カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第55話

 『東京ブレイド』の公演が始まって数日が経過した。

 楽屋に戻ると演者の大体が疲れており、特に女性陣なんかはぐだーとしている。

 

「アクアぁー疲れた肩揉んでぇー」

 

 かなも大分お疲れの様で、普段キッチリしていて身の回りの事は自身で行っているのだが……こう言った時は俺に素直に甘えてくれる

 可愛い彼女の為だし、彼氏としてはちゃんと労ってやらないとな!

 

「かな……お疲れ喉は乾いて無いか?」

「そっちは大丈夫……それにしてもアクア何気なく上手いわね。普段からこういったマッサージとかやってるの?」

「まぁーうちには稼ぎ頭が居るから、家に居る時ぐらいはゆっくりさせてあげたい」 

「ふーん。じゃあ、次は私が代りにアクアの肩揉んであげるわ」

 

 素直なかなは可愛いものだ。

 

「よし、今日の舞台も良い感じだったし……飲みに行くか!!」

「ええっ今日も!?」

 

 みたさん……そんなきっちりスーツ着ている割には飲みに行くの好きだな……舞台人は好きな人が多い

 

 そして、こういう時に率先して動くのがもう一人の彼女であるあかねだ。

 

「予約は任せてください! このあたりで当日団体OKな店のデータはいくつか押さえてあります!」

 

 真面目で大人しいあかねはこういった事が大好きなのか、参加率は今の所100%だ。

 周りの人間が良いか悪いかは置いといて、あかねも美少女だから彼氏としては心配になってしまうので、俺も今の所参加率100%だったりする。

 

「アクアは今日も行くわけ?」

「あかねを一人にする訳には行かないだろ? 何かあってからじゃ遅いしな」

「……クッ、じゃあ私も行かない訳には行かないわね」

 

 そして、俺が来ると言う事はかなも参加する訳なので、三人揃って参加率100%になって居た。

 

「姫川もこの後行くよな?」

「あーそうだな」

 

 みたさんが姫川さんを誘うって事は当然……

 

「兄さんとおっさんどうする?」

「私は大丈夫ですよ。最近は事務仕事もニノやメイが手伝ってくれてますからね」

「あ、ミキさんが行くなら私も行きますよ」

 

 そんな事言ってるが、それでもカミキさんが忙しい事には変わりはないんだが……

 

「おっさんが居たら気を遣うだろ? 若者だけで楽しんで来い」

「金田一さんも偶には良いんじゃないですか? 交流するのも上の務めですよ」

「そうですよ。それに気なんて使いませんから一緒に行きましょう!」

 

 カミキさんとあかねの言葉により、考え始めた金田一さんだが……

 

「んー……じゃあ行くか」

「決まりですね」

「やった!」

 

 金田一さんも行くことが確定した。

 

「あ、俺も参加して良いですか?」

「勿論だ!」

 

 メルトも今日は参加するようでみたさんは食い気味で答えたが……

 

「クッ……この後も俺は舞台があるから行けねーな」

 

 鴨志田さんが悔しそうにしていた。

 最近というか舞台の初日以降から、鴨志田さんの様子がおかしくメルトに絡もうとするも、タイミングが悪く話す機会が全く無いどころか、こういった飲みも鴨志田さんが参加する日はメルトに用事があったり、逆にメルトが参加する日は鴨志田さんが舞台があるのでお互いにすれ違っているのだ。

 そして、メルトはその事を全く気にしていないが、鴨志田さんが悔しそうにしているのが問題だ。

 もしや……と思わずにはいられないが、まさかそんな訳無いよな?

 だって、鴨志田さんはカミキさんと違い飲み屋のお姉さんとかナンパしているし……逆にカミキさんは逆ナンされているけど、今の所は手を出してはいないようだが、正直な事を言えば俺も男なので、かなり羨ましいと思ってしまう。

 

 

 

 

 

 飲みと言えば大体が焼肉屋である。

 そして、あかねプロデュースも例外無く、お店は炭火焼肉ホルモン『ハジメ』であった。

 若い身体は良いものだ!

 どんなに油っこいものを食べても胸やけなんかせず、次の日に持ち越さないし、無限に食える……と、思っていたが、カミキさんも姫川さんもかなり食べてもケロリとしているし、胸やけをしている様子は一切ない

 この事から俺は若い身体だから食べられる……では無く。前世のゴローの肉体がそう言う体質だったのかもしれないと、カミキさんを見て思った。

 つまる所……俺はカミキさんの遺伝子のおかげで今生では焼き肉を楽しめるのだ!

 不本意ではあるし、こんな事を考えるのは間違っているのは分かっているんだが、皮肉にもあのストーカー野郎が殺してくれたおかげで俺は今幸せなんだよな~

 

「アクア君焼けたよ♪」

 

 あかねはそう言うと、トング二刀流で焼けた肉を小皿に次から次へどんどん持ってくるだけじゃなく、追加の肉もどんどん頼んでいる。

 彼女が甲斐甲斐しく世話をしてくれるのは嬉しいものだ。

 反対に……

 

「だからね!? 役者も一人の作家であるべきなのよ!」

 

 ジンジャーエールをジョッキで飲んで、まるで酔っぱらっているかのように管を巻いてるおっさん染みたかなを見ると何とも居た堪れない気分になる。

 

「つまり、カミキさんみたいな事が出来る役者が増えれば良いのか?」

「そう! 私が言いたいのは、結論を言えばカミキさんみたいに出来る人が増えれば、より面白いものが出来ると思うのよ!」

「だけど、それは本来演出家の仕事だろうし……カミキさんは例外だろ?」

「そうだけど! 作劇的な盛り上げに加担しなきゃいけない訳よ! 大体何もしなければエキストラと何ら変わらないし、そんな役者に未来は無いわよ。上手いだけの役者なんてこの業界には掃いて捨てる程いる訳なんだから!」

「そうだな……時にはチャレンジも必要だし、それこそ駄目な芝居なら言ってくる訳だしな」

 

 演技の話でかなはみたさんと物凄く盛り上がっている。

 本当にガチの連中は演技に関しては無限に喋れてしまうのだろう

 

 チラッと横を見るとカミキさんが肉を焼いてせっせと金田一さんと姫川さんの小皿に移しており、2人は静かに食べていた。

 そして、カミキさんは器用な事に右手にトング左手に箸を持って二つの事を同時にこなしていた。

 

「金田一さん隣良いですか?」 

「星野か……」

 

 金田一さんは焼かれた肉を見ながらゆっくり話だした。

 

「芝居少しずつ良くなって来ているな。このまま千秋楽まで気張れ」

「ありがとうございます。……金田一さん質問良いですか?」

「言って見ろ」

「カミキさんって劇団入った当初はどうでした?」

 

 興味本位ではあったけど、こう言った席でしか聞けないから思わず聞いてみた。

 あんな演技をする訳だから、俺とは違ってカミキさんもきっと才能に満ち溢れていたのだろう

 

「それは俺も興味あるな」

「……だってよカミキ? 答えて良いか?」

「……まぁ別段隠す事では無いですから良いですよ」

 

 金田一さんはニヤッと笑いカミキさんはどこか諦めた様子で答えた。

 

「今でこそ、奇才だのなんだの言われてるカミキだが、入った当初は下手くそだったし、才能に関して言えば全くないぞ」

「「嘘だろ!?」」

 

 俺も姫川さんも思わず驚いてしまった。

 

「……なんで姫川さんも一緒に驚いてるんですか」

「いや、俺だって兄さんが下手くそだった事知らなかったし、ましてや才能が無いなんてなぁー」

 

 そうだよな。あんな演技が出来るのに才能が無いなんて、一体どういうことだ?

 

「いえ、本当の事ですよ。私に演技の才能……言い換えれば嘘を吐き、それを信じさせる才能はありません」

 

 そう言ったカミキさんは淡々と告げた。

 

「業界ではスター性だのなんだの言いますが、実際のところ嘘なんか吐かない方が良いんですよ。結局の所嘘は何処まで行っても嘘なんで、(まこと)にはなりません。それだったら最初から(まこと)を言えば良いんですよ。嘘はいくら隠してもいつの日か白日の下に晒されますが、(まこと)は晒された所で何ら問題は無いですし、寧ろ胸を張って堂々と言える分説得力があります」

 

 カミキさんはそういうとジョッキに注がれたビールを一気に飲み干した。

 

「舞台の上では誰もが嘘を吐いてる訳ですが、ただ一人だけ本当の事を叫ぶだけで注目されるのならこれほど美味しい事はありませんよ。だから私は『本気』でやってます」  

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