カミキヒカルになりました。(本編完結)   作:だめねこ

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第53話

 ルビーに過酷な現実を突きつけなければならない事に頭を悩ませながらも、講義を受けて、中庭でのピアノの練習も怠らないが気分が乗らない。

「カミキヒカル! 今の演奏は何ですか!? 全く気持ちが籠って無いわよ! やる気が無いならやめた方が良いんじゃないの!?」

 姫野千佳がギャーギャー喚いているが……そもそも、まず技術が追い付いて無いから気持ち以前の問題なんだよね。

 子育てもピアノもままならないものである。

「……そうですね。まだまだ練習中ですので、至らない点はたくさんありますので色々言いたいことはあるかと思いますが、あなたは初心者に何を求めているのですか?」

 別に金取ってる訳でも無いし、趣味でやっているだけなんだから突っかかって来るなし……まぁ? 可愛いから許しちゃうけど……?

「だから、この私がピアノを教えてあげると言ってるじゃない!? こんなこと、本来なら有り得ないんですよ!」

 いや、そんなこと……言われたってな〜?

「……あの、私も暇な訳では無いので……それでは」

 とりあえず、そろそろ約束の時間になりそうだから片付けて行かないとね……。

「暇じゃないって!? ちょ、ちょっと!? どういうことなのカミキヒカルゥーー」

 アーアー聞こえなーい。頼んでもなく〜突っ掛かってばかりの〜人の声なんて〜、聞こえ〜な〜い!

 

 

 

 ……さてと? バイクでルビーのお迎えに保育園に向かってから、指定された喫茶店に来た訳なんだけど……。

 ルビーの機嫌が悪いのだ。

 いや、まぁー分かるよ? そりゃあ……ね? 誰だって自分の夢を反対されたら、良い気はしないものだからね……。

 実際にアイは、ルビーがアイドルになることを喜んではいたけど……アイは考え無しでイケイケな部分がある癖に、打たれ弱いって弱点がある。

 アイ自身が経験したことが、必ずしもルビーに行われる訳では無いが……アイドルって言うか……芸能界がそういう世界だからね。

 常に勝つか負けるか、食うか食われるの弱肉強食だから……ザックリ言えば、容赦がない。それこそ油断すれば、優しい子はペロリと食べられちゃうし……反対にとんがり過ぎれば……『出る杭は打たれる』。俺が関わる前の、アイに対するB小町がいい例だ……。一度でも嫉妬に遭ったり、恨まれれば……いずれはしっぺ返し等を食らう羽目になる……バランスなんて、有って無いような恐ろしい世界だ。

 だから……アクアの反対する気持ちは分かるんだ。

「ルビー? まだ先方は来てないので、好きなの食べてて良いですよ」

「……カミキさん、ありがとう」

 とりあえず、ルビーの頭を撫でて機嫌が良くなることを祈るか……。

 

 

 

 ルビーがケーキを食べ終わった頃……丁度、(くだん)の元アイドルであり現AV女優と、その社長が来てくれた。

 社長さんは筋骨隆々で、タンクトップが似合う日焼けしたナイスガイだった。

 そして、元アイドルってだけあり……来てくれたAV女優さんも、中々可愛らしかった。

 しかし……ここでまさかの誤算があった。

「もしや、あのカミキヒカルさんって……元劇団ララライ所属の、女たらしのカミキヒカルで合ってますか?」

 ……とんでもないパンチをぶち込んできやがったな!?

「……ええ、その認識で合っておりますが……私の事をご存じですか?」

「いやーこういった業界ですので、そういった情報は流れているんですよ。特にカミキさんはその筋では有名ですからね。うちの子達も? 是非1回抱いて欲しいと言ってますからね……ところで、AV男優に興味は有りませんか? カミキさんならギャラはこれぐらい払いますよ?」

 いやー社長さん? 指3本って、結構な金額ですけど……今回は俺の話ではなくてね?

「……仕事で女性は抱かない主義なので、今回は遠慮しておきます」 

「うーん、振られちゃったか……でも、個人的にカミキさんの今のお返事で分かりました。あなたはやっぱり良い人ですねぇ~? 僕……今ので、カミキさんの事が気にいっちゃったので、友達になりませんか?」

 社長さん……? 距離の詰め方が凄いけど……なんだろう? 不思議と悪い気はしないな……。

 傍にいるAV女優さんも、社長さんに関してはとても安心しているし……肉体反応も特に問題は無い。

「私でよければ、仲良くしてくださいね?」

 社長さんとはその場で握手をした。

 

 さてと、では……本題に入るとするか。

 

 

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 内容がえぐいってーの。

 

 まさか、ここまでとは思ってもみなかったが……。

 当時の売れないアイドルの少女達を騙して、ホテルに連れ込んだ後にクスリ漬けにしてから乱交パーティーなんてのは常套手段。更にはそれをネタに脅迫して、お偉いさん達に接待プレイまでがセットらしい……。

 しかも、まともな賃金も払って貰えないから、必然的に立ちんぼや自身のグループのファンに体を売っていたりとか……子供に聞かせたらいけない内容じゃん。

 しかも、家出少女は特に狙い目で逃げ場がないから囲いやすく、スカウトは見ればすぐに分かるようだ。

 大体が下はジーンズで、上はパーカー……帽子を被っている素朴な感じの子は、家出少女との事でファッションについては疎いのが共通認識らしい……。

 

 ちなみに今でもそういう事務所はあるし、今後とも無くなることは無いだろうと社長さんは言っていた。

 学歴が無いから、まともな職業に付けないし……いざアイドルになれても売れなければ、沈められるのは知ってはいたし……そういった子の最後の受け皿になるのがAV業界って話だ。

 同情はするし、可哀そうだとは思うが……これに関しては俺は何にも出来ないな。

「アイドルになりたいと、ルビーは私に再三言ってきましたが……今でも答えは変わらないですか?」

「……正直、話を聞いてすっごい怖かったよぉぉぉ」

 俺がそう聞くとルビーは大粒の涙を零しながらも、泣きながらも答えてくれた。

「……でもぉ、ひっく、それでもぉ……私は、アイドルに……なりたいんだもん!!!!」

「分かりました。何かあれば私が必ず助けます。何せ私は親ですからね! なので、思う存分ルビーはアイドルをやってみてください。」

 俺がそう言うと、ルビーは俺の胸に顔をうずめて泣いた。

 ルビーとの距離が縮まった気がした。

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