「アクア君……ここじゃなんだから移動しようか? ほら、かなちゃん行くよ」
目を潤ませて今にも泣きそうなかなの手を引っ張りながら、こちらをハイライトが無い目であかねは提案してきたが……それは提案なんて生易しいものでは無く、断ったら殺すとでも言うかの様な凄みを感じた。
実際浮気をした俺に選択肢など有る訳無いので……
「……そうだな」
そう返事を返すのが精一杯だった。
それにスタジオの入口で二人のアイドルに出待ちされているところを見られたら、それこそスキャンダルのネタにされてもおかしくない。
それは、今じゃなくてもいい訳だし、ここぞって時に発表して炎上させる事も出来るのだから……
なので、あかねの言う通りに違う場所に移動するのは問題はなかった。
なかったんだけど……
タクシーに乗せられて気が付いたら……かなのマンションで下ろされて、案の定逃げ場の無いかなの部屋に居た。
確かにかなのマンションはセキュリティーは万全だし、万が一は無いけれど……
体育座りで自身のベットに座って顔を伏せているかなとテーブルにて現在ハイライトが無いあかねと向かい合って座ってる。
俺からの発言は許されているのか分からない
しかし、時間だけがただ無意味に過ぎているのは良く分かる。
そんな事を考えていた時だった。
「……アクアは私達の事を捨てるの?」
涙を堪えてかなはぽつりと告げた。
「……捨てる訳ないだろ」
「じゃあ……ルビーはどうするの? もしかして3股する気なの?」
今もっとも聞かれたくない部分であり、そしてはっきりさせないといけない事ではある。
かなとあかね……二人と別れる事は考えられないが、俺はもうルビーをさりなちゃんと認識して抱いてしまった。
俺が答えない事にかなは察してしまったようだが……かなは俺の予想を超える発言をした。
「……良いわよ。私はアクアと一緒に居られるならこの際3股4股されたって良いもん!」
「ちょっとかなちゃん!?」
「あかねは嫌なら離れれば良いじゃん! そうなれば結局私とルビーでアクアの二股は変わらないし!」
「……私だってアクア君から離れる気は無いもん! だけど、今回みたいに浮気されたのは正直ムカついたけど、でもそれはアクア君を満足させきれていなかったかもだし一概にアクア君だけが悪い訳じゃ無いからね」
いや、これは……どう足掻いても俺が悪い
しかし、俺とルビーが転生者で前世からの知り合いだった事なんて説明は出来ないから、理解も出来なきゃ納得もいかないだろう
俺を蚊帳の外に置いて二人の口論は続くけど……
バレている以上二人に言わなきゃいけない事があった。
「二人ともすまなかった」
「「アクア(君)が満足するまで今日は寝かせないからね」」
かなとあかねはそう言うと服を脱ぎ捨てたが、今の所負けた事は無いので早く帰れるだろうとタカを括っていた。
「アクア~? 今何時か知ってる?」
早朝家に帰ると制服の上にエプロンを付けてこめかみに血管が浮き出ているアイが居た。
「……5時です」
「そう5時なんだよ。最近朝帰りが多くなってないかな~?」
「ごめんなさい」
「アクアも仕事や彼女達が居るから忙しいのは分かるけど、連絡位は出来るよね?」
「……以後気を付けます」
「……うーん、私もヒカル君も時間は必ず守っていたのに、アクアは一体誰に似たんだろう?」
誰に似たって言えば……いつも突拍子も無い事をしているアイに似たんじゃないか?
とは思ったけど、口に出して言うなんてことは無かったが、思わずじっと見てしまった事で気づかれてしまった。
「ええ? もしかして私なの!? あ、でも確かに時間は守っているけど、佐藤社長やミヤコさんには何時も迷惑かけてるかなー? いや、でも私も気分が乗らない日はやっぱりあるし……人間だしそんな事もあるよね♪」
アイはそう言うと魅力的な笑顔で言い放った。
「じゃあ仕方ないな」
「うん、仕方ないね。ところで朝ごはんは食べる?」
「食べる」
「ちなみにルビーは?」
「まだ寝てるよ? 夜遅くまで勉強頑張ってるからね」
俺も色々と頑張らないといけないな
「じゃ先にシャワー浴びて来る」
「じゃあ準備してるね」
アイはそう言うとパタパタとキッチンに戻って行った。
バレない様に早く帰って来たつもりだったけど、まさか起きていたとは思わなかった。
それにしてもアイは制服にエプロンを着用していたし、髪もちゃんと整えていた事から寝起きって訳では無いし、目の下にクマも無かった事から寝ていた事は確かなんだけど……一体何時に起きていたのだろうか?
シャワーを浴びてからキッチンに行くと物凄く凝ったキャラ弁が用意されており、ほんわか笑顔のカミキさんっぽいのがアイので、コレはもしや俺なのかと思われるお弁当が一つあった。
「あっこれはルビーのだよ!」
アイが早起きしていた理由はこれが原因か!?
☆☆☆
「期末テストもようやく終わったー」
私は頑張ったよ。
『B小町』の活動はしても良いとは言われたけど、個人の仕事に関しては学業が振るわなければだめ~ってアイに言われてしまった以上去年から頑張ってようやく結果に繋がったと思う……何せ、今回のテストではズシリと手ごたえを感じたし、感覚的に言えば全教科100点満点もあり得ると思う。
「ルビーちゃん頑張ってたもんな~」
「私はカミキさんに会う時間を捻出するのが大変で、そこまで勉強出来なかったけど……」
「うん、ルビーには家に帰ったらすぐ勉強させてたもん。このテストの結果次第で仕事を受けて良いって言ったしね♪」
とは言いつつもみなみちゃんも元の事務所の契約期間を終えてからカミキさんの事務所に移籍したので、ちょっとばかしごたごたしていたけれど元が真面目な為、成績優秀なので問題は無く、フリルちゃんもこんなふざけた事を言っているが、アイに続いて成績は内のクラスで2位なのだ。
そして、今鼻を伸びに伸ばしてドヤ顔でいるアイがクラス内で1位をキープしていた。
「ま、私も女になった以上何時までも負けている訳には行かないけどね!」
お兄ちゃんやあかねちゃんは元々頭が良いから、成績が落ちる事はあまりないけど先輩はお兄ちゃんと一緒に居る機会が多いから落ちているに違いない!
事務所であったらからかってやろーっと
「なんやルビーちゃん鼻息荒かったけど大丈夫なん?」
「う~ん……勉強のし過ぎで疲れちゃったのかな?」
「ボス……テストが終わった事ですし、カミキさんの所で今度の休日にでも酒池肉林のパーティーをしたいです」
「流石にそれは無理じゃないかなー? 一応ヒカル君の家って休日は子供達で溢れ返っているからパーティー自体は大丈夫だと思うけど、お酒に関しては子供達が間違って飲んじゃう事もあると良く無いからねー」
「ならお酒は無しでやりましょう。ほらタコパって今流行っているみたいだし、みなみが関西弁だから作るの得意だよね?」
「私のは唯のキャラやし!」
「タコパね~私もちょっと興味あるかも? ヒカル君に聞いて見るよ」
ママはそう言うと深呼吸した後にカミキさんに電話を掛けた。
スマホからカミキさんの声が聞こえると、みなみちゃんもフリルちゃんも吸い寄せられる様にママのスマホに耳を近づけていた。
なんだろう……カミキさんのASMRでも作ったら局地的な所でバカ売れしそうな気がしてならない