赤ワインをグビグビ飲み始めたアイはようやく酒が回ったのか、はたまた覚悟を決めたのか分からないが頬を赤く染めて答えた。
「あの日ヒカル君が家に居た理由は……」
アクアとルビーはごくりと唾を飲むように喉を動かしたが、考えてみて欲しい。
アクアの話ではアイを殺す為に俺がアイの家に居て、ストーカーを手引きしたと言っているが、その被害者であるアイが黒幕扱いの俺が居た理由を言えるのは疑問に思わないのだろうか?
「……酔いつぶれたヒカル君をお持ち帰りして、朝までセックスしようとしたからだよ! なんか文句あるアクアにルビー!!!」
まー思わなかったから、今こうしてあの日起こった情事を聞く羽目になるのだから……
アイも言いづらい事を良く言ったものだ。
「じゃ、じゃああの日何でストーカーが来たんだよ!?」
アクアはそう言って俺を睨むが……んなもん俺が知るか!?
「そんな事私が知る訳無いでしょう? そんなに知りたかったら死んだストーカーの墓でも掘り返して問いただして来なさい。それに私が手引きしたってアクアは言いますが、そもそも私が目覚めたのは1年前ですよ? 事件から14年もの間眠っていた人を犯人扱いするなんておかしいでしょう!」
それ以上はアクアも言い返す事が出来ずに下向いてしまった。
「……じゃあ、取り合えずヒカル君との関係も分かった事だしこれからは一緒に生活出来るよね?」
目の星を真っ黒に染めてアクアとルビーを見るアイだけど……
「アイさんだけなら構いませんが……この子達と一緒に生活は無理ですよ」
「えっ!? ヒカル君何言ってるの? だって私達の子供だよ?」
そりゃそうだけどさ……
「私は14年もの間寝たきりだったんですよアイさん? 言っては何ですけどこの子達とは血の繋がった赤の他人ですし、何より私はこの子達を愛せない」
それこそ、一緒に生活なんてした日にはずっと気を配り続けてしまいそうだし、何よりこの二人の考え方が気に入らない!
俺は年上の美女とセックスした上にお小遣いも貰っていた分際で、喜ぶことこそあれ、逆恨みして恩を仇で返すような事は決してしないぞ!
大体男の童貞に何の価値があるって言うんだ!?
「それでは私はそろそろお仕事ですので……ああ、お金はここに置いていきますのでどうぞ楽しんでくださいね。あとアイさん」
「な、何かな?」
「私はアイさんの事を愛してはいませんが、アイさんが私の事を求めると言うのなら答えるのもやぶさかでは……」
パーンと頬を叩かれた。
まぁー叩かれて当然だわな
俺を叩いたアイは涙目で俺を睨んでいた。
駄目押しにもう一声かな?
「仕事も出来た。家庭も築けた。後はあなた達と縁切りたい」
「……もう二度私達に関わらないで……」
アイはそう言うとアクアとルビーを伴って喫茶店を出て行った。
中学校を卒業するまでは嫌でもアクアとルビーには会う事になるんだが……ま、しょうがないだろう。
何せ……まだ黒幕は捕まっていないのだから……
アクアの着眼点は実際の所間違ってはいない
あの日ストーカーが来たのは事実だ。
しかし、どうやってアイの家を突き止めたのかは分からないし、今も狙っているのか不明だ。
何せアイはアイドル辞めちゃったし、見た目はあんまり変わっていないけど、そもそも30歳だし、何より子持ちだ。
もしまだ、黒幕が居るのなら……第2第3のストーカーを嗾けられる可能性があっただろうけど……今じゃあ苺プロも大きくなった訳だし、セキュリティも万全なようだから俺が傍で守る必要は無いだろう。
なら考え方を変えて裏から見守る事にしよう。
久しぶりに会ったアイは相変わらず危なっかしいけど、母親の自覚はあるようなので少しは安心できた。
ま、今回嫌われた事で次俺が死んでもこれで悲しまれる事は無いな。
「ねーそこのお兄さん。耳寄りな情報を買わない?」
振り返ると金髪の幼女がニヤニヤ笑いながら話しかけて来た。
「……支払いにツケは利きますか”ツクヨミ”」
「お兄さんは神様のお気に入りだから大丈夫だよ」
面白いじゃないか……
「じゃあ、神様に楽しんで頂けるように地べたを駆けずり回る事にしましょう」
「神様は優しいからね……タイムリミットは後1年だよ。それを過ぎたらゲームオーバーだからね」
クスクス笑うツクヨミは次の瞬間大量のカラスに包まれ居なくなった。