ハイスクール・フリート〜時空を越えた航海日誌〜 作:小説設営隊隊長
シンガポールでの補給作戦を終えて、横須賀へと帰ってきた学生艦隊。
そこで待っていたのは、日本史にその名を刻んだ[米内光政]との会談と、横須賀艦隊の航洋艦2隻の生存報告であった。
一方ガダルカナル島では、設営隊撤退作戦が発動され、東舞校所属の伊四百型大型潜水直接教育艦4隻が作戦海域へ突入しようとしていた。
1942年6月19日 ガダルカナル島 エスペランス岬近海 00:05
設営隊の撤退作戦の準備を行う為、海中から姿を現した伊四百型大型潜水直接教育艦4隻。
護衛の駆逐艦 朝雲・山雲からの作戦開始の合図を待っていた。
伊−400副長「艦長。全ての準備が整いました。」
伊−400艦長:早嶋敏郎「わかった。後は、実行の合図を待つだけだ。」
伊−400見張り員「にしても、恐ろしいくらいに静かだな…………米軍に見つからなきゃいいが………。」
早嶋敏郎「米軍の空母艦隊は、この海域からは離脱している。しばらくは大丈夫だ。」
そして駆逐艦朝雲から、作戦決行の合図が出る。
伊−400見張り員「朝雲から、作戦決行の合図が出ました!」
早嶋敏郎「よし!格納筒ハッチオープン!」
警報音とともに、艦橋直下の艦載艇格納筒のハッチが、重厚な音を上げて開き始めて、隙間から海水が入ってきて海面と同じ水位になる。
伊−400副長「全艦、艦載艇の発進用意整いました!」
伊−400機関長《格納筒ハッチ、開放完了!水位、安定!》
早嶋敏郎「艦載艇発進せよ!俺も行くぞ!」
早嶋の号令の下、艦載艇が一斉にエスペランス岬へと向かう。
ガダルカナル島 エスペランス岬 00:10
エスペランス岬へと到着した艦載艇は、撤退してくる設営隊と海軍陸戦隊が来るのを待っていた。
伊−400男子生徒5「来ないですね………。」
伊−400男子生徒6「全滅したわけじゃ……ないですよね?」
早嶋敏郎「っし!静かに!」
男子生徒達が静かになると、ジャングルの中から無数の足音が聞こえてくる。
そしてジャングルの中から、690人弱の設営隊が列をなして撤退してきた。
伊−400男子生徒7「こいつはひどいな……」
伊−400男子生徒5「女子の連中には見せられないな、こりゃ………」
そして、その後から海軍陸戦隊らも後続してくる。彼らも整列すると、責任者と思われる女性士官が前へと出る。
宗谷霜「第12海軍陸戦隊隊長、宗谷霜大尉です!」
早嶋敏郎「救出艦隊指揮官の、早嶋敏郎です。」
宗谷霜「設営隊及び陸戦隊2500名中700名、只今エスペランス岬えへ到着しました!」
早嶋敏郎「2500名?!こちらでは600名だと伺っていましたが………(いや、ここは今いる隊員だけでも…)わかりました。速やかに艦載艇への分乗をお願いします。」
そう言うと、傷病兵が優先して艦載艇へと乗り込み始める。
早嶋敏郎「ところで、隊員総数2500名とは……これは一体……」
宗谷霜「恐らく、陸軍の上層部が虚偽の報告を行っていたかと……」
早嶋敏郎「………人を道具としてみない人ほど、早死にします!虚偽の報告をした陸軍の上層部は、いずれ失脚するでしょう。」
そう話していると、ジャングルから海軍の士官が走ってきた。
宗谷霜「岡村少佐殿!」
海軍第13設営隊隊長:岡村徳長少佐「おぉ!宗谷大尉!無事だったか!」
宗谷霜「近くにいた部隊に集結命令を出して、なんとか此処まで。」
岡村徳長「貴官が艦隊の指揮官か?」
早嶋敏郎「はい!早嶋敏郎です!直ちに艦載艇への搭乗を!」
岡村徳長「いや、俺は残る。」
早嶋・宗谷霜「?!」
早嶋は艦載艇への搭乗を勧めたが、あろうことか岡村は撤退を拒否した。
早嶋敏郎「なっ!お一人でガダルカナル島に残るのですか?!」
宗谷霜「なぜ?!」
一人ガダルカナル島に残る岡村に、二人は問い詰める。すると、岡村は……
岡村徳長「見ちまったのさ。」
宗谷霜「一体、何を?」
岡村徳長「……………ここへ来る途中、ジャングルの彼方此方で野営をした後があった。他の連中は、敵を恐れてこのジャングルの中を彷徨って隠れてるんだ。それを知っちまった以上、置いては行けんよ。」
早嶋敏郎「岡村少佐………。」
宗谷霜「岡村少佐が残るなら、私も志願します!」
岡村徳長「いや、宗谷大尉はこのまま撤退してくれ。」
宗谷霜「そんな……!!」
岡村徳長「設営隊司令官が戦死なさった今、ガダルカナル島の現状を知っている君が頼りなんだ。君は本土へ帰還して、大本営にこの事を報告してくるんだ。これは、君にしかできないことなんだ!」
宗谷霜「岡村少佐…………わかりました。その代役、身命をとして成功させます。」
岡村徳長「早嶋指揮官。本土へ帰還したら、軍令部に頼んで、そうだな……大きい輸送船をよこすように伝えてくれないか?」
早嶋敏郎「わかりました。必ずや、軍令部へとお伝えします!」
そう言うと岡村は、早嶋と握手を交わしお互い敬礼をして、再びジャングルの中へと消えていった。残った仲間を探すために……
ジャングルの中へと走り去ってゆく岡村少佐の姿を見て早嶋は……
早嶋敏郎(あの人は、危険を承知の上で居残りを決意した。尊い命を助けるために………果たして今の僕たちに、その決断ができるのだろうか?…………後悔することなく。)
早嶋はそう思っている内に、ガダルカナル島撤退作戦は初動で設営隊総数2500名中700名の撤退に成功する。
1942年6月20日 12:50 マリアナ諸島サイパン島沖
航洋艦 晴風:艦橋
野間マチコ《全周に艦影なし!異常なし!》
宇田慧《水上レーダーにも感なし!》
納沙幸子「艦長!今のところ、問題ありません!」
岬明乃「わかった。警戒配置そのまま!」
宗谷ましろ「警戒配置そのまま!全周見張りを厳にせよ!」
晴風以下、学生艦隊の航洋艦及び足の長い巡洋戦艦が米軍の動きが活発になっている【太平洋マリアナ諸島】と【北方海域アリューシャン列島】の哨戒活動に励んでいた。
何故、彼らが哨戒活動を行っていたのかと言うと、早朝へと遡る。
06:30 横須賀鎮守府 執務室
宗谷真霜「宗谷真霜、参りました!」
米内光政「朝早く、ご苦労様です。」
朝早く米内光政からの呼び出しを受けた宗谷真霜は、横須賀鎮守府へと出頭する。
宗谷真霜「それで、今回呼び出した用件とは?」
米内光政「実は、貴方がたにも哨戒活動に協力してほしいのです。」
宗谷真霜「我々にも、哨戒活動を?」
米内光政「はい。お恥ずかしいながら、我が連合艦隊は現在、トラック泊地にてガダルカナル島撤退作戦を実行中のため、現在内地にて待機中の駆逐艦の数では間に合わなく、それにこのところ、太平洋で米海軍の動きが活発になりつつあるのです。恐らく、近く反攻作戦が行われる可能性があります。」
現在帝国海軍は、ガダルカナル島撤退作戦のため主力は殆どトラック泊地にいて、内地にて待機している残存艦艇数では、無秩序に広げた領海をカバーするには至っていない。
そこで海軍省は、学生艦隊にも哨戒活動の協力を要請したのだ。
米内光政「お引き受けできますでしょうか?」
宗谷真霜「わかりました。即応可能な艦艇を選定して、直ちに哨戒に出させましょう。」
こうして、即応可能な航洋艦及び巡洋戦艦が、米海軍の動きが活発になっている【太平洋マリアナ諸島】と【北方海域アリューシャン列島】への哨戒活動に乗り出したのだ。
晴風:艦橋
岬明乃「とりあえず、アメリカ軍に見つからなければ大丈夫だね!」
宗谷雪「そうですね。(何か……嫌な予感がする……)」
宗谷雪の嫌な予感は、正にあたっていたのだ!
太平洋マリアナ諸島沖
第18任務部隊旗艦:空母[ワスプ] ブリッジ
この時、太平洋マリアナ諸島沖では、太平洋艦隊司令部の特命を受けた空母[ワスプ]を旗艦とする【第18任務部隊】が、早朝に日本軍の暗号電【HF(学生艦隊)、出港ス】を傍受していた。
このHFの正体を探り・殲滅するため、空母ワスプを南太平洋からここ中部太平洋へと転戦させたのだ。
第18任務部隊司令:ノイズ少将「艦長。偵察機からの連絡はまだか?」
ワスプ艦長:グレイ大佐「は!もうじき6番機が、サイパン島沖に到達する頃かと。既に第1次攻撃隊の出撃準備は整っています!報告が上がり次第、直ちに40機発進可能です!」
ノイズ少将「そうか。」
そして、時刻が13時を迎えた時………
晴風:前部マスト見張り台
野間マチコ「.........うん?………………あれは……」
晴風:艦橋
野間マチコ《本艦の左前方、上空に航空機1機を確認!》
岬明乃「帝国軍の戦闘機?」
宗谷ましろ「詳細確認!急げ!」
野間マチコ《了解!》
宗谷雪「おかしいわね。この海域で、飛行計画が上がっている航空隊はいないのに………」
岬明乃「それじゃあ…………」
艦橋内で不吉な予感が走る中、決定打となる報告が上がる。
晴風:前部マスト見張り台
野間マチコ「機体色は…緑、じゃない……!青色。それに、翼端の星のマークは……まさか!!」
晴風:艦橋
野間マチコ《接近中の機体は友軍ではありません!!米軍の偵察機です!!》
宗谷ましろ「何?!」
納沙幸子「っ!!」
宗谷雪(やっぱり……!!)
岬明乃「戦闘用意!!横須賀鎮守府に連絡して、増援を呼んで!!」
八木鶫《了解!!》
晴風上空:SBDドーントレス コックピット
米軍パイロット2「ターゲット発見!!」
米軍パイロット1「母艦に位置を知らせろ!!」
太平洋マリアナ諸島沖 空母ワスプ艦上
偵察機からの報告を受けたノイズ少将は、グレイ大佐に第1次攻撃隊の発進を命令する。
グレイ大佐《第1次攻撃隊、全機発進!!》
時を置かずして、空母ワスプから第1次攻撃隊40機が発進!晴風へと向かう。
サイパン島沖 晴風:艦橋
突然の偵察で慌てふためく中、横須賀鎮守府からの返答が来る。
八木鶫《艦長!横須賀鎮守府からの返答が来ました!!》
岬明乃「読み上げて!!」
八木鶫《晴風は大至急、当海域から離脱して安全圏まで後退せよです!》
岬明乃「鈴ちゃん!!急いで!!」
知床鈴「は、はいぃ!!」
宇田慧《タイムアップですよ……艦長…!》
岬明乃「……え?」
宇田慧《水上レーダー、目標多数探知!!総数約40機!!本艦の左舷後方から接近中です!!会敵まで、後1分45秒!!》
宗谷ましろ「っく!!もうそこまで!!」
もはや撤退もできず、敵の接近を許してしまった晴風。そして岬明乃は、意を決してある決断をする。
岬明乃「逃げていたら、他のみんなに被害が出ちゃう………こうなったら、なりたくなかったたけど、やらなきゃ!!」
宗谷雪「岬さん……?」
岬明乃『面舵いっぱーーい!!最大戦速!!』
知床鈴「面舵一杯!!」
柳原麻侖《最大戦速!!》
意を決した岬明乃は、晴風を敵攻撃隊の来襲方向へと回頭させる。
そう、岬明乃はみんなを守るために、戦うことを選んだのだ。
岬明乃『副長!!』
宗谷ましろ『対空戦闘用意!!』
戦闘発令と同時に、警報が鳴り響く。
宗谷雪『艦内全防火防水扉を閉鎖!!応急修理要員、即時待機!!火災・浸水に備えよ!!』
今ここに、学生艦隊初の対空戦闘がはじまらんとしていた!
果たして、勝利の女神はどちらに微笑むであろうか………
第10話「40対1で大ピンチ!!」に続く…
次回のヒントは、【たかが1門の砲で、何ができる!】です!
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