「いやーカミキのおかげで有馬も映画の仕事が来たな!」
「そうね。『B小町』は勿論だけど皆それぞれの仕事が来てるから順調だし、スケジュールだけは気を付けないといけないわね」
斎藤社長とミヤコさんは窓から見える澄み渡る青空を見ながら俺達に背を向けて話していた。
かなはカミキさんと一緒に映画の打ち合わせに行っているので苺プロにはおらず、俺とルビーはソファーに座っているけれど……
「ずるい! かなちゃんばっかりヒカル君と共演して……私なんかヒカル君の高校の文化祭ライブの時だけしかやって無いのに! フリルちゃんもそう思うよね!」
アイはソファーの上で目の星を真っ黒にしながらもずるいずるいと言っているし……アイが呼んだからと言うのもあるけれど、フリルは他の事務所なのに良く来れるものだ。
売れっ子だから忙しいハズなのに……アイが呼ぶとすぐに来るこのフットワークの軽さは異常である。
「当然ですボス。私は唯の一度も共演したこと無いから悔しいです。私達もねじ込んで貰いましょうか?」
「そうだね! じゃあ早速ヒカル君に連絡……」
アイはそう言うとすぐさま自分のカバンからスマホ取り出して連絡しようとした。
「ダメだって! 今回はかなの役者人生が掛かっているだからアイもフリルも邪魔してやるな」
「ぐぬぬ~じゃあアクア! 私はヒカル君と共演するにはどうすればいいの! チャンスなんか全くこないじゃん!」
「それはやっぱりアイが主役級しか出来ないからなんじゃ……?」
「そんなこと無いもん! 私だって脇役位やったことあるもん!」
秒で終わるのはもはや脇役じゃなくてエキストラなんだけど……
「そう言えばカミキさんに脇役の事に関してアドバイスって貰えなかったの?」
ルビーがそういった瞬間にアイの表情が一気に暗くなった。
「ヒカル君からは『アイさん……人には向き不向きというものがありましてね。アイさんには脇役は向いてないので主役で頑張ってください』って言われた。だから、私がもし仮にヒカル君と一緒の映画に出ても私は知らない主役とラブロマンスをヒカル君の前で繰り広げないといけないの! そんな話ってある! 私とヒカル君は夫婦なのに!」
言いたい事は分からんでも無いけれど……カミキさん忙しいから映画なんか出来る事ならやりたくないと思うし、よしんばやったとしても選ぶ事が出来るなら脇役を選ぶから……今回みたいにかなの役者人生が懸かっていたり、スポンサーとかのご指名が無い限りは絶対無理だぞ。
アイはそう言うとカバンからちっちゃいカミキさんのぬいぐるみを取り出して顔を埋めだした。
「ボス……そのカミキさんのぬいぐるみは一体どこで売っているんですか? 言い値で買います」
「ヒカル君に作って貰ったから非売品だよ。だからどんなにお金を積まれたってこれは絶対に売らないからね!」
「私も作って貰っても良いですか? ……その1/1スケールで」
「おい、辞めてやれ! そんなの頼んだらカミキさん寝る時間が無くなるだろうが!」
「……残念」
フリルは本当に残念そうに端正な顔をゆがめていた。
いや、そこまで残念がるなよ!
「作る……そうだよ! 私達で映画を作れば良いんだよ! キャストはこっちで用意して、映画監督は五反田さんにお願いすればイケるし……スポンサーはみゆさんのお姉さんになって貰えば良い訳だし……なんならヒカル君が主役ならスポンサーなんてどこでもつくだろうからイケる!」
いや、俺はアイが出演する映画なら勿論劇場にも行くしその場でアイのグッズも買うし円盤だって保存用・実用・観賞用・保険用・布教用で何枚も買うのは当たり前だけど……一体映画で何をやる気なんだ?
「……ちなみに具体的な案はまだ無いよな?」
「そうだねー。今ぱっと思い着いただけだし、とりあえず私とヒカル君の濡れ場は絶対かなー? っとなると私がアイドルをやっていた時期でドーム公演までを描いたものが良いのかな?」
いや、親の濡れ場なんて映画でやったらもう公開処刑じゃん!
「ボス……私の出番はありますか!?」
なんでフリルは乗り気なんだよ!?
「流石にR-18はまずいって!?」
「うーん……今の所は無いかなぁー?」
俺はフリルに突っ込みを入れてアイもやんわりと否定したけど……鼻息を荒くしたフリルはそれで止まる事はせずに……
「無ければ作りましょう」
大きな友達しか見ないし……違う意味で人生終わるぞ!
「じゃあ脚本は……アクア書いてね♡ 私は五反田監督説得してくるから~」
「丸投げ過ぎるだろーが!」
いやいや、こんなん事実通りに全部書いたら関係者全員アウトだぞ!
しかもアイが妊娠した理由はピル吐き出してコンドームの中の精子を利用した訳だし……一体どうすりゃ良いんだ?
「……とりあえず、濡れ場は一旦置いといて……どこからスタートでどこで終わるか決めないと話にならない」
聞いて無い振りをしている二人の大人に俺は静かに近寄った。