作者の事情で申し訳ないのですが、本作はリハビリ作なので色々とチャレンジしていきます。
短めの幕間を5〜6話くらい毎日投稿してみる予定ですのでよろしくお願いします。
ちなみに次の話はまだ出来てないです。明日はどっちだ
嫌疑と打上
呪術総監部———
それは呪術師を統制し監督する為の機関であり、事実上の日本最高権力。
その総監部に、五条悟は呼び出しをくらっていた。
「五条悟」
「貴様に、先の京都新宿百鬼夜行における共同正犯の疑いがかけられている」
百鬼夜行からはや3日。新宿での人智を超えた戦闘を労う気など毛頭無く……あろう事か犯人扱いで尋問を行うと言う。
呪術総監部の老人たちは一人残らず、五条悟謀反の可能性を視野に入れているのだ。
「あー、一応言っときますけど事実無根でーす」
とは言え、五条も思う所はあるのであまり責める気にはなれない。
「そもそも、夏油傑の対処をするのは貴様の役目だったはずだ。それすら果たせんどころか、聞いた事もない黒人如きに遅れをとっただと?」
「自分の力と術式を理解した上で宣っておるのだろうな。ふざけおって」
「なんだ?この報告書は。計20回に及ぶ連続での領域展開が可能、領域を纏い無下限を無効化する技術を使用し、並の特級呪霊を遥かに超える力を持つ精霊を3体同時に召喚。領域効果により五条悟の分霊を作成し、使役して無量空処を無効化。その上貴様の黒閃にも無量空処にも耐えた……だと?」
「いやいや、ちゃんと報告書読んでるじゃないですか。じゃあ僕がどれだけ頑張って戦ったかも理解していただけると思いますけど?」
「巫山戯るな!信用できる訳がなかろう!」
側から見ると理不尽この上ないが、仮に全ての術師にアンケートを取れば『気持ちは分かる』が圧倒的票差で1位になると断言できる。
日本の術師は全員、五条の圧倒的な強さを知っている。ぽっと出の外国人に殺されかけたと言われても受け入れられるはずもない。
「あまり我々を馬鹿にするなよ。吐くならもっとマシな嘘を吐け」
「貴様が旧友である夏油傑と結託し、特級過呪怨霊・折本里香を手中に収めるまで新宿で戦うフリをしておき、時が来たら夏油と共に行動を開始する……この筋書きのほうがまだ現実味があるわ」
加えて今回の主犯が夏油である事も大きい。
五条の事をよく知る者からみれば失笑モノの考察ではあるが、『主犯が元親友である』というのは、加担するには十分な動機となる事もまた事実。
「何か、申し開きはあるか?」
「……はー、まぁ今回は僕の落ち度が大きいのであまり強くは責めませんが……仮にその考えが正しかったとしたら、折本里香なんて無視しますけどね。
そんなもの手に入れるまでも無く、なんなら夏油傑さえ居なくとも、僕だけで日本を征服できますから」
「貴様……!」
「舐め腐りおって!」
「そんな事よりも、夏油傑の仲間の居場所とか見つかったんですか?いやー全然手がかりが無いですよね。向こうに隠匿系の術式持ちでもいるんでしょーかねー」
「待て!勝手に話を進めるな!まだ尋問は終わってないのだぞ!」
(めんどくせぇ〜……つーかその気があんならまずお前らから潰すっての)
襖を隔てて激怒する老人に囲まれている五条は、どこ吹く風とのらりくらり叱責をかわしながら、チラリと時計を確認した。
(本当、遅めの時間で予約しといてよかったよ)
「では!無事に百鬼夜行が解決した事を祝しまして〜?」
「「「「「カンパーイ!!」」」」」
テーブルを埋め尽くす肉、肉、肉。
五条たち東京校組は百鬼夜行の打ち上げで焼肉屋に来ていた。叙◯苑である。
「……」
ただ一人、日下部だけが浮かない顔をしていた。
その原因は———
「どーしたの日下部さん?百鬼夜行じゃ大活躍だったんでしょ?」
「いや……それは良いんだけどよ……」
「じゃあ何でそんなにテンション低いのさ?ほらアゲてこアゲてこ!
あ、そういえばミゲルはお肉とか大丈夫だった?ほら、宗教とか」
「問題無イ。強イテイエバ故郷ハ精霊信仰ガ根強イ地域ダガ……術式ガナ」
「あーなるほどね」
「なるほどねじゃねーよ!!!!!!!」
———当たり前の様に打ち上げに参加しているこの外国人である。
日下部は激怒した。激怒というよりは困惑の方が強いが、激怒した。
高級な肉を前にテンション爆上げの秤と綺羅羅だったが、隣のテーブルで突然叫び出す担任には流石にビビった。
「びっくりした……どしたん日下部せんせー」
「どうしたもこうしたもあるか!なんでコイツが居んだよ!どんだけ被害出したと思ってんだ!確実に秘匿死刑だろうが!」
「いやーそれがさ?ミゲルは実はあの時めちゃくちゃ気を遣ってくれてたっぽくて、召喚した精霊も絵面の派手さに反して実は誰も殺してないし建物の被害も少なかったんだよ。
ほら、精霊の僕とかもあんまり危害加えてなかったでしょ?」
「術師ヲ殺スノハ夏油ノ信条ニ反スルカラナ」
「いや……!確かにその気は感じてたけども!」
ぶっちゃけ怖い。
ミゲルはあろう事か、誰もが絶対の存在だと信じていた五条悟を敗北寸前まで追い詰めた男なのだ。
圧倒的な肉体強度に裏打ちされた五条を超える肉弾戦闘力に加え、術式による兵力も加味して文句なしの特級
そう、呪詛師のはずなのだ。
「マアマア、高専ノ関係者ニ危害ヲ加エナイ縛リハ結ンダシ、水ニ流シテ仲良クイキマショ」
「五条ォ!ほんとに大丈夫なんだろうなコイツ!」
「……さぁ?」
「首傾げてんじゃねーよ!せめて断言してくれ!」
「うっま!何これうっま!」
「柔らかっ!うっま!ヤバいこれ!追加で3人前くらい頼んでいい!?」
「それいくらすんのか理解って言ってんのか学生共ォ!」
秤と綺羅羅が男子高専生のパワーで上ネギタン塩焼(一人前4500円)を爆食いしている。
支払いは五条持ちらしいが、まるで何かの術式のように吸い込まれていく4500円。
穏やかではいられなかった。
「アハハハハハハハハハハハ」
「笑ってんじゃねーよ五条!!テメェ酒飲むとめんどくせぇんだからイキってワインなんか飲むなや!下戸だろお前!」
「ワインハ肉ニ合ウッテ言ウケド、焼肉ハレモンサワー1択ダネ」
「頼むからお前はもう喋るな!頭がおかしくなる!」
のらりくらりと生き延びると言う、ある種手抜きとも取れる心情への罰だとでも言うのだろうか。
今日は日下部が人生で最もツッコミに奔走する日となった。
「ヘーイ!一年ズも食ってるー!?」
「「イェーイ!」」
「高菜!」
「い、いぇーい……」
乙骨憂太は『本日の主役』というタスキをかけている。
ミゲルと五条の戦いは重要なれど、主犯である夏油を撃破し百鬼夜行を収束させたのは乙骨だ。
「いやーまさか傑に勝つとはねー!
流石は僕の見込んだ生徒だ。信じてたよ憂太」
「五条先生……ありがとうございます」
(嘘つけ……お前夏油と戦う気満々だったろーがよ)
新宿でミゲルが意識を失った後、五条は夏油と戦う覚悟を決めて迎え討つ準備をしていたのだが、伊地知から乙骨による夏油撃破と里香の解呪成功の連絡を受け、気が抜けてそのまま倒れてしまうという事件があった事を、日下部は思い出していた。
言わないのは日下部なりの優しさである。
「そぼろ卵黄……!」
「初めて聞く語彙だな」
「何となく意味は伝わるけど……」
「この肉、特上より上の方が美味くね?」
「おいコラ特上頼んだの誰だァ!つーか何肉食ってんだお前パンダだろうが!笹食え笹!」
「おいおい日下部。パンダは雑食だぞ」
「そーなの!?」
当然貸切なので騒いでも問題ない。
この後、空気を読まない五条によって秤金次と星綺羅羅の無期停学が伝えられて地獄のような空気になるのだが、それはまた別の話である。
中編で秤が日下部に言ってる『貸し』って言うのは『術式に文句つけられて保守派のジジイぶん殴っちゃったから擁護よろしく』って事です。
日下部は借りを返せませんでした。普通にしこたま怒られたのです。