートルに圧縮する。
余りの濃さで可視化された超々々々高密度の呪力により、ミゲルの周囲は領域と見紛う黒い球のように固められる。
ここまで来れば、呪力は壁となりてミゲルを拘束するに至る。
「おい、この拠点動かせるか?」
「え?」
その時、気が付いていたのは日車寛美ただ1人だった。
「どうなんだ?」
「いや、出来るとは思うけど……」
「リカ!! 今すぐこの拠点をできるだけ大きなビルの陰に隠してくれ!!」
『チッ……偉そうに……』
リカは呼び捨てにされた事にイラつきつつも、嫌々ながらその声に従った。
「……それほどかい?」
一級術師である冥冥ですら、それほどの脅威かと日車に聞く。
「わからない、だがこのままでは全員死ぬと直感した。
確か炎の術式があるのだろう? なら離れておいて損は……」
その瞬間。
「「「「……!」」」」
ようやく、その場にいる全員が濃密な死の気配を感じた。
「領域展開!!!」
「灰燼に帰せ」
宿儺は、竈の炎を解放。
領域となっていた、ミゲルまでの経路に通った可燃製の呪力に引火。
一瞬にして、ミゲルの周囲が暗黒から光に転ずる。
(マズイ……!)
範囲を抑え、爆発の規模を縮小した。音の代わりに目を焼く光が迸る。
その光に触れたものは全てが消し飛び、遥か後方の物体すらも焼き焦がす。
冥冥の操る烏は、瞬時に全個体が焼死。
一瞬で膨張した空気による衝撃波と極熱によって、渋谷周辺どころか環状線内が赤熱した地獄と化す。
凡ゆる物質は燃え尽き、溶け崩れ、空と為り、光と化して、転生を成す。
中心温度約1億2000万度。
人類未到、熱核融合を引き起こす異界創生の滅光である。
発動した本人である宿儺すらも即死するほどの火力。
呪力防御に加え、発動直後に爆心地から距離を取りビルを盾にして生き延びた。
当然ながら、ミゲルの姿はもう無い。
「悪くない」
その火力に、満足気な笑みを浮かべる宿儺。
———瞬間。
「領域展開」
「だろうな」
『無量空処』
五条悟が宿儺の背後に現れ、領域展開を発動する。
それを読んでいた宿儺は、展延を発動させながら五条悟に殴りかかる。
「領域解除のタイミングを狙っていたな?」
「さぁ、どうだろうね?」
展延による防御、それは宿儺の持つ領域対策である彌虚葛籠に及ばない出力しかなく、通常であればすぐに剥がされる程度のもの。
しかし、幾度となく黒閃を決め、その上新境地を開拓した宿儺は展延を無量空処に拮抗させる。
「マジかよ……!」
「そんなものか?現代最強!結界術がなっていないと見えるな!」
既に、両面宿儺は対領域を克服したと言っても良い。
「ッ!?」
「そら、どうした?」
その上、展延による無下限の貫通。
格闘戦も、ミゲルとの戦いを経た宿儺に押されている。
———遠くで、パリンと言う軽い音が鳴った———
「……!?」
突如として領域に突入した何か。
咄嗟にガードしたが、突撃を受けて宿儺は弾き飛ばされた。
両面宿儺を弾き飛ばせる者など、1人しかいない。
「……イマノハ、アブナカッタ……!」
そこにいたのは、無傷のミゲル。
流石の宿儺も顔を顰めるが、看破は早い。
「……五条悟の瞬間移動か!」
「ネタバラシの楽しみを奪うのはやめて欲しいね」
戦いが始まる以前より、ミゲルの身体には無下限の呪印があらかじめ刻まれていた。
爆発の瞬間、五条が瞬間移動に利用される座標の圧縮でミゲルを呼び寄せて、爆発から逃げ延びていたのである。
ほぼ万全の五条と、自分と互角に戦えるミゲル。
切り札は晒していないとはいえ、多少なりとも削られた宿儺。
(チッ、ここまでだな)
宿儺は全ての手札を切ったとして尚、勝ち目がないと判断。
あっさりと、転移し逃亡する事を決めた。
「だが、悪くなかったぞ」
「コガネ、転移だ。桜島
(しかし、術式が回復するまでの数分間逃げるだけでいい。その後は直ぐに2対1で戦ってやろう)
ミゲルとの戦闘経験を経て、黒閃を重ねた宿儺は既に格闘戦はミゲルと互角以上。術式性能も以前に比べて飛躍的な上昇を見せている。
無量空処については既に展延や彌虚葛籠で拮抗できる事を確認していた。そもそも結界を閉じる領域展開など、直ぐに破壊できる。
(どうにか魔虚羅に無下限への耐性を付けさせ、ミゲルについては殺しきるまで切り刻む。奴の領域効果もまた厄介、しかし魔虚羅に適応させるのはリスクか……)
しかし。
【申し訳ありません。
「……何だと?」
ほんの一瞬、隙ができた。
その瞬間を逃す彼らではない。
意識が途切れたその一瞬で五条の蒼で宿儺を引き寄せ、同じく蒼に引き寄せられたミゲルが宿儺を羽交締めにする。
「貴様ら……!」
「五条!」
「流石だ」
五条はそれを確認し、特大の赫と蒼を構える。
「九鋼 偏光 烏と声明 表裏の間」
領域内での虚式『茈』。
ミゲルに拘束され、逃げる事は叶わず。
術式は回復しておらず、防ぐ手立ても無い。
最後の手段……完全受肉をしてもそれは変わらないだろう。
「虚式」
『茈』
ミゲル共々、茈に直撃。
当然ながら宿儺の展延は破壊されていた。
「……!」
ついに無量空処が両面宿儺に通り、意識を刈り取る。
完全に、両面宿儺が戦闘不能に陥った。
「……ヤッタカ?」
「日本じゃ言っちゃダメなやつね、それ。
まぁでもやってるよ。完全に決まった。直撃した無量空処耐えるやつなんてミゲル以外いないでしょ」
安全を確認したのち、五条が領域を解除。
続いて、ミゲルが領域展延を発動し宿儺に触れる。
『クハハッ』
目と腕が二対の鬼神、そのデフォルメされた姿がミゲルの側に現れる。
「ヨシ、ツヅケルゾ」
展延には、領域に付与されている縛り(3割しか存在を奪わない代わりに領域の押し合い、強度を底上げするもの)は付与されていない。
そのまま宿儺に触れ続ける事で、完全体の両面宿儺を模した精霊が顕現する。
『……』
「へー、これ本物と同じ姿? きっしょ」
「アア、ソノ筈ダ」
倒れている宿儺……否、伏黒恵は元の姿に戻っていた。
既に腹の中にある宿儺の指は機能を失っており、精霊の宿儺が破壊されるまでその効力は戻る事はない。
これにて、本当に決着となる。
ミゲルと五条の完全勝利だ。
フー、と大きな大きな溜息をついたミゲルは、そのまま五条に殴りかかった。
「うおっ!? どうしたのさ」
「遅インダヨ!? 祟ルゾ!?」
「死んでないんだから良いじゃん。
いやそれよりもさ、コレ見てよコレ」
五条はグッ、と親指を突き立てる。
ミゲルがそれを覗き込んだその時。
『やあ、君が異人ミゲルか。こうして見ると迫力が違うな』
「WAO!?」
五条の親指が喋り出した。
「天元様だって。悠二……はもう違うけど、華ちゃんとお揃いだね」
「……天元。不死ノ術式ヲモツ、日本ノ主要結界ノ要……
サッキノハソウイウ事カ!」
『ああ。五条悟の力を借りて浄界の一つをハッキングし、この東京第一
いくら宿儺と言えど、全力で領域を展開している途中に外側の領域を剥がしたのには気が付いていなかったらしい』
コガネの転移は
後は先ほどの通りだ。そもそもがニ対一で分が悪いのに、更に隙を突かれては勝ち目はない。
「そーいう事。遅くなって悪かったね〜
逃げられるってリスクを無くせるなら、先にそっちを済ませたほうがいいと思ってさ」
「コレデ俺ガ殺サレテタトシテモ、疲弊シタ宿儺ヲ逃ガサズニ殺セルカラナ」
「……何ヲ言ッテルンダ。ソンナ訳ナイダロウ」
「似テ無インダヨ」
「まーまー、勝てたんだからいいじゃない」
人外魔境新宿決戦、これにて終戦。
後は後日談を1話投稿して終わりです。
ちなみに裏梅は宿儺が負けたので自害しました。戦闘とかは無いです。