フリーレン「ドーモ、マゾクスレイヤーです」   作:伊勢うこ

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 最近寒くてヤンナルネ(挨拶)。

 ドーモ、クソ投稿者です。
 最近フリーレンと、何故かセールやってたニンスレを見て「アーイイ・・・遥かにイイ・・・」となって書き上げました。
 そういう訳で、暖かい目で見ていただけると幸いです。ヒラニーヒラニー。


フリーレン「ドーモ、マゾクスレイヤーです」

 

 前回までのあらすじ!! 

 故郷を魔族の手によって滅ぼされたエルフの少女、フリーレン。全てを奪われた彼女だったが、偶然村を訪れた大魔法使い・フランメに弟子入りし彼女の教えを学ぶことに。

 全ては魔族を殺すため。

 村を襲った魔族は殺したが、魔族は未だあちこちで人々を苦しめている。

 弟子入りから数百年。

 全ての魔族を殺すべく、彼女は動き出す。

 

 魔族滅ぶべし!! 

 魔族、滅ぶべし!! 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 これはまだ、魔王がある勇者一行により倒される前の話。

 

「見えてきたね」

 

 青い頭髪、腰に佩く一本の剣と羽織った白いマント。

 勇者である爽やかな印象の青年・ヒンメルは山道から見下ろす位置にある村を視界におさめた。

 彼は魔王討伐を目的とする勇者パーティのリーダーである。

 

「あの村の近くの森に、長い時を過ごす魔法使いがいるんでしたね」

 

 同じく勇者パーティの一人であり、後頭部に流したライトグリーンの髪と黒い法衣が特徴の僧侶・ハイターは、ここに来るまでに聞いた噂を振り返る。

 それは彼等がここに来ることになった理由でもあった。

 

 優秀な魔法使いをパーティメンバーとして求めていた彼らは、ある日訪れた村でとある噂を耳にした。

 なんでも長い時を過ごすエルフの魔法使いが、とある村の近くにある森にいるそうな。

 他にアテもなかった彼らは、一先ずその魔法使いに会うべく村の住人から教わった道を辿り、こうして今に至る。

 

「おかしな奴じゃなきゃいいがな。これ以上はごめんだ」

 

 戦斧を背負い、滝のような髭を蓄えるドワーフの戦士・アイゼンは小さく呟いた。

 その視線が向かう先は。

 

「おや、アイゼン=サン。どうしてこちらを見るんだい?」

「そうですよ、アイゼン=サン。まるで私たちがおかしな人のようじゃないですか」

「そう言っている」

 

 アイゼンは最も新しいパーティメンバーであるが、既に2人の為人は凡そ把握していた。

 二人とも腕は立つが、中身にクセがありすぎる。

 なにせナルシスト気質のある勇者と、酒が好物の生臭坊主。

 どちらもアイゼンからしてみれば十分おかしな人であった。

 

 峠を下り、村の門を通って中へと入る。

 決して街のような華やかさはないものの、人が行き交い、それに劣らない賑わいを見せていた。

 

「着いて早々だけど、村の人に例の魔法使いのことを聞いてみようか」

 

 本来なら村に着き次第その日の宿を探すのだが、日はまだ高い。

 2人の了承を受け、ヒンメルは目的である人物の所在を村人に尋ねようとした。

 

 その時! 

 

 

「アイエエエエ!」

「っ!?」

 

 

 シルクを裂くような悲鳴! 

 何が起きたかは、誰に尋ねるまでもなく直ぐに分かることになる。

 

「魔族だ! 魔王軍が襲って来た!!」

「アイエエエエ!? マゾク!? マゾクナンデ!?」

「アイエエエエ!? アイエエエエ!?」

 

 この世界では、魔王軍が人間の集落を襲うことなどチャメシ=インシデントである。

 だがこのあまりにも突然の魔族の襲撃に、村人たちはMRS(マゾク・リアリティ・ショック)に陥ってしまっていた!

(MRSとは、実際に魔族を前にしたことで起こるショック症状であり、最悪死に至ることもある)

 実際何人かは既に腰を抜かして失禁していた。

 

 穏やかな村に、戦場めいたサツバツとしたアトモスフィアが漂い始める。

 

「ヒンメル=サン! あれを!」

「あれは……!?」

 

 ハイターの言葉を受け、振り向いたのはつい先程自分たちが通ったばかりの門がある方角。

 そこからただならぬ魔力アトモスフィアを感じる。

 

「ドーモ、愚かな人間ども! 俺様は次期魔王軍最高幹部筆頭、業火のクリーガー! 魔王様のご命令でこの村を滅ぼしに来た!」

 

 現れたのは大きな二つのツノが特徴の大男。

 その背後には引き連れてきた魔族の軍勢。

 大男は体格に見合う声量で、一方的な宣戦布告を行なった。

 

「さぁやれ、オマエたち!」

「ハイヨロコンデー!!」

 

 村の門を破り侵入してきた魔族を率いる頭目は、全員が同じ武装をした部下に襲撃を開始させる。

 当然、戦う力を持たない村人たちはなす術がない。ナムサン! 

 

 しかしこの村には今、彼らもいるのだ。

 

「こんな所にまで魔族が……! 二人とも!」

「えぇ!」

「おう!」

 

 ヒンメルの合図を受け、すぐさま戦闘体制に入る勇者パーティー。

 一人でも多く助けるべく、迅速に行動を開始した。

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 ケンドーめいた裂帛とともに、勇者の剣が魔族を切り捨てる。

 

「アイゼン=サン!」

「分かっている! イヤーッ!」

 

 ハイターの援護を受け、アイゼンの戦斧が敵を胴体ナキワカレにする。

 彼らはパーティーとして日が浅いが、それでも十分なチームワークと確かな個々の力で魔族を屠っていく。

 

「ほぅ、戦える者がいたか。しかし……」

 

「アイエエエエエ!」

「アバー!」

「アイエエエエエ!? アイエエエエエエエ!?」

「アイエエ……」

 

 しかし、おぉナムサン! 

 3人が魔族を倒す間にも、村人たちに被害が及んでしまう! 

 村は一瞬で地獄めいた陰惨たるマッポーと化してしまった。

 

 村人たちは抵抗虚しく血を流し倒れていく。

 圧倒的に手が足りていない。

 ガムシャラに敵を倒しても、数の暴力に押されていく。

 サツバツとしたイクサの熱は、もはや止まるところを知らない。

 また一人、また一人と倒れていく。おぉ、神よ。寝ているのですか? 

 

 このまま村が魔族に滅ぼされるかと思われた、その時。

 

 

「グワーッ!」

「グワーッ!」

「グワーッ!」

 

「!?」

 

 魔族兵士たちが、突然吹き飛ばされていくではないか! 

 一体何が起きているのか? 

 女神が村を助けるべく起こした奇跡なのか? 

 

 否! 

 クリーガーの魔族動体視力は、何が起きたかを捉えていた。

 

「アイエッ!? 空中からのアンブッシュだと!? ナニヤツ!」

 

 視線を空へと向ける。

 その先に居たのは──

 

「この辺りに魔族の軍勢が向かってるっていう噂は本当だったみたいだね」

 

 鳥か? ドラゴンか? 

 いや、違う! 

 人だ! 人が宙に浮いている! 

 

 空中で杖を構えた何者かが立っている。

 一体何者なのか。

 だが我々は、彼女のことをあまりにもよく知っている。

 

 白の出立ち。

 大きく二つに括られた銀の長髪、エルフ特有の長いエルフイヤー。

 永久凍土めいた冷徹さを感じる瞳。

 そして首から口元までに巻かれたマフラーに刻まれた「魔殺」の二文字。

 白装束の何者かは、ゆっくりと地面に降り立った。

 

 

 殺戮者のエントリーだ! 

 

 

「ドーモ、はじめまして。マゾクスレイヤーです」

 

 

 手を合わせ、小女は深々とオジギをする。

 たとえ相手が魔族であっても、アイサツは大事。

 そしてアイサツは神聖不可侵の行為。

 名乗られたなら、名乗り返さねばならない。

 かの大魔法使い・フランメの著書にもそう書かれている。

 

「ド、ドーモはじめまして。マゾクスレイヤー=サン。業火のクリーガーです……」

 

 名乗られたら名乗り返す。

 魔族の間でも当然のマナーである。

 マゾクスレイヤーの挨拶を受け、クリーガーもまたオジギをして挨拶を返す。

 

「キ、キサマは何者だ!?」

「お前たちを殺す者だ」

「何をしに来た!?」

「お前たちを殺しに来た」

「も、目的は……」

「お前たちを──」

 

 

 殺すことだ

 

 

 魔族たちに向けられた彼女の瞳は、実際冷凍マグロめいて冷え切っていながらも危険な光を宿していた。

 コワイ! 

 

「我々を、殺すだと……? 狂人か? 正気とは思えんな! たかが魔法使い一人で何が出来る!? お前たち!」

 

「ダッテメッコラーッ!?」

「ザッケンナコラーッ!」

「スッゾオラーッ!」

「ヤンコラーッ!」

 

 魔族スラングを放ちながら、襲いかかるサンシタ・魔族兵士。コワイ! 

 実際彼女がただの少女であれば、しめやかに失禁していたことだろう。

 

 だが! 

 

 

遠くから攻撃する魔法(イヤ)──ッ!」

「グワーッ!」

 

「ナ、ナニ!?」

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「イヤーッ!」

「アバーッ!?」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 ゴウランガ! 

 次々と魔力弾が放たれ、魔族兵士たちを電撃めいた速度でネギトロに変えていく。

 その連射速度たるや、実に秒間三発! 

 ワザマエ! 

 

 魔族兵士たちがスミのような黒いネギトロとなり、空中へ溶けるように消えていく。

 しかしその時であった! 

 

「イヤーッ!」

 

 ウカツ! 

 彼女の死角となる家屋の屋根から、ドス=ソードを持った魔族兵士が襲いかかる! 

 アンブッシュである! 

 アブナイ! とヒンメルが叫ぶも間に合わない! 

 

 ナムサン! 

 マゾクスレイヤーの快進撃もここまでかと思われたその時であった。

 

 

「イヤ──ッ!!」

「アバーッ!?」

 

 

 マゾクスレイヤーの見事な正拳突きが、魔族の顔に突き刺さる! 

 

「む、アレは!」

「知っているのかい、アイゼン=サン!?」

「あぁ。あの構え、あれはカラテだ」

 

 アイゼンは、彼女の構えからそのジツの正体を言い当てた。

 そして今の一撃こそが、彼の大魔法使いから授けられしカラテ奥義。

 

 ポン=パンチだ! 

 

 

 魔法使いの間には、こんなコトワザがある。

 

『実際最後に勝敗を分けるのはカラテのワザマエ。今も昔も、カラテを極めた魔法使いが上を行く』

 

 かの大魔法使い・フランメの残した言葉である。

 

 そう、マゾクスレイヤーは魔法使いでありながら、カラテも修めたハイブリッド・魔法使いだったのである。

 実際彼女のカラテのワザマエはタツジン級を超えていた。

 

「なるほどな。よもや貴様もカラテを使えるとは驚いた。それも中々のワザマエ、アッパレオミゴト。オミソレした」

 

 クリーガーは腕組みを解くと、不遜な笑みを浮かべながら彼女のワザマエを褒め称える。

 

「だが! その程度では俺様のカラテには敵うまい!」

 

 イヤーッ! とクリーガーが殺人マグロめいた速度でマゾクスレイヤーに突貫する。

 マゾクスレイヤーは紙一重でその攻撃を躱すと、クリーガーの拳は地面を強かに打ち付けた。その威力は局所的な地震を起こすほどである。

 だがそこで終わりではなかった!

 

「燃え上がって……!」

「その通り! 俺様のカラテはただのカラテではない!」

 

 殴った地面から、炎が噴き上がる。

 噴き出た火により、近くにあった家屋が燃える。

 超自然の発火現象で燃え上がったこの炎は、彼のジツで発生したものである。

 

「これが俺様のカトン・カラテ! カトン・魔法とカラテを合わせた最強のジツだ!」

 

 魔族は、その生涯を己の魔法とカラテの修練に費やす。

 クリーガーのカトン・カラテはその修行の末に編み出された奥義であり、実際そのワザマエはオミゴトである。

 彼は数々の敵を葬ってきた己のジツに絶対の自信をもっていた。

 

 

「さぁ、どうする!? マゾクスレイヤー=サン!」

 

 

 ニヤリと笑む業火のクリーガーは、自身の勝利を疑っていなかった。

 目の前の敵を燃やし尽くし、勝利した自分の姿がモウソウ・イマジネーションとして脳裏に浮かんでいたほどである。

 

 だがマゾクスレイヤーがとった行動は、クリーガーの想像を絶するものであった。

 

 

「アイエッ!?」

 

 

 おぉ、なんということだろうか! 

 

 マゾクスレイヤーは悠然と、業火のクリーガーの前へと歩いてくるではないか! 

 しかも杖を消している! テブラである! 

 魔法使いは通常距離を取って戦うが、そんなことなど与り知らぬとばかりに近づいてくる。

 いくらカラテが使えるといえども、彼女が魔法使いであることに変わりはない。

 にも関わらず、である! 

 彼女は歩みを進め、クリーガーとの距離を自分から縮めたのだ! 

 

 彼我の距離、およそワン・インチ! 

 

「どうした、クリーガー=サン?」

「キ、キサマ! 何のつもりだ!? 何故距離を……!?」

 

 マゾクスレイヤーの奇抜過ぎる行動に、クリーガーは動揺を隠せない。

 彼女は本当に狂人だったのか? 

 そしてマゾクスレイヤーは、

 

「近づかないと、カラテが届かないだろう?」

 

 右手の人差し指から小指までの四本の指を曲げ、かかって来いと澄まし顔で挑発。

 これにはクリーガーのカンニンブクロも爆発! 

 多少カラテを使えたところで所詮は人族。ゴジュッポ・ヒャッポ。

 実際人間たちとは積んできた修行の年月が違うのだ。

 魔族が人族にカラテで負けるはずがない! 

 

「いいだろう! ならば尋常にカラテ対決だ!」

 

 誇りを傷つけられプッツンしたクリーガーは、烈火めいた怒涛の勢いでカトン・カラテを見舞うべく殴りかかる。

 己の奥義こそが最強なのだと証明するために。

 

 しかしこの時、彼のカトン・カラテには2つの弱点があることをマゾクスレイヤーは見抜いていた。

 それは極至近距離では、カトンの火が自分自身にまで及ぶこと。

 もう一つは。

 

「ナニ!?」

 

 当たらなければ、意味がない! 

 

「アイエエエエエ!? バカなバカな! 何故だ!? 何故当たらない!?」

 

 己の奥義が掠りもしないことに焦り出すクリーガー。

 実際彼の拳速は凄まじく速い。

 だがマゾクスレイヤーはクリーガーの攻撃に合わせ、最小限の動きで的確に彼の腕を受け流していく。

 これは一体いかなる魔法なのか? 

 いや、違う! 魔法ではない。

 これは──

 

「悉くイナされる……! これは、まさか……!?」

 

「アレは……!?」

「知っているんですか、アイゼン=サン!?」

「あぁ。あの動き、アレは……」

 

 ジュー・ジツだ! 

 なんとマゾクスレイヤーはジュー・ジツの使い手でもあったのだ! 

 

 クリーガーが動揺した一瞬の隙を突き、マゾクスレイヤーは彼の腕を掴むと──

 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 ジゴクめいた容赦のない一撃! 

 マゾクスレイヤーのイポンゼオイが決まった! 

 ウケミを取れず、頭から激突するクリーガー! 

 スゴクイタソウ! 

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 そしてさらに容赦ない追撃が彼を襲う! 

 サンドバッグめいた一方的な連続的カラテ。

 ノー・ブラッド・アンド・ティアとは正にこのことを指すのだろう。

 これまで多くの人を殺めてきた彼だが、ここまでされる謂れはない! 

 ちょっとやめないか。

 

「この、オバケめ……!」

 

 ヤバレカバレになったクルーガーは攻撃を仕掛けるも、やはり傷をつけることは叶わない。

 それどころかカウンター・カラテを浴びる始末。

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 クリーガーが高く飛ばされる。

 

「魔族、殺すべし!」

 

 そして見よ! 

 これが伝説のカラテ技にして、マゾクスレイヤーのヒサツ・ワザの一つ。

 

「イヤァァアァアア!」

「アバ──ッ!!」

 

 サマーソルトキック! 

 

 トドメの一撃を受けたクリーガーはもはやオタッシャ重点。

 自らの奥義で燃え盛る家屋へと飛ばされると──

 

 

「サヨナラ!」

 

 

 爆 発 四 散! 

 

 

 ショッギョ・ムッジョ。

 ハイクを詠む暇もなく、魔王軍幹部・業火のクリーガーはサンズ・リバーを渡ることになった。

 ナムサン! 

 

「魔族、殺すべし……」

 

 クリーガーを倒しても、マゾクスレイヤーの戦意は未だ衰えを知らず。全ての魔族を殺すまでは。

 残るサンシタ・魔族たちを今しがたジゴクへと旅立った彼らのボスの元に葬送(おく)ろうとしたが。

 

「あれ……?」

 

 そこには既に魔族たちの死体がツキジめいて転がっていた。

 

 勇者パーティ一行である。

 マゾクスレイヤーがクリーガーと交戦している間に、彼らは他の魔族を倒し村人を守っていたのだ。ゴウランガ! 

 

「ドーモ、マゾクスレイヤー=サン。ヒンメルです」

「ドーモ、ヒンメル=サン。マゾクスレイヤーです」

 

 合掌、オジギ、挨拶。

 

「ありがとう、マゾクスレイヤー=サン。実際君のおかげでこの村は助かったよ」

 

 勇者ヒンメルは、マゾクスレイヤーに感謝を伝えるともう一度深くオジギをした。

 救出が間に合った村の住人たちも、感謝の言葉と共にオジギをする。

 

「ところで僕らはこの近くの森にいる魔法使いのことを聞いて来たんだけど、もしかして……」

「私のことだね」

 

 そう、勇者パーティ一行が探していた人物こそが、このマゾクスレイヤーだったのだ。

 

「僕らは魔王を倒すための旅に出るんだ。君に是非、僕らの旅の仲間になって欲しい」

「そういうことなら、ヨロコンデー」

 

 マゾクスレイヤーは魔族を殺す者。

 魔族の親玉である魔王を討伐するためなら、断る理由はない。

 二人は握手をした。

 ユウジョウ! 

 

「よろしく、マゾクスレイヤー=サン」

「それは私の本名じゃないよ」

「えっ」

「当然だろう」

「ですね」

 

 ヒンメルの様子に呆れたようで、思わずアイゼンとハイターは口を挟んだ。

 

「じゃ、じゃあ君の本当の名前を教えてくれないか? 僕らはもう仲間なんだし」

「そうか。それもそうだね」

 

 そう言うとマゾクスレイヤーは口元を隠していたマフラーをずらすし、その素顔を露わにした。

 

「なら改めて」

 

 合掌。

 

 

「ドーモ、フリーレンです」

 

 

 森から運ばれた花びらが、フートンのように優しく宙を踊る。

 

 数奇で奇妙な出会い。

 彼らの伝説は、ここから始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

「ドーモ、アウラ=サン。マゾクスレイヤーです」

「ドーモ、マゾクスレイヤー=サン。アウラです」

 

 草木も眠るウシミツアワー。

 二人の人物がオジギをして挨拶を交わしていた。

 

「久しぶりね、マゾクスレイヤー……いえ、フリーレン=サン」

 

 薄い笑みを浮かべる一人目の人物、否、魔族の名は、アウラ。

 500年を生きる大魔族、断頭台のアウラ。

 或いはアウラ・ザ・ギロチンデーモン。

 かつて勇者に討ち取られた魔王、その配下であり魔王軍最高幹部・七崩賢の一人。

 魔王亡き後も姿を隠し、力を蓄えるべく彼女は今回ある計画を企て、街の人間を喰らおうとしていたのだが。

 

「そうだね、久しぶりだよ。断頭台のアウラ=サン」

 

 それに待ったをかけたのがマゾクスレイヤー・フリーレン。

 史上最も多くの魔族をスレイしてきた魔法使いは、訪れた街を魔族の手から救うべくこうしてボスであるアウラの前に現れた。

 

「よくここが分かったわね」

「状況判断だよ」

 

 二人がいるのは都市を一望できる高台の荒野。

 都市を攻めるなら彼女の軍勢を置けるこの場しかないとフリーレンは判断したのだった。

 

「そう。それで、何をしに来たのかしら?」

「無論、お前を殺すため」

 

 アウラが襲おうとしている街には多くの人々と、フリーレンの弟子たちがいる。

 彼らをアウラに襲わせるわけにはいかない。

 ここでジゴク葬送(おくり)にする必要がある。

 

 一触即発のアトモスフィアが場を支配していた。

 

「出来るのかしら? 貴女に」

 

 アウラを守るように立ち塞がるはクビナシ・ナイツの群れ。

 これが彼女の軍勢の正体である。

 

 不死の軍勢。

 彼らは皆アウラの魔法に敗れ、首をネコソギされ、デッド操りヨロイドロイドになっているのだ! 

 なんと無惨なことか! 

 おぉ、ナムアミダブツ! 

 

「相変わらず趣味の悪い魔法だね」

 

 外道め、と吐き捨てるフリーレン。

 軍勢の中にはフリーレンにも見覚えのあるヨロイがいくつか混じっていた。

 死してなお操りドロイドとして敵の手足となり、尊厳を乏しめられる。

 なんたる屈辱であろうか。

 

「集めるのに苦労したのよ」

 

 強いでしょう? と自慢げにアウラは語る。

 そして彼女が右手を前に翳すと、ヨロイたちはフリーレンに襲いかかる。

 

「「「■■ーッ!」」」

 

 声無き声をあげながら、拳を振るうヨロイの群れ。

 ただし、闇雲に振るわれているわけではない! 

 

 カラテだ! 

 彼らは生前習得していない筈のカラテを使っているのだ! 

 

 そのカラクリは、操り主であるアウラにある。

 彼女は魔法で操る対象に、彼女本人のワザマエには劣るものの、カラテを使わせることができるのだ! 

 ゴウランガ! なんたる卓越したワザマエか! 

 

 フリーレンはジュー・ジツを駆使して素早く攻撃を避けていくも、アウラの軍勢は徐々に彼女を囲みはじめていた。

 イクサの状況は徐々にモスキート・ダイビング・トゥ・ベイルファイアめいてきていた。

 

「イヤーッ!」wasshoi! 

 

 だが、フリーレンも黙ってはいない。

 ダートめいたグレーター解呪の魔法をヨロイたちに飛ばすと、彼らをアウラの魔法による支配から解放していく。

 

「驚いたわ。私の魔法が解除されるなんて初めて。かなり高度な解呪魔法ね」

 

 支配から脱却されたヨロイたちが動く様子はない。

 己の魔法による効果を無効化されたものの、アウラはカケラも焦る様子を見せなかった。

 

「でも、いいの? そんな高度な魔法を何度も使えば、魔力だってそうとう消耗するでしょうに」

 

 実際アウラの眼には、魔族観察眼によりフリーレンの魔力量がオーラめいて視えている。

 彼女は確かに優秀な魔法使いだ。保有する魔力もそれなりにある。

 だが、さっきの魔法を不死の軍勢全員を相手にかけ続けられる程ではない。

 魔力は有限。必ずどこかで限界が来る。

 実際アウラの言う通り、このままでは確実にフリーレンはジリー・プアーだ。

 そして魔力の消耗は、アウラ相手には絶対に避けなければならないことである。

 

「前みたいにカラテと魔法で派手に吹き飛ばせばいいでしょうに。どうしてそうしないの?」

「ヒンメル=サンに怒られたんだよ」

 

 死したとはいえ、ヨロイたちは生前は人々を守るべく魔族に立ち向かった勇士たちだ。

 その亡骸を壊すようなマネが許せなかったのか、ヒンメルは珍しくフリーレンに説教インストラクションを施した。

 

「なら余計に分からないわ」

「どうして?」

 

 

「だってヒンメル=サンはもういないじゃない」

 

 

「……やっぱり。お前たち魔族は、殺さなきゃいけない」

 

 だが、魔族にはそれが分からない。理解が及ばない。

 やはり根本的に分かり合えない生き物だと再認識し、フリーレンは魔族殺すべしと覚悟を改めた。

 

 ふと、アウラは何かを感じとったようだ。

 視線を荒野の下にある街の方角へと向ける。

 

「リュグナー=サンたちが死んだみたいね……」

「フェルン=サンとシュタルク=サンを甘く見たね、アウラ=サン」

 

 アウラの配下、首切り役人と呼ばれる彼女をソンケイするアーチ魔族。

 彼らは人間の街を落とすべく動いていたが、それも失敗に終わった。

 フリーレンの仲間たちが、見事に勝利を掴んだのである。

 キンボシ・オオキイヤッター! 

 

「そうね、失敗したわ。でも、ここで貴女を倒せば戦果としては十分」

 

 部下の訃報を聞いても、アウラは動揺する素ぶりすら見せない。

 何故なら部下を失っても、この魔法使いを配下にできれば戦力的には黒字。

 あとは街を襲わせ人間も手に入る。

 そうなれば結局はアブハチトラズなのだから。

 

 アウラは左手に持っていた天秤を掲げ、己の前に突き出す。

 彼女にとってのヒサツ武器、服従の天秤。

 

(遂に来るか)

 

 断頭台のアウラの代名詞。

 500年の研鑽、その結晶とも言える人智を超えた魔法。

 

 

服従させる魔法(アゼリューゼ)

 

 

 服従させる魔法・アゼリューゼ。

 これは天秤に対象者の魂を乗せ、より傾いた側の魂を持つ者が相手に対して命令権を行使可能になるという非人道的スゴクアブナイ・魔法である。

 クビナシ・ナイツが死んでもなお操られているのは、この魔法により肉体に縛られ(LAN直結し)たままの魂を操られているからである。

 そして天秤はより多くの魔力と優れたカラテのワザマエを有する側に傾くが、アウラは大魔族。

 そこいらの相手ではまるで歯が立たない程の魔力量の持ち主であり、カラテもタツジン級を遥かに超えるワザマエ。

 実際彼女が七崩賢になって以降、この魔法が破られたことは一度もない。

 普通に考えるなら、彼女に戦いを挑むこと自体がイディオットなのだ。

 

 

 魔法が発動すると、両者の身体からオバケめいたヒトダマが出て浮かび上がり、天秤に乗せられる。

 傾いたのは──やはりアウラの側だ。

 

 それを見たアウラは自分の勝利を確信した。

 こうなってはいかにマゾクスレイヤー・フリーレンといえども、その命は最早ローソク・ビフォア・ザ・ウィンド。

 

 アウラはフリーレンの首をカラテ・チョップで跳ねるべく、悠々とした足取りで彼女のもとへと近づく。

 

 だが、ここで誤算が生じる。

 

「ナニ? 天秤が……!?」

「アウラ=サン」

 

 一体如何なる道理か! 

 魂の天秤は、なんとフリーレンの方へと傾くではないか! 

 

 ここでアウラの服従の魔法の内容を思い出して欲しい。

 服従の天秤が魔力の少ない方へと傾きますか? おかしいとは思いませんか? 

 

 

「お前の前にいるのは、千年以上生きた魔法使いだ」

 

 

 ゴウランガ! 

 フリーレンの魔力が爆発的に膨れ上がる。

 と同時に、彼女が纏っていたカラテ・アトモスフィアも急激に変化。

 タツジン級を超え、アウラのワザマエをも凌駕している。

 

 そう、彼女は魔力を制限していたのである。

 これが魔族を滅ぼすべく大魔法使いから教わったインストラクションの一つ、魔力アンブッシュ・ジツ! 

 フリーレンはこれまで長い間ずっと、体外に放出する魔力の量とカラテ・アトモスフィアを制限していたのだ。

 

 それは何のためか? 

 魔族は魔力の多寡とカラテのワザマエで相手を見極める。

 どちらも隠すことは実際魔族にとってはスゴク・シツレイなことではあるが、フリーレンはこの習性を利用し、自分の力を誤認させていたのだ。

 

 魔族を殺すために。

 

「ショーギ・オウテだ。ハイクを詠め、アウラ=サン」

「ふざっ、けるな、私は……ッ!」

 

 ウカツにも自らの魔法の餌食となってしまったアウラ。

 私は500年生きた大魔族だからダイジョブダッテ! とタカをくくっていたのである。ナムサン! 

 どうにか命令に逆らおうとするも、それがどうにもならないことは彼女自身が一番知っていた。

 こうなってはアウラを始末することなど正にベイビーサブミッションである、と。

 

 これまで数多くの人間を殺め、喰らってきたケジメをつけなければならない。

 それもケジメをつける方法の中でも、最もヤバイ方法で。

 つまり。

 

 

「セプクしろ、アウラ=サン」

「アイエエエエエ!?」

 

 

 サツバツ! 

 アウラ、しめやかに爆発四散! 

 

 サヨナラ! 

 

 これこそインガオホー。

 長くを生きた大魔族は、最期は皮肉にも自らの手でセルフ・カイシャクしたのであった。

 七崩賢セブンゲイツ・断頭台のアウラ、オヒガンアノヨへと旅立つ。

 

 ナムアミダブツ! 

 おぉ、ナムアミダブツ! 

 

 おまけ 完

 




 最後まで読んでいただきありがとうございます!

 ミナサマ、オツカレサマドスエ。
 勢いだけで書いたような作品でしたが、いかがでしたでしょうか?
 楽しんでいただけたなら幸いです。

 感想、高評価など頂けましたら嬉しいです!
 それではオタッシャデー。
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