カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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ルビー視点


第54話

 今日も今日とて舞台公演をお兄ちゃん達は行っている訳だけど……

 私達『二代目B小町』はメンバーの先輩とあかねさんとゆらさんが居ない以上MEMちょとの二人だけしかおらず、活動がない! 動画も無い! 学校と事務所をぐーるぐる! 私こんなアイドルいやだぁぁぁぁ

 

「みやえもーん。何か仕事無いのー!」

 

 涙目になってミヤコさんに泣きついたけど……

 

「そうねぇ~。カミキさんの所もお芝居で忙しいみたいだから、新しい仕事は取って無いみたいだし……」

 

 ミヤコさんはそう言うと自身の頬に手を当てて考え込んでしまった。

 

 くぅ~私個人の仕事も無いなんて、アイドルは世知辛いよぉ~

 

「知名度はあるのに……知名度はあるはずなのになんでこんな事に!」

 

 思わず地団駄を踏んでしまった時だった。

 

「ミヤコ戻ったぞー」

「ミヤコさんたっだいまー」

 

 斎藤社長とママが帰って来たが、ママの目は相変わらず生気の無いどんよりとした目だった。

 口調だけは元の状態を維持しているのが軽くホラーである。

 

「あっルビーどうしたの?」

 

 どうしたのはこっちのセリフだよ!?

 昨日『東京ブレイド』を見に行って、最後にお兄ちゃん達と楽屋で話していた時はまだ嫉妬に燃えていたのに……私がトイレに行って戻って来た時には既にこの状態だった。

 ママ本人には怖くて聞けなかったから、お兄ちゃんが帰ってきたら聞こうと思ったのに……お兄ちゃんその日はカミキさんの所に泊まって帰って来なかったし……

 訳が分からない状態のまま今に至っているけど……

 これ、今聞いて大丈夫かな?

 いや、聞くべきでしょう!

 

「ママ……なんか昨日からおかしいけどどうしたの?」

 

 そう聞いた瞬間ママは目をウルウルさせてこっちに来た。

 

「るびぃぃーひかるくんがねぇぇひかるくんがぁぁぁぁぁ」

 

 びぇぇぇんと泣きだしてしまったママを見て思わず思ってしまった私は決して悪くは無いだろうし、今後同じ事が起ればこの感情はまた出てくるだろう……

 ”可哀想は可愛い”

 傍から見たら20代にしか見えないけれど、実際は32歳で娘である私の胸に顔をうずめているママはしばらく泣き続けていた。

 

「よしよし、私はママの味方だからね」

 

 ママの頭を撫でながらあやす。

 こんな事をしても私は許されるのだから娘である事に感謝してしまう

 

 

 しばらくして、漸く落ち着いたのかママは語りだす。

 

「ヒカル君にねぇ……ひっく……あの後お願いしたの……ひっく……私も一緒に共演したいって……だけどねぇ『アイさんは……ひっく……主役しか出来ないから……ひっく……ダメです』って断られたの」

 

 そりゃそうだよ!

 逆になんでイケると思ったのだろうか?

 そもそもが稽古期間終了しているんだから本番からスタートなんてどんな劇でも出来る訳がないし……

 仮に出来たとしても、カミキさんはゆらさんの相手で手がいっぱいだったから、ママの面倒は見れないだろうし……

 

「私だってその気になれば脇役ぐらい出来るもん!」

 

 もんって言ってるママは可愛いかったけど、斎藤社長から痛恨の一撃が下された。

 

「アイには天地がひっくり返っても出来ねーよ。大体脇役で5分のシーンを取ったはずなのに僅か10秒で出番終了になったの忘れたのか?」

「私悪くないもん。言われた事を完璧に熟しただけだもん」

 

 私……完璧すぎたのが仇になるって初めて知ったよ。

 

「……それで壱護どうだったの?」

 

 ミヤコさんがそう言うって事は事情は知っていたのね。

 それに対して斎藤社長は首を横に振って答えた。

 

「……全部断られた。何処もかしこも同じ事を言われたよ『主役だったらいくらでも用意しますけど、アイさんの脇役だけは勘弁してください』ってな。俺土下座した事はあったけど、脇役を断る為に土下座されたのは初めての経験だったぜ。喜んで良いのか悪いのか全く分からないがな……」

 

 斎藤社長はそう言うと渇いた笑い声をしながらソファーに腰かけた。

 

 協調性が大事って事が良く分かった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があったんだけどフリルちゃんはそう言った経験ある?」

 

 学校の教室でお昼ご飯を食べながら、経験豊富なフリルちゃんに尋ねた。

 

「流石ボス……申し訳ないけど、私はちゃんと脇役をカットされずにきっちり時間を全うしたことしかない」

 

 大きなおにぎりほう張りながらも答えてくれたフリルちゃんはどのタイミングでも可愛い

 

「……それが普通なんよ。そもそも何で5分のシーンが僅か10秒になるん!?」

 

 みなみちゃんの意見は本当にその通りなんだけど……

 

「ちなみにボスの脇役で最長シーンってどれくらい?」

 

 フリルちゃんそれ聞いちゃうんだ……

 

「……覚えてないけど、分は超えなかったかも」

 

 ママはそう言うとズーンって落ち込んでしまった。

 

 演技が上手い下手とかじゃなくて、主役の女の子を喰っちゃうのが最大の理由にして欠点なので喜んで良いのか悲しんでいいのか分からないよね。

 

「……そうだ! アイ良い事思い付いた!」

 

 というか脇役の事は脇役のスペシャリスト事カミキさんに聞けば良いのだ!

 なんで思いつかなかったんだろう?

 

「カミキさんに脇役の何たるかを教われば良いじゃん!」

「ルビー……それナイスアイディアだよ! 『東京ブレイド』が終わったら私ヒカル君と組んずほぐれずそのまま夜の稽古もしちゃうよ!」

「ボス私もお供します」

「アイさん一人だと不安やからうちも行く」

 

 あ、これ私間違えたかも…… 

 

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