浴室から聞こえていたシャワーの音が止まった。
私も思わず息を呑んでしまい、浴室のドアをじっと見る事しか出来ずにいた。
そして、ガチャって音が鳴ると共にドアが開かれた。
ど、どうしよう……もし、もしカミキさんが出て来たら……いや、そうなったら、責任を取ってもらうんだけど……
と、考えていた時にとうとう件の人物が……
「あっMEMちゃんようやく起きたんだー」
「ゆっ……ゆらちゃん!」
カミキさんじゃなくて……ゆらちゃんだった。
まーよく考えれば分かる内容だった。
カミキさんとアイさんは夫婦で有る訳なんだから、カミキさんがアイさんをほっぽいて、私に夜這い何てする訳が無いのだ。
しかし、どこか残念に思っている私も居る訳だけど……まー何も無いのが一番だよね!
「もー昨日は大変だったんだからね!」
「え!? 大変だった?」
ゆらちゃんはそう言うと頬をぷくっと膨らませて私を見るけど……記憶が無いから何とも言えないけど、私は一体何をやってしまったんだろう?
「そうだよー。ミキさんが『お代は私が全部持ちますから皆さん好きなの飲んでくださいね」って言った瞬間にアイさんとMEMちゃんが悪ノリし始めてバカ高いお酒をガンガン注文しちゃうんだもん」
ゆらちゃんにそう言われるとその辺りの記憶が鮮明に思い出されて来た。
「まー注文自体は問題無かったけど、MEMちゃんがミキさんを誘惑しようと撓垂れ始めたから、見ているこっちがハラハラしちゃったよ。……MEMちゃんが酔っぱらっていなかったらミキさんにお持ち帰りされて今頃初体験終了していたから……本当に気を付けてね」
ゆらちゃんはそう言うと物凄く心配そうに私の事を見ていた。
流石にこれは私が悪いので、返す言葉も無かった。
「じゃ、じゃあ私を部屋に運んでくれたのは?」
「それは……私とミキさんでホテルの人に台車を借りて部屋まで運んだんだよ」
聞きたくない事実がそこにあった。
「部屋ってそう言えば4部屋予約していたよね。そう言えばアイさんとカミキさんは?」
それを言った瞬間にゆらちゃんが涙目で詰め寄って来た。
「4部屋借りていたとしても、ミキさんの部屋に突撃するのがアイさんだよ! 私もMEMちゃんが酔いつぶれていなければ参加していたのにぃ~」
そう言うとゆらさんはシクシクと泣き始めてしまい、私も居た堪れないから謝ろう
「ゆらちゃんごめんね~」
「うぅぅ~今回はタイミングが悪かったと思って諦めるけど、MEMちゃんはお酒は程々にしてくださいね!」
「あ、ハイ」
そんな事を考えている時だった。
部屋の電話が鳴り響いたから、もしかしたらクレームの電話なんじゃと思い恐る恐る電話に出て見ると……
「あ、おはようございます。カミキです」
「あ、カミキさん!? MEMです。昨日の夜はご迷惑をかけたようですみません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。所で体調は大丈夫ですか? 一応朝食も付いてますけど食べれますか?」
昨日の事を気にせず、私の事を気にかけてくれるなんてこの人聖人すぎだよー
「だ、大丈夫ですよ。しっかり食べれます」
「それは良かったです。 ところで皆一緒に食べに行きますか? それともバラバラに行きますか?」
カミキさんの提案に若干の気まずさはあるものの、私だけが一人で食べたいと言えば、ゆらちゃんも巻き込んでしまう可能性もあるので一緒に食べる事にした。
「いえ、みんなと一緒に食べます」
「分かりました。それでは50分後でも大丈夫ですか?」
「勿論です!」
「では50分後に部屋を出て貰えれば大丈夫です」
「? 分かりました」
一瞬頭に?マークが浮かんだが、よくよく考えればカミキさんは私の部屋を知ってるのだから問題は無かったけど……なんで50分後何だろう?
「ゆらちゃんカミキさんから朝食なんだけど……」
「うん、ミキさんから一緒に食べようって聞いてるよ」
「それなんだけど、50分後なんだって……何でそんなに遅い時間にするんだろうね」
「私はもうシャワー浴びたから良いけど……MEMちゃんは大丈夫?」
ゆらちゃんの言葉にハッとなってすぐさま私も浴室に駆け込んだ。
カミキさんの気遣いが地味に凄い!
そんなこんなあったけど……時間には余裕を持って間に合い部屋のドアを開けると丁度対面のドアも開き、そこからは可愛らしいあくびをしながら出て来たアイさんが出て来た。
「あっMEMちゃんおはよー。体調は大丈夫?」
アイさんから心配そうに聞かれたけど、実際は頭が痛いとかそういった事は無いけれど……まだ、体内にアルコールが残っているようで頭は回ってはおらず、ぽわぽわしているけど心配してもらう程じゃ無いから……
「ハイ! 大丈夫です」
「そっか~。じゃあ朝ごはん食べにいこ!」
アイさんはそういうととびっきりの笑顔でそう言った。
それにしてもアイさんはやたらとツヤツヤしている。
「ところでカミキさんは?」
「すみません。お待たせしました」
カミキさんはそう言うとアイさんが出たドアから出て来た。
そう言えばさっきゆらさんがアイさんがミキさんの部屋に突撃したって言ってたから……そう言う事なのかなぁ?
「ミキさーん早く行きましょう」
「そうですね。では行きましょうか」
そして、私達は朝食に向かった。
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「ずるい! 私もホテルに泊まりたい。美味しい料理を食べたい!」
「ルビー我儘言わないの!」
「じゃあ、今度みんなの休みを合わせてホテルに行く?」
「そうなると……男手は必要よね? アクアも参加して貰わないとね」
アイさん・カミキさん・ゆらちゃん・私の4人でホテルに泊まった事はすぐさまルビーとあかねとかなちゃんにバレてしまった。
そして、案の定アクたんも巻き込まれる形になってしまったのは申し訳ないと思ってはいるものの、私はどこか上の空だった。
「でも、私達全員今忙しいから、休みなんて中々取れないし、それはアクア君も同じなんじゃ?」
ゆらちゃんの言葉は的を得ており、部屋は沈黙に包まれてしまった。