カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

203 / 220
第96話

 アイに頼まれた脚本なんだが……既にというか寧ろ最初っから暗礁に乗り上げていた。

 

「うーん……私がアイドルになったのは施設から脱走して田舎から都会に出た直後に佐藤社長に声を掛けられたんだよね」

「あ~懐かしいなぁ~あん時のアイは家出少女丸出しって感じで、服装だってパーカーにジーンズで女子力なんてものは欠片も無かったけど、人目を惹く天性の魅力があった。それを俺は感じ取ってお茶でも奢るから話だけでも聞いてくれって言ったんだ。そしたら……」

「抹茶ラテ奢ってくれたら良いよって言ったの」

 

 抹茶ラテに釣られてアイは見ず知らずの男に着いて行くのは如何なものかと……

 

「ママ……見方によっては誘拐されてもおかしく無かったよね」

「まーその時は私も中学生ぐらいだったかな~? まだ世間知らずだったしね。佐藤社長じゃなかったら危なかったかもね~」 

「佐藤じゃねー斎藤だ!」

 

 アイと斎藤社長のお約束は置いといて……はじめっからフルスロットルだから困ったものだ。

 

 こうなると施設を脱走した理由というかそれまでの経緯も聞かない訳には行かないけれど……アイは過去を語る事は中々しないから子供である俺もルビーも詳しい事は今に至るまで全く分からない。

 分かっているのは、バットでぶん殴られた事や白米を食べる時には勇気がいるらしいって事なので幼少期の時はネグレクトを受けていたようなので、中々に重い過去だった。

 

「ところでママの母親って今どうしてるのかな?」

「さぁ? 施設に入ってからは唯の一度も会って無いし連絡も無かったから分からないな~。ま、私は母親に愛されて無かったからどうでも良いけどね~」

 

 アイはそう言うと目の星を真っ黒にして口だけは笑っていた。

 

「……アイは自分の母親に対して復讐したいとかは考えなかったのか? カミキさんに言えば今ならどうにでもなるだろう?」 

 

 カミキさん警察にも顔が利くようだし……アイがその気ならカミキさんは幾らでも協力するだろう

 

「復讐ね……確かにヒカル君に相談したら、すぐさま実行してくれるとは思うよ。合法・違法問わず必ずね。……だけど私はヒカル君にはそう言った事に関わって欲しく無いし、それに会いに来てもいないし私も行ってないからそれでもう話は終わりなんだよアクア」

 

 それにしても……今の話を脚本に書くとすると大分……いや、かなりヤバいよな? 書き終わった後に添除するのは勿論だけど、最初からストーリーが重すぎるぞ!

 

「あー今日も撮影疲れたー」

「かなさんお疲れさまでした」

 

 そんな事を考えていたら、今日の映画撮影を終えたかなとカミキさんが事務所に戻って来た。

 

 かなは疲れたーとは言いつつも表情はとても明るくて物凄い生き生きしていた。

 役者としての仕事をしている時のかなは物凄く可愛い!

 反対にカミキさんはケースからシナモンスティックを咥えながらぼ~っとしていことから大分お疲れのようだ。

 ヨモギとは言え……タバコは完全に辞めたけれどそうなるとストレスが溜まっているんじゃないかと不安に思ってしまう

 

「あっ! アクア疲れた私を労って!」

「悪い今脚本書くのに精いっぱいだ」

「あ~アイさん主演の自主製作映画だっけ? 監督とかプロデューサーはもう決まっているの?」

「……五反田監督にお願いしたら脚本が出来てから言えって言われたから今アクアに書いて貰ってるの」

「いや、アイさんの自主製作映画なんだから脚本もアイさんが書きなさいよ!」

「……試しに書いたのがこっちだ」

 

 俺はアイの情念が込められた脚本をかなに渡した。

 受け取ったかなは読み進めて行くと次第に顔が赤くなり、脚本を力強く閉じた。

 

「最初から最後までどピンクじゃない! こんなのもうAVと変わんないわよ!」

 

 書いたのはアイだけど、多少盛っているとはいえ実際にあった出来事だと思うしなんならもう一人の当事者がそこに居る訳だし……

 

「かなちゃん言っておくけど、今のはまだ序章でこれからどんどん激しく……」

「しちゃ駄目なんですってば! カミキさんもコレ見てくださいよ。もうコレ脚本って言うより官能小説ですよ!」

「か、官能小説……そんなこと無いもん脚本だもん! 事実百パーだもん!」

「まーちょっと読んでみますから待っててくださいね」

 

 かなから渡された脚本をカミキさんはパラパラとめくり……読み終えた。

 そっと、台本を閉じた後目頭を抑えているけれど……判定は?

 

「事実は事実なんですが……これをそのまま映像化するには過激すぎるし場合によってはアイさんが捕まっちゃいますね」

 

 アイからカミキさんを誘った訳だから……もしかしたら淫行条例に当たるかも……

 

「だ、だよねー! だから今アクアに書いて貰ってるんだ~」

 

 アイはそう言うと一瞬で手のひらを返した。

 やっぱり自覚はあったようだけど……何故イケると思ったんだろう? まーアイだからとしか言えないな

 

「ちなみにどこからスタートする予定ですか?」

「一応アイドルにスカウトされるところからになりますけど、何故アイドルになったのかの理由も入れて置かないと盛り上がりに欠けますし……」

「後はヒカル君との絡みも十分に入れて置かないとね! 私はヒカル君との濡れ場なら本番有りだよ!」

「無しの方向で考えましょうねアイさん」

「そんなぁ~」

 

 いや、だからそんなの流せねーから!

  

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。