ハイスクール・フリート〜時空を越えた航海日誌〜 作:小説設営隊隊長
横須賀へ帰投した晴風であったが、港内にて機関が大破して急遽ドッグ入りとなった。
調査の末、損傷が激しく修理には時間がかかると判明。廃艦処分にしたほうが費用が安く済むが、晴風機関長[柳原麻侖]が晴風の改装計画案を立案。帝国海軍はこれを了承したことにより、晴風は新しく生まれ変わろうとしていた。
1942年6月29日 横須賀海軍基地 第1官舎(学生仮宿舎)
この日、学生達に”ある決定”が伝えられた。
学生達「「特別昇進?!」」
古庄薫「私達もなんとか抗議したけど、山本五十六長官が”どうしても”と聞かなくて……」
宗谷真冬「まぁなんだ………うちらが英雄扱いされないがためだからな………腹をくくるんだ。」
高橋千華「昇進って………階級は?」
宗谷真冬「えぇ~と………確か、全員少尉に特進だって聞いたな。」
学生達「「うっそぉぉぉ!!」」
それもその筈、帝国海軍の全階級は低い順から【二等水兵・一等水兵・上等水兵・水兵長・二等兵曹・一等兵曹・上等兵曹・兵曹長・少尉・中尉・大尉・少佐・中佐・大佐・少将・中将・大将】の17もの階級があるが、少尉は尉官クラスでありこの称号を学生達に与えられるのは相当なことであるのだ。更に驚きの知らせが続いた。
古庄薫「更に、各艦の艦長及び副長には、大佐と中佐の階級が与えられます。」
艦長&副長達「「?!?!?!?!」」
大佐と中佐は佐官クラスであり、これを全ての艦長と副長に与えられるのは、めったにないことであるため、流石の大和型の艦長たちも驚きを隠せなかった。
知名もえか「あの、晴風の艦長と副長には……どのような階級が?」
宗谷真冬「そのことなんだが………」
岬明乃「なにか問題でも?」
古庄薫「二人には、中将と少将の階級と共に、勲章の授与がされます。」
一瞬、その場が静まり返った。
岬明乃「えぇぇぇぇぇぇぇ?!」
宗谷ましろ「わ、私と艦長が………将官と勲章の授与ですか?!」
岬明乃「あ、あの、理由とかは?」
羽山陽介「理由としてはだな、帝国海軍の過激派の連中に抹殺されないためと、帝国海軍に編入されないためにもあるんだ。」
岬明乃「…………っ!」
羽山の言っていることは最もであった。
明乃たち学生艦隊は、帝国海軍に”協力しているだけ”であり、軍属ではない。
どちらかというと、傭兵に過ぎない。
もしここで、帝国海軍と何らかの契約をかわしてしまうと、実質的に軍属扱いとなってしまう。
山本五十六はそれを回避するため、先手を打ったのだ。
古庄薫「式典は明日の夜18:00、横浜の迎賓館で行われます。明日までに、礼服の手入れと心の準備をしておくように、以上!」
横須賀海軍工廠:第1ドッグ内
ここ第1ドッグでは、晴風の大改装作業が行われていた。
この作業の指揮を、晴風機関長【柳原麻侖】が取っていた。(理由:言い出しっぺの上、自分で改装設計図を作ったから。後、自己申請。)
柳原麻侖「船体の切断が終わったら、島風型のと取替作業だー!!テキパキやれよぉ!!」
作業員「了解!!」
艤装長「柳原さん!追加の鋼材と人員が到着しました!」
柳原麻侖「よぉし!そいつ等に鋼材の算段にかからせろ!人手が多いほうが早く終わるからな!」
艤装長「分かれました!」
作業がテキパキ進む中、古庄薫が先程の件を伝えるためやって来る。
古庄薫「柳原さん。」
柳原麻侖「お!古庄教官じゃねぇか!どうした?」
古庄薫「伝えておく事があるの。」
そう言うと、先程の件を伝えた。
柳原麻侖「やれやれ、帝国海軍の連中も粋な真似してくれるなぁ。あたいは少尉なんざ柄じゃないのによ。」
古庄薫「でもあなたなら、教官でうまくやっていけるわよ?」
柳原麻侖「へっ!言ってくれる!」
古庄薫「それより、晴風の改装作業はどうかしら。」
柳原麻侖「今日中には、船体の移植作業が終わる。そしたら、艤装作業だ!帝国海軍の艦載装備も載せるからな。」
晴風の改装作業は順調に進んでいた。
一方、明乃たちはと言うと…………
第1官舎(学生仮宿舎)
岬明乃「うわーーーーん!!なんかもうわからくなってきたよーーー!!」
宗谷ましろ「我慢して下さい、艦長!!私だってもう、何がなんだかわからなくなってきているんですから!!」
勲章授与の振り付け練習で、悲鳴を上げていたのだ。
そして、翌日………
6月30日 横浜市 迎賓館
会場内
式典当日の夜。
会場には、多くの来賓達が参加していた。
岬明乃「な、なんか…………すごく緊張するよ…………。(震え)」
宗谷ましろ「うぅ………………緊張しすぎて気絶しそう………。(震え)」
本日の主役達はこれでもかというほど緊張していた。
一方、大和型の艦長たちは………
阿部阿澄「それにしても、式典に出席している人たちも、案外どこの所属が見え見えだね…。」
宮里十海「海軍に陸軍の将校様………市議会議員に政治家…………果ては官僚に財閥関係者……きりがないわね…。」
千葉沙千帆「みんなして欲望が丸見えなんだよな〜。今のうちにあたしらに恩でも売っておくつもりかな?」
知名もえか「ミケちゃん………変なことに巻き込まれなきゃいいけど……。」
成績優秀者の生徒たちは、列席の来賓が何処の官職であるかを見抜き、時代錯誤を痛感していた。
そして時刻が18:00を回ると式典が始まり、各艦の艦長と副長が自分たちのクラスを代表して、階級章を受け取って、そのすぐ後に各艦の艦長と副長達の階級章を渡される。
そして、岬明乃と宗谷ましろには階級章とは別に、【勲七等宝冠章(※現在では既に廃止されている。)】が授与された。
しかし、明乃は素直には喜ばず、”ある決意”を胸に秘めていた。
帝都東京 神楽坂 とある料亭
その後も式典は続いたが、山本五十六と宗谷雪は神楽坂の小さな料亭にいた。
山本五十六「今回の特進は、学生達にとっては不本意であるが、これも過激派の将校たちから守るためにもある。」
宗谷雪「わかっています。ですが、一番気がかりなのは、アメリカ軍の動向です。」
宗谷が一番気にしていたのは、アメリカ軍の動向であった。
晴風がマリアナ諸島沖で米海軍の空母ワスプと接敵したことにより、宗谷は次に大規模反攻が来るのはマリアナ諸島ではないかと予測していたのだ。
山本五十六「うむ。軍令部でも気にしていてな………昨日、米国の無線を傍受してな、恐らくはマリアナ諸島攻略のため、準備が進んでいるようだ。」
宗谷雪「やはり…………。となると、アメリカ軍は先に、南太平洋の足がかりを築くためトラック泊地を制圧する気でしょう。」
山本五十六「これ以上の消耗を防ぐためにも、トラック泊地からの撤退は、早めに行うつもりでいるよ。」
宗谷雪「こんな時、草加さんが生きていたら……。」
彼女が言う草加とは、本名は【草加拓海】で帝国海軍の通信参謀であり、宗谷雪と同じ[海軍兵学校58期生]で卒業している。
彼と宗谷の他に、兵学校61期生の【津田一馬】に海軍大学校の同期である【滝栄一郎】、陸軍兵学校の次席卒業で岡村徳長配下の部隊の副隊長を務めていた宗谷雪の妹【宗谷霜】の3人がいた。
だが、ミッドウェー海戦で草加と宗谷は南雲機動部隊と同乗しており、草加は戦艦霧島の零式水観で本体と合流すべく艦隊から離れるも、追手の米戦闘機の猛追により戦死。
滝栄一郎も、同時期に行われた北方海域アリューシャン列島への兵員輸送作戦で、潜水艦[伊−12]に座乗して指揮を取っていたが、運悪く米海軍の北方艦隊に見つかり、集中砲火を浴びて乗艦と共に戦死している。
山本五十六「宗谷霜はガダルカナル島の設営隊と共に本土へ帰還していて、津田一馬も連合艦隊で次の作戦を立てている最中、寂しくなったものだな。」
宗谷雪「妹が無事なだけでも心がやすらぎます。」
山本五十六「だが、失ったものをとやかく言っても何も始まらないよ。これからのことを考えんとな。」
宗谷雪「…………山本長官。」
山本五十六「何だね。」
宗谷雪「自分を、晴風に配属させて下さい。」
山本五十六「……本気かね?」
宗谷雪「はい。」
山本五十六は初めから予感していた。
宗谷雪が晴風に救助されたときから、彼らと行動をともにしてから予感していた。
山本五十六「やはり………魅了されたのか?」
宗谷雪「いえ………マリアナ諸島での戦闘ではっきりしました。今の彼等には、航空機に対処するのは五分五分であると。」
山本五十六「…………。」
宗谷雪「それに、彼らの信念は揺るぎないものです。ちょっとやそっとでは変わりません。……まるで、自分たちが思い描く”未来”を掴むためのように……。」
山本五十六「だから、この国の未来を見据えている我々大人が、支えていかなくてはいけないと?」
宗谷雪「はい。私達が彼らを支えていかないといけません。この先、彼ら学生艦隊に待っているのは”経験したことのない戦闘”です。私達が支えていかないと、彼らは絶望に押しつぶされてしまいます。…………お願いします!」
山本五十六「……………………君がそこまで言うからには、私から言うことはなにもない。」
宗谷雪「……!では!」
山本五十六「行き給え。彼らの下へ。」
宗谷雪「……………!!長官……有難うございます!!」
1942年7月1日 横須賀海軍基地 第1官舎前
夜明け前、岬明乃は何かを決意したのか、ほほ笑みを浮かべていた。
宗谷ましろ「どうしたんですか?こんな朝早く。」
そこへ、宗谷ましろがやって来る。
岬明乃「あ、シロちゃん。」
宗谷ましろ「………決めたんですか?」
岬明乃「うん………。元の世界へ帰れないなら、私達はここで、守るために戦う!」
宗谷ましろ「……今更、ですね…………私もそうですけど。」
岬明乃「私、ずっと逃げていたんだと思うの。こんな戦いは間違ってるって………でも、初めて損害を受けてはっきりわかったんだ。自分から現実を受け止めて、何をすべきなのかを………。」
宗谷ましろ「…………。」
岬明乃「だから、協力してくれるかな?」
宗谷ましろ「………私達は”家族”なんですよ?協力するに決まってます。」
宗谷雪「私も協力してあげるわ。」
岬&宗谷「?!」
後ろを振り向くと、そこには宗谷雪がいた。
岬明乃「ゆ、雪さん?!どうして、ここへ?」
宗谷雪「山本長官に直訴して、あなた達のクラスに編入することになったから。これからは、私も一緒よ?」
宗谷ましろ「雪さん………。」
岬明乃「…………うん!!」
こうして、彼らの”時空を越えた航海日誌”は、ひとときの平穏へと突入した。
学生艦隊の次なる戦場は何処になるのか、それは誰にもわからない…………
ハイスクール・フリート
〜時空を越えた航海日誌〜
完
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・・・・・・続編へと続く・・・・・・
続編予告
2026年4月8日
学生艦隊の航海は…………終わりを告げなかった…………
岬明乃「晴風、出港!」
1942年、未来の世界から突如タイムスリップしてしまった学生艦隊は、観艦式のため横須賀海軍基地から出撃したが、相模湾で原因不明の濃霧に遭遇した。
濃霧を抜けた学生艦隊は、2026年の日本へとタイムスリップしてしまったことを告げられる。
宗谷真霜「む、宗谷校長!」
宗谷真雪「元気そうで何よりだわ。」
宗谷真雪と再会した真霜たちは、この日本の過去を告げられた。宗谷雪がいた日本帝国の本来進むべきであった”真実の歴史”を……
そして、彼らは実感したのだ、日本の現状を…
???「解放軍へ伝達。…… 国土奪還作戦を開始せよと……」
轟音とともに、新たな戦いが幕を開ける!
宗谷真雪「全学生艦隊、進路を尖閣諸島へ!!」
迫りくる中国軍に、自衛隊が、学生艦隊が、激しい戦闘を繰り広げようとしていた!
岬明乃「右、魚雷戦!!攻撃始め!!」
ハイスクール・フリート
〜時空を越えた航海日誌〜2
BATTLE OF 2026
そして…………彼らは、21世紀の戦闘を目の当たりにする……………
感想お待ちしています!
次回からは閑話を投稿します!
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