ああ……なんだってこんなことになったんだろう……
千佳の両親だけでなく、まさか本人でさえ結婚に前向きとは……
口説いて無いし、ヤッてもいないし、そもそも付き合ってもいないのに……
究極的な所、アイを取るか千佳を取るかって2択の話なってしまったのが、問題だ。
こんなことなら、千佳を本気で口説いてしまえばよかった。
口説く機会ならいくらでもあったのに、それを俺はしなかった。
だからこれはぬるま湯に浸かっていた俺に対しての罰なのだろう……
「……すみません。私には結婚を前提に付き合ってる女性が居ますので千佳さんと結婚は出来ません」
それまで団らんとした空気が一気に凍り付いた。
「嘘よ……だって、あなた大学で人付き合いなんてないじゃない!? 何時だって一人ぼっちだったのに……そういえば、車に乗る前に言ってましたわね。8年前なら私の執事になっても良いと言ってましたね。ヒカル8年前に一体何があったの?」
はぁ~会話に気を付けていた訳では無いけど、紐づくよな……ここまで来たんなら腹を括るしかないか……その気になれば、調べられてしまうし、なによりそうなった方が厄介だ。
「……先ほど、結婚を前提に付き合っている女性がいると言いましたね。8年前に私はその方を妊娠させてしまい、今は子持ちです。なので、千佳さんと結婚は出来ません」
こんな形で女性を振ったのは初めてだ。
しかも、相手の両親の目の前で……
「……すまないヒカル君。私は少し舞い上がっていたようだ。」
「……いえ、お気になさらず。でも、今は話した内容は口外しないでくださいね」
「ごめんなさいね。私も千佳があなたの事を良く話してくれてるから、てっきり……」
……気まずいなぁ
こんなことなら結婚指輪だけでも……いや、そうなると仕事を取りずらくなるか……まともな方法でも取れない事は無いが、口説いた方が手っ取り早いし、何より安心できる。
そんなことを考えていた時だった。
「……ヒカル? 大学で初めて会った時に私に言った言葉覚えてる?『私はあなたみたいに暇ではないので結構です。……ただ、良い身体しているので……セックスくらいなら、相手をしても良いですよ?』ってそれって今でも有効なの?」
千佳よ……いくら何でもお前……実の両親が居る前で爆弾ぶっこむ事無いだろうが!?
「そうだわ! 私もヒカル君に一体どういうつもりで千佳に言ったのか、聞こうと思っていたのよ」
「……詳しく話してくれるねヒカル君!」
「……分かりました」
姫野家は何でも言いあえる家庭か……ある種の理想ではあるが、今この時ばかりは公開処刑されてる気分だ。
内心ため息を付きながらも、当時の状況をなるべくオブラートに包んで出来るだけ千佳にヘイトが向かないように説明した。
説明も終わった頃には良い時間になってしまったので、今日はお開きになった。
結果として、千佳を失う事は無かったけど、アイの事は何一つ喋らずに済んだのは良かった。
だが、恐らく向こうも気が付いてはいるとは思うが、あえて踏みこんでくることはなかった。
帰りもロールスロイスで事務所まで送ってくれた訳だが、千佳も同乗している。
「……ヒカル! 私はあなたの事を諦めた訳じゃありませんからね!」
千佳はそういうと指を突きつけて宣言して来た。
中々良い啖呵切るじゃないか!
千佳の腕を引っ張り抱き寄せて、耳元で囁く
「……それは構いませんが、千佳さん私とヤッたら他の男じゃもう満足出来なくなりますよ?」
「ヒカルとしか私は関係を持たないから問題は無いわね」
その強い眼差しと凛とした表情が溜まらないな
そうこうしていると事務所に着いた。
「では、千佳さん今日はありがとうございました」
「じゃあ次会った時が……」
「……ええ、なのでこれは前借ですね」
千佳の口に触れるだけのキスをしてロールスロイスから降りた。
「~~~♡!!」
千佳の声にならない声が響きながらもロールスロイスは発進した。
中々に濃い一日ではあったが、千佳を失う事が無かったのが曙光だが、今日はもう疲れた。
やらなきゃいけない事はいっぱいあるけど、今日はアイに会いたいな
アイのスケジュールは分からないが、とりあえずラインでも飛ばせば返事は来ると思いスマホを見るとアイから鬼のような着信と通知が着ていた。
とりあえずアイに電話しながら事務所のドアを開けると目の前にアイの顔があった。
「……ねえ、ヒカル君あの女誰?」
「……とりあえず、ベットに行きませんか?」
ヤバそうな雰囲気を醸し出していたから、強引に抱き寄せてベットに直行した。