カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第47話

 今日もかなとあかねが楽屋でバチバチしていた。

 二人の彼氏である俺としては、出来れば仲良くしてほしい所ではあるが……多分そうはならないのだろう。

 

「何睨んでいるのよ」

「睨んでないんですケド」

 

 かなの言う通りあかねは思いっきりかなの事を睨んでいた。

 

 トラブル発生したから、カミキさんに助けを求めたいところだが……楽屋の奥でメルトに対してやたらと熱心に演技指導を行っているし、メルトもそれに答えるように必死になっていた。

 その所為か、カミキさんは物凄くニコニコしているが……一体何でそんなにメルトの事が気に入っているんだ?

 

 丁度カミキさんとの付き合いが長い姫川さんも居る事だし聞いてみるか?

 

「姫川さんちょっと良いですか?」

「どうしたアクア?」

「いえ、カミキさん……何でメルトの事をあんなに気に入っているんですかね?」

「ああ、それね」

 

 姫川さんはそう言うとカミキさんとメルトのやり取りを見て……

 

「……ちょっとアクア耳貸せ」

 

 な、なんだ一体?

 姫川さんの近くに行くと肩に腕を回されて、周りに聞こえない程度の声量で喋りだした。

 

「昨日俺も兄さんから聞いたんだけど……鴨志田がメルトに対してやらかしたんだ」

「はぁ? それとメルトを気に入るのに何の関係があるんだ?」

「まぁ聞け……昨日なんだけどアイさん達がここに来たんだ。で、その時に鴨志田が偶々居合わせて、アイさん達をナンパしてたんだけど、メルトが機転を利かせて鴨志田を退散させた訳なんだけど……その後にメルトが鴨志田を注意したんだが内容は端折るが鴨志田は『ロクに演技も出来ねー奴が俺にプロ語るとか笑う』って言っちまったし、兄さんも聞いていたんだ」

「あっ……それって……」

 

 かなりまずいんじゃないか?

 だって仕事は別に好きでも嫌いでも無いってカミキさん言ってはいたけれど『プロ』って事には凄い拘りをみせている。

 

「今アクアが思った通り……かなりまずい! 兄さんはキレる演技はするけれど本当にキレた事は唯の一度も無い。だからこそ冷酷に役を奪って退場してもらうって言うある種の役者殺しを平然と行うんだけど……」

 

 姫川さんはそう言うとチラッとカミキさんを見て顔を戻す。

 

「今回は怒ってはいるけれど……メルトのおかげで鴨志田は首の皮一枚で繋がっているようだ」

「え? メルトのおかげ?」

 

 言っている意味が分からない!? どういうことだ!

 

「……さっきも言ったように兄さんは役者から役を奪う事に関して一切の躊躇がない……何でか分かるか?」

「いや?」

「今なら、効果はあるが……兄さんがまだ劇団ララライで役者をやっていた時なんか鴨志田以上の奴らが多くいた訳で、女性なら口説いて手籠めに出来るから問題は無いけど……」

「問題だろ!? え? まさかそんな時から女たらしなのかカミキさんは?」

「……ああ、そんな時から『女たらしのカミキヒカル』で有名だった」

 

 そりゃ当時の監督連中は知っている訳だし……五反田監督も男の筈って言うよな……

 

「で、話を戻すけど……兄さんの見た目ってアレじゃん? だから男性に対して注意しても意味は無いと思ったから、努力してあの演技を身に着けたんだろうな」

「……それと今回の話がどう関係が有るんだ?」

 

 カミキさんが当時から実力主義なのは分かったが、それとメルトが気に入られる理由が分からない

 

「兄さんは注意する事をしなかったけど、メルトはちゃんと注意した。今回は偶々兄さんの関係者だったから言えたのかもしれないが、それでも自分よりも上の人間に対して言えた訳だ。これって当たり前の事なんだが……中々出来る事じゃないし、俺にも出来ない。俺も兄さんもそうだが役者ってやつはどうしても実力が物をいう世界だから、文句があれば演技で黙らせるって思考になる」

「じゃあ、今回は……」

「メルトの演技力で黙らせる方向だろうな」

「それって大丈夫なのか? カミキさんが演技指導を行っているからメルトもメキメキ上手くなっているけど、相手は鴨志田だろ? 腐っても実力で選ばれた以上は厳しいんじゃないか?」

 

 2.5の経験豊富で俺から見ても鴨志田は上手い部類に入る。

 経験不足のメルトじゃあ厳しいと言わざるを得ない

 

「アクアはまだまだ甘いな」

「え?」

「アクアもメルトを侮っているってことだ……メルトの演技を良く見て見ろ。兄さんが演技指導している事もあるが……俺はメルトの演技から確かな熱を感じる。他はどう思うか分からないが……金田一さんが今のメルトを見ても満足すると思うぜ?」

「……熱?」

「そう、熱だ。うかうかしていると俺もメルトに喰われちまうかもな」

 

 姫川さんは楽しそうにして話は終わりだと切り上げて出ていった。

 役者ってやつはどいつもこいつも負けず嫌いが多いし……これは舞台も荒れそうだ。

 

「かなちゃんなんか『ピーマン体操』が代表作のくせに!」

「あかねだって代表作は『恋愛リアリティーショー』でしょうが! マルチタレントはどっちよ!」

 

 俺の彼女達も気が付いたら口喧嘩がヒートアップしてきていた。

 俺の胃も荒れそうだ。

 

 舞台までまだ日数は大分あるけど……胃薬買って置いた方が良さそうだな……

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