ようやく……ようやく、ヘルニアが完治した!
これで、病院に通うことも無くなり……事務作業に追われることになってしまった。
……なんだろう? 嬉しいハズなのに……。まぁ、それはともかく……ピアノを弾くようになってから、両手共に手先が器用になった気がする……。
『金の星』も満足に弾けるようになったし、『猫ふんじゃった』に挑戦すべき時が来た!
相変わらず俺はいつもの中庭で演奏をしていると、何故かギャラリーが湧き始める。
いや、本当に大したもんじゃないんだから、スルーしてくれりゃあ良いのに……何でか知らんが求めても居ない感想を吐いて帰る輩もいる。
暇なのかねぇ~。
同じ東大生だから分かるけど……結構宿題とか多いし、そっちに気を回した方が良いと思うんだが……
……『猫ふんじゃった』も意外と問題なく演奏が出来た。
出来てしまった……。
やはり、努力だ。努力こそが重要なのだ!
……と、なると……俺のピアノの腕は最早、初心者を超えつつあるということになる。
よし、次は『トルコ行進曲』に挑戦だ。
あっ! これはまだ無理な奴だった。
弾くスピードが速い所為で、指が吊りそうだわ……。
流石、中級者向けの曲であるな……練習のし甲斐があるぜ。
さらに、時間が経った。
東大の文化祭は特に興味も無いから、邪魔にならないように隅っこの場所でピアノの練習をしていた。
そもそも俺は友達を作りに大学に来ている訳でも無いから……出されたレポートを、授業が終わったら休憩中だろうと可能な限り終わらせて、出来ればその日の内に片付ける。
宿題が無い日は当然の様に中庭でピアノの練習をしているが、最近考えることがある。
もし、この考えが当たっていたら……俺は理工学じゃなくて、普通に教育学部にすればよかったと若干だが後悔していた。
ま、どちらにせよ欲しい資格は取れる訳だから良いんだけど……。
この世界に
そんなことを考えながらも、指だけは絶え間なくピアノを弾いていた。
……結構夢中だったのか、休憩時間も残り僅かになっていた。……まぁ、いつも通りに片付けて……次の講義に向かおうとすると、最近良く絡んでくる奴らがいる。
どいつもこいつも『君のそれは芸術ではない!』『本気でやっている人たちを馬鹿にしているのか?』『下手くそ』と大体同じ事を言ってくる。
それに対して俺は『私の将来に必要な事で、やっているだけですのでお構いなく』と返すと口をもごもごして黙ってしまう。
いや、黙るんなら最初から絡んでくるなや!
鬱陶しい奴等だな!
……あ、そうだ。そろそろテストが近いから勉強もしないとな……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ピアノサークル部>
あいつが……カミキヒカルが気に入らない!
あいつはピアノなんかやった事ない。
そういうのは、音を聞けば本気でやっているかどうかなんて俺達は一発で分かる。
ほんの数か月前まではゴジラを満足に弾けなかった奴を、その時俺たちは馬鹿にして笑っていた。
しかし……ある日、うちのサークルの姫を傷つけやがった。
ピアノの演奏において……国内でもトップクラスの国宝ともいえる存在を……!
姫がカミキに告白したことも驚いた。
カミキは確かに容姿が整っている。
しかし、それだけだ。
何かしらのオーラがある訳では無い。そんな中身すっからかんの男が姫から『あなた……可愛いわね? 私が飼ってあげるわ。光栄に思いなさい』と声を掛けられたのも気に入らないが……。『私はあなたみたいに暇ではないので結構です。……ただ、良い身体しているので……セックスくらいなら、相手をしても良いですよ?』……なんて、スカした上に下品な返しをしやがった……!
顔真っ赤にして口をパクパクさせてた姫の表情は正直、可愛かったが……カミキのあの言い分だけは許せなかった。
だから、あいつが中庭でピアノの練習をしているときは、罵詈雑言を浴びせているが……奴は聞いちゃいなかった。
それどころか『私の将来に必要な事で、やっているだけですのでお構いなく』と言い放った。
……俺は……カミキに、恥をかかせてやりたく仕方なかった……!