2018年12月24日。
五条悟復活、ミゲル合流よりはや1ヶ月……ついに決戦の日が訪れる。
「……来たね。烏越しでも感じるほどに強い気配だ」
宿儺が新宿に現れる。
高層ビルの屋上に立ち、何一つ恐れるものはないと言った態度だ。
「堂々としたものだね。隠れる素振りすら見せない……横に裏梅を侍らせてる」
「アレガ宿儺……凄マジイナ。俺ヨリ呪力総量ノ多イ存在ハ初メテ見タヨ」
モニター越しにとは言え、宿儺を初めて見たミゲルは……恐れこそしないまでも、その圧倒的な実力を感じ取り、驚嘆していた。
宿儺の呪力量はミゲルのそれを更に上回る、人類史上最大の呪力量。
しかし、その事実を知った上でも高専勢力の心は乱れない。
「分かっちゃいた事だが、宿儺も相当な化け物だ。しかし、お前らが揃って倒せない敵は居ない。信用させてもらうぞ……ほれ、五条も準備は終わったらしい」
『どんな化け物が相手だろうと、この2人が揃えば敵ではないだろう』
最強と最強が手を組んでいる———負けるはずがない。
五条悟に勝るとも劣らない程の、確信と呼ぶに相応しい絶対的な信頼をミゲルは得ていた。
コツコツと、五条が階段から降りてくる。
彼の生徒たちに激励を受け、覚悟を決めていく五条を見て、ミゲルは少し羨ましいと思った。
「自分ノ生徒ニ囲マレルッテノモ、良イモノダネ」
「ミゲルさんもいい先生ですよ」
「そうだな。五条悟よりも指導能力は間違いなく上だ」
「五条ガ指導ニ向カナイダケダロウ」
ミゲルは弟子である乙骨の指導だけではなく、複数の術師に稽古をつけていた。その中で最も筋が良いと評されたのは日車寛見だった。
と言うよりも、五条は天才すぎるので基本的にはぶつかり稽古と精神面のアドバイスくらいしか出来ない。
ミゲルも感覚派ではあるが、人並みに感覚を言語化する事ができ、五条よりはわかりやすいと評判だった。
「そういえば、高専関係者に本気を出せない縛りは大丈夫なんですか?」
「アレハ宿儺ダシ、問題ナイヨ。仮ニ相手ガ伏黒クンダトシテモ、先月ニ五条ガ伏黒クンヲ強制退学サセテルカラモウ高専所属ジャナイ。大丈夫ダロウ」
「えぇ……」
そして、2人が出陣しようとしたその時……
監視用のモニターの一つが、不意にブツンと切れた。
「姉様!?」
「……うっ!?おぇ……!」
「どうした冥冥!?」
突然冥冥が呻き、嘔吐する。白く美しい肌が無数の内出血によって青黒く変色し、滝の様な汗を流している。
吐瀉物には黒い血の塊が混じり、死体が腐ったような異臭を放っていた。
「呪詛!?一体どこから……」
「違う、これは……『邪視』だ!烏越しに……!
うぐ……場所は、名古屋
監視役の烏、その目を通じて視られた……しかし、間接的に視られただけで歴戦の術師である冥冥を戦闘不能に追い込む程の呪詛。並の術師なら間違いなく即死……まして直接視られたならば、一級の最上位の生命すら刈り取れるだろう。
日下部はその恐ろしい出力に戦慄する。
(直接視られたわけでもないのに、一級術師の冥冥がこれほどのダメージを……!
間違いなく特級、その中でも格段に強い呪霊!)
「待て!それどころじゃない!」
モニターで各
「なんだ!?」
「羂索だ!場所は広島尾道
「何ッ!?」
ノイズが走っているモニターに、見覚えのある袈裟に長髪の男の姿が映っていた。
しかし、予定していた戦力を向ける余裕は無い。
「いや待て!こっちにも特級呪霊が3体!しかも大量の低級呪霊が……嘘だろ!?数千体の低級呪霊が同時に出現!まるで津波だ!」
「はあ!?」
「大阪、京都……これ、全部のコロニーに複数の特級と無数の低級呪霊が出現しています!
……東京第ニ
「まだです!青森弘前
全ての
「始まったか……!」
泳者の虐殺が起こる事は想定していた。しかしこの規模は想定外。
羂索が渋谷事変の最後に放った呪霊は述べ1000万体。その数は高専設立時より確認された呪霊の総数を遥かに上回る冗談のような数。
出現した呪霊の総数は7万体近く、特級だけでも30体以上。余力を残している事は当然予想していたが……これほどの呪霊がまだ残っていたとは。
これでは、羂索に大戦力を向けている余裕がない。羂索と戦闘を行っている間に、宿儺が出現した東京第一
「ゔぁ……ぐ……!」
冥冥が呻き、倒れ込む。同時に全てのモニターがダウンした。
家入祥子に反転術式で呪詛を祓われ続けてなお、目と鼻から血を流しており、指先が壊死し始めていた。
「クソ……!
各
泳者が生き残っていなければならないと言うのは当然だが、救える命をむざむざと鏖殺されるのを黙って見ている様では、宿儺や羂索と何ら変わらぬ人外だ。
「秤!名古屋に出た邪視の特級はお前に任せる!真希は弘前、 鹿紫雲は東京第二に向かってくれ!特級を討伐次第、尾道
災害クラスの特級には、こちらも相応の術師をぶつけるしかない。
例えそれが悪手で、羂索の狙い通りだとしても。
「そして乙骨……!悪いが、羂索を抑えててくれ!秤たちが特級を片付け次第、すぐに向かう!」
「分かりました」
「俺も出る!脹相は真希と一緒に弘前に行ってくれ!猪野は岩手、虎杖は桜島
「はい!」
各
冥冥は夥しい血を吐き、依然苦しむ。
「うぐ……おぇ!……ハァ、ハァ……」
「冥冥!すまねぇが……!」
「問題ない!ここが正念場だからね……!」
しかし、冥冥はふらつきながらも力強く立ち上がる。名古屋以外の全てのモニターが再起動し、各
「何が起きようと、どんな呪いに苛まれようとも!絶対に倒れないさ……
「流石冥冥だ!」
金がかかった冥冥というのは、この世で最も信頼できる人間かもしれない……日下部はそう思った。
「……憂太。それとミゲル」
それを黙って見ていた五条は、羂索の元へと向かわんとする乙骨を呼び止めた。
真剣な表情を浮かべている。
五条であろうとも、真面目な時は真面目だが……何か雰囲気が違うと、乙骨は勘づいた。
「五条先生?」
「頼みがある」
大量の呪霊が出現した各
「各
全てが崩れていく風景を観て、羂索はほぼ心が動いていない。
強いて言えば、少し勿体無いと感じている程度。
「当然、手持ちの中でも特に強い呪霊も全て出す。高専側の大戦力と戦わせても充分に勝ちが狙える、真人や漏瑚と比べても遜色のないレベルをね。
『饕餮文禍渾獣』『悪路王大嶽』『שריאל』……この3体全部出すのは本当に苦しいんだけどね……しかし出し惜しみもしてられないからさぁ……はぁ、しんど」
しかし、それは手持ちの呪霊を大量に消費したことに対してだ。
……殺されていく泳者に対しては、どちらかと言うと憤りに近い感覚を抱いている。
「当然、命令は『全ての泳者の鏖殺』だ。
高専の術師が各
「っていうかそもそもさ、最初に
「いや、本当になんの役割も無いんだよ。強いていえば死ぬ直前に漏出する呪力くらい……?それもぶっちゃけどうでもいいっていうか……誰1人参加しなくても、こっちで仕込んだ泳者だけで呪力は満たされる計算だったし」
「当然そんな彼らに期待なんて1ミリもしてなかったし、寧ろ邪魔でしかなかったんだよ。どうせ殺しても術師ほど旨味はないし、かといって何気に数だけは多いしね」
「何も生まない、何も成さない。かと言って自らの生存を諦めることもなく、生きているだけで自らを陥れた犯人に利する事しか出来ず、懸命に生きる者たちの足を引っ張り続けている現実にすら気付かない。
死んだ方がまだマシなくせに、醜く生にしがみついて余計苦しむ愚かな
ああ、有り難すぎて吐き気を催すよ」
本当にくだらない。笑い話にすらならないと。
鏖にされてゆく愚かな魂を愚弄した。
「さて、柄にもなく肉体に引っ張られてしまったかな?
……一度戦っただけの君に言っても、仕方ないか」
強大な呪力を感知し、羂索は後ろを振り返る。
「さて……当然、君が来るよな。乙骨憂太」
「……」
乙骨憂太が立っていた。
完全に羂索の想定通りだ。
「いや、五条悟には魅力を感じないと言ったんだけれどね?
正直、私は注目していたんだよ」
高専側の泳者勢力など恐るるに足らない。唯一怖いのは模倣の術式により無数の手札を持つ乙骨憂太と、強いて言えば禪院真希の奇襲のみ。しかし、それらも単体ならば、自分1人で撃破できると確信していた。
「特級過呪怨霊・折本里香……アレは素晴らしい。真人と並ぶほどに欲しかったんだけど……タイミングが悪くてね。私が呪霊躁術を手に入れる前に呪いが解かれてしまった事は、とても残念だったよ」
「……」
その当時、折本里香を観測した羂索は、どうにか契約を結び手中に収める事ができないかと苦悶したものだ。呪霊躁術さえあれば、力押しでも手に入れられたのにと今でも偶に思い出す。
「夏油傑との戦いで、アレを使いこなす君は実に素晴らしかった。殺意のままに暴威を振るう君を見て胸が躍ったよ……本当に感動したんだ。本当の本当にだよ?」
しかし、折本里香は成仏してしまった。今残っているものは、その残留思念から復元した唯の贋作にすぎない。そんな物に興味は無かった。
「リカちゃんだったかな?折本里香の遺留品に縋るとは、君の純心も大したものだね。この身体の元の持ち主に変わって、君の事を『女誑し』なんて不躾な名で呼んだ事を謝罪しよう」
乙骨憂太本人も、素晴らしい才能を持つ警戒すべき相手だと認めている。しかし、自分を凌駕する可能性があるとは到底思えない。
もし自分の喉笛に牙を突き立てる事ができるとしても、5年は先の話になるだろう。
「無条件の術式コピーは相手の体の一部が無いと発動ができなくなった。宿儺すら上回る底なしの呪力は、常に呪力をリカに供給する縛りによって寧ろ君本来の呪力を制限しなければならない様になっている。そこまでしておいて、稼働時間は5分ほど……」
故に、羂索は勝利を確信している。
「君では私に勝てないよ、乙骨憂太」
『位相』
「分かってるさ」
『波羅蜜』
「ほう?」
「僕じゃまだまだお前には勝てない。呪力操作も結界術も、呪力出力も手札の数も、体術も膂力も思考も謀略も経験値も……何もかも、全てお前に及ばない」
『光の柱』
「……?」
乙骨は、自分が羂索に何一つ及んでいないと言う。しかし、何をどう見ても諦めているようには見えない。
確実に何か、切り札のような何かを隠し持っている。
しかし羂索には、それが何かわからない。
「そして何よりも……」
何かが来る。
鄒霊呪法か、呪言か。
烏鷺の術式、天使の術式、この
不可能なはずだが、無下限呪術、『◾️』でさえも。
羂索はその全てに対応できる。
「お前を殺すのは、僕の役割じゃない」
『術式反転』
乙骨憂太は懐から、拳大のナニカを取り出す。
「コガネ!!!」
「獄門疆 開門」
乙骨の懐から取り出した獄門疆から、五条悟が出現する。
獄門疆の内部で呪詞を完全に詠唱していた五条は、タイムラグ無しに最速で120%の赫を放つ。
「転移だ!桜島
「『赫』」
しかし間一髪羂索が転移する方が速く、不意打ちの赫は空振りに終わった。
「チッ……憂太」
「わかりました、お願いします。
獄門疆 開門」
「……」
五条は再度展開された獄門疆の目を見ながら、つい最近まで封印されていた時の記憶を追体験する。
獄門疆に封印されていた時の……
「閉門……冥冥さん」
1分間を一瞬で追体験し、獄門疆が発動。五条は再封印され、乙骨は冥冥を通して羂索の位置を探る。
「羂索の居場所は?」
『広島、京都……やはり連続で転移を繰り返しているね。五条君の想定通りだ……ならば、
「わかりました。コガネ、転移。行き先は仙台
『よし』、と言ったら飛ばしてくれ」
『あいよ〜』
「はっ……はっ……ッ!」
(バカな……!何故だ!?アレは海溝に沈めたはずだ!)
獄門疆は厳重に封印し、日本海溝の最深部へと沈めた。本来は沈み込む地殻に巻き込まれているはずだ。それなのに乙骨憂太は獄門疆を手に持って現れた。
裏門に封印を実行する権限は無いはず。だとするとアレは本物の獄門疆だ。
ならば……高専側がアレを手にしているということは。
(嘘だろう……?あの状況で、獄門疆を回収していたというのか!?あり得ないだろ!どうなってるんだよ本当に!)
ばさ……
その僅かな羽ばたきを聞いた瞬間、弾けるように音の聞こえた方へ術式を構える。
そこには大量の烏が飛んでいた。
「クソッ……!コガネ、転移だ!岩手御所
全てを殺している暇なんてない。一撃を放って数匹を殺し、そのまま別の
「何故電波が通っているんだよ……!」
しかし、泳者も非泳者も
結界は呪力のある物しか認識ができない。電波の遮断は帳の一般的な効果によるもので、解除するのと掛け直すのでは勝手が違う。
元々の死滅回游結界は『出入り不可』を前提として、ルールで許可を行う事により泳者を結界内へ招き入れるという形となっていた。
しかし今は『出入り自由』を前提として、ルールで脱出を拒んでいる状況にある。
この場合、結界自体は電波を認識できないので死滅回游のルールでそれのみを拒むと言った事はできない。
なので術師の出入りはルール追加で遮断できるが、電波をルール追加で遮断する場合は結界にあらゆるものの侵入を拒む様なルールを設定するしかない。
電波が生きている……つまり、烏を通して監視している冥冥から乙骨へ連絡が行く。
何度転移しても、羂索の居場所は常に割れている。
取れる手段は一つだった。
「転移だ!京都
転移した先には当然大量の烏が飛んでいる。
当然、約1ヶ月もの準備期間があった高専側も転送位置は完全に把握している。
「転移だ!広島尾道
一瞬でも間が空けば、五条悟が来る。
「転移だ!東京第二
視界の中に、大量に放ったはずの呪霊の姿が見えない。視界の端で稲妻が迸った。
「転移だ!大阪堺
呪霊が潰されている事など気にも留めない。今はただただ転移を続けるしかない。
「転移だ!名古屋
邪視対策の反転術式が空振りに終わる。
(大丈夫だ!五条悟がこちらにいると言うことは、宿儺が対峙しているのはミゲル1人!宿儺がミゲルを殺すまで逃げ続ける!)
羂索は興味が無いもの……と言うよりも、可能性が無いものに全く関心を向けようとしない。
弱く可能性を感じなければ、興味を抱く事が出来ない。
「転移だ!青森弘前
その術式は、覚えている。
警戒をしていた。対策を考えてすらいた。
「転移だ!仙台
しかしその術式の持ち主には全く以って興味はない。
故に、警戒していたのにも関わらず完全に思考の外だった。
「転移だ!東京第二……」
「【動くな】!」
「な……!?」
何故ならば羂索は、
乙骨と対面していた時は常に耳と脳を呪力でガードしていた。
だが、各
乙骨がいないと分かっているが故に、呪言の対策を怠ったのだ。今自らを拘束した、その本来の持ち主の事など……全く眼中に無かった。
(狗巻……棘……ッ!)
ほんの数秒の硬直……しかし、その数秒は作られたものだ。
待ち侘びたその瞬間を、見逃すなんてありえない。
「貴様あ゙っ゙!?」
羂索が狗巻のいる地点に転移した直後、報告を受けた乙骨が転移し、即座に獄門疆を開門。
直後、瞬間移動によって瞬時に接近した五条悟が羂索の首を掴む。
「ぐが……!」
「……よお、久しぶり」
同時に両手両足を捻じ切り、更に両手を蒼で潰し続けている。
治った側から破壊され、反転術式での回復も意味を成さない。
言葉を発する事はできず、掌印すら結べない。
羂索は五条悟を封印した張本人だ。甘く見るはずもなく、術式どころか呪力を使う気配を見せた瞬間に殺されるだろう。
「ははっ……」
……完全に詰んでいる。
生き残る道は何処にも無い。
「……」
その冷たくも美しい蒼眼を見上げる。
「ざんね゙っ」
羂索の遺言を待たず、五条は首を握り潰す。
そのまま頭蓋もろとも脳を圧し潰し、動かなくなった身体も念入りに切断圧縮する。
全ての骨を粉々に砕き、原型を留めた部位など一つたりとも遺さない。
全ての血すらも固め、潰し。飴玉程の大きさになった羂索を、細胞一つ残さぬように。
全力の赫で完全に消し飛ばした。
「今際の際の言葉は、もうとっくに終わってんだよ」
全ては、夏油傑を解放するためだ。
「……お疲れ様です。五条先生」
「明゙太゙子゙」
「東京第一
「……五条先生?」
乙骨憂太が出動する直前。
五条は懐に持っていた獄門疆を乙骨に手渡した。
『憂太、コレを使って僕を羂索の所まで運んでくれ』
『コレって……もしかして獄門疆!?裏門は消滅したんじゃなかったんですか!?』
『違う違う、これは僕が封印されてたやつだよ。
脱出した時についでに持ってきたんだ』
ついでに持ってきた、と五条は言うが、全員の思考はほぼ『?』で埋め尽くされていた。
『持ッテキタッテ……深海ジャナカッタノカ』
『深海だったよ?』
『……流石ダナ』
五条悟のすることだ、もう疑問は持つまいとミゲルは考える事をやめた。
……これから自分の身に降りかかる苦難の事を考えねばならないから、変な事でリソースを使う余裕は無い。
『ちょっと待ってください!獄門疆に入って結界間を渡るのはわかりましたけど……その間宿儺は!?』
『ああ……ミゲル』
『オイオイ、2人デ確実ニ、最低デモ同ジ結界内ニハ居ルッテ話ダッタロ』
『分かってて言ってんだろ?ま、心配なんてしてないけどね』
五条はさも当然のように、ミゲルに無理難題を押し付ける。
『僕が羂索を倒すまでの間、ミゲルには宿儺の足止めを頼みたい。
そうだな、ノルマは30分だ』
『全ク……無茶ナ事ヲ言ッテクレル』
しかし、緊迫感など無かった。寧ろ双方、笑みを浮かべてさえいた。
『はっ、何言ってんだ?』
東京第一
「羂索め、下らん真似をする……さて」
「前菜……いや、食前酒と言ったところか」
本来の目的とは違うが、しかし自分を満足させる事のできる相手。
(ノルママデアト30分……)
凄まじい圧、奴の術式と同様に切り裂かれる様な空気を感じる。
寒空の下、ミゲルは五条に言われた言葉を思い返す。
『お前になら出来るだろ、ミゲル』
その程度できて当然だと、五条は言う。
ならば……当然の如くやり遂げてやろうじゃないか。
「死ンダラ祟ルゾ?五条!」
別に戦闘描写を入れるつもりは無いのですが、一応設定作ったので公開しときます。
特級仮想怨霊『饕餮文禍渾獣』
中国最強の呪霊。中国神話に登場する四凶が饕餮文の獣の姿を依代に結合した存在。
身体は全身に呪紋の付いた6本足の牛だが手首から先だけ人間、人の顔に歪で巨大な角と、犬歯だけが虎で他は豚の歯を持ちながら目は巨大で口は大きく裂け、ハリネズミの様な鋭い体毛、虫の翅と鰭の付いた尾を持ち宙吊りの様な格好で空を飛ぶ。
動きは鈍いが、膂力が異常なほど強く知能も高い。
口の中が領域となっており、入った物は空間ごと粉々に砕かれたのちに呪力として変換されて吸収される。
領域展開『災禍凶鬼門』
荒れ果てた荒野に4本の禍々しい柱が立てられた領域。
展開せずとも常に饕餮文禍渾獣の口の中がこの領域で構成されており、領域展開発動時は範囲内の生物を呪力へと変換して領域ごと吸収する。その反則じみた呪力変換効率により、何度展開しようと呪力切れは起こり得ない。
特級堕天使『שריאל』
ヨーロッパ・中東地域に於ける絶対にして最強の呪霊。
棄てられた大天使。紀元前より存在し、血の涙を流しながら天より現れる異形の翼。
一瞥しただけで即死級の呪詛を掛ける『邪視』を持ち、領域など展開せずとも常に必中必殺の呪いを振り撒く災厄。
地中海沿岸部で『邪視』は絶対的な恐怖の象徴であり、שריאלはその起源とされ、基督教圏の術師からは天使として扱われつつも死神と同一視される。
上空には天国の門が鎮座し荘厳な光が降り注ぐが、地面は血で覆われており、周囲を祈りを捧げる巨人が囲う異質な領域。
強化された必中の邪視に晒されながら、天から降ちる開く事のない天国の門に押し潰され圧死する。