結局の所俺は黒川あかねを……
いや、役者の人間を見誤っていたのだろう……
普段のだらしがない姫川大輝にしても、一流の役者しか居ないと言われる劇団ララライの看板役者で、帝国演劇賞最優秀男優賞受賞。月9主演俳優経験もあり、数々の賞を受賞している。
そんな人が兄さんと慕ってやまないカミキさんだって自身は役者としては2流と言い放つがそれでも主役のオファーがくればやってのける奇才の役者
そんな一流がひしめき合う中でも、なお若きエースと呼ばれてる。
有馬かなをして役者としては「天才」と称す程の逸材
「アイ……いや、あかねか!?」
「アクア久しぶり~どしたの? なんかものすごくびっくりした顔して」
「いや……」
カミキさんのそれとは違い……アイそのものに見える訳では無いが、それでもしぐさや言葉遣いに雰囲気……そして、全てを魅了するあの瞳
99点だな!!
う~ん何だろうなぁ~後1点がどうにも付けられない。
別に悪い所なんて無いのに……なんていうか決定的に違う部分がある。
「ねぇアクア今日は一緒に居ようよ」
「……うん」
スポットライトが当てられた主役が舞台に躍り出れば周囲の視線は全て彼女に引き寄せられる。
そのアイの様なカリスマ性が黒川あかねにもあった。
「う~ん」
何だろうなぁ~喉元まで出かかっているんだけど……
「あかねがなんか凄い事をやっているは分かったけど……なんかアクアが変じゃない?」
「ん~~~?」
「確かめてみよう。ねぇアクたん……そこのポーチ取って」
「今考え事してるから、自分で取って」
「それ位いいじゃん。取ってあげなよ」
「あ、ああ、はい」
「ほら! あかねにだけなんか素直!!」
仕方ないだろう。99点のアイなんだから、言われると体が勝手に反応しちゃうんだよ。
「アクたんあーいうのが好きなんだ」
「あかねきっちり仕上げたなあ」
「勝手に言ってろ!」
黒川あかねに無くて、アイにあるものそれは……
あ、カミキさんだ!?
そりゃそうだ。カミキさん無くしてアイは語れない
心のウエイトが6割カミキさんで占められているから、いくら表面を取り繕っても心の拠り所までは図れない!
しかし、そうなるとカミキさんの役は誰に……ってこの場合俺か?
うーん、試してみるか
「ほらほら好きなんか~? こういうあかねが好きなんか~?」
MEMちょも鷲見も悪ふざけしているんだから俺も良いだろう
あかねの肩に手を回して抱き寄せて、耳元で優しく囁く
「ええ、とても可愛らしいじゃないですか……思わずこうして抱きしめたくなるくらいにね」
「「きゃーーーー♡アクアだいたーん」」
「ぷしゅうーー」
二人の外野は顔を真っ赤に染めて手を取り合って小躍りして、あかねは顔から火が出そうなくらいに真っ赤にして湯気を出していた。
うん、100点のアイになったな
収録が終わって、カミキさんの事務所に行くとカミキさんが有馬の愚痴に付き合っていた。
「もう、『今ガチ』全然面白くないんだけど! カミキさんさぁーどういうこと!」
「……私にそんな事言われましても困りますよ」
「とりあえず、アクアにデレデレしている黒川あかねがいっちばん面白くないのよ! カミキさん黒川あかね口説いてきてよ! フリルもみなみも口説いたんでしょ? もう一人ぐらい増えても良いじゃない!」
「かなさん!? 流石にそれは私が言うのもアレなんですが、それはどうかと思いますよ。ほら甘さ控えめのスイーツ作りましたので食べててくださいね」
「カロリーは?」
「勿論配慮してますよ」
「ならヨシ!」
ならヨシ……じゃねーよ!? 人んちの親になんて態度取ってるんだこいつは!
「おい、有馬あんまりカミキさんを困らせるな!」
「まーまーアクアもそんなに怒らずに、アクアもスイーツ食べますか? 頑張って作ったんですよ」
ちぃ……カミキさんがそういうならここは引き下がってやる
「ちなみに飲み物はどうしますか? コーヒーにしますか? それともカフェラテにしますか?」
「私はカフェオレ」
「じゃあ俺はレモネードで」
「あ~ちょっと待ってくださいね。……戸棚にあったかな?」
カミキさんはそういうと戸棚を確認しにキッチンにパタパタとかけて行った。
そんな中入れ違いでツクヨミがやって来た。
「あ、女たらしのアクアが居るわね」
「誰が女たらしだ!」
「じゃあ、この動画を見てご覧なさいよ」
ツクヨミはそういうと今日の『今ガチ』のある部分を見せて来た。
映像の中の俺は黒川あかねの肩を抱き寄せて耳元でやさしく囁いていた。
『ええ、とても可愛らしいじゃないですか……思わずこうして抱きしめたくなるくらいにね』
「くぅぅアクアの女たらし!」
有馬はすっごい悔しそうに文句を言う
勝ち誇った顔をしているツクヨミ
「ツクヨミと有馬……表出ろよ! キャッチボールしようぜ」
「「アクア目がマジじゃないのよ!」」
「あれ、飲み物持って来ましたが後で飲みますか?」
魔が悪いタイミングで戻って来てしまったカミキさんはテーブルに飲み物を置いて首をかしげていた。
「か、カミキさんも来てくださいよ!」
「うん? キャッチボールですか? 私で良ければ構いませんが、グローブと野球のボール探して来ますね」
カミキさんとキャッチボールか……考えてみたら初めてやるなぁ