カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第56話

 カミキさんの演技に対しての考え方は分かったが……

 

「星野……メソッド演技って知っているか?」

 

 金田一さんから唐突に聞かれたメソッド演技

 俺の知らないものだったので、首を振って答えた。

 

「いえ、分かりませんがそのメソッド演技ってなんですか?」

「メソッド演技ってのは、与えられた役や演劇中のシーンにおいて、その情動に応対した わざとらしさがない演技法だ」

 

 そこで、一旦言葉を区切って食べながら金田一さんは話を続ける。

 

「やり方は各々で違うかもしれんが、担当する役については余す所なく調べ上げてから行い、劇中での与えられた役に生まれる感情や背景においても、役者が過去に経験したものや役が与えられた環境を通して、擬似的ではあるもののやってみる事によって、演技の幅をを広げていくものだ」

「そんな事出来るんですか!?」

「現にカミキと黒川あかねはやっているだろ? しかし、メソッド演技に関してはデメリットも存在していてな」

 

 金田一さんはそう言うと、肉を焼き続けるあかねを見てから答えた。

 

「カミキはメンタルがそもそもイカれてるから問題無いが……」

「金田一さん?」

 

 カミキさんの視線を業と避けて金田一さんは話を続けた。

 カミキさんもそこまで気にしていなかったみたいなので、タブレットを弄って、何かを注文していた。

 

「大輝君は何か飲みますか?」

「じゃあジンジャーハイ」

「分かりました」

 

 なんかカミキさんと姫川さんはほのぼのとしているし……

 

「……デメリットは役作りのために自身の過去を掘り下げちまうんだ。その為、役者によっては自身に精神的な負担をかけてしまう事もあってな……場合によっては、その役によっては自分の過去のトラウマをさらけ出す事になっちまうから、精神的におかしくなって、辞めてしまう奴も少なからず居る。星野……お前は黒川の彼氏だろ? だったら彼女の事ちゃんと見ておけよ」

 

 あ~そっか。『今ガチ』から付き合ってる流れだから忠告された訳か……確かにあかねはプロファイリングをして役を徹底的に調べ抜いてからメソッド演技を行っている以上は何時メンタルに異常が起きるか分からない訳だしな、専門では無いもののメンタルケアもゴロー時代にやっていたし、俺が彼氏である以上はしっかり見ておかないとな!

 

「分かりました。……ところで、カミキさんは何時頃からメソッド演技をやっているんですか?」

 

 焼肉を美味しそうに食べているカミキさんは先ほど注文したレモンハイを飲んでから答えた。

 

「そうですねぇ~確か10歳位の時にはやり始めてましたね」

 

 衝撃的だった。

 こんなデメリットがある演技を僅か10歳の時からやり始めていたのか……

 

「カミキの演技もメソッド演技ではあるんだが……なんというか昔から都合の良いように解釈する癖があって、カミキのメソッド演技に関しては独自性がある所為かデメリットがほぼ無いが、その独自性があまりにも強い為に出来る奴が居なかったが……まさかメルトが出来るようになるとは思わなかった」

 

 確かにメルトのアレは凄かった。

 舞台袖から見ていたがやればやるほど完成度が上がって来ている。

 当の本人だが、あかねが焼いた肉をせっせと食べていたし、ゆらさんはお腹いっぱいなったようでさすっていた。

 

「そうですか? 私はメルト君は出来ると思ってましたよ。 何せ私の若い時にそっくりですからね」

「……ああ、確かに劇団ララライに入ったばかりのお前そっくりだな。……おまけに歪んではいないものの()()があるのも同じだな」 

「……()()()()()でした」

「やっぱりメンタルイカれてるじゃねーか!」

「……いえいえ、素敵な女性の方達の相手を一夜とは言え出来るんですよ? 楽しむ事こそあれど悲観する理由は全くないじゃないですか!」

「……それ以降はお前だけやたら仕事が多かったな」

「ありがたい話しですよね」

 

 まさか、年齢一桁の時からやりまくっていたのか? 確かに当時はもっと小さくて可愛いらしかったかも知れないが……闇が深い話しだ。

 それにしてもカミキさんの今の話ってアイは知っているのだろうか?

 

「今だから聞くが……ワークショップの時、カミキお前しくじっただろ?」

「へぇー兄さんが女性関係で失敗したのって意外だな」

「大輝君……私も人間なので、失敗位いくらでもしますよ」

「……あの時ワークショップをやったのはそう考えると失敗だったな」

「私からは何とも言えませんが、結局の所……相手が私よりも一枚上手だった。ただそれだけの話ですよ」

「そうか……ところでその時のとはまだ付き合いがあるのか?」

「ええ、その方と結婚しました」

「そうか結……結婚したのかぁ!」

「……あんまり大きな声で言わないでください」

「すまん……だけど、カミキお前大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

 

 金田一さんの問いに笑顔で答えたカミキさんだけど、当時の俺やルビーのカミキさんに対しての態度は今振り返っても大分悪かったので、改めて罪悪感が生まれてしまった。

 転生者である事をアイやカミキさんに言うべきか……言ったところで受け入れてもらえるのだろうか?

 俺とルビーのこの嘘はいずれ白日の下に晒されるのだろうか?

 どうしようもない事ではあるが不安が脳裏をよぎった。

 

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