脚本が完成してから一ヶ月が経過した。
その間にカミキさんとかなの映画も撮影が終わったようで、今日はその後打ち上げのようだった。
その映画の監督が女好きで有名なシマカンなのが多少では問題ではあるもののカミキさんがいるから恐らくは大丈夫だと思いたい
そして同じぐらいの時期にあかねも仕事が空けたようで最近はルビーと良くいる事がある。
この二人は比較的仲が良いから安心できるペアなんだが……やっぱり、かながいないと防犯的な意味で不安に思えてしまう。
ルビーは世間知らずと言うか……ガードが緩い部分があるので、しっかりした人が居ないと脇道に持って行かれそうな危なっかしさがあるし、あかねは……何だろう相手が望む事を理解してしまう……何と言うか怖い部分がある。
やはりプロファイリングが趣味なだけありその人の思考パターンを読むのが得意なのだろうか?
人狼とかやったら無双しそうなヤバい奴だ。
「アクア聞いてる! 関係各社に許可取らないと行けないから準備してよね!」
「あ、ああ。分かってるよ」
「なんで俺まで……」
やたらと鼻息を荒くしてるアイと巻き込んでしまった五反田監督に申し訳ないと思いつつも一緒に挨拶周りも兼ねて行動をすることになってしまった。
カミキさんのおかげでアイとの際どい濡れ場シーンはオブラートになったりもしくは削除したから無くなったけれど……今度は別の問題もあったのだ。
アイを落とした稀代の女たらしであるカミキさんのルーツも勿論公開する訳なんだけど……そうなるとカミキさんの先輩達である姫川夫妻の事も言及しないといけない訳だけどもはや故人であるので……この場合関係者と言うか腹違いの兄である姫川大輝にも許可と出演をお願いしようとする訳だけど、姫川夫婦の事はカミキさんは困りながらも語ってくれたけど……
カミキさんが言うには『先輩達は言語化するには難しい人種であり、良く言えば自由奔放で悪く言えばアウトローなんですよ』って事らしいけど……それっておもっくそヤバい人達じゃん!? って思わず突っ込んでしまった。
カミキさんも苦笑いしていたけれど……劇団ララライは一流のヤバい奴等しか所属出来ないのではないだろうか?
そんな事を考えつつ指定されたマックに行くと既に山の様に購入したハンバーガーを一人黙々と食べてる兄の大輝さんがおり、こっちに気づいたのか手を振って声をかけてくれたが相変わらず無表情であった。
「あっアイさんとアクアこっちだ!」
「大輝君お疲れー私も食べて良いかな?」
「どうぞ」
アイはそう言うと山から照り焼きハンバーガーを取り大きな口を開けてかぶりついた。
他にも色々なハンバーガーがあるのに何故よりによって照り焼きを選んでしまったのだろうか?
案の定アイの口の周りはソース塗れになってしまった。
「あ~姫川”コレ”の事は気にしないでくれ」
「コレ扱いって酷くない監督!」
「ソース塗れにして抗議しても説得力ねーからな!」
五反田監督には家の家庭事情を話して居ないので知っている訳では無いが……
「……何時もの光景なので、アイさん紙ナプキン置いとくんで自分で拭いてください」
「そ、そうか、今回は出演と許可のお願いをしに来たんだがどうだ?」
まー腹違いの兄である事は台本を見たら分かってしまうので仕方が無い
「そうだな。俺も実際の所兄さん……いや、カミキヒカルと上原清十郎と姫川愛梨の関係には興味がある訳だし、ここいらでちょっと暴いて見たいから協力するぞ」
「大輝さんありがとう」
大輝さんはにやりと笑いながらも承諾してくれた。
良し、これでとりあえずは問題は一つ片付いた……ハズだった。
「あ、ボスおはようございます」
「あれ、フリルちゃんどうしてここに!?」
不知火フリルが目の前に現れた。
「ああ、今共演してるドラマで一緒になっててアクア達のやる映画の話をしたら勝手について来た。ちなみに今アイさんが食べてる照り焼きはこいつが買ったものだ」
「そ、そうか……ところでフリルは一体何の用なんだ? 時代的にもフリルは出演出来ないぞ?」
「そ、そうだよ。『B小町』だってみんな見た目は若いからそのまんま出れるし役は無いよ」
そう、フリルに与える役は無いので駄々を捏ねられても何にもならいのだ!
正直使えれば収入は期待できるから、スポンサー問題はかなり解決するし予算が増えればその分良いものが撮れるからありがたいのだが……
そんな事を考えた時にフリルの眼光鋭くなった。
「ボス……私がただ子供の様に駄々を捏ねるだけだと思っていませんでしたか? 私は言ったはずです。役が無ければ作れば良いのだと……私が姫川愛梨の役をやりましょう! これで公然とカミキさんに性的な悪戯が出来ますね」
「流石フリルちゃん! 分かった思う存分ヒカル君を堪能する権利を与える」
「ボス私は一生ついて来ます」
おい、何なんだこの主従関係は!?
「うん? となると俺は上原清十郎役になるのか?」
「大輝さんは……そうなります」
途端に嫌そうな顔をする大輝さんは案の定……
「アクア……この話やっぱり無かった事には「しねーからな」……そうか」
次男の俺がこんなに苦労しているんだから、長男も少しは苦労しろよな!
そんな事もありつつも順調にキャスト問題と再度脚本の修正も行っていた次の日……
俺とアイと無理を言って運転してもらっている斎藤社長とで今アイの実家に向かっていた。
昨日まではっちゃけていたアイだったが今ではガタガタ震えていた。
無理もない事ではあるし、俺自身も許されるなら一発殴りたいほどだが……しかしこの人の許可も取らないと行けない訳なのだ。
実の母親にして、最もアイを苦しめた人物『星野あゆみ』
「ねぇアクア……本当にこの人の許可が必要なの? 絶対に要らないと私は思うんだけど?」
「アイの映画である以上これは避けては通れないから頑張ってくれ」
「……ひ、ヒカル君私に誰にも負けない強い信念を……」
アイはそう言うと薬指に着けた指輪にブチュウとキスをしたけれど……やりすぎじゃない?
「……ねぇアクア」
「ダメだ」
「まだ、何も言って無いよ!」
「分かった。じゃあなんだ?」
「……今ふと思ったんだけど、ヒカル君もヒカル君の親に許可取らないと行けないんじゃない?」
アイはそう言うと喜色の笑顔を浮かべ始めたけど……それは無理だ。
「カミキさんの両親も勿論調べて見たんだけど……アイとは違い手掛かりが全く無かったし、それどころかカミキさん自身も物心ついた時には既に両親は居なかったと言ってたし今更見つける事は不可能だ」
名前すら知らないようだから素人の俺では調べようが無い
その道のプロでさえ痕跡を辿る事は出来ないだろう
「ヒカル君がその気になれば見つける事は出来そうだけどね?」
「カミキさん曰く『戸籍とか住民票なんてものは気にしなければ捨てる事が出来る』らしいから無理だぞ」
10年もの間大陸を当ても無く彷徨い歩いたとカミキさんは言っていたからこういった事はガチなのだろう
「おい、アクアとアイ着いたぞ」
「壱護さんありがとう」
「佐藤社長は頼りになるね」
「佐藤じゃなくて斎藤だっつーの!」
車から降りると古びた家があり、表札には『星野』とあった。