スーパーでの買い物も終えて、両手に大量の品物を入れたエコバックと持って外に出た時だった。
「やっほーヒカル君!」
声がした方を見ると黒い帽子とサングラスを付けてるアイがにこやかにこっちを見ていた。
お洒落っ気のかけらもないパーカーにジーンズとラフな格好である事から、アイも買い物に来たのだろうか? というともしや住んでいるところは割と近いのかもしれないな……
事あるごとに家に来られると面倒くさいし、家のカナンに悪影響を及ぼしそうだ。
現にカナンが俺の後ろに隠れてフシャーと威嚇している。
「奇遇ですね。アイさんも買い物ですか?」
「そんなところかな~? ヒカル君は買い物の帰り?」
なんではぐらかしたのか分からないが、こっちの情報は知りたいようだった。
……エコバックから食材が見えているから、嘘を吐いてもしょうがない
「そうですよ。アイさんも買い物に行かれるなら早く行った方が良いですよ。特売のシールが貼られて今安くなってますからね」
「そうなんだ。私はこっちのスーパーに買いに来ることは今まで無かったから知らなかったよ」
「私もこの時間帯に来ることはあまりしませんから、特売や半額シールはあまり利用してないですね」
「へぇー遅い時間には行かないんだ。……覚えちゃったぞ~」
アイは小声で何かをつぶやいたようだが……ま、ええやろ
「……ではカナン帰りますよ」
猫化してアイに威嚇してるカナンに声をかけて帰る事を促す。
「フシャー……」
カナンからすればアイは会いたくない人物だから仕方ないし、手を出してないなら問題は無いだろうと思い帰路に着こうとしたところでアイの表情が変わった。
「へぇーヒカル君妹が居たんだねぇ~初めまして私は『B小町』でセンターをやってるアイだよ。よろしくね妹ちゃん?」
アイはよりにもよってカナンにファンを虜にしてきた魔性の笑顔向けてしまった。
それはつまり……アイにとってカナンはもはや過去の出来事であり、覚えるに値しない人物と言う事だった。
「ふざけるな! アンタの所為で私は……私は……地獄に落ちかけたのに! 何であんたが笑っていられるのよ!」
カナンが『B小町』に居た時の話は聞いてるし、何ならアイとの確執も俺は知っている。
だからこそ、アイのこの態度はカナンからすれば許せるはずが無い
しかし、当の本人であるアイにとっては既にカナンは過去の人物ですら無く、もはやモブ同然であったようだ。
カナン自身も両手に荷物を持っているので、アイに殴りかかる事は出来なかったがカナンの鬼気迫る表情にアイはただ困惑してた。
「ねぇヒカル君……妹ちゃんが怖いんだけど?」
「……アイさんは『B小町』ですよね? ……本当にカナンに見覚えは無いんですか?」
「うーん、そう言われてみれば……『B小町』をクビになった子に似ている気がするけど……私って人の名前を覚えるのが苦手だからメンバーの名前もたかみーやニノぐらいしか分からないんだよね~」
アイはそういうとアハハと笑ってしまった。
アイにとってカナンは引っ叩かれはしたものの、それでも覚えるに値しない人物だと言う事か……
「……ちなみにアイさんはどういった人なら名前を覚えられますか?」
「そうだねぇー私ぐらい才能がある人や興味を惹かれる人なら一発で覚えられるだけどね」
はっここに来て才能や興味がある人じゃないと覚えられないと来たか……
おもしろいじゃねーか!
「……カナンあの話受けます」
「……えっ? どうして急に?」
どうしてって……そりゃあ決まってるだろう?
「……アイさんに腹がたったからですね」
例え悪気が無かったとはいえ、アイの言動がきっかけで、引っ叩いたカナンが悪いのは事実であるが……だからと言ってこれは無い!
「アイさん勝負しませんか?」
「勝負?」
こてんと首を傾げるアイに言う
「ジャパンアイドルフェスってご存じですよね? そこで『B小町』と『私とカナン』で勝負しましょう?」
「ふーん。それは良いけど……『B小町』が勝ったらどうするの?」
「その時はアイさんのお望み通りセックスしてあげますよ」
「本当に!? じゃあヒカル君とカナンちゃんが勝ったらどうする気?」
「……別に何もしませんよ。無名の私と名前を憶えてすらいないカナンに負けてもアイドルを続けたいなら続ければ良いですし、辞めたいなら辞めて良いんですよ。カナンもそれで良いですか?」
「私は……アイと勝負が出来るならこの際何でも良い」
「私も構わないよ♪ よーし負けないぞ!」
夜空に輝く星は一つじゃない事を教えてやる!