カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第39話

「ああ、アクアとかなさんとゆらさん……この人が『劇団ララライ』代表の金田一敏郎さんです」

 

 カミキさんはにこやかに紹介してくれた。

 

「「「初めまして」」」

「ほら、金田一さん若い子が挨拶しているんですよ? 一番年上の人が大人の態度を示さないといけませんよね?」

「クッ! カミキてめぇー……うぉっほん! あー今カミキから言われたが俺が『劇団ララライ』代表の金田一敏郎だ!」

 

 金田一さんの紹介が終わったタイミングで出入り口から特徴的な髪の人が入ってきた。

 その人は全体を見渡すとにこやかにしゃべりだした

 

「皆早いねーまだ10分前なのに……ま、揃ったみたいだから紹介始めちゃおっか……僕の名前は雷田。この劇の総合責任者で、……こっちが演出家の金ちゃんね」

 

 まさかの2回目の自己紹介

 

「……俺は済ませたから他の奴の紹介に移ってくれ」

「あ、そうなの? じゃあ脚本家のGOAさんと2.5経験豊富な鴨志田朔夜くん」

「よろしくです」

 

 七三分けのパーマの人が脚本家で、鴨志田って人はチャラい感じの人だな……

 

「あいつも鏑木Pの紹介だ」

「へー……」

 

 メルトの声は近くにいた俺とかなには届いた。

 

「ここからララライの役者さんでみたのりお、化野めい、吉富こゆき、林原キイロ、船戸竜馬、黒川あかね」

「よろしくおねがいします」

 

 紹介された中で返事をしたのがあかねだけってどうなんだ?

 

「最後に主演を務める……」

 

 雷田さんがそう言いかけた瞬間に壁を背にして座って寝てる……あ、姫川さんだ

 

「はい、大輝君起きてくださいね」

 

 さっきまで横にいたカミキさんがいつの間にか姫川さんの近くにいて体をゆすって起こしていた。

 

「んぁ? あれ、兄さん何でここに? まぁいいやこの劇の主演の……何だっけ? まあいーや、姫川大輝です。よろしくお願いします」

「はい、良く出来ました」

 

 カミキさんはそういうと姫川さんの頭を撫でまわした。

 うーん、今更ながらにアレが兄かぁー

 確かに事情を知ってしまうと、親が子供をあやしてるんだけど……

 中学生ぐらいの見た目にしか見えないカミキさんが見た目大学生の姫川さんの頭を撫でている姿はどうなのだろうか?

 

「このメンバーで一丸となり舞台『東京ブレイド』を成功に導きましょう!」

 

 雷田さんはそういうとテンションを上げて叫んだ。

 

「「おーー!」」

 

 乗っかったのはカミキさんと姫川さんだけだった。

 

 

 

「今日は顔合わせだが主要メンバーは一通りそろってるみたいだな。……なら、このまま本読みもやっちまうか、時間は半から始める。それまでは雑談するなり準備するなりしててくれ」

 

 金田一さんはそういうと出て行った。

 まぁ、GOAさんや雷田さんと打ち合わせでもするのだろう……

 

「アクアくーん」

 

 呼ばれて振り返ったら、あかねが駆け寄って来た。

 

 それにしても……あかねは髪の毛の伸びるスピードが速いような気がする……

 かなは月一位で美容院に行ってるから、全然分からないが……4か月ぐらい経てばこれぐらい伸びるのだろうか?

 俺の周りの女性と言えばアイやルビーにミヤコさんが居るが……三人ともロングだし、参考にならない

 今度かなにお願いしてロングにしてもらおう

 

「うん、あかねどうした?」

「一緒の劇が出来て嬉しくてね。ほら『今ガチ』の時は迷惑かけちゃったから……今度は私がアクアくんの助けになるよ。なにせ劇は私の本業だしね!」

 

 あかねからすっごい熱量を感じる!

 

「あかね……自信があるみたいだな」

「そんなんじゃなくて! 全然私まだまだだし自信なんて……!」

 

 やる気は満々だけど……やっぱり謙遜しすぎてるな

 

「今回の劇だけど私達一緒の出番が多いから、いつでも頼って欲しいなって思っただけだよ!」

「それは助かる。なんかあったらあかねに相談する」

「うん」

 

 そんな時だった。

 かなが物凄い目つきで俺とあかねを見ていて、横にいるカミキさんを詰めていた。

 

「カミキさん! アクアと私の一緒の出番が少ないんだけど!? この際濡れ場でも構わないから増やしてきて!!!」

「……私は演出家でもましてやプロデューサーでも無いですから無理ですよ!?」

「……だってズルくないですか!? 『今ガチ』で公認彼女になった所為で、あの二人は何処でもイチャイチャ出来るんですよ? 私なんか内縁の妻みたいじゃないですか……」

「あ~じゃあ良いお店紹介しますから……」

「カミキさんの紹介するお店高いでしょ?」

「……分かりました。支払いは私が持ちますので、煮るなり焼くなり好きにしてください」

「それは……やって良いって事ですか?」

「……親の私が決して言って良いことではありませんし、私自身が言えた義理はありませんが……避妊は必ずするのであれば協力しますが、条件としてこの仕事が終わった後ですからね!」

 

 そんな話し合いがあった事は俺は知らなかった。

 

「それにしてもかなとの共演はラストの数シーンだけか……」

「じゃあ、それまでは私がアクア君とイチャイチャ出来るね!」

「演技どこいった?」

「……勿論冗談だよ? ところでアクア君て演技に興味ないの? 私は楽しいし、演技の話なら無限に出来ちゃうなぁ~」

「……正直言うと別段そこまで情熱がある訳でも無いし、かと言って将来何になるかはまだ決めて無いから、今はバイト感覚でやってるだけなんだ」

「……そうなんだ」

 

 あかねと話していたら金田一さんも戻って来た。

 

「ほら、そろそろ時間だし本読み始まるぞ」

「……うん、ちょっとまって」

 

 あかねそういうと一旦目を閉じて一呼吸した後に目を開いた。

 その瞬間さっきまでの雰囲気が無くなり、女優としての顔になった。

 これが稀代の天才役者か……

 

 「行こ」

 

 そして、早速始まる本読み

 みんながみんな演技が上手く、特に一流の役者しか居ないと言われる劇団ララライの人達も驚く程レベルが高い

 しかし、そんな中でもかなは食らいつくどころか逆に食いつくさんばかりの演技をして、それに触発されたようにあかねも力を出し始めた。

 いや、これ本読みだよな?

 本番さながらな空気みたいになってるけれど……

 

「いやぁーそれにしてもこんなバチバチな有馬ちゃんとあかねちゃんの天才対決が本読みの段階からとは言え、特等席で見れるなんて嬉しいものだねぇ~見た感じは有馬ちゃんもあかねちゃんも互角って感じかな? 個人的には有馬ちゃんのファンだから負けないで欲しいなぁ」

「分からんよ。なんてったってうちには姫川がいるからな。……それにカミキの目の前で演じる訳だし、今日はいつも以上に乗るぞ」

 

 

「有馬……周りなんか気にせず、思いっきりやろうぜ」

 

 その瞬間姫川さんの姿が俺にははっきりと主役の『ブレイド』に見えた。

 それはまるでカミキさんの演技と同じものだ。

 

 そんなものを見せられたら役者として黙っていることなんてかなに出来るはずがなく、気色満面の笑みで演技に没頭し始めた瞬間。かなも『つるぎ』に化けた……

 

 

 まるで原作を映像化したとするならば、今見ている光景が”それ”なのだろう……

 時間にして非常に短く……ただのワンシーン位しかない光景だが、俺は目が離せなかった。

 

 

 

 

「姫川さんのおかげで久しぶりに演技を思いっきり出来ました」

「いや、俺の方こそすっごい楽しかった。この後飯でもどう?」

「良いわね、私も聞きたい事が山程あるわ! あ、メルトも来なさい」

「俺も行って良いのか?」

「当たり前でしょ!? 何せ私達は共演シーンが多いんだから」

「あ、じゃあ兄さんからお小遣い貰ってくるからちょっと待ってて」

 

「兄さん……今から3人で飯食って来るからお小遣い頂戴」

「ちょっと待っててくださいね。ハイ、10あれば足りますかね?」

「ありがとうー」

 

 演技中はかっこよかったのに終わるとやっぱり姫川さんは姫川さんだし、カミキさんは財布から諭吉10枚渡したけど……甘すぎじゃないか?

 

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