ジャアナ最強 俺ノイナイ国ニ産マレタダケノ凡夫   作:圏外

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乙骨修行パートです。


乙骨憂太育成計画(前編)

 百鬼夜行からはや1ヶ月。そろそろ2月になろうかと言う頃。

 

「あ、そういえば憂太」

 

「五条先生。どうしたんです?」

 

 特級仮呪怨霊・折本里香の解呪後、四級術師となり高専で体術と呪力操作の訓練をしていた乙骨は、急に五条に呼び止められた。

 

「ちょっと4月からミゲルとケニアに行ってきてくれない?」

 

「……はぁ!?」

 

 その唐突さに反してあまりに重い内容。

 五条に振り回されるのはいつもの事だが、流石に『ちょっとお使い行ってきて』くらいのノリでアフリカまで行かされる事は初めての経験だった。

 

「ちょちょちょ、ちょっと!そんな急に……!海外なんて行った事無いですよ!」

 

「まあまあ」

 

「いやまあまあで済む内容じゃ無いですって!」

 

 冷や汗をかきながら全力で拒否する乙骨だが、そんなことお構いなしに五条は続けた。

 

「それとね、憂太には修行……というよりも、力を取り戻す訓練をやって貰いたいんだ」

 

「へ?」

 

 力を取り戻す。

 そう言われた乙骨は自然と、左手につけた指輪を見る。当然、里香のことを思い出していた。

 

「力を取り戻すって言ったって、里香ちゃんはもう成仏しましたし……何より、また里香ちゃんの魂を呼び出させる気ですか?

 ……そんなの絶対に嫌ですよ」

 

「その気持ちは大事だし、尊重するよ。でも憂太の真価はそんなものじゃないんだ」

 

「憂太の術式は『魂の勾留』だ。術式と、願いと想い。その3つが折り重なって、呪いの女王が誕生した。

 報告は聞いてるよ。里香が顕現した状態で、呪言のコピーをやってのけたそうだね」

 

 百鬼夜行での、夏油との死闘。その最中、大量の呪霊に囲まれた乙骨は狗巻棘の術式をコピーし、呪言にて呪霊を一掃した。

 

 しかも狗巻には使えないほどの強い言葉を使って、反動無し。指向性を持たせられずに狙いが拡散したとのことだが、出力だけで言えば完全な上位互換と呼べるものである。

 

「……はい。でもあれは里香ちゃんの力です」

 

「それを再現できるとしたら?」

 

「え?」

 

「その鍵をミゲルが握っているのさ」

 

 

 

 


 

 

 

 ところ変わって、校舎裏の修行場。

 

「というわけで。乙骨をミゲルに任せたいんだよね」

 

「……オ前、ロクナ死ニ方シナイゾ」

 

「……」

 

(なんかいつの間にか高専でたまに見かけるようになったけど……誰なんだろうこの人。さっきの話からして、この人がミゲルさん……?)

 

 乙骨憂太からみたミゲルは、なぜか打ち上げにいた外国人程度の認識だ。

 正直なんなのかよく分かっていない。

 

「ヨリニモヨッテ、元々夏油ノ仲間デアル俺ニ、夏油ヲ殺シタ張本人ヲ預ケルナンテナ」

 

「え゛っ」

 

「一応は腕を落として撃退しただけで、直接の死因では無いんだけど……ま、ほとんど間違っちゃいないね」

 

 いやいやいや、いくらなんでもそれはないだろうと乙骨は思う。

 

(気まずいよ!!気まず過ぎるよ五条先生!?って言うか夏油の仲間ってテロリストなんじゃ……!?)

 

「……マ、イイダロウ」

 

 しかし、乙骨の予想に反してミゲルはあっさりとそれを受け入れる。

 

「え?……あの、自分で言うのもアレですけど、仲間の仇ってやつじゃ……」

 

「気ニスルナ。夏油ハ願イニ殉ジタニ過ギナイ。本来、夏油ヲ殺スノハ五条ノ役割ダッタトハ思ウガナ」

 

「……」

 

 乙骨憂太の精神性はもはや常人のそれではない……呪術においては。

 まだまだ術師になってから一月も経っていない彼は踏ん切りがついていなかった。

 

 そんな彼とって、意思決定に明確な基準を持っているミゲルの性格は、術師としての精神を育てるのに役立つだろう。

 

「ソレニ、嫌ダトシテモ拒否権ナンテナイヨ」

 

「なーんだ、分かってんじゃん」

 

(あれ!?思ったよりバチバチ!?)

 

 五条もミゲルも、先の百鬼夜行での決戦を割と根に持っている。

 

(マ、予想ハシテイタケドネ)

 

 ミゲルが結んだ高専の関係者に危害を加えないという縛りには、一つ条件が含まれていた。

 

 それは、『ただし、生徒ならびに志望者の訓練・修行の為であれば、重傷を負わせない事を条件にこの限りではない』と言うものであった。内容からして、生徒の訓練に駆り出される事は想像に難く無い。

 

 それに加えて……ミゲルにしても興味はあったのだ。夏油傑をして、手に入れれば99%五条に勝てるとまで言わしめた呪いの女王と、それを従える乙骨憂太。

 

 もともと、断る気などなかった。

 

「ジャア、儀式ノ為ノ小道具ヲ準備シナイトネ」

 

「へ?」

 

 


 

 

「こんなんで良いですか?」

 

「造形センスガ無イネ、乙骨」

 

「えぇ……」

 

 そこは高専を囲む森の中の、なんの変哲もない開けた場所。

 乙骨憂太は、そこでトーテムポールを作らされていた。

 

『俺ノ術式、精霊躁術(shamanism)ハ精霊ヲ呼ビ出シテ使役スル。シカシ、瞬時ニ喚ビ出セルノハ俺カラ見テ格ノ低イ精霊ダケダ』

 

『格ノ高イ精霊ハ凄マジイ(Power)ヲ持ツガ、喚ビ出ス為ノ儀式ガ必要ニナル』

 

「その儀式に必要なのがトーテムポールって……」

 

「ソモソモtotem poleトハ、北アメリカノ先住民族(Indian)ノ文化デ、別ニ宗教的ナモノデモ無イ。似テルダケダヨ」

 

「マ、コレデイイカ。重要ナノハ込メタ想イダ」

 

 その不格好なトーテムポールを地面に突き刺し、頂上に指輪を置く。

 

「ソノ指輪、乙骨ハ里香ヲ呼ビ出ス為ノアイテムノヨウナ感覚ダッタダロウガ、実際ニハズット乙骨ノ裡ニイタ里香トノ窓口ノ役割ヲ担ッテイタ」

 

 ミゲルの精霊躁術とは、対象の魂、さらにその奥にある器にアクセスして、それを呼び出すことが出来る。

 

 下地は、既にできている。

 その指輪は里香という怨霊の呪力に長年浸けられ、特級と呼んでも差し支えないほどの呪物と化していた。

 

 そして何よりも重要なのが……指輪には、里香の残留思念が遺されている。指輪という存在を根底から歪めるほどに強力な残留思念が。

 

「当然本物ヨリモ弱クハナルガ、謂ワバ残留思念ヲ呼ビ出スッテ事ダ。モウ分カルダロウ?」

 

「コレカラ呼ビ出スノハ、ソノ指輪ノ精霊サ」

 

「指輪の……」

 

 その指輪は折本里香が顕現する為の門となり……結果として、存在そのものが折本里香の形に歪められている。

 

「ソノ精霊ヲ、乙骨ノ術式デコノ世ニ留メテオキ、指輪ヲ介シテ使役スルンダ。俺ノ感覚デハ、乙骨ノ術式ノ影響下ニ入ッタ時点デ精霊躁術ノコントロールカラハ外レル」

 

「ジャア、呼ビ出スゾ」

 

「……お願いします」

 

 強く頷いた乙骨を確認し、ミゲルは手印を組んで術式を発動した。

 

「『精霊躁術(shamanism)』」

 

 すると、指輪から煙のようなものが抜け出していく。

 やがて巨大な形を成し……折本里香に瓜二つの姿をとって、安定した。

 

「呼ビ出セタネ。触レテミナ」

 

 恐る恐る、乙骨は手を伸ばす。

 

「里香ちゃん……?」

 

【憂太ぁ〜】

 

 乙骨は里香に触れ、それが『違う』と言うことに気付いた。

 魂が入っていない。抜け殻のようで……しかし里香であると強く感じる。

 

 歪み、捻じ曲がり……しかし確かに愛であると感じる感情が、乙骨に流れ込んでくる。

 

「……言葉ヲ発スルノハ想定外ダ。残留思念ガココマデ強イトハ……愛サレテイルナ、乙骨」

 

「……はい

 ありがとう、里香ちゃん」

 

【いつでも 呼んでね 憂太】

 

 乙骨が指示する間もなく、折本里香は指輪へと戻っていった。

 

 乙骨は確信する。この里香……否、リカは、己の魂と繋がり……力を貸してくれるのだと。

 

「うまく行ったね」

 

「アァ、既ニ主従関係ガ成立シテイル。コウモアッサリ安定スルトハナ」

 

「ミゲルさん……ありがとうございます。これでまた戦える。みんなを守れます」

 

 乙骨はミゲルに礼を言うが、それでは足りないと言わんばかりにミゲルは続けた。

 

「呼ビ出ス為ノスイッチハ、当然指輪ダ。スムーズニ呼ビ出スコト、思ウママニ操ルノニモ訓練ガ必要ダナ」

 

「シカシ、当然ズット出シテイル訳ニモイカナイ。強イ相手ニハ破壊サレルコトモアルダロウ」

 

「ソレに加えて、フィジカル面も鍛えてほしい。憂太は非力だからね。あと、呪力操作に関しては僕は六眼があるから感覚を教えるのには向かないけど、ミゲルは?」

 

「オ前程デハナイトシテモ、初メカラ出来テイタガ……頑張ッテ言語化シテミヨウ」

 

 自身の成長について、眼前で議論を交わすミゲルと五条に……乙骨は息を呑む。楽な修行は出来ないだろう。

 

 しかし……『絶対に強くなれる』。そう確信していた。

 

「ビシバシ行クカラ、覚悟シナヨ、乙骨」




オリ設定独自解釈マシマシになってしまった。
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