入院して数日が経過したが、ギブス装着中も激痛は走るものの指先は動かす事は出来たので、事務作業のみは病室で行っていた。
入院中も色々とあったが、何とか仕事は回せるようには落ち着いた。
モデル業務に関しては俺の代わりに大輝君に行ってもらった。
勿論劇団ララライの金田一さんには了承を得ている。
今じゃあ天才子役ともてはやされてはいるんだけど、劇団ララライにお仕事がなくて、演劇の練習はするんだけど……やっぱり暇を持て余しているとの事なので、むしろ食い気味で即答してくれた。
送迎はみゆさんにお願いしているし、四条社長に連絡をしたところものすごく心配されてしまった。
ぶっちゃけ俺はこの時点で切られてしまうと思っていたが……本当に気に入られているようでちょくちょく病院までお見舞いに来てくれている。
そして、肝心の大輝君だけど電話ではちょくちょく話してはいるんだけど、久しぶりに会ったら俺より身長が高くなっていただけでなく、口も悪くなってしまった。
時の流れというのは残酷だな……
「うわーお兄ちゃん久しぶりに会ったけど……相変わらずチビだねぇ~これじゃあどっちがお兄ちゃんか分からないよねw」
昔はお兄ちゃんお兄ちゃんって慕ってくれてたのに、今じゃあ俺の事をチビ呼ばわりするクソ生意気に育ってしまった。
「……悲しいですね。昔は私の事をお兄ちゃんと慕ってくれていた大輝君が身長が高くなっただけでこんなに口が悪くなってしまうなんて……ぐすん」
「わ、悪かったよお兄ちゃん! だから泣かないでくれよ」
元気に育ってくれて嬉しい反面、こんな生意気に育つなんて……俺はあの世でパイセン達になんて言えばいいか考えただけで涙が出るわ!
「うっうっ……それでは、モデルのお仕事はお願いしますね。先方には伝えてありますので、くれぐれも粗相の無いようにお願いします」
「わ、分かりましたよ。……まさか泣かれると思わなかった(ボソ)」
「良いですか大輝君……私の身長が低いのは純然たる事実ですので、そのことに関しては特段何も気にしませんが、言葉一つで人は傷つくものです。なので、大輝君は人の痛みが分かる人間になってください。みんながやってるから自分もやって良いなんてことはありません。それを覚えていてください」
「ごめんなさいお兄ちゃん」
分かってくれればそれで良いけど、何でこんなに口が悪い子に育ったんだろう? 今度時間があるときに劇団ララライに行って視察せねばいけないな……
俺の子に悪い影響を与えた人間はとっちめてやる!
「じゃあお兄ちゃんモデルのお仕事は任せてゆっくり休んでてね」
「分かりました。それでは大輝君もお元気で……」
まだ外は明るいが、大輝君は帰ってしまった。
「……カミキあんた優しいね。誰かの為に泣ける人なんて……私見たこと無いよ」
それまで無言で見守っていたカナンが口を開いた。
「私はそんな大層な人間ではありませんよ。所詮はただの女たらしです」
「じゃあ、私の事も誑し込んでくれる? それとも風俗で働いていた汚れた女なんて無理?」
どこか怯えた様子を見せるカナンをギブスを付けているため動かし辛いが無理やり抱き寄せて耳元で囁く。
「カナンが望むなら私は今この場で証明しましょう」
「……私の事見捨てないでね」
若干の重たさがあるがそれが今は心地良く感じてしまう
やっぱり、俺の好みのタイプは地雷なんかなぁ~
これ以上は無理と思ってもなんだかんだで抱え込んでしまうのが、決して良いことでは無いがとりあえずこれで嫁の死亡フラグは叩き壊したはずだ。
あとは俺自身の死亡フラグがとどまる事を知らない件だけど、はてさてどうしたものやら……
<入院して4ヶ月後>
ようやくギブスを外せる段階になった頃には若干の違和感はあるものの、モデルの仕事に復帰することも可能ではあった。
まだまだリハビリは必要だけど……それはそのうち解決するから問題は無いだろう。
問題なのはアイがドーム公演の時に言ったセリフだ。
『私は結婚を前提に付き合いたい男性がいるので今日でアイドルを辞めます!!!』
ネットでもそれはニュースとして取り上げられていたし、一体誰と付き合いたいのかって話題が連日絶え間なく出ていた。
そして、勘違いをする奴らも多くおり、こぞってスポーツ選手・お笑い芸人・俳優・ジュニアアイドルなどなどが我こそはと名乗りを上げるものの誰もが玉砕していた。
いや、そもそも接点が無い人間と結婚をしたいとは思わないでしょ!? と思うのは俺だけなのだろうか?