「くぅぅぅー何であかねばっかりドラマや映画の仕事があるのに私には来ないのよ! アクアでさえ役者の仕事があるのに! カミキさん私の事ちゃんと売り込んでるんでしょうね!」
目の前でかなが怒り狂っているけど……いや、あかねはそもそも劇団ララライにも籍があるから呼ばれるし、アクアは今絶賛双子タレントとしてルビーと一緒に売れている訳で……そうなるとかなは抜群の演技力はあるんだけど、個人の伝手がほぼ無いのだから繋がらない訳である。
しかし、流石にそれをダイレクトに伝えるのは問題だし、俺も腹を括るしかないか……
個人的に今は絶対に関わりたくは無いけど、変に爆発するとどう転ぶか分かったものじゃ無いし大人が見ていないと最後に泣くの何時だって子供だ。
「分かりました。……ではかなさん明日の夜は空けといてください。知り合いの監督に連絡してみます」
「最近はアイドル業も暇になったから今日でも構わないわよ!」
かなはそう言うと不機嫌さを隠さないで俺を睨んでいるけど……いや、先方は忙しいかも知れないし、俺も当日言われて『ハイ、分かりました』は無理なんよ。
「そ、そうですか……ちなみにですが『島政則』ってご存じですか?」
「あー今年の映画賞も獲った今一番勢いのある映画監督よね? カミキさんもしかして知り合いなんですか?」
「オファーがあれば出る程度ですが、一応知り合いではありますね」
「へぇーなんやかんやでカミキさんも顔広いですよね」
アイドルのマネージャーやったり芸能事務所立ち上げたりで色々あったけど、この業界には26年いるんだからな!
「……私も長い事この業界にいますので、伝手ぐらいはありますよ」
「じゃあさっさと仕事持って来なさいよ!」
それに関しては申し訳ないが……俺にだって言い分はある!
業界内でも有馬かなって聞くとちょっと空気が止まるんだよ。
恐らく子役の時の悪名が今も払拭され切れていないようだし、『東ブレ』の時にお世話になった雷田さんだって、かなの事ファンだって言っていた割には連絡してこないし……中々ままならないものだ。
寧ろアクアとメルト君は『東ブレ』で役者の仕事が増えてるのに……
「ただ、私が言えた義理は無いんですけど……島政則は女癖が悪くてですね」
俺がそう言った瞬間にかなは間髪入れずに突っ込んだ!
「それはカミキさんも同じじゃないですか!」
俺は抱いた女はちゃんとフォローしてるし、なんなら最後まで面倒見ているから島の奴とは違うって言ってやりたいけれど……しかしそれは俺の一人よがりの勝手な考えで有る訳だし、何より客観的に見て見れば俺も島と同類であるのは否定出来なかった。
「……そ、そうですね」
はぁ~時たま自分の見境の無さが憎たらしく思えてしまう
内心でため息を吐きつつ、こんな形で危ない橋を渡らざるを得ない状況に陥るとは……
あっアクアにも連絡しておかないと……
そして、次の日
件の人物である『島政則』にアポも取れたけど……
「えっと……ここってもしや……」
「ええ、会員制のバーですね。『島政則』の行きつけなんですよ」
芸能界で働いてるのだからこういったバーで飲むのは分かる。
しかし、有名ではあるものの所詮は映画監督なのであってタレントでも何でも無いので、実際にスキャンダルをくらっても当の本人は痛くも痒くも無いのに相手の女性だけがダメージを受けると言う理不尽極まりない目に遇う。
しかも、『島政則』は結婚しており、驚く事に奥さんは奥さんで浮気をしているから、似た者夫婦なのである。
同類扱いされるのは嫌だけど傍から見れば似たようなものだし……愛人が二桁いる段階で俺のが質が悪い
「じゃあ入りますよ」
「わ、分かったわよ」
俺とかなは会員制のバーに足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ……あっカミキさんお久しぶりですぅー最近来てくれなかったから私寂しかったです!」
中に入ると女性の店員がおり、ガッツリ手を掴まれてしまった。
いや、俺も暇じゃ無いし……そんな太客じゃ無いからね。
「ご、ごめんね……ところで島さん居ますか?」
「ハイ、ご案内致します」
手どころか腕に抱き着かれて案内されているので胸の感触が……
「カミキさん?」
後ろから冷たい声が聞こえたけど……いや、男なんて皆こんなもんだよ!