ひと悶着はあったものの、新しい脚本になったので心機一転稽古を再開することになったのだが……
また、新たな問題が発生した
アビ子先生による無茶ぶりで、カミキさんは永遠と演技をやらされていた。
長い髪が邪魔にならないように頭にタオルを巻いて、動きやすいジャージに着替えてはいるけれど、それでも汗をびっしょり掻いている事から恐らくかなり体力を消耗しているのだろう……
しかし、カミキさんもプロ根性なのか疲れた素振りは一切見せず、それどころか目がギラギラしている。
「カミキ次はこの役でこのシーンをやって!」
「分かりました」
何故こんな事になったかと言えば、早い話……カミキさんもアビ子先生の熱量を図り間違えたのだ。
『脚本が完成したらいくらでも演じてあげますよ』この言葉を文字通りの意味で受け取ったアビ子先生は目を輝かせてカメラを回している。
そうなると、メルトとゆらさんの演技指導が滞ってしまうのではと思ったが……カミキさんが手本を見せる見稽古を行って対応していた。
「い、いやーカミキさんのおかげで助かったね……脚本が尖り過ぎてるけど」
雷田さんは若干の苦笑いではあるものの、とりあえず無事に乗り切った事に安堵していたが、金田一さんはそうではなかった。
「全くあのバカは……せめて舞台が終わってからって言えば良いものを……」
「ま、まー金ちゃん落ち着いて……カミキさんが先生の相手をしてくれてるおかげで、それ以外は全部順調なんだから良しとしよう!」
カミキさんは犠牲になったのだ。
「ミキさんそれが終わったら、私の役も一回通しでやってください」
「え!?」
ゆらさん……その案有りだな。
「あ、それなら俺の『キザミ』も一回お願いします」
俺も便乗しようと思ったら先にメルトに言われてしまった。
「メルト君もですか……」
「カミキさんついでに『刀鬼』もお願いします」
まー便乗するけど……
「……わかりました。アビ子先生も一旦それで良いですか?」
「……うん、そうだね。一旦通しで見てみたいから良いよ」
「では……アクアちょっと悪いんですけど、コーヒー買って来て「僕が買って来ますよ」……雷田さん? 分かりましたでは、ブラックでお願いします」
「アクア君達はどうする? 僕が奢りますよ」
「じゃあ、スポーツドリンクで……」
「私も同じので」
「俺もお願いします」
雷田さんはそういうと笑顔で買いに行った。
「カミキ早く!」
アビ子先生そんなに急かさなくても……
「分かりました」
カミキさんも再度演技を行う
「~~~~~!!!」
アビ子先生……また腰砕けた。
今日の稽古は中々得るものがあった。
バイト感覚ではあったものの、俺もカミキさんの熱に充てられた所為か……熱くなりすぎていた部分があったが、それがよかったのか金田一さんからも一発OKを貰えた。
「じゃあ良い時間ですし、どこかで食べてから帰りませんか?」
「中華! 今度こそ中華が食べたい!」
「兄さん焼き肉」
「ミキさん私はファミレスでも良いですよ」
「俺は任せる」
「私もお任せで」
そんな話をしている時だった。
「カミキまだ終わってない!」
アビ子先生はそう言うとカミキさんの肩を掴んで離さない
「あの先生? もう今日は遅いですし……また明日じゃ駄目ですか?」
「じゃあ私の仕事部屋で続きやるよ」
「え!?」
アビ子先生はそう言うと何処にそんな力があるのか、カミキさんの首根っこ捕まえてずるずると引きずって行った。
「今日は解散しよう」
「そうだね。ミキさん連れてかれちゃったし……」
カミキさんは犠牲になったのだ。
「じゃあ、アクア中華食べに行こ」
「あ、私も行くよ」
いや、カミキさんの心配しろよ!
多分、ほぼ100%やるんだろうけど……また、愛人が増えるのかと考えると思うと残念でならないが、カミキさんが刺されない事を祈るばかりだ。
<次の日>
稽古場にて目の下が物凄い事になっているカミキさんとあった。
カミキさんが拉致された所は多数に目撃されているし、何ならアビ子先生も満たされた顔をしていた。
「カミキお前……もしや、アビ子先生とやったんじゃねーだろうな!?」
「私は女たらしではありますが……節操無しではありません! アビ子先生には手を出していません」
カミキさんにしては珍しいが……じゃあ一体何が?
「……徹夜で永遠と演技をさせられてました。アビ子先生があんな表情をしているのは資料が集まったおかげですね」
流石のカミキさんも徹夜明けの所為か眠たそうにしているが……
「カミキ今日の夜もお願いね」
「……分かりました」
いや、断れよ!!!