カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第65話

 ルビー達が撮影しているスタジオに戻ると、MEMが壁に寄りかかってドリンクを飲んでおり、ゆらさんは可愛らしい寝息を立てて寝ていた。

 

「お疲れーお土産買って来たよ! お土産に宮崎マンゴーラングドシャ買って来たから後で食べてね。私は食べたこと無いけど多分美味しいよ!」

 

 アイはそう言うと30個入りのラングドシャを2個取り出した。

 

「アイ……言っておくが、宮崎マンゴーラングドシャは多分じゃない! マジで美味いぞ!」

 

「あっ! アイさんにアクたんおかえりー」

「ただいま……撮影は順調か?」

「今は、未成年組のドラマパートが取り終わってこれからダンスパートを取る感じだよ」

「MEMとゆらさんはまだなのか?」

「うん後回し」

 

 後回し……何故だ?

 

「なんで?」

 

 思わず聞いてしまったが、聞いたことを後悔した。

 

「ハハハ! 未成年者は深夜22時以降の労働が禁止されているからねぇーー私もゆらちゃんも未成年じゃないからド深夜に撮影出来ちゃうからねぇーー」

 

 MEMは発狂寸前のような顔で笑いながら答えた。

 

「私もアクア達が大きくなったから、深夜の仕事が入る様になったんだよねー。その時はかなり眠かったなぁ~」

 

 芸能界の労働環境は相変わらず闇が深いものだった。

 

「ちなみに満13歳に満たない子役は行政の許可を得て21時まで働けるわよ。それでも紅白とかの生放送で未成年が出れない時間帯とかあったりするけれどね」

 

 そう言ってこっちに来たかなの衣装に思わず見惚れてしまった。

 

「……中々似合っているなその衣装」

 

 俺がそう言った瞬間かなは顔を赤く染めてニマニマし始めた。

 

「そ、そう? まぁ私美少女だし~」

 

 かなはそういうものの実に嬉しそうだった。

 

「……アクア君私はどうかな?」

 

 あかねも同じく衣装を着ており、終始恥ずかしそうにもじもじしているがこちらも似合っていた。

 

「ああ、あかねも可愛いよ」

「アクア君ありがと」

 

 俺……この二人の彼氏で良かったと心底思えた瞬間だった。

 

「あれ? もしかして私達お邪魔かな?」

「そんなことないと思うよー」

 

 MEMとアイの発言で我に返った瞬間だった。

 

「じゃあ、ダンスパート取りますのでお願いしまーす」

「ゆらちゃんダンスパート取るから起きて~」 

「ふわぁぁ~もうそんな時間? 分かったよ~」

 

 ゆらさんは眠たげではあったものの、可愛らしくあくびをしながらカメラの前に行くと一瞬でスイッチが入り、そこには正しくアイドルが居た。

 

 寝起きのはずなのに笑顔は勿論……歌や踊りは誰よりもキレがあるゆらさんにライバル同士であり、二人とも一線を越えた所為か以前よりも輝きを増していたかなとあかね

 元々小さい時からアイドルをやっていたし、アイの指導もあったためルビーも負けておらず、そんな中でも物怖じしない胆力のあるMEMと色々な意味でこのグループは凄いし、これは間違いなくアイドルのトップに立てると確信して言えるものだった。

 

 そう考えると……今の俺は良くないな

 芸能界に思い入れがある訳でも無く、将来に目標が有る訳でも無い……

 以前カミキさんに言われたプロとしての意識が足りていないのが分かる。

 かなとあかねを抱いた事は後悔していないが……どこかぬるま湯に浸かっている部分があるのは否めない

 アイドルである以上は男の影がチラつけば大抵ロクな事にならない

 週刊誌に撮られたり、身内からリークを流されたりなんてことはありふれた事で本当の最悪はストーカーが殺しに来る場合もあるのだから……

 

 あれは……そう言えば俺やルビーがまだ赤ちゃんの時だったはずだが、あのストーカー野郎は一体どうなったのだろうか?

 当時ニュースで捕まったのは覚えているが……殺人未遂ではあるものの初犯で模範囚ならばもう出所している可能性もあり得るけど、今の今まで何事も無く平穏だったが、平穏なんてものはあっけなく崩壊する事を俺は知っている。

 

「アクアなんか怖い顔しているね。私が良い事教えてあげようか?」

 

 いつの間にか俺の隣にツクヨミが居た事に少しばかり驚いたが……どうせ口を開けばムカつく事を平気で言うだけのお子様だから気にしない方が良いだろう

 

「なんだよ良い事って?」

 

 俺がそう尋ねるとツクヨミはにんまりと笑いながら答えた。

 

「雨宮吾郎を殺害した犯人の貝原亮介がアイを殺しに来たストーカーでパパの伝手で日本で一番ヤバい旭川刑務所ってところに収監されて獄中死したから、もう危害を加える事はないよ」

「あ、え!? ツクヨミお前……何を言っているんだ?」

 

 情報量が多すぎる。

 

 あのストーカー野郎が俺を殺した奴で、アイを殺しに来たカミキさんのおかげで……ああ、駄目だ考えが纏まらねぇー

 

「だからアクアは何も心配せずに好きに生きて大丈夫ってことだよ。パパが居る限りは守ってもらえるからね」

 

 ツクヨミはにんまり笑いながら俺の傍を離れていった。

 

「……ツクヨミお前は一体?」

 

「はーいそれでは未成年組は宿に戻ってね~」

 

 アネモネさんの声が響き備え付けの時計を見ると丁度22:00を指していた。

 

「じゃあ、アクア私は宿に戻るからまた今度ね~」

 

 ムカつく笑顔を振りまきながらツクヨミはスタジオを出て行った。

 新たな疑問が湧いた瞬間ではあるが……この時間にツクヨミを一人で宿に行かせるのは流石に不味いと思い今しがたスタジオを出たツクヨミを追いかけたが、ツクヨミの姿は既に無かった。

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