みんなの食事が終わってようやくカミキさんが食べ始めた。
もうすっかり冷めてしまっている料理を一人もそもそ食べてる姿は何だか居た堪れない……
「ねえ、アクアは今も役者の仕事しているんだよね?」
「ああ、時々な……」
子役として作品に出ていた時は俺にも才能があると思いあがっていたが、年を重ねるごとにその思いは段々と薄れていった。
それも当然だ。俺の横にいる元とは言えトップアイドルで有ったアイの演技と見比べてみたら月とすっぽん以上の差があった。
そんな訳で役者の仕事も続けてはいるが、積極的にはやっていないのが現状である。
「ふーん。じゃあ私が役者の仕事紹介してあげよっか? 今私がやってるヒロインやってる作品あるんだけどまだ役者決まってない役あるんだ。偉い人に掛け合ってみようか~?」
なんか上から目線なのが気に要らないけど……どうしたものか? と思案していたら、ルビーが有馬の話題に食いついてしまった。
「へぇ~ロリ先輩それってなんて作品なの?」
「『今日は甘口で』っていう少女漫画が原作のドラマ」
「「今日あま?」」
「うん知ってる?」
「いや、演出カジってる人間で知らねー奴モグリだろ……ド名作じゃねーか」
「あの『今日あま』ってなんですか?」
「なんで役者の仕事しているカミキさんが知らないんですか!?」
「いえ、少女漫画は少年〇化論ぐらいしか読んだことが無くてですね……それも途中までですが」
「しかもそれ結構古いし……」
「ま……まあカミキさんの事は置いといて、どうするアクア? 私が掛け合ったら案外スルっと決まっちゃうかもよ? 何せPの鏑木さんには可愛がられてるから私!」
有馬の上から目線がやっぱり鼻に着くが……鏑木ってもしかして?
「フルネームは鏑木勝也で合ってるか?」
「そうだけど? 知ってるの?」
「ああ、知ってるも何も……」
「私も良くお仕事頼まれるからね~」
アイの仕事先の伝手である。
当然俺もルビーも会ったことはあるし、カミキさんも役者の仕事で何度か逢ったことがあると言っていた。
「あの美形主義の鏑木さんですから現場さぞ大変でしょうね。……お気持ちを察します。」
「ええ~皆さん知り合い何ですか!?」
有馬は驚いた様子で叫んでいるが、そんなことより問題児をどうにかすることが先決だ。
「私は彼に対して良い思い出はありませんね。毎度のごとく役者の演技指導から初めて全体のレベルアップをするところからのスタートになりますからね。その所為で、彼には毎度のごとく呼ばれる始末でしたが、今回は呼ばれなくて良かったと思っていたのに……アイさんの時はどうでした?」
「私はほら……あふれ出るオーラが凄いから、男性陣はみんなやる気を出してくれるよ!」
鼻高々にアイは言ってはいるけど、女性陣からは煙たがれていた訳なんだよな……
そんな訳で皆が皆有馬に同情してしまった。
「ね、ねぇアクアどうかな? キャストも同年代ばっかだし! 気兼ねなく出来るよ!」
ああ、そんな目で俺を見るな!
「そんなヤバい現場ならアクアが行っても大して変わんないんだから行って見れば? それとも役者の才能よわよわのアクアが仕事を選べるって勘違いしてるの?
すっごい面白いね~」
このクソガキが!
「あ!? やってやろうじゃねーか!!! 有馬今すぐプロデューサーに連絡してくれ」
「とりあえずネット局のドラマみたいですからどんなものか見てみたらどうですか?」
みゆさんはそういうとノートパソコンをテーブルに持ってきてドラマを再生し始めた。
「私は『今日あま』を知りませんがこう言った作品なんですか?」
「全然違うよカミキさん! アクアの部屋に全巻置いてあるから今度読みに来てよ」
「ルビー勝手に許可を出すな!」
「アクア駄目ですか?」
あ~しょんぼりしないでくださいよ。
「今度持って来ますので勘弁してください」
「……分かりました。首を長くして待っていますね」
とりあえずカミキさんの為に今度持ってくるのが決まってしまったが……
「えい!」
アイに頭をはたかれた
「え!? 何どうしたの?」
「なんでもなーい……せっかくヒカル君が家に来てくれるチャンスだったのにアクアのバカ(ボソ)」
アイは素知らぬ顔をしていたが、俺は何かやらかしたのだろうか?
「まー兄さんとアイさんが演技指導もかねて出演するって体で鏑木さんに交渉でもすれば解決するんじゃない?」
「良いね大輝君その案頂きだよ。私とヒカル君のラブラブドラマの始まりだね♡」
「私がヒロインなんですけどね!!!」
「……分かりました。アクアの仕事の幅を広げる為にも、私も協力します。それでは有馬さん早速鏑木さんに電話してもらって良いですか? 後アイさんは斎藤社長に許可をもらうようにお願いします」
「分かったよー」
「あ、はい今掛けますね」
その後有馬から連絡を取ってもらった後にカミキさんが有馬と電話を替わってもらった後すんなり許可が取れた。
あの誰に対しても敬語を使っていたカミキさんだったけど……鏑木さんに関しては当たりが大分強かった。
カミキさんのそんな所は初めて見たかもしれない