カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第94話

「カミキさん待ってたよ」

 

 案内された席には既に島がおり、テーブルには空いた瓶がいくつもあるようで見た感じ結構な量を飲んでいた。

 こいつが酔いつぶれてくれれば、話は簡単で声帯模写で仕事を回すと録音してそれをネタにすれば良いのだけど……恐ろしい事にこいつは酒豪だから酔いつぶれた所なんか見た事ないし、無限に飲めるタイプだ。

 

「すみませんお待たせしました。こちら苺プロ所属の有馬かなさんです」

「有馬かなです。『蛇視』拝見させて頂きました。とても素敵な映画でした」

「ありがとう~俺も有馬さんの『劣化家族』見てたよ。いや~大きくなったなぁ」

「どうもです」

「じゃあ、早速乾杯でもしようか? 有馬さん何飲む? 何でも飲んで良いよ」

 

 良い訳ねーだろうが! 

 

「有馬さんはまだ未成年なのでお酒は駄目ですからソフトドリンクで我慢してくださいね。有馬さんの分のお酒は私が飲みますから構いませんよね島監督?」

「あっそうだったのか、いやー知らなかったよ。じゃあドリンクが来たら乾杯しようか」

 

 すっとぼけていやがるが、これがこいつの手口なんだよなぁ~

 身長も高くガタイも良いし見てくれだって悪くは無い、監督として数々の賞を獲得した実績もあるので世間からの評判だって軒並み高いのだが……唯一の欠点は女の遊び方がお粗末なところだ。

 監督なので地位は高くキャスティングに口を挟めるからこそ、近寄る女性は多いが……コミュニケーションを非常に重視すると言えば聞こえが良いが、要はセックスを求めてしまうのだ。

 俺もコミュニケーションは大切だと思っているから挨拶が出来ない人間とは一緒に仕事をしたくは無いから、その点は同意出来るが……

 男が性交渉ありきで仕事を渡すってのがどうにも納得いかないのだ。

 俺自身は仕事を貰う側だったし、俺からしてみれば女性からの逆レイプなんてご褒美みたいなもんだが、それはやっぱり俺の中の話で合って世の中にはそれがトラウマ(カミキヒカル)になる人もいる訳なので……難しいところだ。

 何せどんなに声高に叫ぼうともこの世は男女平等では決してないのだから……

 結局のところ子供を産めるのが女性だけであり、男はその痛みを想像する事すら出来やしない

 

 そんなリスクを背負いながらも芸能界では今でも仕事得る為に体を売っている女性は多く存在している。

 島はそこらへんがかなりルーズだから、自分好みの女性がいればヤッてなくても仕事は振るけど……それはヤッた子からすれば可哀そうな話である。

 色々と考えても仕方ないし……とりあえず俺はかなを守る事に集中しよう

  

「あ、じゃあ私はオレンジジュース」

「有馬さんはオレンジジュースでカミキさんはどうする?」

 

 なら俺は牽制の意味も込めて……

 

「私はエッグノッグでお願いします」

 

 俺がそう言った瞬間に島は両手を上げて何もしない事を態度で表した。

 かなは目をぱちくりさせていたが、まー酒言葉なんて酒好きな奴等しか分からんよ。

 

「じゃあ、俺も丁度飲み終わったからインペリアル・フィズを頼むよ」

 

 島はそう言うとにこやかに酒を注文した。

 ……出来れば俺も楽しい会話で終わらせたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結論から言うとかなさんの実力は業界の人間なら誰でも知っています。それに今をときめく『二代目B小町』の一人なんですから!」

 

 島はそういきり立ち力説するも……その『二代目B小町』にも色々あるのだ。

 ライバルのあかねは役者関係の仕事が入っており、ルビーはアクアと共に双子タレントで売れており、ゆらは仕事を選ばないからモデルやドラマにタレントなどもこなしており一番忙しく、MEMは最近時間が出来たからオフの日どこか行きませんかと連絡が来た。

 かなは……そもそもお金にあんまり困っていた訳では無いので、モデルはあんまり乗り気じゃなく暇な時にしかやってくれないしそもそも『二代目B小町』の活動はそんなに活発では無く一週間に一回ぐらいなのだ。

 

「いえいえ、私なんて所詮『二代目B小町』のおまけですよ。……アイドルなのにアイドルの仕事はそんなに無くて、今は役者の仕事が無い時はモデル位しかしてませんし……」

 

 モデル位って言うけど……単価は高いからコスパは良いんだよ!?

 しかもかなのファンってかなりコアな人達でぺんぺん草よりも根性があるのだ。

 考えて見れば分かると思うが……子役が終わったかなはオワコン扱いされていた訳だけど、それでもこの業界にしがみついて今も生きているのが事実だ。

 

「じゃあ今度俺が撮る映画に出てよ。そうすれば僕が有馬さんの魅力を引き出して上手く使ってみせる!」

 

 監督だから良い台詞や画のタイミングは完璧でかなの表情が……ちょっと待て、待ちなさい! 君にはアクアがいるでしょうが! なんですぐに乙女顔になるかなー?

 

「島監督?」

「あっ! ……カミキさん。駄目?」

 

 駄目に決まってんだろうが! さっきの手は一体何だったんだ!

 

「未成年の女の子を口説かないでくださいね。それではかなを使ってくれるって事で構いませんね」

「……あっいや、えっとーただし条件があるんだよ」

 

 映画である以上スポンサーが存在するからね。

 かなが出演するとなるとお金を出資してくれるかは分からんし……

 

「カミキさん……お願いします。主役で出てください! カミキさんが出てくれればどこの企業もお金出してくれますから!」

「……つまり、私の役者人生はカミキさんにかかっているって事ね?」

 

 両手を合わせてお願いする島監督と俺の肩をグワシと掴むかな

 

 いや、俺も忙しいんだけど……この場でそんな言い訳をする事なんか出来るはずもなく、俺は力なく項垂れた。

 はめられたのは俺だった。




エッグノッグ=守護

インペリアル・フィズ=楽しい会話
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