本当にごめんなさい、これ番外編なのよね。
秤とオリジナル呪霊のバトルになります。
正直10分くらいでテキトーに作った呪霊だったのですが、なんか感想とかでやたらと人気があるのでバトルを書いてみました。
特級堕天使『שריאל』vs.秤金次
———これは、人外魔境新宿決戦の裏側の話。
正史では五条悟vs.両面宿儺の頂上決戦を観戦していたはずだが、羂索による大量の呪霊放出により、高専側の戦力は出動を余儀なくされていた。
そんな中、放出された呪霊の中に、本来なら五条が出動しなければならない規格外の特級呪霊が3体。
その中でも、さらに数段上。
真人、漏瑚すら上回る圧倒的な怪物。
烏を操る冥冥を、烏の目を通じた間接的な一瞥のみで戦闘不能に追いやった『邪視』を扱う特級。
羂索が数百年前に欧州地域で探し出し、当時の依代を含む大量の手札と引き換えになんとか契約した化け物。
特級堕天使・שריאל
「さて……コガネ」
『はーい!』
そんな怪物と対峙するのは、特級術師である乙骨憂太をして、『ノッてる時は僕より強い』と言わしめるタイマン最強格の男。
呪術高専3年・秤金次。
「転移だ、名古屋
『いくぜー!』
そのままשריאלの頭上に転移する。
奇襲で一撃を入れるもよし、領域に引き摺り込むもよし。最高の転送位置を引いたと言っても過言ではないが……
———瞬間、秤が邪視の影響を受ける。
「っぐ……!? 領域展開!」
そもそも、相手の出方次第では即展開する必要があると考えて領域を構えてはいた。そのおかげでほぼノータイムで領域に移行できた……しかしながら、領域に引き込んでなお身体中の嫌な感覚がなかなか抜けない。
それもそのはず、このשריאלの邪視こそ、正真正銘世界最凶最大の呪詛なのだ。
紀元前より練り上げられ、積み重ねられた畏れは3000年を超える。
欧州、中東……様々な人種、宗教を跨ぐ絶対的な恐怖の象徴である『邪視』……その起源にして頂点こそ、שריאל。
それと、もう一つ。何故頭上に転移した瞬間に邪視の効果を受けてしまったのか?
それは至極単純な理由。
שריאלは全身に目玉がついているからだ。
שריאלの姿はまさしく異形の翼。
身体のほとんどは6枚ある翼で構成されているのだが、その全てに無数の目が付いている。
純白の羽と目玉で構成された、根源的な恐怖を思わせる御使いである。
「邪視っつーからもっと悪魔みてーなのを想像してたんだが……キッショいなマジで!」
[…………]
「まぁいい、1番やべーのを乙骨に任せてんだ。さっさと終わらせてやるぜ……っと!」
そのまま『CR私鉄純愛列車1/239ver』を回転、スムーズに大当たりへと移行する。
決戦前に領域を回し確変に入った状態で待機していたため、澱みはない。
「ハッハ……思った通り! 相性バツグンだな俺らは!」
[……]
領域から出た瞬間、邪視による圧倒的な呪詛が襲う。
通常、שריאלの正面になど立とうものなら、秤レベルの術師であろうとも1秒以内に全身が腐り落ちて絶命する。
五条悟や宿儺ですら、1分も視られ続ければ命はないだろうという超規格外の呪詛。
しかし、邪視に限った話ではないが、呪詛とはそもそも有害な呪力を対象に付与して呪いを掛けるモノ。
総じて反転術式と相性が最悪なのである。
「オラァ! その羽、全部むしり取ったら何が残んのかなァ!?」
数十メートルはあろうשריאלの身体に乗り、巨大な翼を思いっきり引きちぎる。
翼が一枚、無惨に羽根を撒き散らしながら地面に落ちた。
「もう一丁!」
秤は次の翼に手をかける。
しかし、שריאלの飛行にはなんの影響も及ぼさないようだ。依然としてフワフワと宙に浮いている。
身じろぎすら起こす気配は無い。
(やっぱりな。コイツの攻撃方法は邪視一本! ボーナス中なら圧倒的に俺が有利だ!
……とはいえ、流石に……!)
本来、ボーナス中の秤に凡ゆる呪詛は効果が無い。常に身体中に正の呪力が漲っている状態では、体内に送り込んだ負の呪力を片っ端から中和されるからだ。
……そう、本来なら。
「はっ、
それでも尚、その邪視は秤にダメージを与えている。
圧倒的な出力に加え、全身の目玉による重複した邪視だ。
数十人の釘崎野薔薇から絶え間無く共鳴りを浴びせられ続けているのと等しい。
そんな状態では、治り続けるとはいえ本調子になるはずもない。
「時間がねぇ……!」
秤は次の領域を構え……
「領域ッ……展開!」
無理矢理、領域を発動した。
「ぐ……ッ!」
坐殺博徒が展開されるも……秤は膝をついて苦悶の表情を浮かべていた。
手印を結んでから領域効果が消え、領域を発動するまでのタイムラグは約0.5秒といった所だろうか。
その僅かな時間……秤はノーガードで邪視に晒されることになる。
(この出力がヤバすぎんな……なんなんだこの化け物は。こんな奴羂索はどうやって捕まえたんだ?)
頭痛、吐き気、眩暈。内臓は灼ける様に痛み、目は霞み、皮膚は爛れている。
たった0.5秒……そんな僅かなタイムラグで受けた呪いは、充分に致命傷と言って差し支えないものだった。
しかし、致命傷如きで怯む秤ではない。
「さっさと片付けねぇとな……!」
乙骨、五条……そしてミゲル。
誰も彼もが命を賭けている。そんな中、一瞬で体が腐り落ちる呪詛を受けた程度で膝をついていいわけがない。
その不屈の精神こそが、強運を引き寄せる。
「ボーナス続行!!!」
調子がいい。
確変は継続しており、奇数図柄。
次もまた大当たりが確定している。
領域が解除される。
演出を回しているその間に、先ほど千切ったはずの翼が元通りになっていた。
チマチマしたダメージなど、呪霊であるשריאלには効果が薄い。やはり一撃で払わねばならない。
「となると、あそこだろうな」
身体の中心にある、一際巨大な目玉。
そこに狙いをつけ、跳躍し……
不意に、頭の中に声が響いてきた。
[לא תבגוד בי במעשה הזה]
「……は?」
[אני חושש שאני לבד אצטרך לשאת באשמה על חטא גדול.]
目の前の呪霊が喋っている……と言うのは分かるが、学のない秤にはשריאלが何を話しているのか全く理解ができなかった。
仕方のない事ではある。
「クソが……脳内に響いてきやがるが、報告に聞いた独自言語使うとか言う特級とは多分違うな。意味が全く理解できん」
恐らくは、対話では無いのだろう。
森、樹海への畏れから生まれた特級呪霊である花御は、独自の言語を使い術師たちに会話を仕掛けてきた。
その結果なのか、花御の調整によるものなのか……詳細は不明だが、独自言語であるにもかかわらず意味だけは理解ができると言う現象が発生している。
[אז בואו כולנו נשבע יחד.]
しかし、この言葉にそれはない。
そもそも独自言語ではない……と言う事とは関係がない。
これはそもそも、秤に向けた言葉ですらない。
[הבה נקלל זה את זה שנבצע את התוכנית הזו ולא נטוש אותה לעולם.]
自らを戒める、宣誓に過ぎないのだ。
[כִּי הַכֹּל גָּלוּי לִעֵינֵי יְהוָה, וְהַכֹּל נִגְלוֹי; וְכֹל רֹאֶה יְהוָה, וְאֵין דָּבָר נִסְתָּר מִעֵינָיו.]
来る。何かが。
しかしどうせ何言ってるか分からねーしな、と理解を諦め、目玉を殴りつけようとしたその瞬間。
「マジかよ……!」
[הרחבת דומיין]
秤は、初めて脳ではなく直感で言葉を理解した。
「領域……!」
[【הארץ השוממה תצעק ביגון, וקינתה תגיע עד שערי שמים】]
その領域は、罪と不浄を断罪する流刑地とも処刑場とも見える、現世の終。
[הנה, נשמות המתים צועקות, וצועקות אל שערי שמים; קינותיהם מגיעות עד לכאן ולא חדלות לעולם.]
赤黒い巨人が領域の外郭に沿う様に並び、血の涙を流しながら祈りを捧げている。地面は血で覆われており、足元が悪くまともに走るのも一苦労だ。
それでいて、天からは荘厳で神秘的な光が降り注ぎ、天界の門としか思えない巨大な門が天井の如く空に在る。
神が創り上げた完璧なる世界に罪が溢れていると言う矛盾……その負の面に対する嘆きにより産まれ堕ちた、天使でありながら死神であるשריאלの内に内包された人間の罪。
「っぎ……ボーナス中でコレかよ……!」
本来は必中であろうとも関係なく無効化できるはずの呪詛が、領域により大幅に強化され身体を蝕んでいる。
五条悟、両面宿儺、ミゲル……世界の頂点たる彼らですら、領域の押し合いに持ち込まなければ命は無い絶対的な必中必殺の領域だ。
ただ、耐えるだけならばなんとかなる。
本調子でなくとも、ボーナス中であれば即死はしない。
「それまでに……ッ! ぶち
しかし、足元が悪く飛び上がってもギリギリשריאלの身体に届かない。
さらに高度を上げるשריאל。
[אני זה שמלמד כל מיני סוגי אי צדק עלי אדמות וחושף את סודות השמיים הנצחיים שהאנושות מחפשת ללא הרף.]
「……なん、だアレは」
その、שריאלの後方……上空にあった元から巨大な門が、さらにどんどんと大きくなっている。
それが何を意味するかを理解し、秤の頬を嫌な汗が伝った。
「……そう言うことかよ……!」
天が、堕ちてくる。
あの巨大な門は開く事はなく、自分を……否、この領域全体を押し潰すために開かないまま、地上を目掛けて落下しているのだ。
「ヤベェなこりゃ……!」
本体には手が届かず、脱出も容易では無い。
となると道はたった一つしかない。
「領域展開……!」
全速で領域を展開する。
しかし、強化された邪視に晒されながら領域を展開できるのか?
否、領域を展開するまでにかかる時間が0.1秒であろうと、通常時であればそれまでの間に脳が腐り落ちる。
皮肉にも、天使の術式と同様の効果。光で術式を焼き払うか、邪視により術式が刻まれた脳ごと破壊するか。
どちらにせよ、領域を展開する事は不可能だ。
本当に通常時のままであれば、の話だが。
「坐さァつ! 博徒ォオッ!!!!」
秤は、ここでも賭けに勝った。
秤は、反転術式が使えなかった。
その上、乙骨憂太や家入祥子といった反転術式使いとの入れ替えも行っていない。術式効果のフルオートとは言え、使える人間にわざわざ反転術式の訓練をさせるほどの余裕はない。
だからこそ、そのフルオートで身体が治る時の記憶を頼りに、ぶっつけ本番で再現を試みたのである。
当然、今までに出来た試しはない。
宿儺、五条さえも超える回復速度を誇る反転術式……そんな記憶が何度も身体に刻まれているのにもかかわらず、秤は通常時に反転術式を使えたことがなかった。
しかし、圧倒的な『死』の気配……そのヒリつきが、『勝負師』秤金次を覚醒させた。
その一瞬で失明し、足は腐り落ちた。生殖能力を失い腎不全を起こし肺は潰れ、心臓の鼓動さえも止まってしまった。
しかし、
領域の押し合いは互角。
本来であれば勝ち目はないが、坐殺博徒の特性と領域の相性が差を埋めていた。
秤の領域『坐殺博徒』は発動が早く押し合いに強い。それに加えて、『邪視』は『不浄に弱い』と言う特性がある。
早い話、パチンコの様な低俗なギャンブルとの相性が悪かったのだ。
しかし。
שריאלと秤の領域の押し合いは、すぐに終わりを迎える。
秤の領域がブラックアウトし、力を失っていく。一瞬で領域が『הארץ השוממה תצעק ביגון, וקינתה תגיע עד שערי שמים』へと塗り変わっていく。
既に倒れ伏し、領域を維持するので精一杯な秤に対し、まだまだ余力のあるשריאל。
その結末は当然と言えよう。
[אם גם ה' ישמע את אשר קרה עד עכשיו, ויראה זאת, בוודאי לא ירצה. האם לא תצוה לנו מה לעשות בעניין זה? ]
領域が置き換わり、שריאלは勝ちを確信する。
元々、שריאלは秤のことを碌に気に留めては居なかった。邪魔で不快だった害虫を駆除した程度の感情であった。
だが、必中効果が再開していない。
地に伏し動かない秤の足元、そこに少しだけ領域の残骸の様なものがある。
なお無感情に、שריאלが領域の出力を高めた瞬間———
ピチューン
[……? ]
שריאלの領域が、ブラックアウトした。
完全に押し切ったとすら思っていた領域が、急に停止し深い深い闇に包まれていた。
何も見えず、何も感じない。これが自分の領域かどうかすらも分からない。
停止する思考の中、暗闇からあり得ない声が聞こえた。
「よお、最初に見たらビビるよな。こんなもん」
[⁉︎]
さしものשריאלでさえも、これには困惑する。
ついさっきまで死に体で、指一本すら動かせない状態だったはずの秤の声がしたからだ。
「いや、実は俺もこの状況は2回目でな。正直ビビってるんだわ」
[ההסתברות להתרחשות אפקט הקפאה היא 1/8192, מה שהופך את זה לבלתי סביר מאוד שזה יקרה. תישמע בקשתנו בפני עליון.]
「俺コイツが何言ってるのか分かったかもしれねぇ」
明らかに困惑しているשריאלを尻目に、秤は宣う。
「別にボーナスに変わりはねーよ……フリーズ演出は領域の押し合いが強くなるだけだ」
完全な暗黒に、一筋の光が差す。
スポットライトに照らされ、秤の姿が照らし出される。
「五条さんの無量空処だろうと一方的に押し返す程にな」
その瞬間、けたたましい音と光が闇を照らし、背後に可愛らしいキャラクターと『7』の数字があしらわれたイラストが三つ並ぶ。
天界の後光よりも豪華で眩い七色の光が、領域を埋め尽くす。
スリーセブン。
それはパ○ンカスの夢。
———それは領域の効果でも、術式の性能でもない。
と言うか呪術的なものですらない。
パチン○スという生き物は、7と言う数字が3つ揃うと一時的にアスリートで言う“ゾーン”に入った状態になる。
スリーセブンとは、フリーズ演出とは。
それ即ちカスの黒閃なのである。
「ミュージック……」
秤のボーナス宣言。それと同時に———天地がひっくり返る。
「スタートォ!」
秤はただフリーズ演出の説明をするためだけに出てきたのではない。
時間を稼ぎ、その間に領域を
[……! ]
上空にいたはずのשריאלが、地面に。
そして上空から……太陽の光を背に、秤金次が降ってくる。
「ライダーキックだオラァ!!!」
そのまま、全力の足蹴りをשריאלの中心部……巨大な目玉に叩き込む。
それはそもそも、蹴りと言うにはあまりにも不恰好。
落下による衝撃がメインであり、インパクトの瞬間に力を入れるような蹴りとは違う。長い距離を落下するので、タイミングも非常に取りづらい。
故に、本来『その現象』とは非常に相性が悪い。
しかし、フリーズ演出を経験したパ○ンカスの集中力は、そんな常識を嘲笑うかの様に。
その扉を平然とこじ開ける。
ボーナスにより供給される無限の呪力……それが極大の稲妻となり、名古屋の街を黒く照らした。
巨大なクレーターを作り出したその一撃は、実は弱点というわけでもなかった中心の目玉を含む全身をほぼ消し飛ばした。
ザフッ……と特徴的な消失反応を確認。
「お前はマジで強かったよ。今まで戦った呪霊だと確実に1番だった。
他の奴らなら負けてたかもしれねーが……」
死滅回遊最凶の特級呪霊、堕天使שריאל。
「運が悪かったな」
ここに、祓呪完了。
שריאלくんの姿はYouTubeで「セラフィム 天使」と調べたら出てくるキモい翼のバケモノみたいな奴と同じ感じの姿です。
ちなみにフリーズ演出前にペラペラ喋りまくってる秤ですが、特に呪詛の影響は治っていません。少し反転術式で軽くなった程度。
フリーズ演出でテンション上がって気合いとノリで復活しただけです。