仮面ライダー鎧武 巡りあう鍵   作:最上侑人

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20話:天才の野望 その道程

新たに作られたロボット・ミカエルを包んでいたのは、別世界の技術。中でも高い技術力をもつ男、戦極凌馬によって設計されたゲネシスドライバー。そしてエナジーロックシード、ドラゴンフルーツエナジーロックシードによって変身されたアーマードライダー・タイラント。

 

その強さはロボット故に強かった。

 

命令を受けた事によりインベスを倒し始めるタイラント。

それを黙って見ている筈もなく止めようとするブラーボ、不動。しかし2人の事など意にも介さず一体また一体と倒していっていた。

 

 

 

「ほう。やるもんじゃないか。」

 

ロボットの性能に感心する凌馬。

この世界のロボットの性能は以前の戦いで知っていたが、タイラントに変身したロボットは更に異質な強さを持っていた。

 

「ミカエルは光明寺ファイルにあった理論を戦闘用に特化したものだ。その強さはどのロボットにも引けを取らない。異世界の技術の実験台にはうってつけのロボット、そして環境だ。」

「(なるほど。この男にとって民間人は二の次か。その考えは嫌いじゃないけど………この日本の未来が思い悩めるねえ。)…………おや?」

 

 

画面に目を移す凌馬。そこには先程いたペコと不動の姿が消えており、ブラーボが一人で戦っていた。

 

「(誰の差し金が気づいたかな?というかあの男は一体……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし着いた!行くぞペコ!」

「おう!」

 

インベスとタイラントをブラーボに任せて防衛省に着いた不動とペコ。

凰蓮曰く、ゲネシスドライバーを完成させたならその前に既に元の世界に帰るためのロックビークルを完成させている筈。ついでに指示を出している防衛省にダメージを与え、ロボットの動きを少しでも抑制できれば。そういう事で2人はやって来た。

 

「でもあれほんとにロボットなんすか!?」

「凰蓮も気付いた様に長年戦えば大体気づく!俺の場合半分は経験、残りは、刑事の勘だ。」

 

 

刑事の勘というよりは長年の戦いといくつもの事件ですぐに状況判断する為の能力が培われていったのだが、そんな事を説明している暇は無かった。

そんなやり取りをしながら進み、警備員を倒し、中に入り、階段を降りて地下に。

 

そしてーーーー

 

 

 

 

「ッ!!」

 

視覚から鋭い蹴りが入ってきた。

 

「不動さん!?」

「・・・大丈夫だ。それよりお前は先に行け。こいつは俺がやる。」

 

防御し、足を止め、蹴りを入れた正体ーーーマリの方を向きながら喋る不動。

一瞬躊躇しながらも再び走るペコ。勿論ただで通すはずも無く横を通り過ぎようとするペコをとめようとするマリ。

そのペコを見た一瞬を逃さずマリに攻撃を入れる不動だがあえなく防がれる。

しかしそれがいけなかった。不動の攻撃を防いだことでペコの素通りを許すマリ。

そして即座に判断する。あの男は警備の人間でも拘束できる。ならば自らが止めるは得体の知れない武器を持ち、戦闘用の自身に怯みもしないこの人間・・・!

 

『生命反応なし。不動、これはロボットだ。』

「女、ロボット、・・懐かしいもんを思い出させやがる・・」

『不動』

「わかってる。」

 

かつて、少しの間だけだったが行動を共にし守ってくれたアンドロイドを目の前にいるマリに重ねた。

しかし重ねても意味は無い。今目の前にいるのは自分の歩みを止めるのをプログラムされたロボット。

先程の蹴りから推測するにマリは仮面ライダータイラントと同じ戦闘用アンドロイド。

先を急ぐ為にも出し惜しみはしてられないと即座に判断し、鍵を出した。

 

「マグナリュウガンキー! 発動!」

 

『チェンジ マグナリュウガンオー』

 

「剛龍変身!」

 

 

余計なことをさせずに倒そうと近づこうとしたマリを炎の龍が襲った。

ロボット故に熱さを感じないマリだが、突如現れた龍に警戒し退がった。

その間に龍は不動の周囲を回り始め、龍が消えると赤と金の戦士ーーーーマグナリュウガンオーがいた。

 

 

「マグナリュウガンオー!ライジン!」

 

名乗りを上げるマグナリュウジンオー。

それを見て標的の警戒レベルを上げ、マリは静かに全身の反応速度、出力、データ収集、エネルギーの循環を上げた。

 

 

 

 

 

 

手当たり次第に部屋を調べまくっているペコ。扉を開けては雰囲気で違うと判断し別の場所に、また開けては別の場所に。しかし下手な鉄砲も数撃ちゃ何とやらと言うように、散々探し続け、ついに目的の部屋に辿り着いた。

 

 

「・・やっぱあんたかよ。戦極凌馬!」

 

目の前の人物に怒鳴るペコだが、まるで聞こえなかったかのように凌馬はモニターの映像を見ていた。

 

「初めまして異世界の若者よ。私はここの責任者の椿谷というものだ。」

 

かわりに対応をする椿谷。

しかしその対応はまるで慣れた社交辞令のように流れた口調で喋り、ペコの神経をイライラさせるに十分だった。

 

「知ってるよ!あんた、国防大臣なら何であんなもん野放しにしてんだよッ!」

「酷い事を言う。野放しにしてはいない。ちゃんと管理している。それにこれは日本の未来の為だ。」

「日本はかつて戦争に負け大きく衰退した。しかしそれを清算できる程に進歩した。しかしどうにもならないものがある。少子高齢化だ。しかし我々は光明寺ファイルを手に入れた。これでロボット技術は更に進歩し介護用ロボット、危険な災害地での活動ロボット、国を守るための防衛ロボット。ロボットによって日本は救われるのだよ。それこそがARKプロジェクトだ。」

 

 

椿谷の言う通りARKプロジェクトとは生身の人間には不可能な場所での活動、介護用ロボットの普及等を目的とした国家プロジェクト。

しかしこの男の目的は違った。

 

椿谷の目的はARKプロジェクトを利用したものであり、結局の所、戦極凌馬と同類の人間である。

 

 

「ふざけんな!あんなもん唯の破壊兵器じゃねえか!」

 

怒鳴るペコを無視し、おい、と言う椿谷の一言で2人の男が現れる。抵抗するペコだがあっという間に抑えられてしまった。

 

「少し手荒な手段だったかな?」

「構わないさ。彼はベルトを持ってない一般人だ。興味がない。」

 

それきり黙りモニターを見る凌馬。抵抗できないと知ると諦め、ペコもモニターの先のブラーボの勝利を願いながら見始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

不動達が防衛省に向かってから1人でタイラントと戦っているブラーボ。しかし2人がかりでもどうにもならなかったものを1人でどうにかなる筈もなかった。

防戦一方であり猛攻で勢いを失っていくブラーボ。対し疲れを知らないタイラントの威力の変わらない攻撃をくらい続け押されていた。

 

『ドリアンオーレ!』

「このっ、くらいなさいっ!!」

 

カッティングブレードを切り、ドリアン状の巨大エネルギー弾を放つブラーボ。避けることなく直撃し爆発が起こる。

体力を大きく消費したのか片膝をつき、煙に包まれたタイラントを見据える。

そして力なく呟いた。

 

「まったく・・・嫌になっちゃうわ・・・」

 

呆れる先には先ほどと変わらず歩いてくるタイラント。全く怯みもせずに向かってくる姿はロボットと分かっていてもくるものがあり、攻撃する意欲、立ち向かう気力が削がれていく。

 

「っっっはあッッ!!」

 

それでも諦めるわけにはいかずドリノコをタイラント目掛けて投擲する。

しかし意に介さず弾き、逆にソニックアローを放つタイラント。

最早避ける力も無いのか防ぐ武器も無く、光の矢が体に直撃した。

 

「ああッ!」

 

最後の攻撃だったのか倒れるとそのままうめき声をあげるブラーボ。

 

「凰蓮さんっ!」

 

近づき、首を掴み上に持ち上げるタイラント。

対し、声を上げるだけで何もできないブラーボ。

右手には構えられたソニックアロー。その狙いは装甲が薄い部分ーーー首だと気づくも防ぐ術はなかった。

覚悟を決め動きを止めるブラーボ。

その首に吸い込まれるように感情のない刃が迫っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・あれ・・・」

 

静寂の中聞こえたチャッキーの声。そしてブラーボも気付いた。いつまでも来る筈の痛みがないことに。

 

フェイス越しにソニックアローを見ると、首筋に当たる直前に止まっていた。

ソニックアローだけではない。タイラントが止まっていたのだ。

一瞬、防衛省の命令によって止まったのか、はたまた不動とペコが無力化に成功したのかと思ったがそうではなかった。

 

 

ーーー瞬間、ベルトに嵌められていたドラゴンフルーツエナジーロックシードが怪しく輝いた。

 

その時初めて激しい動きを見せるタイラント。ブラーボを離し、暴れ始める。

 

尻餅をつくブラーボが見たのは、植物によって身体を覆い尽くされ始めている姿だった。

その光景を始めて見る凰蓮、チャッキー。しかし似たような光景を知っていた。

これは間違いなく自分達の世界で何度も起きた現象。ビートライダーズ時代に下級インベスがランクの高いロックシードを食べたときに起きたもの。

下級インベスによる上級インベスへの変化・・・!!

 

 

「グギャアアアアァァァッッッッーーー!!!」

 

 

咆哮をあげるインベス。

最早それがロボットだったという面影はなく、唯一の証明として残っていたのは、エナジーロックシードの嵌められていないゲネシスドライバーだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「やはり何か企んでいたか。戦極凌馬。」

「やはり、ということはやっぱり気づいていたか。」

 

ミカエルだったインベスの出現により騒ぐ研究所の者たちの中、椿谷と凌馬は特に慌てた様子もなかった。

片方はこうなることを知っていたからの余裕。片方かいずれ不測の事態が起こるであろう政治家特有の心の持ちよう。

 

「君と似たような者に研究を任せた事があったものでね。しかしそちらの方に細工を仕掛けていたとはな。迂闊だったよ。」

 

そちらの方、とはもちろんロックシードの事である。監視映像で見ていたのはドライバーを作ってる作業だけ。細工を仕掛けるとしたらロックシードしかなかった。

その読みは正解である。タイラントに使ったロックシードは凌馬が作った試作品。

ある財団の使者に渡し実験したもの。

財団の者はその試作品を使って変身し、最後は理性を失い画面の向こうのミカエル同様暴走し、禁断のリンゴロックシードを使って変身した駆紋戒斗によって撃破された。

 

「それだけじゃない。」

 

右ポケットからリモコンを取り出す凌馬。ボタンを押すと研究所からアラームが鳴り響き始めた。

 

「主任!大変です!何者かがハッキングを!それも一箇所だけでなく・・ッ!」

「・・・最初からこれが狙いだったのかね。戦極凌馬。」

 

部下からの連絡を聞き、凌馬を見る椿谷。こうなることを予想していたのかあせる様子は無く、その目に多少の不快と失望の色が混じっていた。

 

「ふっ、別に。私の狙いは私の研究を奪われない事とこの世界の技術水準を測ること。まあ、確信を得たがね。」

「確信?」

 

 

 

 

 

「君達の世界は間も無く滅びを始めるだろう。その時君達は後悔する。私の研究を奪えなかった事に。」

「・・・・・・・何を知っている。戦極凌馬?」

「遠くない未来を。

科学者は常に先見の明を持っているべきだ。私には見えている。君達凡人には見えない未来が。」

 

 

確固たる自信。最初に会った時とは違い興味のあった目から何かを得て、確信した目に。そして政治の中で多くの人間を見てきた椿谷は気づいた。

この男の野心は果てしなく大きい。

人間特有の上に立ちたいという衝動ではなく、それすらも凌駕するとてつもなく大きな野心が。

 

「貴様、何が目的だ・・・?」

「私は私の研究で神を創り出す。誰の力を借りるでもない。」

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

「ーーーーさて、私はこれで失礼しよう。それとハッキングだがあれは数時間すれば自然消滅する。データも消えないし奪われてもないから安心したまえ。奪う価値もないからね。」

 

その言葉を最後に戦極凌馬は膝を返し、出口に向かい始めた。

それを椿谷は止めなかった。止めても意味は無い事を理解していたから。

 

 

 

 

 

 

 

『何者かによるハッキング。此方への被害はナシ。』

「そうか。この勝負、俺の勝ちだ。レディ。」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

ハッキングによる警報が鳴り響く中、マダンマグナムをソードモードに変えて立つマグナリュウガンオーの前には、足を損傷しているマリがいた。右腕には高出力のビームガンがあったが大きな損傷を受け、破壊されていた。

そしてまわりはエネルギー弾によって破壊されたことが分かるように瓦礫や壁が開いていた。

その光景で決着が着いたことは一目瞭然だった。

 

『不動、負傷は?それと至近距離での射撃は危険だ。』

「問題なし。しょうがないだろ?ここは研究所だ。何が爆発するか分かったもんじゃない。」

 

危険な判断を戒めるゴウリュウガンに納得させるように言い訳めいた事を言うリュウガンオー。

先程行ったビームガンを出し、撃とうとしたマリに対し、ゴウリュウガンとマダンマグナムを合体させマグナゴウリュウガンにして迎え撃ったマグナリュウガンオー。

その後どうなったかは現在の結果が表していた。

そしてその現場に警備の者から開放されたペコが現れた。

ペコも凌馬同様捕まえても意味は無いと分かったのだろう。

 

 

「不動さん!!」

「ペコ!終わったのか!?」

「それがロボットがインベスになって・・!兎に角、急いで行かないと凰蓮さん達が!」

 

様子からして緊急だと感じ取ったマグナリュウガンオー。

マリの方を見るが何やら通信が来たようで此方を睨むだけで何もする様子がなく、その証拠に横を走り去るペコをスルーした。

 

少し戸惑うリュウガンオーだが急がなければならなく、後に続きマリの横を通り過ぎ走って行った。

 

「ーーーーーじゃあな。」

 

通り過ぎざまにそう別れを告げて。

 

『・・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

「マグナウルフキー! 召喚!」

『マグナウルフ』

「来い! マグナウルフ!」

 

外に出て鍵を取り出し、ゴウリュウガンに差し込み召喚した獣王。

リュウジンオーが召喚したデルタシャドウとは違い金、白、赤を基本とした色で2つのキャノン砲が目立つマグナリュウガンオーの相棒。

 

ーーーーマグナウルフ。

 

友情の力を持つ狼。かつてリュウガンオーと共にパワーアップを果たした獣王。

 

 

形を変形してビークルモード・マグナバイクにして乗り、後ろにペコを乗せ走り出した。

 

「俺がロボットと戦う。その間にブラーボとチャッキーを連れて離れとけ!いいな!」

「・・・不動さん!・・・ちょっと話が・・!」

 

左手にある何かを握りながら渋るように言ったペコ。その様子に横目でペコを見ると何かを覚悟した目。

話すように促すとペコは先程あったことを話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・さて・・・」

 

リュウガンオーが研究施設を抜けた頃、戦極凌馬も出口に向けて急ぐこともなく向かっていた。

 

『レモンエナジー』

 

(やはり最後は私の研究か・・・・)

 

ゲネシスドライバーを装着し、自身のロックシードを解錠しながら戦極凌馬は今までの事を整理、分析し考察しながら同時に拾い上げる事柄と切り捨てる事柄を分けていた。

 

『ロック・オン』

 

『ソーダ』

 

(だとしたら尚更貴虎の事は残念でならない・・・)

 

かつて自らが過ごしていた人材育成のための孤児院にて戦極ドライバーの為の実験として多くの人間をモルモットのように切り捨てていった呉島兄弟の父・呉島天樹を見たときはその息子もあのような男だと思っていた。

しかし実際目にしたときは自分の論文を絶賛し、この研究が世界を救うと言ってくれた。

 

『レモンエナジーアームズ ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイト!』

 

衝撃だった。

自分に賛同してくれた者がいることに。それがまさか呉島の人間だったことに。

それだけに失望が大きかった。

呉島天樹は多くの者を切り離し、目的のために手段を選ばなかった。

しかし貴虎は違った。

“ノブレス・オブリージュ”の精神は受け継いでいたが甘さ=思いやりや優しさといった人間味をもっていた。

それさえなければ人類の為に命を捧げるまではいいとして神を創ることには賛同してくれるはずだったろうに。

 

(しかし悔いはない。寧ろ喜ばしい事だった。有象無象の中にいた原石を見つけられたのだから。)

 

左手にもつは、ゲネシスドライバーと共に作ったロックビークル『ローズアタッカー』。

 

(だが人生の中であれ程の原石を見つけられる可能性は限りなくゼロに近い。だから貴虎でよかった。・・・・これで心置きなく頭の悪い無能共を捨てられる。だから貴虎、君も人類と共に礎になってくれ。)

 

思えばいくつもの壁があった。

戦極ドライバーは勿論ロックシードの開発、その際の事故によって発覚した反省点。

そして現在、要注意するべき存在----葛葉紘汰。

あの男は必ず始末しなければならない。しかし今のままではデータが足りない。それにあの戦闘能力。ドライバーやロックシードの性能だけではない。葛葉紘汰自身の性能(ポテンシャル)の問題だ。

データによると頭で考えず感覚とノリで動く人間だとあったが、短期間で貴虎に匹敵するのは最早普通じゃない。彼自身の体に変化が起こっている筈。原因は十中八九所持している二つのロックシード。

彼はいずれ始末しなければならない。しかしまだだ。今じゃない。あの力はオーバーロードとの戦いに必要。

始末するのはその後。

心配は無い。試作段階のあのロックシード。それに今回の事態を利用すれば、その混乱に乗じて上手く立ち回ればいける。

 

改めて再確認し、現状、誰よりも状況を理解している凌馬ーーーアーマードライダーデュークはバイクになったローズアタッカーを走らせた。

 

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