2週間後
今俺とカナンは四条社長に用意してもらったアイドル衣装(メイド服)を着用して新宿駅に来ていた。
勿論道路使用許可は上原パイセンに頼んだら「おう」と二つ返事で取りに行ってくれた。
未成年だと、許可が下りるのにもう少し時間がかかってしまうから、本当に上原パイセンには感謝している。
そんな訳で、新宿駅で歌のは問題はないが……駅から出て来る人が多く、大体がこっちを見ているのだ!
まぁー美少女であるカナンがメイド服を着ているんだから、無意識に目が追ってしまうのは仕方ないし俺も今日は話題性を取る為に、アイになり切ってかまして行こうと思っている。
幸いB小町は今日生ライブをやっているみたいだから、物理的にここに居るのはおかしいので、すぐさまネットがざわつく事は容易に想像出来る。
「カナン準備は良い?」
「う、うん。それにしてもカミキの姿がアイにしか見えないし、声までそっくりなんて……役者って凄いのね」
カナンはしみじみとそう言った。
数日前にイタズラ心で寝起きドッキリで朝ごはんをアイに化けて作ったら、あまりの事にカナンは泣きだしてしまった。
ちゃんと抱きしめて慰めたけど……しばらくカナンは俺に抱き着いて離れなかった。
「……で、歌うのはマクロス7なのよね?」
「そうだよ! 今私達の歌を歌っても反応はあんまり良くないからここはロックの力でごり押しするよ♪」
「私はいけると思うけど……ま、良いか」
カナンも特に反対意見は無いようだし、持って来たラジカセに早速マクロス7のサウンドトラックを入れて音楽を流した。
一発目はHOLY LONELY LIGHTだ。
実際に何もせずに歌い始めても立ち止まって聞いてくれる人なんている訳が無いと思っているし、JIFに至ってはそもそも自分たちの歌を主に聞きに来る人は0人だと俺は思っている。
何故なら知名度が無いからだ。
そう、まずは知名度こそが全てだ。
だからこそ、この新宿駅を俺は選んだ。
無名のアイドルがどんなに優れていようが知られないんじゃ意味が無いが……
ここなら、どっかのバカが勘違いをして、ネットの書き込みをする。
そして、暇人共はそれを見て囃し立てるが、中にはそれが本当かどうかを確認する奴らもいる訳で、そこまで行ければ俺の作戦は成功したも同然だ。
だからこそ、歌う前に……周りの意識をこっちに向け、見るように仕向ける。
「「私達の歌をきけぇぇぇ」」
誰がやっても、ほんの一瞬はこっちを見てしまうし、女装している俺もそうだがカナンも美少女であるので、これが中々ハマるのだ。
コレも一つのテクニックではあるけれど、これをやる人はいないのが現状だ。
「二十四時間うごめく街をTonight Tonight 駆け抜ける」
先に俺が歌い出し、次はカナンに譲る
こうする事で、どっちにも注目が行くので、一人に人気が集中する事は無くなる。
これが2人の強みだ!
「非常階段 瞳の群れがSign of the times 探してる」
「目がくらみそうな 蒼いダイヤも」
「ガラスに変わってしまう」
そしてここからカナンと声を合わせて歌う
「「キ・ヲ・ツ・ケ・ロ」」
「「Holy lonely light 急げ 自分を信じて Heavy lonely night 闇の中から答を見つけ出せ」」
まだまだ歌は始まったばかり、お楽しみはこれからだぜ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「振り向くなDon't look back again」
「振り向くなDon't look back again」
最後はカナンと声を合わせて……決める!
「「振り向くな Baby don't look back again」」
ようやく一曲目が歌い終わったけど、これは中々消耗するな
チラッとカナンを見ると額に汗を滲ませて歌いきってた様子だけど、まだまだサントラは始まったばかり……
次は『Seventh Moon』が始まる。
歌に集中していたから、周りを全く気にしていなかったが……やたらと視線を感じるので、チラッと周りを見てみると結構な人数が立ち止まって見ていた。
「ア……アイがメイド服でマクロス7熱唱している!?」
「んな訳あるか! 『B小町』は今生ライブ中だぞ!?」
「いや、でもそこに居るじゃんよ!?」
「居るけど……居るんだけど……どうなってんだこれ?!」
「メイドアイ……メイドアイだ!」
良い感触じゃないか!
「カミキ……なんか凄い事になってない?」
「カナン……これがロックだよ!」
「多分アイの人気だと思うけど……そう考えちゃうと癪だから、ロックのおかげにしておく」
そうだ、難しい事は後でゆっくり考えれば良い
「次はSeventh Moon」
「盛り上がって行こー!」
「「「「「おおー!!!」」」」」
「紫のパノラマ 銀河のハイウェイ 見上げれば 俺の胸を つらぬく SHOOTING STAR」
「眠らない都市に 加速するハートビート 重ねては見えない明日に ふと祈る時」
「「聞こえてくる あのメロディー不思議なあの声が俺を離さない」」
「「教えてくれ SEVENTH MOON この胸のモヤモヤを俺をどこへと連れてゆくのか 蒼く揺れる SEVENTH MOON 響いてくるリズムにイカれたダンスで答えを探すだけさ」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
疲れた。
流石に10曲全力はきつかったが……それでも今日は得るものが色々あった。
しかし、あまりにも疲れすぎてしまい家に帰ってすぐに俺もカナンも一緒のベットでぐだーとしてしまった。
「カミキ……楽しかったね」
「ええ、意外と良いものですね」
一応帰るときにJIFに出る新人アイドル『アークトゥルス』のカミキとカナンで~す♡ 応援お願いしま~す♡後来週もこの時間帯で路上ライブやりますからまた来てね♡って手も振って宣言したところ意外と好感触だった。
まぁー実際の所は分からないが、こういった地道な活動を続けて行けばいずれ芽が出るはずだと信じてやるしかない!
とりあえず、今日は疲れたからもう寝たいけど、夕飯は作らないと……結局の所最後の財産は己の体なのだから……
「ほら、カナン今から夕飯作りますので、起きててください」
「……出来たら起こして、それまでは休むぅ~」
これはあまり時間をかけているとカナンが寝てしまいそうだ。
良し、今日は豚の生姜焼きで良いだろう
カナンの為にも急いで夕食を作っていた俺だが、この時ネットでは相当お祭りになって居た事は知る由もなかった。
10分後
「はい、カナンあ~ん」
「……キャベツばっかりぃ~カミキの意地悪ぅ~生姜焼き食べたいの!」
カナンはそう言うと涙目で睨んできたが、目の前に箸があるのだから自分で食べてれば良いじゃん。 俺も手がプルプルして来たし……
「じゃあ、これを食べたら次は生姜焼きですね」
「分かったよぅ」
ようやく、諦めてくれたカナンの口に千切りしたキャベツを運べた。