それは見学に来たアビ子先生の衝撃の発言から始まった。
「脚本……全部直してください」
「ぜ……全部って流石にそれは……」
焦る雷田さんはアビ子先生を説得しようとしていた時だった。
「……まずいな。彼女
ぽつりとカミキさんがつぶやいた。
「え? キレてる?」
そして、雷田さんは言ってしまった。
「もうこの脚本でOK頂いて稽古にも入ってるんです! 本番まであと20日ですし……」
「私は何度も直してくださいって言いましたよ。でも「実際に動いてる所を見ればこの脚本で良いのが分かる」って言うから……本当に良いならOKですけどって言いました」
アビ子先生はパラパラと脚本を見ながら雷田さんにとっての死刑宣告を告げる。
「でも良くないからOKじゃないですよね?」
「~~~~~~~~~~~!!」
雷田さんは冷や汗流しながら声に為らない悲鳴をあげた。
「先生……ご希望に沿わない脚本を上げてしまった事をまず謝らせてください」
GOAさんが謝罪をしたがその後がよろしくなかった。
「もちろん今からでも直せる所は直すつもりです。 しかしですね……事前に何度かやり取りさせて頂いて……私としては最大限意図を汲んだつもりです。ここからどう直せば良いのでしょう」
「貴女がこの脚本を書いた人なんですね……」
GOAさんを睨みつけてアビ子先生は詰め始めた。
「修正したい所は事前にお伝えしたはずですけど……読み取れてないんですね。どう直せば良い? 本当に『東京ブレイド』読んでくれてますか……?」
「勿論読ませて頂いてます! その上で原作の魅力を引き出す為の脚本を……」
そして、GOAさんがとうとう地雷を踏み抜いた。
「読んだ上でコレなんですか? 貴方が上げてくる脚本……このキャラはこんな事言わないし、こんな事しないってのばっかり……」
アビ子先生が爆発してしまった。
「別に展開を変えるのは良いんです。でもキャラを変えるのは無礼だと思いませんか?
「それは舞台というメディアの性質上……いえ修正箇所頂ければ対応も……」
「だから全部! どれだけ言っても直ってないんですよ……!」
脚本を叩いてアビ子先生はGOAさんを更に詰めたところで、金田一さんがカミキさんに告げた。
「……トラブル処理だ得意だろ? 行け」
「……貸しですよ」
カミキさんはそれだけ言うと怒れるアビ子先生の元に向かった。
え? この修羅場治めるのか……
「私がナメられてるだけ「アビ子先生がナメられているんですよ」……あんた誰!?」
「失礼私はカミキプロダクション代表取締役のカミキヒカルと申します。『東京ブレイド』では脇役を行っております」
「ちょっモガモガ」
「雷田……カミキに任せろ」
割って入ろうとした雷田さんの口を金田一が手で押さえつけて無理やり止めた。
「先ほどからアビ子先生は修正したい所は事前にお伝えしたはずとおっしゃっていましたが……それは直接GOAに言ったんですか? それとも何か書面で伝えましたか? 一番重要な所ですので正直にお答えください」
「はぁ? そんなのサブ担当編集に言ってますよ!」
「言ってるって言うの口頭で伝えたって事ですね? なら申し訳ないですが先生に非がありますね」
「はぁ!? あんたふざけてるの? 私はちゃんと「口頭でのやり取りで先生のおっしゃる事が100%伝わると本気で思いますか? 人はそんなに賢い生き物ではありませんよ」うぐぅ……じゃあどうしろって言うのよ!」
「書面でもメールでも形に残る物を送れば良かったんですよ……そうすればGOAなら先生の意図を何の問題も無く汲めたんです。なので、今回は一旦水に流して頂いてチャンスを頂けませんか?」
「……チャンスって何よ?」
「今この場に原作者と脚本家しか居ないんですよ? この場で話し合えば良いじゃないですか? 勿論先生が納得出来る形にGOAなら出来ますよ」
「……もし出来なかったら……いや、今この場で『鞘姫』の演技して、それで私が納得出来たら許す。それが条件!」
「……面白いじゃないですか」
不敵に笑うカミキさんはその姿を変える。
それは『あかねが演じる鞘姫』では無く、正に『東京ブレイド』の『鞘姫』が現実に見えた。
「ならば刀を抜きましょう。合戦です」
「……あわわ」
カミキさんの演技にアビ子先生が腰を抜かして座り込んでしまった。
「私の勝ちですね」
「……ね、ねえ他にも出来る?」
「脚本が完成したらいくらでも演じてあげますよ」
「約束だからね」
とりあえず、何とか解決したのか?
<後日>
そして、出来上がった脚本が……よりによってこれかよ
「全く……とんでもない脚本が上がってきたわね」
演劇ガチ勢は燃えているようだけど……これはちょっと荷が重いな
「説明台詞はゴリゴリ削られて……やたら『動き』だけでどうにかしなきゃいけないシーンが多い……
「そうは言うけど……かなお前楽しそうだな?」
「楽しそうな訳ないじゃない。何せ失敗したら責任は全部こっちのせいになるわけよ……大分無茶振りが過ぎるんじゃないかしら」
「何かなちゃん自信ないの?」
あかねもかなを煽りつつも、楽しそうに脚本を読んでいた。
「ハッ寝言は寝て言いなさいよあかね」
これだから役者ってやつは……