カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第40話

 ドーム公演5日前の出来事だった。

 何となくではあったが、嫌な予感めいたモノを感じていた。

 恐らく、これは虫の知らせなのだろう……。

 その予感に駆られて、俺はアイに電話した。

 

「……もしもし、アイですけど」

 

「アイさん大丈夫ですか!? 声がおかしいですけど」

 ワンコールで電話に出たアイの声は、擦れていた。

 それはまるで命の灯が消えかかっているかのような……まさに風前の灯火の様に思えた。

 

「……ごめんね。私……ドームの公演は無理みたい」

 

 こんなに弱々しいアイの声は、聞いたことが無かった。

 

「今すぐそちらに向かいます! だから、待っててください」

 

「ダメ!! ……ヒカル君にだけは見られたくないの」

 

 アイはそれだけ言うと、電話を切った。

 

 強い拒絶ではあったが、そんなこと知った事か!!

 

 それは、俺が止まる理由にはならない……!

 

 ハイエースに乗り込み、急いでアイの家に向かった。

 

 

 

 

 

 急いで玄関を開けて、アイの家へと入る。するとそこには……ピンクのウサギ柄のパジャマを着て、布団に包まれたアイがいた。それに、付きっきりの看病をしていていたのか……マスクを付けて看病しているアクアとルビーも居た。

 

「……カミキさん、どうしたんですか?」

 

「アイの様子がおかしかったので、様子を見に来たのですがこれは一体?」

 

「恐らくですが……アイは、インフルエンザに罹ったようです」

 

 ……全身の力が抜けて、座りこんでしまった。

 

 いや、厄介オタクに刺されたのかと思ったじゃん!?

 

 とりあえず、斎藤社長に連絡して対策を練らねば……。

 

 

 

 ……連絡したら、すっ飛んできたよ……。

 

「……斎藤社長。という訳なんですが……どうしますか?」

 

 ……本当にどうしようか?

 

 インフルエンザはどうしようもない。

 

 顔を真っ赤にして、目がグルグル回っているアイに頑張れとは俺はとても言えない……。かと言って、代案が浮かぶ訳でもないし……はてさて、どうしたものか?

 

 

「……カミキ? お前、アイに化けてドームに出れるか?」

 

 ……えっ? 斎藤社長……正気ですか!?

 

「私は化けることは出来ても、声帯模写は出来ませんよ?」

 

「カミキ・・・・・・確かに声帯模写は出来ないようだが、以前お前が焼肉屋で酔っぱらていた時、記憶には無いだろうが、アイの声真似をしてたぞ。それも本人そっくりだったぜ」

 

 んな、あほな事あるかいな……!?

 

 疑いの目で斎藤社長を見ると、スマホを取り出して問題の動画を見してくれた。

 

『嘘は、とびっきりの愛なんだよ』

 

「マジか……」

 

 思わず素の反応をしてしまうぐらいにはびっくりした……。

 

「……という訳でカミキ……ドームは任せた。アイの事は俺に任せろ!」

 

 ……俺、マネージャーだよね?

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 そして、ドームの日がやって来た。

 

 B小町のメンバーは、やる気に満ち溢れている。

 

 俺は”カミキヒカル”ではなく……アイドルの”アイ”としてこの場にいる訳だから、全然緊張なんかしてないし……? なっ、何なら俺には……! だっ、誰にも負けない……強い信念がある!!!!

 

「こんなこと言うのアイには悪いけど……私、カミキマネージャーと一緒にライブが出来て嬉しいです!」

 

「……うん。アイには悪いけど、こんな機会は無いだろうしね」

 

「大丈夫ですよ、カミキマネージャー。何かあっても私達がちゃんとフォローしますので、安心してください」

 

「ねえ、せっかくだから……B小町のドームライブの成功を祈って、円陣組まない?」

 

「そうだね! 組もうよ」

 

「じゃあ、カミキマネージャーお願いします」

 

 すぅぅ……と。息を吸って落ち着かせる。

 

「ではいっくよー、サインは?」

 

「「「「「「「B!!!!!!!」」」」」」」

 

 今の俺は……”アイ”だ。

 

 

 

 

 

 

 ライブ中の事はあまりに必死だったので、あんまり覚えて無いけど……どうやら大成功だったようだ。

 

 そして、これは余談だが……ドームの日に厄介オタクがアイの家に来たようだが、斎藤社長が応対したため、相手は敢え無く御用になった。

 

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