娘のクラスの先生と知り合って、早くも1年が経過した。
授業参観は勿論、運動会や学芸会に三者面談を行い……俺は深い後悔に襲われた。
俺は……俺は一体、娘の何を見て来たのだろうか?
知る機会はいつだって有ったはずなのに……俺は有ろうことか知ろうとしなかった。
ああ、ゆらになんて言い訳をすればいいのだろうか?
いや、良い訳なんて男らしくないな……
優しいだけではいけないことが良く分かった。
俺も心を鬼にする時が来たようだ……
「ア~イ~? この成績は一体、何かな?」
「ギクッ!! な、なんでパパが私の成績表持っているの? 完全に燃やしたはずなのに!」
「……アイの担任の先生にお願いしたんですよ。あの日、学芸会で知り合ってからね。彼女は色々な事を教えてくれましたよ。……本当に
本当にあの時……先生の事を口説こうとしたから、悩みを聞いて解決するために尽力しようと思ったんだけど……。まさか悩みの種が、うちの娘だとは思いもしなかった。
「授業中は寝ているのが当たり前……。宿題をやらないのはいつものこと……。挙句の果てには毎日遅刻している? おまけにテストの点は常に一桁……パパは悲しいです」
別に優等生で有れなんて言うつもりは無いし、ましてや良い学校に行って、一流の大学を卒業して、一流企業に勤めるのが素晴らしい事なのだ……なんてことを言う気は全くない。だけど……なぁ? 何でこんな……アッパッパーに育っちゃったかな~?
「……だって授業はつまらないし……私はパパから生涯離れないし、養ってもらうから意味ないもん! それにそんなん言うなら、パパは若い時どうだったの! どうせ学校なんてろくに行かずに、役者やっていたり女遊びしていたんじゃないの?」
ほ~? 俺に学歴勝負を挑むとは……良い度胸じゃないか! それにしても、何で俺が役者をやっていたこと知っているんだ? ……あれか? 過去の動画でも出回っているのかな? ま、自分で言うのもなんだけど……当時はそこそこ売れていたし、女遊びをし始めたのもその位だから……有名っちゃ有名なんだよね。
「確かに私は若い頃は役者もやってましたし、その過程で女遊びをしていましたが……『ほら~パパも私の同類じゃん』最終学歴は東大卒ですよ?」「え!?」
「私はアイとは違い、やるべきことはやって来たつもりです。責任逃れは唯の一度もしてはいませんし、遊んではいましたが……それでも無責任な事は一切していません。それは胸を張って言えます」
「(た、確かに……ヒカル君はあの時も、徹底的に避妊していたもんね……。私はピルを吐き出した上で、ゴムを使って妊娠したけど……あれ? もしや……アイドル休止になる前に、妊娠したことをヒカル君に伝えることが出来ていれば……私はヒカル君と結婚生活を送れたんじゃ……?)わ、わかったよ~。じゃあ、今度から……ちゃんとするよ……」
「分かって頂けたなら良いですよ。ではゆらさんは今日は泊まりの様なので、何か食べに行きませんか?」
「うん、パパと一緒なら私どこでも着いて行くけど……その前にちょっとトイレに行っても良い?」
「分かりました。それではここで待ってます」
「すぐ戻るから待っててね」
娘はそう言うと、パタパタとトイレに駆け出した。
じゃあ、今のうちに何を食べようか考えておかないとな~?
特に娘は嫌いな食べ物は無いし、あーんをしてあげると……ひな鳥の様に口を開けて待つ習性がある。これはゆらやその他の女性がそうだったから多分、女性の習性なのだろう……。
ただ、娘の残念な部分があるとすれば……お頭がアッパッパーである事と、お箸が上手に持てない事だ。
練習はしているんだが……一向に良くならずにいつもボロボロ零してしまうし、また食べ方があまりよろしくない。それこそカレーやナポレタンといった物を食べると大体、口の周りに”
幸い、小学校は給食ではなくお弁当持参の所だから問題は無いが、早いところ直して欲しいところである。
それというのも……最近、ゆらが娘に嫉妬しているのだ。
いや、娘にあーんをしていたら……ゆらも負けじとあーんをねだってくる。
人間の手は二つしかない関係で……そうなると俺が食べれるのは、二人が食べ終わった後になるのだ。
何故、家族水入らずで食事を楽しむ空間なのに……俺は一人で食べないといけないのだろうか? しかも二人とも食べ終わったら、即テーブルから離れてしまうのだ。
俺も偶には可愛い嫁と娘からあーんをされたいものだ。
「パパ戻ったよ~」
娘はそういうとパタパタと駆け寄って、残り1メートルの所で飛びついて来た!
それをいつものように受け止めて、抱っこをしてあげると……さも当たり前に様に足を腰に巻き付けてくる。
靴を履いてる状態でもやるので、俺の服は毎回背中の腰の部分が汚れてしまう。
……せめて、靴を脱いでくれませんかね?
ゆらの専属マネージャーだから、舐められないようにスーツはアルマーニを着ているし……何なら外に出るときは常にアルマーニを着ている。
……つまり、俺の服の汚れの原因は大体、娘であった。
「はい、じゃあ行きますか」
「どこに行くのー?」
「鯖定食が美味しいって、有名な銀座の料亭です」
「えー!? アイは箸苦手だからやだなー」
「……私があーんをしてあげますから」
「ならいいよー」
俺はアイをバイクに乗せて、銀座の料亭に向かった。
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♥♥♥
「もしもーし、アクア聞こえるー?」
「……ああ、ちゃんと聞こえるよアイ」
「ちょ~っと協力して欲しい事があるんだけど……今良いかな?」
「大丈夫だ」
「今日の夜に、ヒカル君とあっつーい夜を過ごしたいから〜手伝って欲しいんだけど♪」
「……えっ? ヒカル? ヒカル君って……カミキヒカルの事か!? 今のアイは、カミキヒカルの娘だろう?」
「……そうだけど? だって、星野アイの時に私が唯一好きになった人なの! だ・か・ら〜アクア? 手伝って♪」
「それって、もしかして……アイと肉体関係があったって事か?」
「そうだよ~? 後これは内緒だけど……ヒカル君が、アクアとルビーの父親だよ」
「……アイ、教えて欲しい事がある。アイを殺した本当の犯人は……カミキヒカルの可能性はあるか?」
「……何でヒカル君が、私を殺した可能性があるのかをまず教えて欲しいけど……ヒカル君はそんなことしないよ」
「だって、俺とルビーの父親って事は……アイの子供の存在を知っていたって事だよな?」
「ああ、そういうことね~。そう考えると確かにヒカル君は怪しいかもね。けど、ヒカル君は犯人じゃないよ。だってヒカル君は私が妊娠したこと知らないし、私も教えて無いもん。だからもう一度言うけど……ヒカル君は犯人じゃないよ」
「じゃあ……じゃあ、一体!? 誰がアイを殺したんだよ!!!?」
「……さぁ? それは私が聞きたいけど……あえて言うなら、私が所属していたB小町のメンバーじゃないかな? それも最古参の高峰・新野・渡辺の内の誰かか、もしくは全員じゃないかなー? ほら、覚えてる? 私を刺したリョースケの事? 地下アイドルの時からの私のファンだったんだけど……リョースケの事を知っていてもおかしくないのは、その3人くらいだからねー」
「……アイは、アイは悔しくないのか!? あんな無残に殺されたんだ、今なら復讐出来るし俺も協力する! 俺は……俺はアイの為なら、なんだってやってやるから!」
「……ごめんね〜アクア。私の所為で大変だったんだねぇ〜? でも、星野アイはもう死んでるし……今の私はカミキアイ。……だから復讐なんてしなくてい〜よ? それに子供がそんな事に囚われているのは、親として悲しいから……自由に生きて良いんだよ〜? だから、今は私の明るい未来計画を『……いやだ。ブチ! ツーツーツー』……え? アクアが電話を切った!? ……う〜ん、反抗期かな? ま、いいや〜。これからヒカル君とお食事デート……! ……フフッ、べろんべろん酔わせたら……早速、食べちゃおっと……!」
なお、ヒカルがバイクで来ていた為……アイの望みが叶うことは無かった……。