カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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ルビー視点


第52話

 舞台は既にハイライトに差し掛かっているが、私としては一刻も早く……何なら今すぐにでもミヤコさんと一緒にこの劇場から逃げ出したい!

 一体私とミヤコさんに何の罪があると言うのだろうか?

 

「……ヒカル♡」

 

 千佳さんは恍惚な表情でカミキさんを見ている

 

「……ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい」

 

 アイは生気のない目でカミキさんとゆらさんの演技を見ている。

 まぁーあんなに付きっ切りで一緒にやっていれば多少の嫉妬は仕方が無いかもしれないし、これでもマシになった方だ。

 修学旅行とカミキさんが入院していた時の事は思い出したくもない!

 

 そして、私達の席の真後ろには世界の評論家がいる訳だ。

 恐ろしい事に小さい声ではあるものの時々漏れており、英語で喋るのかと思えばバリバリの日本語で喋っており、メルトの『キザミ』を見た時なんか、「なんだアレは良いじゃないか!」って喜んでいたけど、反対に『匁』の人の演技は「はぁー」ってため息しか吐いて無かった。

 

 そして、今は……

「なんであの小さい子は脇役なんだ!? 馬鹿にしているのか? 彼に主役級をやらせないなんて一体監督は何を考えているんだ!!」

 

 大変お怒りになられております。

 

 いや、カミキさん……凄い事やっているのよ。

 ゆらさんが周りの役者を喰おうとしているから、それを抑える為に寧ろ脇役全員をスポットライトに当たるようにしてなおかつ、メインキャラが前に出ようとしたら、そっちに視線を誘導するためにわざと移動して視界に入る様にする徹底振りだ。

 

 視野が広いなんてもんじゃない!

 まるで真後ろに目が付いてるじゃないかと思える動きだ。

 

 そんな中あかねちゃん扮する『鞘姫』がとんでも無い事をやり始めた。

 それを察知したのかカミキさんも邪魔にならないようにみんなの存在感を消す様に静かな演技に切り替える。

 

 『鞘姫』は舞うような動きで一瞬にして、全ての視線を奪っていく!

 そこからは『鞘姫』の独壇場になってしまった。

 先輩も流石に今は場を譲って黒子に徹しているし、後ろからは「ふむふむ」と聞こえる。

 

 胃が……胃が痛いよ!

 

 なんで私はこんなストレスに晒されてる状態で舞台を見ているのだろうか?

 

 そして舞台は暗転して『刀鬼』と『ブレイド』の一騎打ちが始まる。

 

「さあ語ろうぜ。俺達の刃でよ」

 

 流石姫川さん……看板役者なだけの事はある。

 カミキさんの事務所に何時もご飯食べにくるから、てっきりお金が無い貧乏な人だと思っていたけど……決める時はバシッと決める超一流だ。

 普段のダメっぷりが本当に嘘の様だ!

 

 それとは別にお兄ちゃんは……無感情って言うか何時もの陰キャ特有のオーラだった。

 

 姫川さんが陽キャオーラで熱い演技しているからか、なんかすっごい際立つし……なんか女性の観客もきゃーきゃー言ってる。

 いや、アレはクールに見えるけど……結局は普段と変わらない陰キャだからね!

 

「うんうん! アクアも良い役者になったねぇ~大輝君が熱いから対比で対応か~やっぱりアクアは天才だね♪」

「アイ……絶対違うよ。お兄ちゃんめんどくさがって無感情になっているだけだよ……」

 

 後ろの人達からは声が聞こえないからどっちに転ぶか分からないけれど……私以外の観客の反応は概ね良さそうなのがなんか気に入らない!

 

 そんな事を考えていると、舞台に『鞘姫』と『ツルギ』も出て来ていて、『鞘姫』が後ろから『ツルギ』に切りかかったが……

 

「避けろ『ツルギ』!!」

 

 キィィィンと刀を打ち合う音が響く

 寸前の所で『ブレイド』がそれを防ぎ『ツルギ』を突き飛ばした。

 そして、『ツルギ』が押された場所はお兄ちゃんの居るところだった。

 

 お兄ちゃんは『ツルギ』のほっぺを片手で抑えて

 

「女……遊んでいる場合か?」

 

 お兄ちゃん……先輩のほっぺたを堪能している?

 

「命を賭して死に会うのは男だけで良い。男に守られなければ戦場に立てないようならば、今すぐこの場を去れ」

「わっ私は戦える!!」

 

 次の瞬間お兄ちゃんはやっぱりカミキさんの子である事を私は確信した。

 

「こんなに柔らかい身体をしてか? もう少し鍛えたらどうだ?」

 

 乙女の二の腕を触った!!

 これはもうおっぱいを触っているのと同じだと言っても良い位だ!

 

ちょっあんだ! 乙女の魅惑ボデーに何すった!

 

 案の定先輩が舞台の上でメス顔晒しているし……

 

「お前は女だと言う事だ」

 

 これリアル彼氏じゃなきゃ完全にアウトだよね!

 

「アクアがカミキさんみたいになっちゃってる」

「ヒカルは女性の身体にむやみに触れません!」

「そ、そうだよ! ヒカル君は女たらしだけど……ちゃんと合意の上でしか触らないよ」

 

 親のアレコレは聞きたくなかった。

 

「男は女を命を賭して守るものなのだろう。俺は絶対に負ける訳には行かないのだ」

 

 これ本当に台詞なのだろうか? 台詞の振りして先輩を公衆の面前で口説いてるだけなんじゃないかな?

 その証拠に先輩も先輩で太陽みたいに輝く演技をし始めたけど……事情を知っている私からするとメス顔なんだよね。

 

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