カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第43話

 カミキさんのおかげで俺もメルトもゆらさんも演技力が向上している。

 徹夜明けで眠そうにしていたカミキさんだが……いざ稽古が始まると、疲れた様子を見せずに、プロの一面を見せていた。

 一徹ならまだ大丈夫だろうけど……今日も徹夜が確定しているカミキさんは可哀そうではあるけれど、その甲斐もあってアビ子先生は満足しているようだし問題は無いだろう。

 例え壁を背にして寝ていたとしても……

 

 

 

 

 

 稽古の合間で休憩って訳では無いが……カミキさんが床に腰を下ろしていた。

眠気覚ましの為か、傍には未開封の缶コーヒーが大量に置いてあるが……そんなに飲んだらカフェイン成分の取りすぎで体に悪いぞ!

 今までもそうだけど、カミキさんは何でこんな無理をし続けているのだろうか?

 普通の人に到底出来ないし、俺だって前世のゴロー時代に医者として頑張った事はあったけど、無理をしたことは無い

 だから、知りたいと思ってしまった。

 

「カミキさん……隣良いですか?」

「アクア……ええ、構いませんよ。何かありましたか?」

「……何でそこまで無理をするんですか? 昨日だって徹夜で演技していたみたいだし、今日もするんですよね? カミキさんがアビ子先生に対してそこまで媚びをうる必要があるんですか?」

 

 それに対してカミキさんは相変わらず困ったような笑顔ではあるものの……眼だけはギラギラとしていた。

 

「私が無理をする理由ですか……そうですねぇ~」

 

 カミキさんはそういうとうーんと考え始めてしまったが、まさか理由が無いのか? と思ってしまったが、予想外の答えが来た。

 

「普通なら無理しなきゃ出来ないことなんてやらないほうがいいです。それは間違いありません……でも、世の中ってそんなに甘く無いんですよ。楽な方に流されて行けば……その先にある結末は悲惨なものです。何故なら、1度でも逃げた人はそれが癖になって、同じ状況になったら逃げるからです。一体そんな人を誰が信じられますか? って話ですね」 

 

 カミキさんは笑いながら答えた。

 

「あくまで私の持論で古い考えではありますので参考にはならないと思いますが、逃げる奴にはチャンスは絶対に来ないです。そして勝つためには無理をしないといけません。皆がみんなお手て繋いで幸せになるなんて事はありません。何故ならこの世は競争社会ですから、勝つか負けるかしかありませんね。なので、私に言わせれば博打となんら変わりありませんよ。そして、博打の醍醐味は……無理して勝つから博打は面白いんです」

 

 博打で例えてるけど……博打である以上は何れは負けるんじゃないか?

 生涯無敗なんてそもそもありえないし……

 

「……でも、それって理由じゃないですよね?」

 

 そうだ、これはあくまでカミキさんの考え方であって……無理をする理由では無い

 

「そうですね。これは理由じゃ無く……あくまで私個人の考え方です。そして、一番の理由は……私がプロだからですよ」 

「それは役者としてのって事?」

 

 カミキさんは首を振って答えた。

 

「いえ、それだけではありません。今回はっと言うよりも今回もなんですが、そもそも唯の役者が演出家を差し置いて演技指導を行ったり、プロデューサーを差し置いて原作者とのトラブルを解決するなんて事はまずありません」

「じゃあどうして?」

「……私のギャラってかなり高額なんですが、それはこう言った仕事も込みで高いんですよ。そして、舞台が成功するために必要な事ってアクアは何か分かりますか?」

 

 カミキさんの問いに単純に成功するだけなら、演技力の高い役者を揃えればそれだけで客はつくだろう

 

「……役者の演技力か?」

 

「それは最低条件ですね。役者が役をこなすのは出来て当然。やって当たり前ですよ? こう言った原作ありきの物で重要なのは……原作者と友好関係が築かれているかどうかです。そこさえクリアしていれば、原作ファンは必ずこっちに流れてきます。そして、それが呼び水となり新規が来るのです。結局の所……収益を上げる事に協力するのは当然なのです。役者だから役だけやっていれば良いと思っている人は何時まで経っても役者としてのギャラしか貰えません。しかし、それ以外にも強みがある人はその分が加算されて行くんですよ。まぁー主役ばっかりやっているとこういった事は磨かれませんがね」

 

「……ちなみになんですが、カミキさんは役者の仕事は好きなんですか?」

 

 俺自身は別段役者の仕事が好きな訳では無いけど、周りに迷惑をかける訳にはいかないから結果を出せるように努力はしている。

 でも、今の話を聞く限りカミキさんは別に役者の仕事が好きって訳ではなさそうだ。

 

「私は別に好きでも嫌いでもないですね。稼げればなんだって良かったんです。……それこそ、工事現場でも新聞配達でも掃除屋でも豆腐屋でもね。ですが、幼い頃から稼げる仕事は役者しかなかったので役者をやってます。なので、情熱が無い私は一流ではありません」

 

 カミキさんが2流を自称する理由がまさか役者の仕事は別段好きでも嫌いでもなかったからか……

 確かにあかねや姫川さんを含めた劇団ララライの人達は有り余る熱意を込めて演じているし、それは見てれば分かるが……

 カミキさんの演技からも俺は確かに熱を感じたが……

 

「……うーん、アクアの言いたい事は分かりますが、あえて言うならお金を頂いている以上は『プロ』なので、『プロ』としての自覚をもってやりましょうか? 好きか嫌いかは暇な時にゆっくり考えれば良いです」

 

 そう言うとカミキさんは演技指導に戻って行った。

 

「『プロ』としての自覚か……」

 

 何だか痛い所を突かれたな…… 

 

「アクア君今大丈夫?」

「ああ、あかねか……どうした?」

「ちょっと演技合わせて欲しいんだけど……良いかな?」

 

 あかねはそう言うと顔を赤くしてお願いして来た。

 ……可愛い彼女の頼みだし、彼氏としては答えてやらないといけないし……

 何より、俺もお金を貰っている以上は『プロ』だから何時までも甘えてばかりは居られないな!

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