男子、三日会わざれば刮目して見よ 作:脳の焼却式
……まあベリル君今回も出てないけど(ネタバレ)。
ベリル「ゑ?」
オトナシ・クレハという人間は、不思議だ。
その身に宿す魔術は言うまでも無く、彼の精神性は魔術師としては異端だった。
そして何より、彼は私の知らないものを、多く知っている。
「クレハ」
「……んだよ」
「ギミックを解いたんだが、この先は長いのか」
「ん……ああ、行ける様になった場所から、ボス討伐して……を繰り返すし、まだまだ続くぞ、ソレ」
「そうなのか……なら、一旦切り上げても良いかな」
「良いけどよ……何かしたいのか?」
「このゲーム、本筋は対戦型のゲームなんだろう? 対戦をしよう」
このゲーム、も知らないものの一つだった。
彼の家、オトナシの一門は長く続く中流の名門であり、現当主たる彼の父もまた、魔術師として模範的な人だと彼から聞いた。
……筈、なのだが。
「あー……そういやコレ、キリシュタリアの操作慣れの為にやってたんだっけか」
「ああ、基本的な動きは一通り覚えた、対戦する分には問題ない筈だろう?」
「あいよ……コントローラーどこ置いたっけな」
どういう訳か、時計塔で出会った時から、彼の興味は世俗のものに向いていた。
当時の彼は
「キリシュタリア」
「 ん、何かな」
「悪いがコントローラーが見つからん、持ってる奴半分貸してくれ」
「……このコントローラーを?」
「ん? ……ああいや、それ外れるんだよ、んで、二つ目のコントローラーにもできる」
貸してみろ、と何でもない様に言うクレハ。
……ふむ、確かに外れる様だ。
やはりこういう事には慣れているな、彼は。
「流石だな、クレハは」
「大袈裟だっての、この程度なら藤丸でも出来る」
「彼は元々一般人だからね、文化の違いを魔術師と比べるべきではないよ」
「……そりゃそうだが」
だがなぁ……と、言葉を詰まらせる彼は、まだ納得がいっていない様子だ。
「なあ、クレハ……君は、本当に凄いな」
「……は?」
「時計塔時代から、君はその他の魔術師より多くを知っていた」
「なんだ、いきなり」
「一般人と比べて遜色の無い世俗の知識と、後継者として申し分ない程の実力……私には、どれ程の努力を重ねたのか想像も付かない位だ」
魔術師とて娯楽は必要だ、だがそれは娯楽でしかない。
故に、優秀な魔術師として育っていればいる程、世俗に疎くなる。
落ちこぼれとしてならば、魔術師として劣っていく。
自分は天才ではない……時計塔時代の彼の口癖となっていた言葉だ。
事ある毎に彼は私と比べられ続けて来た、その頃には私と彼は親しい友人関係だったのだし、仕方ない事である……というのは関係のない話だ。
「時計塔時代、君は常に葛藤していた」
「……いきなりだなぁ」
天才では無いと言う時の彼は、どこか悲しそうであったか。
ならば何故、世俗の知識について語る彼は、辛そうだったのか。
そして今尚彼は苦しみ続けている。
「何故、何を苦しみ続けているんだ」
「……」
沈黙。
……やはり答えてはくれない、か。
「私は……君の友人は、そんなに信用ならないか?」
「違え、それだけはねぇとはっきり言える……が、コレに関しちゃいう必要もねぇってだけだ」
「そんなに苦しそうなのに、か」
「ああ、必要ない」
「……そう、か」
やはり、現状では彼の苦しみを解決できない、という事か。
どんなに些細な悩みだったとしても、
「……ならば、いつか必要になった時にでも、相談して欲しい」
「あいよ、笑い話のネタ代わりにでも話すさ」
「そういう事ではないのだが」
彼は苦しみ続けている。
彼自身が些細な事だと、助けの必要ない事であると断言する何かに。
私はソレを……どうにかしたい、と思っている。
友人が悩み続けているなど、あまり気分の良いものでは無い。
……先は長くなりそうだが。
「それはそうと」
「?」
「今は楽しい、のか?」
「どういう意味だよ」
「膝の上に容姿の良い異性が座ると言うのは、嬉しい事だと聞いたんだが」
曰く、私の様な容姿の異性が、胡座の上……その、密着状態で座っているというのは、ご褒美であると。
「……特に何も」
「そうなのか……」
「落ち込まれても困るんだが……大体お前は他人に影響され過ぎだ、将来詐欺に引っ掛かるぞ」
「問題ないさ、その辺りの線引きはちゃんとしている」
「そうかい……まぁ、なんだ……世間一般の野郎共なら、嬉しがってたんじゃねぇかなぁ」
「……クレハは違うのか」
「俺はまあ……それに、色恋より友人と楽しくゲームしてる方が圧倒的に楽しいわ、今の所」
「なるほど」
なるほど、やはりわからないことを誰かに聞く、という行為は受け継がれるべき風習だ。
こういう時に、不必要な掛け声を避けられる。
「クレハはむっつり、という奴なのか」
「ぶふっ!?」
「? どうかしたのかクレハ」
「どうしてそうなるんだよ違えよ!?」
「嬉しくない、という奴は皆そうだと聞いた」
「偏見にも程があるだろ……」
話が拗れてきたなぁ……と遠い目で呟いているが、何か間違っていたのだろうか。
……この手の話に強いというサーヴァントに聞いた話だったのだが。
「やだ、この子素直過ぎ……マジで全部間に受けるのやめとけって、サーヴァントとは言えど信用して良い奴と悪い奴とは区別しとけよ」
「ちゃんと区別はしているんだが……」
「俺がいきなりお前を押し倒さんとも限らんだろ」
「しないだろう」
「いやだから、するかもって話」
ほんま凄い信頼やんけ、どないなってんねん。
つか本当にどっかで押し倒されそうな感じがある、大丈夫か?
「ふふ、クレハなら誰かを悲しませる事はしないさ」
「oh……話聞かないんだけどこの子」
「それに、クレハなら構わないよ?」
「……はい?」
あらやだ大胆……じゃなくてね。
何言っちゃってんのこの子。
「さっきも言ったが……私は君はとても仲の良い友人だと思っている」
「……おう、そうだな、俺もそう思ってるわ」
「私は君を助けたい」
「そう言う話だったな」
「だから、君が私の所為で欲求不満になっているのなら押し倒してくれても構わないよ?」
「いや待て何でそうなった」
この子さっきからぶっ飛び過ぎてないか?
いつもの冷静で落ち着いたキリシュタリアは……この子いっつもこんな感じでしたねハイ。
「私自身は疎いが、男である以上欲求があるのは避けられないものなのだろう? だったら私で解消すれば良いじゃないか」
「話がぶっ飛び過ぎだバカ」
「む……」
露骨に不満そうな顔をするキリシュタリア。
バカって言われて不満ならそんなぶっ飛んだ提案しないでくれませんかね!
「……仮に、俺がそう言う感情になるんなら、俺とお前が会わなきゃ良い話だろ、誰も犠牲にならん」
「……それは困るな」
「何がだよ」
「私はこうやって君と過ごす時間を楽しんでいるんだ、できる限り辞めるなんて選択肢は取りたくない」
「……」
「だから、君に迷惑をかけているのなら、それを無くしたい」
こいつ、聞いてる方まで恥ずかしくなるような事を躊躇いもなく……!
てか友達付き合い下手かお前は、そんなややこしい事考えなくてもな。
「本当にバカだよキリシュタリア」
「む……また……」
「何度でも言ってやるよばーか、友達関係なんてそんな小難しい事考えなくて良いんだ」
「?」
「お前自身が言ってたろ、友人側からすればその程度の迷惑なんてかけられる方が安心できるんだよ」
「……」
おまいうではあるが。
まぁ時計塔時代の話は良いんだよ、笑い話になるまで待っててくれ。
「私は」
「おー」
「……なんでもない」
「はっはっは、諦めたかよキリシュタリア」
「無論、諦めないとも」
「なぬ?」
「 君が納得するまで、私に打ち明けてくれるまで、君の隣で言い続けるつもりだからね」
「 」
「……ゲームの方も私の勝ちだ、飲み物を取ってこよう」
「クレハはコーヒーで良かったかい?」
「お、おう」
「……うん、ちょっと遠出して、食堂の方から良いものを貰ってくるよ、待っててくれ」
「わかった」
ふらりと立ち上がり、そそくさと出て行ってしまう。
ポツンとひとり、静かになった部屋。
「……やっぱ、バカだろあいつ……」
しつこいのは時計塔の頃から知ってる、目的に対して余念がないというだけだ、あの男は。
この完璧超人型のポンコツめ。
「ああくそ、小っ恥ずかしいことばかりつらつらと……!」
「ふふ」
「……あ、キリシュタリアさん」
「 マシュか、奇遇だね」
「はい、キリシュタリアさんも食堂へ?」
「ああ、ちょっと、コーヒーと紅茶をお願いしようと思ってね」
「なるほど」
「……ところで、先程から気になっていたのですが 」
「なんだい?」
「何か良いことでもあったんですか?」
「?」
「あ、間違っていたらすみません、キリシュタリアさんがとても嬉しそうでいらっしゃったので」
「……そうだね、少し、珍しいものを見られた、だから嬉しいのかもしれない」
もう続かない。
ひっさしぶりに続きを書いたけど、こういうのええなぁ……読み返した時に心が洗われる。
それはそれとして、水着徐福ちゃん当たらないんだが? ニキチッチさんだけもう宝具レベルがすんごいことになってるんだが?