「あかんてぇーーーこんなんバレたらうちクビになってまうぅぅ」
「大丈夫だよみなみちゃん! そうなったらヒカル君の事務所に胸を張っていけるよ?」
「その手があったか……ちょっと私クビになってきますね!」
「あ! フリルちゃんは駄目だよ!? 流石のヒカル君も違約金で何十億も払えないよ」
拝啓、カミキさんとお兄ちゃんへ
私が提案したことではあったけど……今会いに行きます。
敬具
「大丈夫だよみなみちゃん! もう敷地入っちゃったし、そもそも私達はカミキさんの関係者なんだから問題ないよ」
例え劇団ララライのトップが来ようが私達にはカミキさんっていう強い味方が付いてるもん。ここはイケイケGOGOだよ!
「ほら、私は本妻だから旦那の職場に行くのは全然問題ないよ! それにみなみちゃんもヒカル君のあられもない演技の練習見たくない?」
「ボス……私はとっても見たいです!」
フリルさんはそういうと何を想像したのか、目を潤ませて答えた。
女の私でもドキドキしちゃうぐらいのメス顔を晒してるけど……バレたらカミキさん刺されるんじゃないかな?
「フリルちゃんはちょっと落ち着こうか? まだ、ヒカル君に会ってないしね」
そういうママも目が爛々と輝いているし……
「じゃあ、アイさん……もしヒカルさんにあったら一番最初に甘えてもええかな?」
みなみちゃんもさっきまで『クビになってまうぅ~』て頭抱えていたのに……カミキさんの所に行けるってなった途端に女の顔を出してきた。
「良いよ♪」
あの嫉妬の塊だったママが何の戸惑いも無く即決で答えた!
一体ママは何を考えているのだろうか?
「ボス……2番目は私でも良いですか?」
フリルちゃん……以外と体育会系だったんだね。
確かにママはアイドルの頂点にたったし、今でもTVの第一線で活躍しているし、なんなら芸歴も19年位だったから、大先輩だけど……ボスってどうなんだろ?
いや、ママが嬉しそうなら私は全然構わないけど……
なんか複雑だなぁー
「もっちろん♪ 私は最後に疲れ切ったヒカル君をぺろりと頂くからね」
ママがそう言った瞬間にみなみちゃんもフリルちゃんも驚愕の表情を浮かべて……その手が有ったかと言わんばかりのリアクションを取っていた。
「あのさ、仮にも娘の前で濡れ場の話をするのはどうかと思うんだけど?」
「ルビー? 何か困った事があったらフリルママにすぐ相談するんだよ?」
「フリルちゃん? ヒカル君の共有は認めたけど、子供の親権を渡すことはしないからね?」
「うちは友達(兼母親)としてルビーの傍におるから寂しくはさせへんよ?」
「ルビーは私の子だよ? 二人とも調子に乗らないようにね!?」
「「アイさん(ボス)堪忍や(すみません)」」
そんな事を話していたらどっかで見た事のある男の人がいた。
大根みたいな演技していた人で名前はえっと? なんだっけ? 喉元まで出かかってるけど……出てこないもどかしい感じがする。
じーっと顔を見ていたら、アイがポンと手を叩いて件の男の人を指さして答えた。
「あ、思い出したし『今日あま』にいたナルト君だ!」
ママ……私でも分かるよ。……そこは絶対に間違えたらいけないってばよ。
「……ナルトじゃなくて、メルトです。カミキさんにはお世話になってます」
「……へぇーそうなんだぁー。ま、ヒカル君が君の事気に入ってるようだから私からは何も無いけど……結果ださないとね」
あのママ? 気に入ってるからと言って嫉妬するのはどうかと思うよ?
「『今日あま』見たけど……終始グダグダのダメダメだった。……だけど最終回だけは熱を感じた」
フリルちゃんも辛口評価だけど……やっぱりみんなが思う通り最終回の演技だけは……上手いとはお世辞にも言えなかったけれど、確かに熱があったの見てて分かった。
「はい……分かってます。ところで今日はどうしたんですか? もしかしてカミキさんに会いにきたんですか?」
「そう「お兄ちゃんの事忘れちゃ駄目だよ」……忘れる訳無いじゃない」
明らかにママは挙動不審気味なんだよなぁー
「アクアなら黒川と帰ったぞ?」
「そっかー帰っちゃったならしょうがないね」
「私はカミキさんに会い来た訳だし……」
「いや、お兄ちゃん……ここの所帰って来るのが、日付変わる頃だし、私てっきり……」
「……ところで君誰?」
あ、しまった。私とした事が迂闊だった。
「えー『2代目B小町』の星野ルビーです。兄のアクアがお世話になっております」
「……って事はカミキさんの娘か?」
「え、あ、ハイソウデス」
え? 嘘? なんで知っているの!?
「いや、あ~、そのなんていうか……」
「私が言っちゃったんだ♪」
てへって感じで舌だしてるママは可愛いけど……可愛いけど! アイじゃなかったら私は怒っていたかもしれない
「ほらールビー怒らないの~ヨシヨシ」
ママに頭を撫でられて落ち着けた。
まー人間誰しもミスはするものだからしょうがないよね♪
「ってなごんでいる場合じゃないよ! メルトさんじゃあ……お兄ちゃんは毎晩遅くまで何をしているのか分かる!?」
「……すまない。流石にプライベートな事だから知らないし聞いてもいないな」
そうだよね。
ならば……
「ちょっと電話して聞いてみるよ!」
私がそう言った瞬間だった。
「野暮はあかん。そっとしとき……」
「そ、そうだよルビー? アクアも高校生なんだし……可愛いあかねちゃんと一緒に居る訳で……」
「若い男女が夜遅くに帰ってくる。……つまりは」
「「「きゃー」」」
みなみちゃんもフリルちゃんもアイも一斉に恋の花が咲き誇った。
いや……いやいや、アクアだよ? あの陰キャボッチのアクアがそんな訳……あるかもしれない!
だって、カミキさんの血を引いてる訳だもん。
「で、でも毎晩だよ!? ここ数日毎晩なんだよ!? 男の人ってそんなに出来るものなのメルト君」
思わずここにいたメルト君に聞いてしまった。
「俺にふるな! 答えられねーよ!」
確かに答えずらい内容ではあるが……
「少なくともヒカル君は毎日4・5人は満足させてたよ?」
「……あれは凄かった♡」
「……得難い体験でした♡」
カミキさんとの体験を娘の前で言うのは複雑以外の何物でもなかった。
「とりあえずカミキさん呼んでくるんで待っててください」
あ、メルトさん逃げやがった
「君達……誰かの出待ち?」
唐突に知らない人が話しかけて来た。
振り返ってみるとプリン頭のチャラチャラしてる人だった。
プリン頭は私達を見ると物凄く驚いていた。
「え!? なんでこんなところに『B小町』のアイやルビーに不知火フリルが居るの? 俺大ファンなんだよね! 良かったら今度遊ぼうよ。そこのピンクの子も可愛いし、どこの事務所?」
プリン頭は明らかに女慣れしている様子だった。
「私は『キャノンファイヤ』です」
「えっキャノファとか笑う! あそこ結構友達多いんだよね。ノノンとか上野クレハとか」
「あー先輩です」
みなみちゃんも律儀に答えなくても良いのに……
「じゃあ折角だし、連絡先交換しよ? これ俺のライン」
「私はやめとくー」
「私も」
「うちも」
「……私も」
プリン頭は断られると思って無かったのか……絶句していたが、まだまだ諦めた様子は無く食い下がろうとしたが……
「鴨志田さーん金田一さんが来いって……緊急招集です!」
「えっ! マジ……ちょっと待って……」
「待たせるのは良いですけど……金田一さんに怒られるのは鴨志田さんだけですよ?」
「嘘だろ……あ~じゃあ今度あったらライン交換しましょう」
プリン頭もとい鴨志田は急いで離れて行った。
「みなみちゃん……脇甘くない?」
「あんなのは無視して良いのに……」
流石トップを取ったアイやフリルちゃんはガードが堅い
「いや、だって、ヒカルさんの立場が悪くなるおもって……」
みなみちゃん……ええ子や、しかし、それだけに愛人なのが悔やまれる。
「そんな訳ないよ! 芸歴だけで言えばヒカル君は私よりも上なんだよ?」
芸歴はカミキさんで年齢はママより下だから……何時から芸能界で働いているんだろう?
「みなみ……何かあってからじゃ遅いからヒカルさんの所に私と一緒に移籍しよ?」
「いや、フリルちゃんは駄目だって……金銭的に無理だよ!?」
「残念……」
フリルちゃんの涙目は同性でもドキドキしちゃうけど……流石に移籍は無理だよね? だけど……やっぱりカミキさんならって思わなくもない
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「んだよ稽古はもう終わってるのに……」
はぁー憂鬱だ。
咄嗟とは言え、やってしまった事に対しては後悔しては居ないけど……憂鬱にはなる。
「すみません。鴨志田さん……嘘です」
横目でこっちをじっと見ている。
いや、分かってるんだよ。俺だって、チャラついているし、なんなら女漁りもやる訳だから、ルール違反なのは理解しているんだ。
「……あの人達カミキさんの知り合いだから、手ぇだしたらマズイですよ」
「はぁ? 何それ……そんな理由で邪魔したの?」
言いたい事は良く分かるし、何なら逆の立場なら俺だって遠慮せずに行くけど……
「……俺なんかが鴨志田さんに何か言える立場じゃないですが、間違いなく仕事に支障が出ますよ?」
「お前ビビりすぎ! 出ねーから支障なんて!」
「鴨志田さんとは立場が違いますから……言いずらいですけど、それでも一応俺達はプロなんだから……」
「プロってロクに演技も出来ねー奴が俺にプロ語るとか笑う」
そりゃそうだ。
「ちゃらちゃらモデルやりながら片手間にドラマやって今度はコネで舞台のお仕事……っとまぁーお前自身自覚がある訳だし、さっきから言葉選んでいるから、大目に見てやるが、それでも俺は曲がり形にも実績が評価されてここに居るが、お前はどうなんだ? 実力ねぇー奴がイキって説教かましてくんの一番ダセぇってのは分かってるんだろ? 俺も姫川さんみたいな実績を持ってる人に言われたら聞く耳持つけどさお前は偉そうに言えないだろ?」
そうだ俺には言えない……そんな事は分かっていた。
だから、俺は電話で呼んでいたんだ。
「……じゃあ、私だったらどうしますか? 私もチャラチャラモデルをやりながら片手間にドラマもやっているし、コネで舞台のお仕事もやっている訳ですが?」
「いや、あの……カミキさんの事を悪く言った訳では無いです」
「誰が相手でも変わりませんよ。アイツが良くてコイツは駄目なんて理屈は通さないし、通しませんよ?」
鴨志田さんが焦ってるし、滝のように汗も流していた。
「……全く、実績が評価されたってカッコ良く言ってましたけど……それ以外は評価されて無いってことですよね? それに肝心かなめの演技だって私以下ですし、その程度の演技で満足している奴が私の前でプロを語るとは”可愛いものですね”」
はぁーとため息を吐いたカミキさんは鴨志田さんに近寄る。
「……時にはバチバチしたくなるのも分かりますが、役者なんですからやるなら舞台で白黒つけましょうね?」
「え、カミキさんとですか?」
「……負けるのが分っているのに私と勝負したいのですか? それは中々豪胆ですね」
「い、いえ」
「相手はメルト君ですよ? 良かったですね私じゃなくて……」
カミキさんがそう言うと鴨志田さんは明らかに安堵のため息を吐きだした。
けど、それを見たカミキさんは落胆していた。
「カミキさんは俺がメルトに負けると思いますか?」
「……逆に聞きたいですね。どうして鴨志田君がメルト君に勝てるんですか?」
俺も聞きたい……どうしてカミキさんは俺の事を買ってくれているのか?
「俺の方が役者としての経験は上ですから」
「何年やっているかは知りませんがその程度でですか?」
「うぐっ!」
「……あと私は何時でも勝負しても構いませんよ?」
俺はカミキさんに背中押されてこの場所を離れた。