★★☆☆☆
とある日の事だった。
俺とルビーは、保育園へと迎えに来たカミキと共に……スーパーに寄って夕食の材料を買っていた。
ルビーはカミキに、アイには内緒でお菓子も買ってもらっていた。
……ルビー、夕食の前にそんなものばかり食べたら太るぞ?
「アクアも、何か欲しいのがあれば好きなの良いですよ」
……まぁ、アルフォートを買ってもらったのは内緒だ…………。
帰宅したらアイが居た。
その日は偶々……アイもB小町も午後は仕事が休みだったらしく、家にいたんだとか…………。
そんな訳で今日は、アイが夕ご飯を作ってくれた。
カミキの料理もおいしいが、やっぱり推しのアイドルの手料理は格別だった。
しかし、ルビーよ。そんな慌てて食べなくても料理は逃げないぞ? よく噛んで食べろ……早食いは体に悪いぞ?
「そうだ。来週から修学旅行で、しばらくアクアとルビーのお迎えは行けそうにないので、ミヤコさんにおねがいしてます」
「そんなのだめだよ、ヒカル君!?」
「いや、駄目とかじゃなくて……修学旅行ですので」
「私はもう一日でも、ヒカル君に会えないと生きていけない体になったんだよ!? それなのに……それなのに!!」
「…………アイさん? 熱演しているところ申し訳ありませんが……口の周りがナポリタン塗れになってて、台無しです」
カミキに指摘されて恥ずかしかったのか……服の袖で拭こうとしたアイの手に、カミキが手を伸ばして止めては、ティッシュで拭くのだった……。
「ハイ、これで綺麗ないつものアイさんですよ」
「……えへへ、ヒカル君ありが……じゃなくて、私はもう一日でも、ヒカル君に会えないと生きていけない体になったんだよ! それなのに……それなのに!? こんなの裏切りだよ!!!!」
「……それで行先は沖縄なんですが、お土産で希望なのはありますか? なければ紅芋タルトと、ちんすこうを買って来ますよ?」
「むぅぅぅうーーー」
カミキの肩を掴んで揺らそうとしたアイを、一瞬で抱きしめた。
カミキの胸にうずくまる形でがっちりホールドされたアイは、一瞬もがいていたが……諦めたのか、カミキの背中に手を回してアイ自身も抱き返していた。
「……アイさん? 以前も言いましたが……寂しい感情も、愛におけるスパイスですよ……?」
アイの頭を、カミキが撫でて慰めていた。
そして、カミキは修学旅行に旅立った。
カミキが修学旅行に行ってから、家の空気が死んでいる
アイは……虚ろな目で、ケータイと睨めっこしている。
多分、ラインでやり取りしているんだろうけど……。カミキも日がな一日中、ケータイを見ている訳ではない。アイの表情が明るい時間が、十分と持たない以上……常にカミキから、連絡が返って来ている訳ではないのが分かる。
そして、俺とルビーにも影響が出ていた。
……なんてことはない。
いつも保育園に迎えに来てくれたカミキが、修学旅行で旅立っているのだから……来るわけがないのに…………。それなのに……17時を過ぎると、保育園の窓側で俺とルビーはいつものように待ってしまう。
何気なく過ごしていた日常がこんなにも大切で……俺とルビーにとっても、いつの間にか大きな存在になっていた……。