歌が特段上手い訳では無いアイでも、アイドルとしての才能は天下一品。……だから、誰もが魅了される。
じゃあ、同じく歌が別段上手い訳でも……ましてや、役者としても2流の
……なんてことはない。
言葉一つ一つに、感情を……魂を込めろ……!
……凡人が出来るのは、唯それだけだ。
……大丈夫、俺なら出来る!
なぜなら俺には、誰にも負けない強い信念がある……!
「今日は文化祭ライブに来てくれてありがとー! じゃあ早速だけど……一発目は、SEX MACHINEGUNSのみかんのうた!」
「ーーーー!!!!」
腹から声を出したおかげか……俺はもう震えて無かった。
「続いて2曲目は、軽音部が大好きなブルーハーツのTRAIN-TRAINだ!! この歌を聞いて欲しい人が俺にはいる!!!!」
去年のライブ動画の再生数からも、話題性はあった。
それは俺が、アイに化けたからだというのもあったし……そこそこ自信もあった。
なら、今年も同じくアイの厄介ファンがこれを見るのは間違いない。
「TRAIN TRAIN 走っていく TRAIN TRAIN どこまでも…………」
「早くも3曲目だけど、次はビーストウォーズのED FOR THE DREAM! 俺にはこの歌を聞かせたい人がいる!!」
アイで狂ったファンがいる……ならば、愛で戻してやれば良い……!
だが、愛が分からない人もいれば……愛を誤解する奴もいる。
ならば、教えてやる……!
「さーて、4曲目は宇多田ヒカルのThis is Love。俺は……例え言葉は通じなくても、魂の伝達は可能だと信じている!」
……白けてんのか、見惚れているのか分からないが……。この静まり返りに、若干の不安があるけど……このまま最後の5曲目。
「みんな、最後までありがとう……! ー文化祭はまだまだ続くけど、この曲で最後になります。CR吉宗3より、そこにあるかも知れない……~大江戸みっくす~俺には、これを聞かせなきゃいけない奴がいる」
「君に逢いたい時だって どこか逢えない気持ちがある……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
文化祭ライブは歌い終わった後は、大歓声って訳じゃ無く……拍手で終わった。……なんとも言えないけど……軽音部の人たちはやり切った顔しているし、とりあえずは良しとしよう。
「あ、カミキ君? 理事長が呼んでいるから、理事長室まで来てね」
舞台裏で休んでいたら、呼び出しを食らってしまった。
やっぱり、アイモードじゃなかったから怒られるよなぁ……。
はぁ……。怒られるのは、嫌だけど……筋を曲げたのはこっちだし、謝りに行くか……。
理事長室に着いたけど、気が重い。
以前、リョースケが突撃してきたときより気が重い。
でも、ドアの前に立っていてもしょうがないし……覚悟を決めるか……!
俺が覚悟を決めて、ドアを開けた。
そこで目にしたのは……理事長と校長が、涙を流しながらも笑顔で出迎えてくれた事だ。
「「カミキ君! ライブ良かったよ!!」」
「ええ、私も年甲斐もなく感動しましたよ」
「二人にそう言ってもらえてよかったです。ただ、理事長……約束したことと違うことをしてしまい、申し訳ありません」
「いや、良いんだカミキ君。このライブ動画のコメント欄を見てくれ、賛美の言葉でいっぱいじゃないか」
「いやはや、本当にカミキ君のおかげですよ」
「いえ、私ひとりだけではありません。軽音部や先生方の協力があってこその結果です。むしろ皆さんのおかげです。私は唯本気で歌っただけです」
「本当に、我々は良い生徒達に恵まれましたな校長先生」
「そうですねぇ……理事長」
「ああ、呼んでしまい悪かったねカミキ君まだ、文化祭は終わって無いから存分に楽しみなさい」
「では、失礼します」
ふぅー緊張したけど、これ結果が伴ってなかったらやっぱりアウトだよなぁ……。
そんなことを考えてたら、今更ながらに震えがやってきた。
やっぱり……アイドルは凄いんだなぁ。