ハイスクール・フリート〜時空を越えた航海日誌〜   作:小説設営隊隊長

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前回のあらすじ

小笠原沖で山本五十六長官との階段を受けた横須賀女子海洋学校の学生艦隊は、補給のため艦隊を2手に分かれて行動を開始した。
道中、軍令部の方から特使である「津田一馬大尉」と呉・舞鶴・佐世保女子海洋学校の学生艦隊及び名古屋女子海洋商業学校の油槽船と合流して、補給船団はシンガポールへと到着した。



第7話[補給作戦を遂行せよ]

 

 

シンガポールへと到着した補給船団は、状況確認のため呉艦隊の旗艦[大和]に各艦隊の責任者を招集して、情報交換を行うこととした。

 

呉艦隊旗艦[大和]:応接室

 

応接室には既に艦長と副長達が集まっていた。

そこへ明乃とましろ、航海科の聡子に帝国海軍の宗谷雪と津田一馬を連れて入ってくる。

岬明乃「宗谷さんと津田さんを連れてくるのはわかるけど、なんでサトちゃんも呼んだんだろ?」

宗谷ましろ「なにか、海図関係で呼ばれたのでしょうか?」

そう話していると…………

???「サトちゃん?」

隣から聡子を呼ぶ声がした。

その方を向くと、焦げ茶色のロングヘヤーに紺碧の瞳の女学生が立っていた。聡子がその子を見ると反応を見せる。

勝田聡子「……東子?!」

油槽船[東亜丸]航海長:石上東子「サトちゃん!!無事だったんだ!!」

岬明乃「サトちゃん?その子、お友達?」

勝田聡子「うちの親友ぞな!艦長!」

石上東子。名古屋女子海洋商業学校1年生で年齢は16才。

生まれは北海道の旭川市で、彼女が10歳のときに両親の転勤で愛知県松山市に移住。

11歳のときに当時小学生の勝田聡子と出会い親睦を深めて、以来親友同士となって共に同じ中学校に通っていた。

宗谷ましろ「でも、なんで名古屋の商業学校に通っているんですか?」

石上東子「母が自宅の商店街船で働いているのだけど、どうしても収入が少なくて、父も家計のために東京へ単身貿易会社に赴任して、それで私も商業学校に通おうって思ったんです。」

勝田聡子「東子、中学の頃から一人で寮に入っていたぞな。ブルーマーメイドになるにも必要な資格もあってお金も少なかったぞなか、それで無料で入れる名古屋女子海洋商業学校に入学したぞな。」

岬明乃「そうなんだ……。」

宗谷ましろ「あの、艦長。そろそろ行きませんと………」

岬明乃「あ、そうだった!」

本来の目的を思い出した明乃は、急いで席につく。勝田と東子は、会議が終わるまで食堂で待っていることにした。

 

全員が席についたことを確認した古庄は、早速事情を確認する。

古庄薫「さて、先ずは事の発端を聞かせてもらえるかしら?」

宮里十海「正直の所、私達もあの時、何が起こったのかわからないのです。」

そして宮里は合流するまでのことを話し始めた。

横須賀女子海洋学校の学生艦隊が、九州鹿児島沖を過ぎた頃、対馬海峡沖にて呉女子海洋学校の学生艦隊が舞鶴と佐世保の学生艦隊と合流して、会合場所である沖縄へと向かっていたのだ。

だが、12月11日の夜にトカラ列島を沖縄へと南下していた横須賀女子海洋学校の学生艦隊が突如姿を消したという情報が入った。

急いで現場海域へ向かっていると、突然濃い海霧に突入してしまい、視界不良の上すべての計器類が正常に働かなくなってしまって、理由のわからぬまま海霧を抜けたが、そこはひと目で私たちの時代ではないということがわかったという。

その後は、何処かの軍隊に見つからないようにフィリピン諸島のとある無人島に分散して身を隠して、ひたすら情報収集を行い今に至る。

宮里十海「これがわたしたちが経験した事の顛末です。」

古庄薫「まさかとは思っていたけど、まさか同じ現象に巻き込まれたなんて………」

宗谷ましろ「それに、わたしたちがこの世界へと迷い込んだ翌日に………偶然、でしょうか?」

宗谷雪「偶然にしては出来すぎてるわね。何かの異常気象かしら………。」

色々と考察していると、質問が出てくる。

阿部阿澄「ところで、そちらにいらっしゃる御二方はどちら様で?」

古庄薫「えぇ、紹介が遅れたわね。こちらの方たちは、帝国海軍の人たちよ。」

宗谷雪「帝国海軍所属、重巡洋艦三隈の情報士官、宗谷雪少佐です。」

津田一馬「帝国海軍所属の、津田一馬大尉であります!」

千葉沙千帆「帝国海軍…………」

帝国海軍の言葉を聞いて、場がざわめき始めた。国のためとはいえ、戦争という行為をしているのには代わりはないのだから。

野際啓子「やはり、この戦争に協力しなければ………」

宗谷雪「いえ、我々講和派は、一日も早くアメリカと講和を結びこの世界大戦を終わせることにあります。」

「えぇ?!」

一瞬にして会場の場が驚きに満ちた。

そして、宗谷雪と津田一馬は語り始めた。

 

ABCD包囲網が確立された1930年代後半、帝国陸海軍内では、大日本帝国に楯突く国を敵と見做して殲滅せんとする【過激派】と、開戦を極力回避しつつ外国に対して講和ないし友好条約の確立を目指す【講和派】の2つの派閥に分かれていた。

最初期はそれほど対立するほどではなかったが、1941年11月にアメリカが日本に対して【ハル・ノートの提示】が決定打となり、過激派は対米開戦を決意したのだ。一方で講和派は、米国が打ち出したハル・ノートの内容を分析して【ハル・ノートは明確な謀略である】事を解析したが、過激派を抑えることは最早不可能と判断して、対米開戦が不可避なら、大統領選挙で致命的である損害を出させる事になった。

 

宮里十海「つまり貴方たちは、その帝国海軍の【講和派】の立場なのね。」

宗谷雪「はい。」

話を聞いた学生たちは、帝国軍内の事情を察して話を聞き続ける。

津田一馬「珊瑚海でのポート・モレスビー奇襲の失敗にミッドウェーでの大敗退で、陸海軍内の過激派では、かなりの衝撃が走って互いに責任の押し付け合いが起こっているようです。」

能村進愛「無理もないですね。2隻が大破で助かっても、航空母艦?を3隻を喪失しては、驚かないほうが不思議です。」

宗谷雪「そして連合国軍は、南太平洋の覇権を取り戻すため、ソロモン諸島のガダルカナル島を攻撃目標として向かっています。」

津田一馬「ガダルカナル島には設営隊600名弱が駐屯していて、我が連合艦隊としては彼ら設営隊をガ島から撤退させるべく、作戦を立案中です。」

そして、室内は静粛になる。

皆必死に考えていた。設営隊600名をどうやって撤退させるかを。

ブルーマーメイドの哨戒艦を向かわせるにしても、内火艇では搭乗可能人員に限りがあり、潜水艦からの攻撃を受けたら航行不能になる可能性を抱えていて、快速の駆逐艦を使っても、航空機の攻撃を受けたら一発で撃沈してしまう危険をはらんでいた。

徐々にうなり声が聞こえ始めた時、救世主が舞い降りた。

???「でしたら、自分に考えがあります。」

声のした方を向くと、東舞校の制服に伊−400の艦長帽を被った男子生徒がいた。

宮里十海「どんな考えなのかしら?」

伊−400艦長:早嶋敏郎「我が伊四百型全艦を用いて、設営隊の撤退を行うんです。」

阿部阿澄「いくら潜水艦でも、600名もの設営隊を乗せるのは………」

阿部艦長の言うことも最もであった。

小さな潜水艦では、600名もの設営隊を収容するのは無理難題であったが、伊四百型は他の潜水艦とは全く違う性能を有していた。

早嶋敏郎「伊四百型は建造当初、【揚陸艦】としての機能も有していますし、一度に積載可能人数は一隻につき約2000人収容可能で5隻合計10000人はいけます。」

古庄薫「だけど、学生たちを危険に晒すわけにはいかない。許可はできないわ。」

古庄は指導教官としての立場で、学生たちを危険に晒すことはできないとして派遣を拒否するが、早嶋はさらに切り込む。

早嶋敏郎「古庄薫指導教官。貴方が我々のことを大事にしていることは痛いほどわかります。ですが、ブルーマーメイド・ホワイトドルフィンに入隊を希望した我々に、安全な海なんてありません。時には危険をおかしてでも、かけがえのない人命を救わなければなりません。」

古庄薫「……だけど…」

すると、次々と賛成の声が上がる。

宮里十海「私は賛成です。人命は何者にも代えがたい存在です。見捨てることはできない。」

阿部阿澄「私もだな〜。いずれにしても地獄に行くのなら。一人でも多く助けるほうがいいし。」

千葉沙千帆「こちらも賛成だ。人命救助はブルーマーメイドのモットーだしな。」

古庄薫「貴方たち………」

岬明乃「私は、助けに行くべきです!危険をおかしてでも!」

宗谷ましろ「私も危険をおかしてでも救助はすべきだと考えます。船はお金があれば換えはききますが、人の命は換えはききません。」

古庄薫「……………」

古庄は少し考えた。

人命救助は何事にも優先すべきというのは理解していた。

だが、生徒を危険に晒すわけにはいかないという思いと行かせてあげたい思いが葛藤していた。

そして、古庄は決断した。

古庄薫「………わかりました。出動を許可します。しかし、戦闘は一切禁止が条件です。」

早嶋敏郎「了解しました。準備ができ次第、直ちにガダルカナル島へ出発します!」

戦闘は一切禁止という条件で、出動を許可した。

それからのこと、必要最低限の燃料補給と医薬品などの積載作業を急ピッチで終わらせて、一度連合艦隊と合流する為西村祥治中将の艦隊と共にトラック泊地へと向かった。

 

そして、残った学生艦隊は補給物資の調達数の計算と燃料の残量確認を行い、その日はとにかく大忙しであった。

 

 

翌日:06:00 シンガポール港

 

 

翌日の朝。

古庄薫、宗谷雪と津田一馬は補給物資と燃料調達のため早朝から内火艇でシンガポールへと上陸していた。

古庄薫「ここがシンガポール………日本語で呼んだほうがいいかしら?」

宗谷雪「覚えやすい方で構いませんよ。補給といえど、殆どが移動ですから。」

津田一馬「行きましょう。先ずは船舶運営会からです。」

津田が手配した車に乗り、補給作戦は実施段階へと移された。

彼らが先ず向かったのは、民間船などを一括管理する【船舶運営会】であった。

 

船舶運営会:応接室

 

船舶運営会へと赴いた古庄たちは、補給要請書類を運営会会長に渡す。

津田一馬「海軍の補給要請書です。」

船舶運営会会長「拝見します。」

海軍の補給要請書に目を通す。

船舶運営会会長「………各種新鮮食品15万t……缶詰め各種200万t…………新米900万t………日用品各種100万t…………重油3億tに軽油50万t……ですか。破格ですな………。」

宗谷雪「急な大規模作戦により、各種補給物資が不足してしまって…………」

船舶運営会会長「新米の方はタイ米と麦米を各種450万t用意させましょう。燃料の方は、丁度内地へ回航予定の大型油槽船4隻が最適でしょう。燃料の調達が済み次第、積み込みをさせましょう。」

古庄薫「ありがとうございます。」

 

油槽船の調達が済んだ一行は、次は各種食料の調達のため、シンガポールの闇市を転々と移動する。

憲兵に不審に思われないように、憲兵隊本部に出頭して根回しを行う。

補給物資の調達だけで一日を費やした一行は、今晩はシンガポール市内のホテルへ一泊することにした。

 

 

 

翌日、早朝から補給物資の積み込みが開始された。

シンガポールの港は朝から物資を積んだトラックが矢継ぎ早に市内のあちこちから殺到。

学生たちは山のように積み上がっていく補給物資に阿鼻叫喚しながら、死にものぐるいに各艦へと積み込んでいく。

 

晴風:後部甲板

 

勝田聡子「なんちゅう量の補給物資ぞな!!」

和住媛萌「これ絶対一日じゃ終わらないやつっすよ!!」

等松美海「ほら!口より手を動かして!!予備の補修部材は第4運用倉庫に運んで!!食品関係は炊事室に!!」

 

大和型には補給支援艦と工作支援艦のクレーンと港のコンテナ輸送用クレーンを使って、甲板へと移動させていく。

午後になると流石にかわいそうと思ったのか、帝国海軍の水兵や陸軍の部隊も手伝いにきたが、最後に来たタイ米と麦米合計900万tの米袋に重油3億t分のドラム缶の前に、最早この世の地獄の様相を呈していた。

 

知床鈴「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

青木百々「えげつない量のドラム缶だよ?!」

柳原麻侖「こりゃもう残業だなぁ!!」

西崎芽依「ひぇええええ!!流石に休ませてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

1個200Lのドラム缶は約72kg。

これが3億t分あるというのだが、腹をくくって全員で各艦へと配分してゆく。

既にこの時、晴風の医務室は過重労働による疲労困憊に全身筋肉痛、脱水症状による夏バテ患者で溢れかえっていた。

 

晴風:医務室

 

宗谷ましろ「美波さん!また夏バテ患者が!!」

鏑木美波「わかった。すまないが、食堂の方に運んでくれ。」

宗谷ましろ「わかった!」

そう言うと、夏バテでダウンしている宇田慧をおぶって食堂へ行く。

そこへ、古庄薫が様子を見に入ってくる。

古庄薫「そっちはどうかしら?」

鏑木美波「どうもこうも、昼から引っ切り無しに患者が来るから艦中の通路にまで溢れかえっている。」

古庄薫「済まないわね。明日の早朝、名古屋の油槽船の積込作業が終わり次第、横須賀へ向かう予定よ。」

鏑木美波「一応、運航に必要な人員に欠員なしだが、いざ戦闘になると即応はできないぞ?」

古庄薫「帰りは、なるべく急いだほうがいいわね………。(とても、嫌な予感がするわ………)」

古庄の心のなかで言葉では言い表せない不吉な予感が走った。これが、そう遠くない日に現実で起こるなんて知る由もなかった。

 

6月15日 00:05 シンガポール港

 

野間マチコ《油槽船 徳川丸の離岸を確認しました!》

ブルーマーメイド隊員4《全油槽船、出港完了!》

晴風艦長(代理):羽山陽介「おぉ〜痛てぇ〜(小声)出港用意!!舫いを解け!!」

補給物資と燃料の積み込み作業が完了すると、艦隊はすぐに出港。急ぎ足で横須賀へ向かう。

米海軍の哨戒網を避けて航行するが、全生徒の殆どが疲労ないし筋肉痛による激痛に嘆いていた。

 

晴風:機関制御室

 

伊勢桜良「うぅ〜〜………二の腕が痛〜い!」

駿河瑠奈「四十肩がぁぁぁぁぁぁ………!!」

若狭麗緒「足がぁぁ…………右の太ももがぁぁぁぁぁ………!!」

柳原麻侖「情ねぇな!筋肉痛程度で悲鳴なんざ!」

黒木洋美「悲鳴あげないほうが逆におかs……痛っ!!」

 

晴風:教室(臨時患者病室)

 

青木百々「ひめぇぇぇ………大丈夫…………?」

和住媛萌「大丈夫じゃないっす………全身筋肉痛で動けないっす………。」

小笠原光「あぁぁぁぁ…………腰がぁぁぁ………」

武田美知留「足が……………」

日置順子「首が………」

光・美知留・順子「「「痛〜〜い………!」」」

 

艦内の至る所で患者の嘆き声が響いていた。

その光景を見た宗谷雪は、こう思ったのである。

「もはや病院船と化している」と。

 

そうこうしている内に艦隊は、日の出と同時に九州は坊ノ岬沖を通過して、その後は帝国海軍の陸上航空隊の入れ替わり・立ち替わりの上空援護の下、遠州灘を通過して08:30に相模湾へ到達して、剣崎岬沖合に到達したのが10:15であった。

 

晴風:艦橋

 

野間マチコ《前方に構造物。間違いありません、剱埼灯台です。》

羽山陽介「全周見張りを厳に!!これより、浦賀水道へ突入する!」

 

晴風:前部甲板

 

宗谷ましろ「艦長…!」

岬明乃「うん!わたしたち、帰ってきたんだ……横須賀に!」

 

補給作戦を無事成功させた明乃たちは、時代は違えど彼らの故郷”横須賀”へと遂に帰ってきた。

横須賀で何が待っているのだろうか………。

 

 

第8話「横須賀」へ続く……

 

 

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  • BATTLE SHIP
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