ツクヨミの行動に触発されたのはアイ達だけでは無かった。
「か、カミキさん!」
「どうしまっムグゥ!」
ウズメに呼ばれてカミキさんが思わず振り向いてしまった事により、ぶちゅっと音がしそうな勢いで二人はキスをしてしまった。
両手にピックを持ってたこ焼きを作っていたカミキさんは咄嗟に動くことが出来ずになすが儘になっており、当のウズメは目を閉じている所為か気が付いていなかったようだが……何かしらの違和感を感じたようで目を開けると……
「ひゃわわー」
顔が一瞬で真っ赤に染まってしまい、あわあわし始めたと思ったら母親であるみゆさんの所にすっ飛んで行った。
身長的に言えばウズメは小学生にしては高めの身長であり、150㎝程のカミキさんとは事情を知らなければ初々しいカップルにしか見えないが……これ親子なんだよな
「あらあら、ウズメも大胆になったわねぇ~。でも、親子でなんて流石にちょっとインモラルだから駄目よ?」
「ち、違うもん! 私はカミキさんのほっぺにする気だったのに……カミキさんが振りむいちゃうから……口と口になっちゃっただけだもん」
最後の方ごにょごにょと言っていたウズメだったけど、まんざらでも無いようなのが恐ろしい
「……ファーストキスの味は甘酸っぱいレモン味って聞いたけど、たこ焼きの味がした」
そりゃウズメがたこ焼き食べた直後だから当然だろう
「でも、ヒカル君の唇プルプルしていたでしょ?」
「……すっごい柔らかかった♡」
みゆさんに言われた後にウズメは自身の唇を触って感触を確かめていた。
そして、カミキさんはと言うと……
いつの間にかカミキさんの後ろに回っていたアイに顔を固定されてじゅるじゅると音を立ててキスをされていた。
「ごちそうさまでした♡」
アイは満足したのか唇を離すと銀糸が出来ていたが、途中でぷつりと切れた。
「……こちらこそ?」
カミキさんもいきなりの事態であった所為か思考が止まってしまったようで、何とも言えない表情だったが、それで猛獣達が止まる訳では無く
「次は私の番」
「その次は私や」
フリルとみなみがカミキさんの後ろにて待機していた。
カミキさんの両隣は子供達が座って占領しているので仕方ないと言えば仕方ないだけど……子供の教育には良く無いだろうな
「お兄ちゃん♡」
「アクア♡」
「アクア君♡」
「いや、落ち着けよ!」
「「「落ち着いてなんて居られないよ」」」
ルビー、かな、あかね三人に迫られてしまった。
「兄さんもアクアもモテモテだな」
ほんと何でこんな状況なのにこいつはこんな呑気なんだ? と思いきや子供達が慌て始めた。
「大輝お兄ちゃんそんな事よりたこ焼き! たこ焼き焦げちゃう」
カミキさんが顔面固定されて捕食されている関係上たこ焼きはそのままの状態な訳だからこのまま行くとマズイ!
そう思った時だった。
「あっ! やばい。兄さんピック借りるよ」
「ムグムゥ~(どうぞ)」
大輝さんはカミキさんから手早くピックを借り受けるとすぐさまたこ焼きを返し始めた。
意外にも大輝さんはたこ焼きを手早く捌いていたので、多少焦げてはいるものの問題は無かったが、食べる専門の大輝さんが器用だとは思いもしなかった。
「ぷはぁーご馳走様でした」
フリルはそう言うとようやくカミキさんから唇を離しと、やはりアイの時と同様に銀糸が出ていたが、それを手の甲で男らしく拭っていた。
それにしても……舌入れているのがデフォルトなのはどうなのだろうか?
そもそも子供がいるのに教育上よろしくない事は確かだ。
両隣に座っているあかねとかなに迫られて、おまけにルビーが膝の上に座ってる状態であるので俺も人の事は言えないけど……
「はぁはぁ……いえいえ、こちらこそ」
「ようやくウチの番やー」
みなみはそう言うとすかさずカミキさんの唇を奪い始めた。
大体一分位キスしている所為かカミキさんも大分苦しそうではあるものの、決して弱音は吐かなかった。
そんな時だった。
「あ、そろそろ『深堀れ☆ワンチャン』の時間だね」
アイはそう言うと楽し気にスマホを取り出した。
そして、アイだけじゃなくて、他の人達も自身のスマホを取り出して『深堀れ☆ワンチャン』を見始めた。
「ああ、今回のリポーターはそう言えばアイだったな……ところで何でアイは『深堀れ☆ワンチャン』に突然出ようと思ったんだ?」
「うーん、ルビーとは一緒にアイドルやったりして共演して来たけど、アクアとは一回もやった事なかったからねー。良い機会だから出て見たの」
それはとても嬉しい理由だったが……
『こんにちはーマルチタレントのアイだよー。今回は特別リポーターになりましたー』
画面のアイは誰もが魅了される笑顔でとんでもない企画を言い始めた。
俺もその時は中継越しに見ていたけど……企画内容がギリギリどころからほぼほぼアウトなこの令和の時代に真っ向から喧嘩をするものだった。
『今回のテーマは酒の席でアルハラする上司を逆にアルハラする回になりまーす。それでは早速『深堀れ☆ワンチャン』』
「いやいや、アイさん一体何をやっているんですか!」
「そ、そうですよ。こんな事したら危ないですって!」
かなもあかねもアイに突っ込みを入れ始めたが、当の本人であるアイはと言うと……
「まぁまぁーかなちゃんはどうか分からないけれど、あかねちゃんはスッキリすると思うよー?」
「え!? 私がスッキリする?」
「うんうん」
アイはそう言うと楽しそうに画面を見始めた。
『深堀れ☆ワンチャン』で中継されてる映像はとある居酒屋の個室であり、そこには酒癖が悪いと有名なプロデューサーと新人の金髪アイドルがおり、そのプロデューサーの両脇に座ってお酌をしている映像だった。
時間が経つとどんどん酒癖が悪くなり、金髪のアイドルのコップが空になった時である。
映像に映っているプロデューサーは大きな声を上げた。
『おいおい、
『……ではお言葉に甘えて』
ヒカリちゃんと呼ばれた金髪のアイドルはそう言われた瞬間に未開封のウィスキーの瓶を取り、割りばしを利用して蓋を飛ばすとラッパ飲みし始めた。
『お、おう……い、良い飲みっぷりだな!』
その豪快な飲みっぷりにプロデューサーは引いてるものの、ヒカリと呼ばれたアイドルから目を離せずにいた。
何せヒカリは飲みながらも、プロデューサーにウィンク飛ばしており、目線を外させない様にアピールしていたからだ。
『いやーヒカリちゃん良い飲みっぷりですね!』
『でも、このままだと先にヒカリちゃんが酔いつぶれちゃうんじゃない……?』
スタジオの芸人さん等もヒカリちゃんの男らしい飲みっぷりにびっくりしていたけれど、まだアルハラらしい事はしてないが今度は別の意味で心配し始めた。
そんな時だった。
徐にヒカリちゃんは瓶から口を離すとプロデューサーの隣に移動すると……
『今度はあんたが飲め!』
さっきまで、自身が口を付けて飲んでいた瓶をプロデューサーの口に突っ込んだ。
『や……やりやがった! これ大丈夫なの?』
『アルハラしている側の人間だからされても文句は言えないでしょ』
『アクア君辛辣ぅ~』
スタジオ内はざわざわし始めたが、中継先の映像は流れ続けていた。
『ちょ……ちょっと……もう無理……』
『何? 私の酒が飲めないって言うの? ちょっとだらしないんじゃないの?』
ヒカリちゃんは未開封のウィスキーを右手で持ち蓋の部分をピンポイントで蹴ると蓋だけが器用に空き、何事も無くラッパ飲みをし始めた。
そして、暴れようとするプロデューサーであったが、そんなヒカリちゃんの動作を見た事で委縮してしまい暴れる事を辞めて、ただただラッパのみを無理やりされようやく空になったところで再度ヒカリちゃんが飲んでいたウィスキーを突っ込まれた。
『はーい『深堀れ☆ワンチャン』でーす。お酒は程々にしないとだめですよ。プロデューサーさん♪』
丁度良いタイミングでアイが突撃したことで、プロデューサーも現状を理解したのか苦笑いしており、最終的には猛省をして番組は終了した。
「いやいや、これ完全にアウトでしょ!? 何でオンエア出来たの!?」
かなの絶叫とは裏腹にあかねはすっきりした顔していた。
「まーこのプロデューサーの上には許可貰ったし……」
「いや、アクアも許可取れたって……それにあかねも何すっきりした顔しているのよ!」
「それはこのプロデューサーに深夜にいきなり呼び出しされてキャバクラみたいな真似事させられたからね」
「……じゃあ仕方ないわね」
「……それに視聴率の為にはあのプロデューサーの犠牲は必要だったんだ」
それにしても一体どこからアイは情報を得たのだろうか?
「流石ボス……よくやってくれました。私もアイツにはムカついてましたので胸がすぅーっとしました」
フリルはそう言うと満面の笑みをアイに向けていた。
「いやいや、今回はヒカル君に協力して貰ったしね~」
「私もタダ酒飲めましたし……それにその上の方ともこれで繋がりが出来ましたから良かったです」
カミキさんは闇深い仕事してるなぁ~
「で~も間接キスはやりすぎじゃないかなー」
「うん? 私の後に飲んだのであって私自身はしてませんよ」
見返して見ても確かにカミキさんが飲んだ後に飲ませてはいるものの、その後にカミキさんは口を付けてはいない
「確かにセーフやなぁ~」
「まさにギリギリを攻める『深堀れ☆ワンチャン』だね♪」
「どう考えてもアウトな気がするけど……」
まともな事を言っていたのはルビーだけだった。