宇流麻カナンと名乗った少女はぱっと見た感じだと……こんなところを歩いてるイメージの無い女の子だ。
『B小町』って言っていたし、何なら『アイ』の名前も出ていた以上は間違いないだろう。
何せ俺や上原パイセンに嘘を吐く意味が全く無い訳だ。
「失礼ですが、『B小町』と言う事は宇流麻さんはアイドルをされているってことですか?」
「……私はもう『アイドル』じゃない」
宇流麻カナンはそう言うと悔しそうにそう言ったが……
ああ、そういえば『B小町』って『アイ』の一強だからメンバー間の友情なんて全く無いんだっけ? それに『アイ』に嫌がらせして辞めさせられた女の子がいるって言っていたし……まさか宇流麻カナンがそうなのか?
「もし、良かったらご飯でも食べに行きませんか? ここで会ったのも何かの縁ですし」
「言っておくけど私はお金なんて全く無いよ」
「申し遅れましたが、私は役者をしておりまして『劇団ララライ』ってご存じですか? 一応そこに所属している者ですので、そこそこお金はありますので大丈夫です」
まぁー上原パイセンに飯代は出して貰うけどな!
「へぇーカミキは役者やっているんだぁ~」
そう言うと宇流麻は急にニヤニヤし始めたが、お腹でも空いてるのか?
服装は元アイドルとは思えない位に地味な感じだが、ボロボロって訳でも無いから『B小町』を辞めてから日はそんなに経っては居なさそうだが……お金が無いって言っていたから、結構な違約金を請求された可能性がある。
そして、ニヤニヤ笑ってはいるものの、目の奥には怯えが隠れて見えることからこう言った『援交』は恐らく初めてなのだろう
そうこう考えている時だった。
「カミキ待たせたな!」
路地裏からスッキリした顔をしながら上原パイセンは出て来た。
この様子を見るにヤってんな!
「上原先輩お腹空いたんで、先にご飯にしませんか?」
「そうだなぁ~俺も運動したばかりだし……よし、そうするか!」
上原パイセンが言った運動って言葉に宇流麻は喧嘩の事だと思っていそうだけど……まぁーあながち間違いでも無いから訂正はしないでおくか
「宇流麻さんは何か食べたい物でもありますか?」
「えーっと……私この辺り疎いからおすすめってありますか?」
キョロキョロ周りを見回していたけど、この辺だとファミレスに牛丼屋にラーメン屋にピザとか焼肉なんかもあるけど、どれもチェーン店だし元とは言え『アイドル』が行くお店では無いから行った事は無いのだろう
まぁー『アイドル』って言っても稼げているのはほんの上澄み程度だし、この時期の『B小町』は知名度あるかもだけど、収入は多くは無いだろうし中抜きがえぐいってのはよく聞く話だ。
それは、役者も変わらないけどな。
愛梨パイセンクラスでようやく湯水のようにお金を遣えるだけで、上原パイセンなんか役者としての収入なんかは俺よりも少ないけど……こう言ったボランティアの治安維持なんかで収入を得ているから、瞬間的には俺よりも儲けている。
俺はモデルをメインで行っており、役者は脇役ばっかりやってる……だけどようやく収入が安定して来た。
モデルの方が収入が良いから主役なんかやってる暇は無いんだけど、最近はどの現場でも台本の加筆修正をされてしまい、長引く事が多々あるのが困りどころだ。
「……おすすめかぁー」
宇流麻の要望に頭を捻って考えている上原パイセンだけど……高級イタリアンとか言い出さないよな?
相手は恐らく俺より年下だから、マナーなんか知らないぞ?
「とりあえず、ファミレスで良いんじゃないですか? メニューもそこそこありますし……宇流麻さんはどうですか?」
「うーん……ま、良いかな♪」
及第点と言いかねない反応なんだが……大丈夫か?
「じゃあ、サイゼで良いですか?」
「カミキ……学生じゃあ無いんだから、もっと高い所でも良いぞ」
「俺は中学生ですよ!?」
「嘘!? カミキ中学生なの? 私もなんだけど……ちなみにいくつなの? 私は12」
「私は13ですね」
「その身長で?」
宇流麻からは驚愕の目で言われたが……身長なんて、低くて困った事は無いぞ。
なんなら、学校の階段とかで女子のパンツを合法的に見れる訳なんだから、嬉しい事は合っても悲しい事は何一つ無いし、おまけに背が高い女子はやたらと身体的な接触をしてくる。
良い事尽くめじゃないか!
「……まぁチビではありますが、それと年齢はイコールになりませんからね」
「カミキ……牛乳飲むか?」
上原パイセン……その気遣いはいらんっす。
紆余曲折はあったものの、サイゼに着いた。
時刻は19時を回っている……
「いらっしゃいませー何名様ですか?」
ウェイトレスの可愛い女の子が接客をしてくれている。
今日はサイゼに来て良かったと心の底から思ってしまう。
「3名です」
「では席にご案内します」
ウェイトレスの女の子に案内された席は窓側のボックス席だった。
「それでは注文が決まりましたらお呼びください」
ウェイトレスの女の子はそう言うと去って行った。
「じゃあ、注文する前にちょっとしたゲームでもしようか?」
「ゲームですか?」
上原パイセンがそう言うと宇流麻は怪訝は顔をした。
「ま、そんな大層なものじゃないから気楽にやってくれればいいぞ。で、ルールは簡単で質問に答えた回数だけ、品物を頼めるただそれだけだ」
「ふーん、ま、なんだって良いですよ。じゃあ、時間がもったいないんで早く聞いてください」
とりあえず、俺は二人のやり取りを聞き流しながら何を食べるか考えるか……
ドリアとピザとペペロンチーノは確定で、デザートは食べ終わってから考えるとして、ドリンクバーもお願いしよう
「あ、俺は先に注文してますね」
「おう」
「え!? カミキだけずるーい」
「いや、カミキはそもそも付き合い長いし……」
宇流麻からブーイングされたが……金を払うのは上原パイセンだからな
とりあえず、備え付けのベルを鳴らしたらさっきのウェイトレスの女の子が来た
「お待たせしました。ご注文どうぞ」
「じゃあ、ドリアとピザとペペロンチーノとドリンクバーをお願いします」
「ハイ、畏まりました。お連れの方はいかがなさいますか?」
「あ、こっちの二人は後で注文するので大丈夫です」
「ハイ、畏まりました」
ウェイトレスさんはそういうと去って行った。
よし、じゃあドリンクバーに行くとするか
「飲み物取ってきますね」
「おう」
コーヒーと紅茶どっちが良いかな?
そんな事を考えていたけれど、意外と種類があったので少し悩んではいた物の時間にして5分にも満たない位だったはずなんだが……
「カミキお帰り」
「ただいま戻りました。ところで質問タイムはこれからですか?」
「いや、もう終わったぞ」
「そ、そうなんですね」
って事はそんなに聞くような事は無かったのかな?
「で、結論を言うとだな……カミキお前この子の面倒見てやれ」
「えっ!?」
「私帰る家無いの! お願いカミキ君!」
「いや、だって、俺の住んでいる所ってボロアパートの元共用便所ですよ。俺が言うのも何ですが女の子が住むような場所じゃ無いですからね!」
住みやすくしたとは言え、住むには根性がいる部屋だからな
「この際だから引っ越ししちゃえよ? 保証人には俺がなってやるから」
「じゃあ、上原パイセンの所は?」
「あそこは俺と愛梨と大輝の愛の巣だ」
「当然の様に息子を勘定に入れるな!」
こういうことを上原パイセンは真顔で言うから心臓に悪いのだ。
「まーカミキもお金はある訳だし、いい機会だろ」
「確かにそうですけど……物件探すのだって時間はかかりますよ?」
「それは俺に任せろ。カミキと違って暇だから探しておいてやる」
「では、今日はどうするんですか?」
引っ越すのはこの際良いけど、引っ越すまでの間は宇流麻をどうする気だ?
「我慢してもらおう」
「我慢するわ!」
我慢出来るのかな?