「みなみちゃんとってもイイ子だね。飴あるけど食べる?」
友達が出来た事で舞い上がったアイは心底嬉しそうだった。
旧B小町のメンバーは今でこそわだかまりは無いが、カミキさんの愛人だから、何と表現して良いか分からないが、少なくとも友達では無いだろうし……
メンバー全員をいまだに抱けて満足させるカミキさんの手腕は凄まじく、ドロドロさも無い。
俺だってゴロー時代は女遊びはしてきたが、それでも二股とかそう言ったことは一切やったことは無い
「え~では頂きます」
アイから貰った飴玉を美味しそうに食べる寿みなみ
「とりあえず、俺の心配は良いから、自分たちの心配をしろよ。特殊な環境だし、勝手も違うだろ?」
「そうなんですよねぇ。周りもプロだと思うと……結構緊張しちゃうっていうか……」
「緊張する必要なんかないわよ。ここは養成所でも撮影所でもなくて普通の学校なんだから、普通にしていれば良いのよ」
「そうだよ! ルビーが言った通り普通にしていれば大丈夫だよ」
「ルビーちゃん、アイさん……」
「……それ言ったのは有馬なんだけどな」
寿は純粋な奴だな。
「まぁ入学式見た感じ容姿の整ってる奴は多いけど、見た事ある人は殆ど居なかったし、そんなに緊張する必要は無いだろう?」
俺がそういうとルビーが若干顔を赤くして照れた様子で否定した。
「……居たよ。アイに負けない凄い人」
「そうかな~私は気が付かなかったけど?」
「なんで気が付かないかなぁ~不知火フリルが居たじゃん? 月9のドラマで大ヒット! 歌って踊れて演技も出来るマルチタレント! 美少女という言葉を聞いたら殆どの人が思い浮かべるのは不知火フリル!!」
あれ、ルビーって不知火フリル推しだったか?
「いや当然知ってるけど」
「そこまでご執心だったのか?」
「今最推しだよ!」
「私も歌って踊れて演技も出来るマルチタレントなんだけど……」
「ごめんね。今はアイの話じゃなくて不知火フリルの話をしてるから……」
ルビーお前……そういうとこだぞ。
ほら、アイが目に見えて落ち込んだし……
それに俺らの親でもう一人いるじゃないか、歌って踊れて演技も出来て、しかも男にも女にもなれる上に家事も育児もこなしてるカミキさんが居るんだから良いじゃねーか……
「ふーん」
「ふーんってあの不知火フリルだよ!?」
そうは言われたってなぁ
「興味ない! 俺の最推しは今も昔も変わらない」
「そりゃ私もそうだけど……それはそれ、これはこれ!」
「あっ……! ほら! あそこに実物!」
ルビはーそういうと丁度歩いていた不知火フリルを指さした。
「はぁ~遠目でも可愛い~」
「まじでただのファンじゃん。クラスメイトだろ?」
「だってぇ……」
はぁ~妹の為に一肌脱いでやるか
「こんにちは不知火さん」
「!」
「俺の妹とそこで落ち込んでいるアイがアンタと同じクラスなんだ。仲良くしてやってくれ」
「ちょっ! ちょっとお兄ちゃん」
全く挨拶ぐらいしないと一生見ているだけだぞルビー
「貴方知ってる。『今日あま』に出てた人?」
「最終回だけしか出て無いが……良く知ってるな。そんな話題にもならなかったのに……」
「ちょっと界隈で話に挙がってて観た。良かった。」
なんて言うか不知火はどことなく特徴的な喋り方をしている。
「……ありがとう」
そして寿みなみに気が付いた。
「あっ……そちらの方はミドジャンの表紙で見た事あります。みなみさんでしたっけ?」
「はい!」
「あなたは元B小町のアイさんですよね?」
「そうだよ! 歌って踊れて演技も出来るマルチタレントのアイで~す。よろしくね。え~と、し……白石不倫さん?」
「不知火……不知火フリルです」
「あはは、ごめんね~人の名前を覚えるのは苦手なんだよね~」
「貴女は星野ルビー?」
「わ、私の事知ってるの!?」
「勿論、僅か9歳でドーム公演を達成した天才少女。未だに記録は破られては居ない」
「……そんな風に言われると照れるよ~」
ルビーはそういうと頬に手を当てて物凄く喜んでいた。
「今はあまり表に出なくなったけど、何かあったの?」
そりゃそうだ。
あの時のアイとルビーの人気はとんでもなかった。
アイはドーム公演を終えて、ようやくアイドルを卒業出来ていざ婚姻届けを持ってカミキさんの事務所に行ったら、カミキさんは入院中でしかも連絡もつかない状態だった。
その間は、うちは荒れてしまった。
なんてことはない。
アイは勿論俺やルビーにとってカミキさんは心のよりどころだったんだ。
そんな状態だから、仕事をしている場合じゃなく、長期間アイは表に一切出ることも無く部屋に引き込まってしまった。
そして、四か月経ってようやく連絡が着いた時は新たな愛人を引き連れてきたものだから、アイの暴走っぷりが大変だった。
「……ま、まぁちょっとねぇ~」
「そう、えと……頑張って?」
世間には説明できない出来事だから、ルビーも曖昧に答えるしか出来ずに不知火もありきたりな事しか言えなかった。
「みなさーん。お待たせしました」
そんな中ようやく迎えが来たかと思って振り向いたら、赤い袴に白衣を着て頭にキツネ耳を付けたカミキさんが居た……いや、何でだよ!!
「ヒカル君どうしたのその格好!? すっごい似合ってるよ♡」
「いやーお恥ずかしい話ですが、本日撮影があったんですが寝坊してしまいまして普段は現場で着替えているんですが……それさえも惜しくて巫女服で行く羽目になってしまいましてね」
キツネ耳も何故かシュンと倒れた。
「それにしてもカミキさん金髪だからキツネ耳が映えるね。それに身長も低いし女の子にしか見えないよ」
「……それは誉め言葉として受け取っておきます」
「……ちなみに撮影現場にはバイクで行ったんですか?」
「良く分かりましたねアクア! ハイエースで行こうとしたんですが、ガソリンが心許なかったのでバイクで行きましたよ」
「……これを見て下さい」
ネットニュースにてカミキさんと思われる巫女服を纏った少女が高速道路をバイクで駆け抜ける映像が上がっていた。
「……困りましたね」
カミキさん……表情が変わって無いから本当に困っているのか分からないんだが?
「あの……あなたは?」
不知火フリルもなんか頬が若干赤くなって……まさかカミキさんに惚れた!?
「ああ、申し遅れました。私はカミキプロダクション代表取締役のカミキヒカルです。すみません今は名刺が無いのでお渡しすることは出来ませんが、それにしても凄い可愛らしい方ですね。一瞬どこかの国のお姫様かと思いました。お名前を伺ってもよろしいですか?」
いや、だから何でカミキさん知らないんだよ! あんた芸能プロダクションの代表取締役なんだからその辺り気を付けろよ!
「えっと、私は不知火フリルって言います。フリルって呼んでください。カミキさん……良ければ電話番号交換しませんか?」
「それは構いませんが……アクアの彼女さんだったりします?」
なんか遠慮しているポイントが違うよな?
「いえ、今日初めて出来た友達です。」
「そうですか~それではアクア共々よろしくお願いします」
そういうとカミキさんと不知火は電話番号を交換してしまった。
「あの、ぶしつけなんですが、カミキさん私の事お姉ちゃんって一回呼んでくれませんか?」
「え!? 構いませんが……ううん、あー、アー、良しではいきます」
驚きながらもカミキさんは声を調整して言ってしまった。
「フリルお姉ちゃんどうしたの? ヒカルとおしゃべりしよ?」
カミキさん30歳なんだから、本来痛々しいはずなのに……なんでか全く違和感がない
「カミキ君可愛い過ぎない!? ね、ねぇうちとも電話番号交換しない? あとうちは寿みなみ言います。うちの事もみなみお姉ちゃんって呼んでくれへん?」
「分かったよ。みなみお姉ちゃん。じゃあ交換しよ」
カミキさん……僅か数分で二人の美少女の電話番号交換しやがった。
「ねぇヒカル君? 分かってるよね!」
ああ、アイがお怒りの様だ。
俺は知らないからな
「うーん? アイお姉ちゃんちょっと……」
カミキさん骨は拾ってやるから安心して成仏してくれアーメン
「(ボソ)今夜この格好と口調でアイお姉ちゃんの事抱いても良い?」
「全然OK!!!」
カミキさんは一体アイに何を言ったのかは分からないが、アイの機嫌が良くなったことからまた力技で解決したの良く分かった。
「ねぇアクアはカミキさんみたいにならないでよね」
「俺を何だと思っているんだ!?」
ルビーとは帰ったら話をしないといけないな