カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第105話

 昨日の撮影で全て持って行かれたが……撮影はまだ始まったばかりだし、ここからアイとカミキさんが復帰するまで俺が頑張らないとと思い気持ちを入れ替えて撮影現場に着くとそこには……

 

 紫ががったロングヘアーを靡かせ太陽のような笑顔に吸い寄せられる天性の瞳を放っていたアイがいた!

 

「あ、アクアごめんね~もう風邪は治ったから今日から復帰するよ」

「あ、ママ!? ……だってまだ熱が38度近くあるって斎藤社長から連絡あったのになんで!?」

 

 ルビーがそこまで言って俺は気が付いた。

 

 この世で一番アイの事を理解して完璧に化ける事が出来る人物は唯一人!

 

「……もしやカミキさんですか?」

「あ~アクアにはバレちゃったか~。えへへ」

 

 見た目や仕草だけじゃなく全てが本物であるアイに見えてしまう。奇才の役者カミキヒカルが演じるそれはまさしく”カミキアイ”であった。

 

「それにしてもカミキさんも高熱って聞きましたけど良く2日で治りましたね」

 

 あかねの疑問は最もであるし、俺自身も気になるけど……ただ単に免疫力が強いってだけじゃない気がする。

 

「千佳ちゃんのおかげでね~首にネギを巻かれたり、ネギを扱った料理を振舞って貰ったところまでは良かったんだけどね。食事も終えていざ寝ようとしたら、何を血迷ったのか……お尻にネギを入れようとして来てびっくりしちゃったよ~」

 

 アイは……いや、カミキさんはそう言うとケラケラ笑いながらそう答えたけど、下手人である千佳さんはすぐ傍で……床に正座していた。

 

「だって……風邪をひいた時はネギをお尻にぶっ刺せば良いって聞いた事がありましたから……」

 

 いや、それって民間療法であって医学的な根拠は無いから……ただ傷と一生物のトラウマが出来るだけだし……

 

「危うくお尻の処女を失う所だったけど、カナンとニノが丁度良いタイミングで帰って来てくれたから助かったんだ~」

 

 そんな話をしていたら続々と『初代B小町』のメンバーがアイドル衣装を身に纏って入って来た。

 皆年齢も30代なのに当時と同じ……いや、それ以上に魅力的な姿はまさしく伝説のアイドルグループ『B小町』で合った。

  

「あっカミキさーんそろそろドームシーンの撮影が始まりますから来てくださいね」

 

 きゅんぱん改め九重さんが可愛らしく声を掛ける。

 

 奇しくも今日の撮影はあの時のアイがインフルエンザで倒れた時と同じであり、またもや替え玉としてカミキさんがアイに扮してドーム公演を行った状況であった。

 

「ねぇねぇ……あの時みたいにさ、みんなで円陣組まない?」

「……みんなってメイは言うけどニノがいないじゃん? かなちゃんでも良いけど?」

 

 名前を呼ばれたかなはビクっと震え出したので、肩を抱き寄せて落ち着かせる。

 正直自業自得ではあるものの、俺の彼女なので出来ればあまり苛めないであげて欲しい

 

「あ~それだけど……」

 

 カミキさんが答えようとした段階でドアを思いっきり開けて新野さんがアイドル衣装を身に纏って入って来た。

 

「居ない訳がないでしょ! ちゃんとカナンに仕事押し付けてやって来たわよ!」

「……え!? いやだって、カナンって滅茶苦茶忙しかったハズよね?」

「……昨日全国ツアーを終えて事務所に丁度帰って来たわよ。今頃泣きながら仕事してるわ」

 

 未だに現役アイドルをやっているカミキプロダクションのアイドルであり、稼ぎ頭でもある。

 詳しい事は何一つ分からないが……アイが夜空に輝く一番星であるならばカナンさんはまるで泥中の蓮のように思えた。

 

「……昔のニノは引っ込み思案で高峯の後ろに隠れていただけだったのに、人って変わるものだね~」

「ちょっとカミキさん意地悪言わないでくださいよ~」

「確かにね」

「そうだね~」

「私達を変えたのはカミキさんなんだけどね~」

「じゃあカミキさん……お願いします」

 

 そう言うと共にカミキさんが演じるアイと『B小町』は円陣を組みだして

 

「わかったよ~じゃあ皆サインは~?」

「「「「「「B!!!!!!」」」」」」

 

 恐らくあのドームの日も『B小町』こうやって円陣を組んで楽しそうにしていたのだろう

 

 そうして、全員が撮影場所に移動してカミキさんが演じるアイの『B小町』の最後のライブが始まった。

 

 

 俺は今日ほど、かつて行われた東京ドームのライブを生で見れなかった事を激しく後悔した。

 

 主役はアイでアイがあっての『B小町』と言われ続けたし、俺自身今でもアイ無限恒久永遠推しなのは変わらないし、変わる事は無いとも思っている。

 

 ただ、それでもこのライブだけは違った。

 

 カミキアイが輝いていたのは勿論だが……皆が実に楽しそうであり俺は思わず……

 

「「B小町!!、B小町!!」」

 

 ルビーと一緒にサイリウムを持って嬉しさのあまり叫んでしまったが……

 

「カァァァット」

 

 その直後五反田監督に思いっきり拳骨を食らってしまい、ライブが撮り終わるまで立ち入り禁止となってしまった。

 

 

「ねえお兄ちゃん」

「どうしたルビー」

「さっきのライブ途中までしか見れなかったけど……すっごい良かったよね!」

「ああ……俺はあのライブを見てもアイ無限恒久永遠推しなのは変える気は無いけれど……あのライブだけは今まで見たどのライブよりも良かった」

 

 でも、アレは本物のアイには絶対に無理だって言うのが良く分かった。

 

 何故ならアイは個として既に完璧で究極のアイドルとして完成してしまっているので、他者の力を必要としない絶対のアイドルなのだ。

 

 しかし、カミキさんが演じるアイはライブをまるで劇の様に見立てて、かつての『東ブレ』のように自身が目立つだけで無く、一人一人にスポットライトが当たる事もそうだが、光の強さよりも闇の暗さを強調する事でより相手を輝かせる脇役を演じ続けて来たカミキさんならではの強みがあった。

 

 そして、今ふと考えるとこの映画に置いての目立つシーンはあらかた取り終わっており、後は演技力が問われはするものの、そこまで重要な部分では無かった。

 

「……ところで、ライブに濡れ場も撮り終わったけど……ママは怒んないかな?」

「それに関しては何とも言えないな……」

「だよねぇー」

「「はぁ~」」

 

 俺とルビーは何とも言えずにスタジオの外で黄昏れてしまった。

 

 

 

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