カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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アクア視点


第51話

「いまの」

「ね!?」

 

「「()()()()だ!」」

 

 

 メルトの大見得で会場内は何処もかしこも色めきだっていた。

 女性の観客も多い事からキャーキャー黄色い悲鳴が聞こえてくる……

 

 観客席に座っているアビ子先生も目を輝かせて喜んでいるし、隣に座っている吉祥寺先生だって驚きのあまり息を吞んでいた。

 

 舞台の横で見ていた俺やかなだって驚いてるんだが、一人だけニヤニヤしている姫川さんが居た。

 

「ねぇアクア……今のってもしかして?」

「ああ、カミキさんがメルトに仕込んだんだろうな」

「……メルトやるな。良し有馬俺らもなんかやろうぜ?」

「いや、姫川さん流石にぶつけ本番ではダメですからね」

「ダメか……」

 

 かなに注意されて姫川さんは若干ではあるけど落ち込んでしまった。

 

「それにしても鴨志田の奴……動揺しているな」

「そりゃそうでしょ! 稽古中に散々馬鹿にしていた相手がよもや本番で化けてくるどころか、あんな隠し玉用意していたら、たまんないわよ!」

「ああ、たまんないな! ……『ブレイド』じゃなくて『匁』やれば良かったと思うぐらいに嫉妬するレベルだ」

 

 かなも姫川さんもとても生き生きし始めたし……二人ともメルトの事買ってるな!

 いや、役者って奴はカミキさんも含めて本当に負けず嫌いが多いな!

 

 だけど、あくまで『多い』であって『全員』ではなかった。

 鴨志田は良くも悪くも”上手い”役者ではあった。

 稽古中だって……リテイクなんて無かったし、脚本通りのキャラを演じてはいたが、そこには我が無かったように見えた。

 

 それに引き換え姫川さんはリテイクこそ無かったが……たった一回のシーンで4通りの演技を披露して、意見を貰っていた。

 正直俺には違いが全く分からなかった。

 

 舞台からは観客の大歓声と絶えず刀と刀を打ち合う音が聞こえる……

 『キザミ』が初めて出会った『匁』に敗北し、地面に膝をつくも根性だけで相手に立ち向かうシーン

 

 『匁』の一撃を受けて大きな傷を受けた『キザミ』は数歩よろけて、膝を折り地面に座り込んだが……刀を支えにして立ち上がる。

 

「てめぇー……みてぇなやる気のねぇ奴に……負けてたまるかあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 『キザミ』は啖呵ともに立ち上がると刀を上段から一気に振り落としてなおも叫ぶ

 

「俺は誰にも負けねぇ」

 

 

「じゃあ、出番だし行って来るね」

「……なんかやりたいなぁ~。あ、そうだ有馬なんかアドリブしろよ? ちゃんと拾ってやるからさ」

 

 姫川さん……自重してくださいね。

 かなだって、こま……困るどころからテンション上がっているなこいつ!

 

 

「よくやったわキザミ! 後は私達に任せない!」

 

 舞台に上がればさっきまでの砕けた普段と違い……そこには真に迫った演技がある。

 さっきまで楽しそうにしていた姫川さんも流石に『ブレイド』の役を崩さないようにめんどくさそうではあるものの演じている。

 

 

 しばらくして、鴨志田とメルトが舞台袖に戻ってきた。

 鴨志田はメルトを見ると終始ニヤニヤしていた。

 よほど、さっきの演技が気に入ったのか、メルトに話かけようとチラチラ見ていたが……当のメルトが全く目を合わせようとしないどころか、この後の台本を再度確認して演技を見直していた。

 いや、真面目かよ!

 確かにまだ終わって無いから、気を抜くのは違うけど……ちょっと位は構ってやれよ!

 

「……ま、しゃあねーか」

 

 それはそれとして、鴨志田も特に気を悪くした様子は見せずに次の出番に備えていた。

 俺も出番が近いし移動しよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新宿クラスタ……厄介な奴らみたいだな」

 

 俺の一番最初のセリフがこれだ。

 『刀鬼』って役はあんまり感情を出さずに淡々と事務的に事をこなすから、楽で良いんだけど……

 

「何も考えていないバカの集まりですよ。全員倒せばそれで良いと思っている」

 

 『匁』って戦いたく無いって言うわりには毒を吐くんだよな。

 

「それでどうします? あいつら攻めて来ますよ」

 

 刀を持ち何時でも抜けるようにしながら答える。

 

「俺は姫の懐刀だ。ただ、持主の指示に従うだけだ」

 

「君に意見を求めたのが間違いでしたね。少しは人間味というもの持ったらどうですか……」

 

 それに対して匁は呆れたようだ。

 

 

 

 舞台が暗転して、場面が切り替わるとようやくあかね扮する『鞘姫』の登場だ。

 

 目を閉じて鎮座する姿はとてもかなと言いあってる普段のあかねと違いすぎており、稽古中も戸惑ってしまった事は多々あった。

 

「刀を抜けば……血が流れる」

 

 眉間にしわを寄せる事で葛藤を表現しているのが俺には分かる……

 

 本来『鞘姫』には長めの語りがあったが……カットしてしまい動きだけでの表現となってしまったが……

 

 自身の近くに置いた刀をゆっくりとではあるが手にする。

 葛藤はある……

 

「……ですが、戦わねば守れないものもあるのでしょう」

 

 だからと言って黙ってやられる訳にはいかない

 

「ならば刀を抜きましょう。合戦です」

 

 『鞘姫』の言葉を皮切りワァァァァと渋谷クラスタの士気は高まる

 

 背が低い脇役が居たから多分カミキさんはこっち側に居たようだ。

 

 

 

 

 そして、シーンはハイライトになり、新宿クラスタと渋谷クラスタが衝突する。

 

 俺の相手は姫川さん扮する『ブレイド』で、『キザミ』は『匁』でそうなると俺の彼女達であるツルギ(かな)鞘姫(あかね)が戦うというまさしく普段の光景であった。

 何時もはカミキさんや俺が頑張って仲裁するんだけど……流石に役をほっぽってそんな事は出来ないし、かと言ってカミキさんっぽいのが端っこに居るけど……なんかやべー奴を抑えるのに必死そうだった。

 

 コレ大丈夫なのか?

 

 

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