アイと共にまさか過ぎ去りし時を求める事になるとは夢にも思わなかったが、これはこれで困ってしまった。
何せ病院に行って、俺が雨宮吾郎の軌跡を辿ろうとするのはおかしな話なのだ。
雨宮吾郎はアイと面識はあるが、当然俺とは面識は全く無い
アイの出産まじかに雨宮吾郎は死んでしまい、そして俺が生まれた以上は俺が雨宮吾郎の事を知っているのはおかしいのだ。
じゃあ、アイに俺が転生者で有る事を伝えるかと言えば、そんな事は出来ないしそもそも信じる事は到底不可能だし、もし、仮に信じてくれたとしても、今まで自分の子供と思って育ててくれた子供が、偽物だったとしたらアイやカミキさんはどう思うのだろうか?
もし、俺が親だったら、そんな子供……不気味で気持ち悪いし、何より愛せる気がしないと思う……
となれば、アイやカミキさんもやはりそういう風に考える可能性は有る訳だ。
俺だけなら家族の縁を切られて、家を追い出されたとしてもこの際構わないが、双子であるルビーも転生者で有る事を疑われてしまうし、そうなればルビーも居場所を失う事になるだろう
「歩きで行くには不便だから電動キックボードで行こ?」
「それは大丈夫だけど……アイって免許持ってたっけ?」
アイに免許の有無を確認するとにんまりとした笑顔で答えた。
「じゃじゃーん! 実は私バイクと車の免許も持っているんだよ! ヒカル君とツーリングしたいから頑張って取ったんだけど、運転する機会が無かったし、そもそも申請してないから駐車場があっても使えなかったんだけどね」
涙ぐましい努力ではあったが、確かに駐車場は住んでいるマンションには付いているが申請をしていなかったから使えないし、そもそも全部埋まっているから無理だもんな
「へぇーどんなものか見せてよ」
「えへへーなーいしょ♪」
アイはそういうと可愛い笑顔ではぐらかした。
ま、内緒じゃ仕方ないし、流石にこの手の顔写真では真顔の為、どんな人でも、まるで犯罪者みたいな顔写真に見えてしまい、それはアイも例外では無かったのだろうから、無理に見ようとするのは良く無いし……アイも内緒って言っているから仕方ないな!
アイと一緒に電動キックボードに乗って山中の道路をゴロゴロと移動しているとアイが暇なのか声をかけて来た。
「ところでアクア」
「何?」
「アクアはどうやって、自分が生まれた病院を知る事が出来たの?」
「アイ……そういうのは母子手帳に書いてあるぞ?」
「あれ?……そうだっけ?」
「ところで、担当医って雨宮吾郎だよね?」
「そうだけど……なんで知ってるの?」
「それは母子手帳の担当医の欄にフルネームで記載されてたぞ」
わざとため息を吐きやれやれとした感じにアイに答えたが、そもそも元産婦人科医で担当医でもあったのだからその辺は良く分かっている。
アイは抜けている事はあるが、決して馬鹿ではない
だから、多分こういった事は帰ってから確認するだろう
そうこうしているうちに病院にたどり着いた。
「じゃあ、すぐ戻るからアイは待っててくれ」
「えー私も行きたーい!」
「アイみたいな有名な元アイドルが来たら病院側が大変だから絶対ダメ」
「……わかったよ~」
アイは口をとんがらせてそう答えたけど……分かってくれているのだろうか?
そして、いざ病院関係者に雨宮吾郎の事に関して聞いて見るも、かなりの年月が経っていることで人員の入れ替えもあり、生憎その日は生前親しかった同僚は居なかった。
そして、突然連絡が付かなくなった為、退職扱いになっていたがこれに関しては仕方が無い事だろう……
外に出るとアイが缶コーヒーを飲んで待っていてくれていた。
俺の分のも用意してくれていたようで、こっちに投げて来た。
「コーヒーありがと」
「良いよ~ところでどうだったの?」
「突然連絡が着かなくなったようで、退職扱いになったそうだ」
「……そっか~」
もう、古い記憶ではあるが……あのパーカー男に突き飛ばされたのが病院近くの街灯がある所だったし、ちょっと見て見るか……
「……ってアクア何処に行くの!?」
「ちょっと探し物……アイは危ないからそこで待ってて」
「いやいや、私も一緒に行くよ」
山の中の獣道を進むと小さい社がある場所に出た。
最後に見た光景はおぼろげながらも覚えているが、はっきりしている訳ではないからざっくりではあるし、そもそも俺は警察でも何でもない唯の一般市民なのだから見つかる訳は無いし、埋められたり、野生動物に食い荒らされている可能性だってるので、見つける事は不可能か……
いずれにしろ雨宮吾郎は死んで星野アクアに生まれ変わった。ただそれだけの事だし、仮に雨宮吾郎の死体を見つけたとしても良いことは無いだろう
「ねぇアクアもう戻ろうよ~」
「わかった。最後にもう一つだけ見たい場所があるんだけど良いか?」
「そこが最後だからね! もう私お腹空いたから何か食べに行くからね?」
最後に行くのは雨宮吾郎の住んでいた家だ。
外観は酷くボロボロになっており、ガラスも所々ひびが入ってたりクモ巣のだらけだった。
「ねぇアクア……ここ勝手に入っちゃダメなんじゃ? って何で鍵の場所知ってるの!?」
まー元々ここに住んでいた訳だけど、それは言えないから……
「さっき病院の関係者に聞いてきた」
「そ、そうなんだ……聞けば教えてくれるものかな?」
ふつーは教えて貰えないけどな!
「ところでここは誰の家なの?」
俺は表札を指さして答えた。
「ここは雨宮吾郎の家だ」
「……この様子だと家にも帰っては居なさそうだね」
まー死んでるからな
その後も色々と探索してみたが、大した成果は得られず結果的にはそれが良かったのかもしれない