第1話
「ママどうしよう! 私アイドルにかまけてて勉強なんて全然やってないから、高校生に為れないかも……」
「大丈夫だよルビー、私だって最終学歴中卒だけど、今じゃあマルチタレントとして稼げているし、ルビーだってアイドルで稼げてるでしょ?」
「ママ知ってるでしょ? アイドルは中抜きがえぐいからそんなに稼げない事……」
「そういえば、そうだったね~。それに私はグループだったから余計にねぇ~」
たははとリビングで笑うアイと頭を抱えてるルビー
「だから時間があるときは勉強をしろって言ったろ?」
「私はアクアと違って暇なんてないもん。学校行って、アイドル活動して、家に帰って寝るって生活なんだよ!? これで何時勉強すればいいの!?」
「それをカミキさんは俺たちの面倒を見ながら当時はもっと過酷なマネージャー業務に事務処理とモデルもやって少しでも時間があれば勉強して東大まで行っていた訳なんだが?」
「ママ~アクアが正論で私の事を虐めるよ~」
ルビーはそういうとアイの胸に顔を埋める。
それをアイはルビーの頭を撫でながらもけらけら笑って慰める。
「こらアクア! ヒカル君のは参考にならないから例に上げちゃだめだよ」
「アイもアイでカミキさんに甘えてばっかりだと、そのうち本当に愛想つかされて捨てられちゃうぞ!」
「……ヒカル君は私の事捨てないよ。……捨てないよね」
実際カミキさんがアイを捨てることは決して無いが、アイに関して若干ではあるが不満を抱いてる部分がある。
今カミキさんの事務所は子供が多くいることから、主に子供の面倒を見ながら業務をこなしており、奥さん達もスケジュールをあまり被らないようにして常に子供の面倒を見ながらも安定して収入を得られるようにカミキさんがシステムを構築した訳なんだが……
俺とルビーも自分の事は自分で出来る年齢になったこともあり、アイは自分本位の所があるので、自分の仕事が終わればカミキさんの事務所に行ってしまうのだ。
それに関しては斎藤さんもミヤコさんも特に注意することも無いし、なんならカミキさんの所と業務提携もしているので、モデルの仕事を紹介したりアイドルの仕事を紹介されたりとお互いが利益を得れるように良い関係も築いている。
俺もモデルの仕事を紹介して貰っているので、同年代の子よりははるかにお金は持っているが……仲介手数料と苺プロからの中抜きはしっかり取られている。
「カミキさんは今子供の面倒を見ながらも業務を行っている訳なんだから、そこにでっかい子供が邪魔したら迷惑だろ」
「……でっかい子供」
ズーンって音が聞こえるぐらいアイは落ち込んでしまった。
「ほら、こうして喋ってる時間があるんだからルビーも勉強しろよ」
「わ、私はカミキさんに教えてもらおうかなーなんて?」
「あの人は天才肌だから教えるのは向いて無いだろ? 高校の授業中だってノートは取っていたが、基本暇さえあれば教科書と参考書を繰り返し読んでいただけだしな」
過去に分からないところがあったらどうするのかとカミキさんに聞いたら返って来た答えが『分かるようになるまで読めば良い』だった。
その答えを聞いた瞬間にこいつは駄目だと思ったのは間違いではない。
「そーだ! ヒカル君にお願いして裏口入学できるところ探してもらおうよ」
アイはそういうとすぐさまカミキさんに連絡を取ってしまった。
『もしもしアイさんどうしましたか?』
「あ、ヒカル君今大丈夫?ちょっと相談したいことがあってね」
『それは構いませんがちょっと今から夕食の準備をしないといけないので……アイさんはもう食べましたか? もしまだなら食べにこちらに来ませんか?』
「良いの!?」
『勿論ですよアクアとルビーもまだでしたらお伝えください』
「ちょっと待ってて!……アクア、ルビー!ヒカル君が夕食一緒に食べないかって誘ってくれてるけどどうする? 私は一人でも行くけど……」
「私も行くーカミキさんの料理すっごい美味しんだもん」
「はぁ~俺も行くよ」
「オッケー……ヒカル君アクアとルビーも行くってさ」
『分かりましたそれではお待ちしてますね』
「じゃあみんなで出かけるよ!」
アイはそういうと余所行きの服に着替えて行った。
「ママ気合入ってるね」
「カミキさんの事が大好きだからな……とりあえず、タクシー呼んでおくか」
10分後にはモデルの様な服装をしているけど……サングラスにマスクと帽子を被った不審者がそこに居た。
「じゃあ行くよ!」
「ママその格好は恥ずかしいよ」
ルビーの言葉がアイの心に刺さった瞬間だった。
家を出るときにはひと悶着あったが、何とか無事にカミキプロダクションに到着した。
そして、ここに来る度に思うことがある。
苺プロは雑居ビルなんだが、ここはやっぱり民家にしか見えない。
2階の窓にはカミキプロと書かれてはいるが……何故カミキさんはここを事務所に選んだのか疑問である。
あの人だってお金は有るのに、事務所を移転する気は今の所全くないようだし……と考えていたら、アイが合いカギでドアを開けて入っていった。
ルビーは当然の様にアイに着いて行ってるが、やっぱりこれっておかしいよな?
「ヒカル君来たよー」
アイが堂々とリビングに行くとそこには複数の子供と劇団ララライの役者である姫川大輝さんが夕食を食べており、カミキさんはというとスーツの上にエプロンを付けてテーブルとキッチンを行ったり来たりしていた。
「兄さんお代わり」
「はーいちょっと待っててくださいね」
カミキさんと姫川さんの関係も謎だ。
知っている事と言えば、カミキさんが劇団ララライに所属していた時からの付き合いらしく、理由は分からないが姫川さんの事を大層可愛がっていたとか、アイがワークショップに行って演技指導をカミキさんにされていた時にはもう既にこうだったらしい……
「はい、大輝君お待たせしました」
「兄さんありがとう」
どちらかと言えば身長差がある所為でカミキさんが弟で姫川さんが兄っぽく見えてしまう
「ねぇヒカル君夕食はなーに?」
「アイさんいらっしゃい、夕食はパエリアですよ。あとアクアとルビーも良く来てくれましたね。席は空いてるところに座ってください。」
「ヒカル君パエリアなんて良く作れたね!」
「うちは大人数ですからね! カレーやシチューなんかだとすぐに飽きてしまいますので、色々と勉強しないといけませんからね。では、今よそって来ますので少々お待ちを……」
カミキさんはそういうと慣れた手つきで食器を取り出して、パエリアをよそってくれた。
俺とルビーはカミキさんの手料理をたまに食べに来るんだけど……
「「美味しい」」
思わず声が出てしまうぐらいに美味しいんだ。
それこそアイの料理と張り合えるレベルだ!
「ヒカル君あーん」
アイだけは変わらず口を開けてカミキさんに食べさせて貰っていた。
実際の所、アイはもうかつての様におかしな持ち方をしなくなったが……それはそれとしてカミキさんにあーんのおねだりするのは変わっていなかった。
「ハイあーん」
それを仕方ないですねと困った顔をしながらも、微笑んで受け入れてしまうのだからこの人は何処までも甘い人だ。
「んんん美味しいよヒカル君!!!」
目を輝かせて嬉しそうに言うアイを見ているとファンとしては嬉しい限りだ。