カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第12話

「私……もう『今ガチ』辞めたい」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 鷲見ゆきの突然のカミングアウト全員驚いた。

 なんなら俺だって……俺だってやめてーよ。

 収録は土日の朝一からで、丸々潰れるし、収入だって大して無いし、なんならカミキさんにお願いすれば喜んでモデルの仕事を紹介をしてもらえるし、時間も大してかかんないのにギャラは桁違いに高い! まー仲介手数料や苺プロにいくらか抜かれているけど、それでも普通のバイトよりも遥かに高い金額だ。

 そう考えると俺は、あの時カミキさんに知らなかったとはいえ、ひどい態度を取っていた事を自覚してしまう。

 ゴローの時……俺は医者だった。

 はっきり言って、休みなんて有って無いようなものだし、想定外の事なんていつも起きていた。

 だが、それでも俺は大人だった。

 カミキさんは当時16歳の高校生でマネージャー・事務・モデルをこなして俺とルビーの面倒を見て、更には当時のアイの倍の金額の仕送りもしていた。

 高校生なのにあんな大金を稼げるのはおかしい?

 絶対にヤバい事して稼いでるに違いないだ? 

 友達も作らず、遊びにもいかず、俺達の面倒を見て青春と呼べるものを捨てさせて、あまつさえアイを妊娠させたんだからアイや俺達を優先するのは当たり前だ? ああ、本当にふざけてやがる。 もしも、可能なら俺はあの時の厚顔無恥の自分自身を力の限り思いっきりぶん殴りたい!

 でも、そんなことが出来たらカミキさんは悲しむだろうなぁ

 

 そんなどうにもならない事を考え混んでいたからか、気が付いたら鷲見ゆきに熊野ノブユキがなんか言ってたけど、聞いてなかった。多分これが今日のハイライトだろうな

 

 

 収録が終わっても即時解散となる訳じゃあないから迎えが来るまで教室で喋ってる。

「見て見て! もう記事になってる! 私ちょっとは視聴者獲得に貢献できたかな?」

 鷲見ゆきの小悪魔っぷりは傍から見ていて凄いものだった。

 そのおかげでネットの記事も鷲見ゆきと熊野ノブユキの今後の展開に目が離せないみたいでコメントもゆき×ノブで盛り上がっている。

「そーだな」

 別段何もせずともギャラが貰えるならこのままラストまで傍観者でも構わないけど、これでは役者の糧になりそうにはないな。

 かと言って今更、鷲見ゆきと熊野ノブユキの間に入っても得られるものは無いし……はてさてどうしたものか?

 こんな時カミキさんならどうするかな?

 とりあえず、女性を口説いて回って主役をかっさらうか? それとも脇役に回るか?

 名指しで指名をされない限りは主役を演じる事は無いとこの前言っていた訳だから、楽な脇役に回るだろうけど……この場合の脇役ってなんだ?

 上手い奴をよいしょする必要はない、何故なら上手い奴は勝手に自分で歩き出すからだ。

 表裏無いけど味がある奴も、言い換えれば隠すものが無い正々堂々って事だからフォローは要らない。

 じゃあ問題なのは番組映えが悪くて出番が少ない奴だ。

 俺みたいにどうでもいいと思ってる奴はキャスト陣に居ないだろうし、演出も現状問題無いと考えているから口は出さない。

 けど、なんだか嫌な予感がする。

 まるで真綿で首を締められてるような……

 

「アっくんあがったら飯行こうぜ!」

 

 熊野ノブユキが肩に手を回して誘って来た。

 

「いや、俺はいい。家に飯あるし……」

「えー行こうよ!」

「メっさんが焼き肉奢ってくれるって」

「言ってないよぉ!?」

  

 熊野ノブユキからの突然のキラーパスにMEMちょはリアクション芸人並みの芸で答えてくれた。

 それにしても……

 

「焼き肉……」

「知ってるよ最近登録者増えてウハウハなんでしょ?」

「事務所の取り分5:5なんでしょ?」

「まじですか!」

 

 MEMちょのお財布事情を何故こいつらがどうやって知ったのかは知らないが……俺も注意しないといけないな。

 何せ諸々引かれても取り分は6もあるんだからな……カミキさんありがとうございます。

 そんな中悲壮な表情で女優の黒川あかねが悲しい現実をぽつりと洩らす。

 

「うち8:2…………羨ましいなぁ……」

 

 副音声でもちろん私が2……と聞こえて来た。

 MEMちょが深刻そうな顔をしているが、俺は気にせずにルビーに電話した。

 

「もしもし、ルビー?今日夕飯は焼き肉食べて来るから要らない」

『アクアずるい私も焼き肉食べたい!』

「いや、番組の付き合いだから無理」

『……良いもん。カミキさんに奢ってもらうもん』

 

 ルビーはそういうと電話を切った。

 俺もそっちに行きたいなぁ~

 

 しばらくしたらカミキさんから電話が来た。

 まあ、このタイミングで連絡が来たからルビーの所為だよな。

 

『もしもし、アクア? 今大丈夫ですか?』

「ええ、大丈夫ですけど……もしかしてルビーから話を聞いてますか?」

『一応は聞いてますが、今夜焼き肉を食べに行くって伺ってますが?』

「そうですけど?」

『ではアクアのラインペイに送金しておきますので、アクアも楽しんでください』

 

 カミキさんはそういうと電話を切った。

 えっと? 送金? 

 言ってる言葉が理解出来ずに呆然としていたら、ラインに通知が来て、カミキさんからとんでもない金額が振り込まれていた。

 その後もメッセージで『足りないようなら連絡してくださいね』と来た。

 カミキさんあなたは一体何処のお店を想定してますか?

 

 

 

「おらぁ特上盛り合わせ追加じゃーい!! 思う存分食えや餓鬼共!!」

「あ、この松坂牛エンペラーブリアン(100g¥2万円)を6人前お願いします」

「「「「アクア君!!!」」」」

「……そんなん払えないよぅ」

 

 あ、MEMちょが泣き崩れた。

 ちょっとイライラしていたから悪い事したな……

 

「……ああ、お金は俺が全額払うから大丈夫だ」

 

 それにしても、カミキさん……甘すぎない?

 ルビーとアイを含めた3人で何十万もしそうなフグの懐石料理を食べている動画が送られてきた。

 アイがヒレ酒を美味しそうにゴクゴク飲んでいる。

 ルビーが美味しそうにフグを食べて、それをニコニコしながら眺めているカミキさんもやたらと高そうなって……アレ『十四代 純米大吟醸 龍泉』じゃねーか!?

 俺もそっちに行きたいな……

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